大根は、幅広い料理に使うことができ味にクセがないため、人気の高い野菜です。水分が多い印象の方が多いかと思いますが、大根にはどんな栄養が含まれているのでしょうか。この記事では大根の栄養と効能、効果的な食べ方について解説していきます。
大根の原産地は諸説ありますが、エジプトでは紀元前から栽培されていたと言われています。日本には奈良時代に伝わり、江戸時代には栽培が始まったと考えられています。
大根は一般的に葉から下は「根」と呼ばれますが、植物学的には地上に出ている薄緑の部分は「茎」です。先端の細く生えているのは「ひげ根」と呼ばれます。
大根の根はほとんど水分なので栄養はあまり多くありませんが、胃腸の働きを整える役割がある消化酵素が豊富に含まれます。根より葉の方が栄養価が高く、β-カロテン(ビタミンA)やビタミンC、葉酸、ビタミンE、ビタミンKなどが含まれます。
三大栄養素とは炭水化物・脂質・たんぱく質を指します。
大根の根の可食部100gあたり
エネルギー...15kcal
水分...94.6g
たんぱく質...0.5g
炭水化物...4.1g
脂質...0.1g
食物繊維...1.4g
糖質は2.7gです。糖質は炭水化物から食物繊維を引いた値です。大根の根の糖類はブドウ糖が多く、次に果糖が多くなっています。ショ糖は少ないです。
大根の根は95%が水分です。その分栄養素は少ないですが、先程も言ったように大根はたくさん食べられることから、栄養を摂取することができます。
ほうれん草:カロリー18kcal、糖質0.3g
トマト:カロリー20kcal、糖質3.7g
ピーマン:カロリー20kcal、糖質1.3g
じゃがいも:カロリー59kcal、糖質8.4g
さつまいも:カロリー127kcal、糖質30.3g
です。野菜の中で糖質もカロリーも低いことがわかります。
出典:文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)
アミラーゼ(別名ジアスターゼ)
プロテアーゼ
グリコシダーゼ
アミダーゼ
オキシダーゼ
カタラーゼ
ベルオキシダーゼ
などの消化酵素が大根には含まれています。
たとえばアミラーゼはでんぷんを分解する酵素で、食べ物の消化をサポートし、さらに胸焼けや胃もたれを防ぐ効果があります。大根のアミラーゼはpH5.2〜5.8(酸性)、60〜65℃のときが最も活性が強くなっています。浅漬けのように短期保存では活性がありますが、たくあん漬けにはありません。
また、大根をすりおろした方が消化酵素は作用しやすくなります。そのため古くから大根はすりおろして食べられています。
アリルイソチオシアネートは、辛み成分の一つであるイソチオシアネートの一種です。アリルイソチオシアネートは大根やキャベツなどのアブラナ科の野菜に含まれています。また、苦味の原因にもなりますが、有害なわけではありません。
アブラナ科の野菜に多く含まれており、ツンとすることが多いです。アリルイソチオシアネートには、抗酸化作用があります。抗アレルギー効果もあると言われているので、花粉症予防の効果も期待できます。さらに、胃液の分泌を促し、腸の働きを助けます。
大根をすりおろすことで起きる化学反応でも生じるため、大根おろしは辛みが強くなり、これは抗酸化作用が強くなっている証拠です。
カリウムはミネラルの一種です。
カリウムはナトリウム(食塩)と協力し細胞の浸透圧を維持しています。体内に十分なカリウムがあると、余分な食塩を排出して血圧を正常に保ちます。しかし、カリウム不足や塩分の過剰摂取が続く、むくみなどの原因になります。
そのほか、腎臓の老廃物の排出を助けたり、筋肉の収縮をスムーズにする働きもあります。
食物繊維もそこまで多くはありませんが、大根はたくさん食べられることを考慮すると、食物繊維の大切な供給源と言えます。また、大根の食物繊維は不溶性食物繊維の方が多いですが水溶性食物繊維も含まれています。
水溶性は水に溶解する性質を持っており、水溶性食物繊維は水に溶けるととろとろ・ネバネバして糖質の消化や吸収を穏やかにする作用があります。不溶性は液体に溶解しない性質を持っており、不溶性食物繊維は水分を吸って腸の中で大きく膨らみ、排便をスムーズにし、有害物質が体にとどまる時間を短縮させ、便秘の予防・改善、腸内環境を整えます。
大根の葉はもはや別の野菜と言えるほど大量に栄養素を含んでいます。大根の葉は緑黄色野菜に分類されます。大根の葉は捨てずに食べるようにしましょう。
大根の根には全く含まれていないβ-カロテンが、葉にはほうれん草と同じくらい豊富に含まれています。
β-カロテンは体内で必要量がビタミンAに変換されます。皮膚や喉など全身の粘膜を健康に保ち、体外からのウィルスや細菌の侵入を防ぐことで免疫力をアップします。また、抗酸化作用もあるので、アンチエイジング効果や生活習慣病の予防効果が期待できます。
変換されたビタミンAは、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあります。視力を正常に保つ役目や視力低下の抑制効果、他にも皮膚の健康維持に関与していることから乾燥肌やニキビ肌の改善など美肌効果も期待できます。
ビタミンCは根にも含まれていますが、葉の含有量は根の2倍以上です。
ビタミンCはたんぱく質からコラーゲンを合成する働きがあります。コラーゲンは、細胞間の結合組織で、血管や皮膚、骨、筋肉などを丈夫にします。コラーゲンによって、肌にハリ・ツヤが生まれます。シミのもとであるメラニン色素の合成も抑えるなど美肌づくりに大切な栄養素です。
そのほか、ビタミンCには白血球を活性化させて免疫力を高める作用もあります。抗ストレスホルモンの合成にも欠かせない栄養素です。
ビタミンA・C・Eはその文字から「ビタミンエース」と呼ばれ、抗酸化3大ビタミンです。活性酸素に抗酸化作用を発揮して、細菌やウイルスの体内侵入を防いでいます。また錆びついた細胞の修復も助ける、素晴らしい栄養素です。その3つが大根には含まれています。
ビタミンEは強力な抗酸化作用があります。体内の脂質が酸化するのを抑え、老化の予防をしてくれます。ビタミンEは血液中の悪玉コレステロールの酸化を抑える働きがあり、酸化によって進行してしまう動脈硬化の予防に役立ちます。
さらにビタミンEは末梢血管の拡張させる働きがあるため、血行促進に繋がります。また副腎や卵巣の性ホルモンの分泌の調整にもビタミンEは関与しているので、生殖機能の維持にも役立ちます。
葉酸はほうれん草の葉っぱから発見されたビタミンB群の一つで、ビタミンB12と一緒に正常な赤血球を作るのに必要な栄養素で「造血ビタミン」とも言われています。赤血球は約4ヶ月で生まれ変わり体内では常に新しい赤血球が作られています。また、たんぱく質や核酸の合成を助け、細胞の新生や増殖に深く関わっています。
大根の葉のビタミンKはほうれん草と同じくらい含まれています。
ビタミンKは血液を凝固させる成分を合成する働きがあり、出血を止める役割があります。月経による出血が多い場合も、症状を軽減する効果が期待できます。
さらに、ビタミンKは、骨から血液中にカルシウムが放出されるのを抑え、骨にカルシウムが沈着するのを助けてくれるので、ビタミンDと並び健康な歯や骨を作るのに欠かせないビタミンです。
大根の葉のカルシウムは、なんとほうれん草と比較して5.3倍も含まれています。
体内の99%のカルシウムは貯蔵カルシウムとして骨や歯の材料となります。骨の代謝に関わり骨の健康を保っています。
残りの1%は機能カルシウムとして、血液や筋肉、細胞内などに存在し、大切な情報の伝達を行っています。それによって筋肉のなめらかな動きをサポートしたり、精神を安定させたりします。
カルシウムが不足すると、骨が弱くなったりこむら返りを起こすことがあります。特に野菜などのカルシウムは吸収率が低いため、ビタミンKなどカルシウムの吸収を助ける栄養素と一緒に摂取するといいでしょう。
鉄分はミネラル成分の一つです。体に必要な栄養素で、成人のからだには約3〜5gの鉄が存在しています。
鉄は大きく分けて2種類あります。一つは機能鉄といって赤血球のヘモグロビンの材料となり、酸素を運びます。
もう一つは貯蔵鉄といって肝臓や骨髄、筋肉などに蓄えられており、機能鉄が不足すると体内に放出されます。また、酵素の構成成分で、エネルギー代謝を助ける働きがあります。
参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス
辛味成分であるイソチオシアネートは加熱することで辛味が低下します。さらに、加熱によって繊維細胞が破壊されるので、大根の炭水化物にはブドウ糖、ショ糖、果糖まどの甘み成分が引き出されます。
大根を加熱すると甘くなるのは、甘味成分が増えているのではなく、辛味成分が減少し甘味成分が外に出て舌に触れやすくなるためです。
大根は部位ごとに味や食感が若干異なります。部位別の味と食感の特徴は下記の記事で詳しく解説しています。
大根の部位の特徴は?味や食感は?煮物や大根おろしには上下どっち買う?
冬の定番料理であるおでんの大根は、茹でたことによって水溶性のビタミンやミネラルが流出してしまっているため、ほとんど栄養がありません。
大根の重要成分である消化酵素のジアスターゼは加熱にとても弱く、50〜70℃ほどで働きがなくなります。さらに脂質を分解する酵素リパーゼも消滅します。ビタミンCも水溶性なので煮込んでいる間に煮汁に溶け出してしまいます。皮付近に含まれているので、皮を剥いてから煮込んでしまうとビタミンCはほぼゼロになってしまいます。おでん以外の調理でも、また大根おろしでも、皮ごと使うのがおすすめです。
大根は天日干しすることで栄養が急増する野菜の一つです。鉄分やカルシウムなどのミネラル類、ビタミンB1やB2、ビタミンCなどのビタミン類もアップします。天日干しの際の紫外線が栄養成分のアップに関係することもありますが、これは水分がなくなった分100gあたりに含まれる栄養価が高くなったという点が大きいです。
そのため天日干しで作った切り干し大根の栄養価は生の大根に比べてかなり高いですが、一度にたくさん食べられるわけではないので過度の期待はできません。
大根の皮にも栄養素は含まれています。また、皮のすぐ下の部分にも栄養素が詰まっていることが多く、ビタミンCやアミノ酸などが含まれています。そのため、なるべく皮を剥かずに調理しましょう。
また皮を剥いた際は、捨ててしまうのではなくそのまま調理に使いましょう。サラダや漬物にしてもおいしいですし、炒めてもおいしくいただけます。
大根が栄養がないと言われるのは、根の部分は炭水化物がごく少量含まれるだけで、95%が水分なためです。ただ微量ではあっても栄養は含まれています。
大根は葉の方が栄養価が高いため、大根の葉も調理して食べるようにしましょう。
いずれにせよ、一つの食材では栄養が偏ってしまうため、栄養バランスを考えて様々な食材を食べることが大切です。
大根は根も葉もカロリーが極めて低いため、ダイエットに良いでしょう。糖質も多くないので、たくさん食べても太る心配はありません。
ただし、調理法や味付けによってカロリーが上がります。茹でるだけならカロリーは減りますが、それ以外の調理方法はすべてカロリーも糖質も高くなります。油で炒めたり衣を使って天ぷらやかき揚げにした場合は、とても高くなります。味付けも甘味料を多く使えば、その分カロリーが上がります。大根だけでは味が薄いので、濃い味付けをしてしまう人も多い傾向にあります。
大根の根は3つの部分に分けて使われます。
付け根に近い部分(茎)は甘みがあり、サラダや大根おろしなど生食に適しています。中央はやや硬いのでおでんなど煮込み料理に適しており、下部の細くなっている部分は辛みが強いので炒め物や味の濃い料理に適しています。先端部分は刻んで汁の実にもおすすめです。
つまり、根元は糖度が高く、先は辛み成分であるイソチオシアネートが多くなっています。
当たり前ですが、新鮮な野菜の方が多くの栄養素が含まれます。新鮮な大根の見た目などの特徴をご紹介します。スーパーなどで大根を購入する際は、下記の点に注目してみましょう。
根の部分の肌が白く、ハリとツヤがあるもの
根の部分のひげ根のあとが均一で幅がまっすぐ並んでいるもの
首の部分(茎)が明るい緑色で、黒ずみがないもの
葉がみずみずしく、放射線状に広がっているもの
日本食品標準成分表(2020年版)に大根を冷凍した場合の栄養価は記載されていません。そのため明確な栄養価の変化は分かりませんが、一般的には栄養価の変化はあまりないと言われています。
ただ、冷凍した大根を解凍する際に加熱をするとジアスターゼなどが減ってしまうので、自然解凍するようにしましょう。
薬膳には「五気」というものがあり、植物分類の基礎理論です。「寒」「涼」「平」「温」「熱」の5つの性質を表され、大根は「涼」に分類されるので、むしろ身体を冷やす野菜です。
簡単に説明すると
寒…身体を冷やす食べ物、鎮静作用・消炎作用があり高血圧の人やのぼせやすい人が摂るべきもの
涼…寒より作用が弱いが身体を冷やす食べ物、鎮静作用と消炎作用あり
平…身体を冷やしたり温めたりする作用がない食べ物
温…身体を温める食べ物、興奮作用があり冷え性の人が摂るべきもの
熱…温よりさらに身体を温める食べ物、冷え性の人に加えて貧血の人も摂るべきもの
です。
また、寒い時期には「温」「熱」のものを、暑い時期は「寒」「涼」ものを食べるといいです。
先ほども言いましたが、大根は「涼」に分類されるので、温かい時期に食べることで身体を冷やしてくれます。
大根の根に含まれるアミラーゼやアリルイソチオシアネートが熱に弱いため、栄養を活かすなら生で食べるのがベストです。さらにビタミンCやカリウムも水溶性であるため、茹でることで水に溶け出してしまいます。熱を通す場合は、スープなどにして汁ごと食べる方がいいでしょう。
辛み成分イソチオシアネートはすりおろすなど細胞壁を壊すと生成されます。
大根の皮の周囲にはビタミンCが多いので、大根おろしなどは皮ごとすりましょう。皮を剥いてしまうと、栄養が減ってしまいます。
また、大根おろしの汁を捨てないようにしましょう。この水分にも栄養が含まれています。汁ごと一緒に食べるようにしてください。
大根の葉にはβ-カロテンが豊富に含まれています。βカロテンは体内でビタミンAになりますが、体内で吸収されにくいと言われています。このβカロテンの吸収率を油がアップしてくれるので、炒めものなどにして油と一緒に食べることをおすすめします。
さらに、ビタミンKも含まれていますが、同じく脂溶性なので油炒めや良質な油を使ったドレッシングで油と一緒に食べる調理法がいいでしょう。
おもちに大根おろしをかけて食べるからみもちがありますが、実はこれ栄養学的にとても理にかなっています。大根に含まれるアミラーゼが、おもちのデンプンを分解してくれるんです。デンプンはそのままでは体内に吸収できないので、糖に分解する必要があるのですが、それをアミラーゼが助けてくれるわけです。消化液のひとつである唾液にも含まれています。
最後に、大根を使ったおすすめのレシピをご紹介します。Filyのレシピはすべて小麦粉・乳製品・白砂糖不使用です。
程よく塩けが効いた大根とレモンで甘みが際立ったりんごが美味しい一品です。
水溶性のビタミンCやカリウムを失わないためにも、大根は生で食べるのがおすすめです。
りんごと大根のサラダのレシピ・作り方
さっぱりとした口当たりで、飽きがこないヘルシーな一品です。青ねぎの風味も加わり、箸が進みます。
大根の酵素はたんぱく質の分解も手伝うので、鶏肉などと一緒に食べるのもGOOD。
鶏むね肉のおろし煮のレシピ・作り方
捨ててしまいがちな大根の葉は様々な料理にアレンジすることができます。大根葉のカレーそぼろは、ひき肉と一緒にスパイシーに炒めたひと品です。ご飯やオムレツなどのトッピングとしておすすめです。
大根葉には、大根の根の部分よりも多くの栄養価(β−カロテン、ビタミンC、ビタミンE、カリウムなど)が含まれています。
汁けがなくなるまで炒めましょう。
大根葉のカレーそぼろのレシピはこちら
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