大根は上部・中部・下部と3つの部位に分けられて販売されていることも多いですが、どこの部位を購入すべきか迷ったことがある方は多いのではないでしょうか。本記事では大根の部位について詳しく解説します。
大根は上部・中部・下部と部位によって味や食感が異なる野菜です。カットして販売されているときなどにどこの部位を購入すべきなのか迷ったことがある方は多いのではないでしょうか。
大根の部位のそれぞれの特徴を理解しておくと、大根を丸々1本購入した際も適した料理に使うことができより美味しく食べることができます。
それでは大根の部位別の特徴を詳しく解説していきます。部位別の重さについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
大根の葉に近い上部の部分は、大根の部位の中で最も甘味が強く水分が多いのが特徴です。水分が多いのでみずみずしいのですが、首部なので(葉の根元なので)程よく硬くシャキシャキとした食感を楽しむことができます。
甘味が強いのは大根の辛味成分の含有量が少ないためです。大根の辛味や苦味の元になっているのはイソチオシアネートと呼ばれる成分です。主に辛味となっているのが「アリルイソチオシアネート」というイソチオシアネートの一種です。
大根の上部は上述したように辛味成分の含有量が少なく、中部や下部と比較すると栄養価は低めです。
大根自体が水分を多く含む野菜であるため「栄養がない」と言われることが多いですが、全く含まれていないということはありません。例えばアミラーゼやオキシダーゼなどの酵素類やビタミンCといった栄養素が含まれています。
大根の上部は、甘味があるため食べやすく、みずみずしいシャキシャキシャキとした食感を楽しむことができるのでサラダや野菜スティックなど生で食べるのに適しています。大根は生で食べることで水溶性のビタミンCなどもしっかりと摂取することができます。
固めの食感なので、小さなお子様など食べやすさを重視する場合は千切りにすると良いでしょう。酢の物や浅漬けにするとしんなりするのでより食べやすくなります。
また、上部は大根おろしにするのにも適しています。マイルドな辛味なので辛味が苦手な方でも食べやすいです。
大根の中部の水分量は上部より少ないのですが、葉が付いていないため食感は最も柔らかいのが特徴です。
辛味成分の含有量は上部と下部の中間で、甘味と辛味のバランスがちょうどよいのが特徴です。そのため、生食にも加熱調理にも使える万能部位です。
上部では辛味が少なくて物足りないけれど、下部では辛すぎるという方におすすめです。
上述したように大根の中部は生で食べることもできますが、少し固めなのでおでんなどの煮物、鍋、豚汁といった加熱調理に向いています。加熱することで柔らかくなり食べやすくなります。
ちなみに、おでんや煮物の具材として大根を使用する際は、下茹ですることで大根特有のニオイを抜くことができます。大根臭さの正体は「メチルカブダン」という硫黄を含んだ化合物です。下茹ですることで水に溶け出すので、煮物の他の具材にニオイが移るのを防ぐことが可能になります。
ふろふき大根や大根ステーキにすると、大根本来の味を楽しむことができます。
やや固めなのでサラダなど生食で食べる場合は、繊維を断ち切るように切ると良いでしょう。大根の繊維をカットするときは、まず大根を一度輪切りにした後少しずつずらして重ねて並べて千切りにしていきます。
大根の下部は、最も辛味成分を多く含む部位で辛味が強く水分が少ないのが特徴です。辛味成分の含有量は最も少ない上部の約10倍と言われています。
つまり、大根は上部から下部にいくにつれて辛味成分の含有量が多くなるということです。下部に最も辛味成分が含まれている理由には諸説ありますが、下部で活発に細胞分裂を行い成長するため、害虫などの天敵を寄せ付けないよう辛味成分を多く含むようになったと考えられています。
大根の下部は水分が少ないため、味が馴染みやすく漬物やカクテキなどを作るのに適しています。また、辛味が強いので照り煮やきんぴらなどの炒めものといった濃い味付けの料理にも向いています。
繊維質で筋が残りやすいので、食べにくさを感じる方は薄切りにしたり繊維を断ち切るように細切りにすると良いでしょう。
辛味が強いので大根おろしにして薬味として使われることも多いです。ガツンとした辛味を楽しみたい方は下部を使うのがおすすめです。
大根の下部は、上述したように辛味成分が最も多く含まれている部位です。
大根の辛味成分であるイソチオシアネートは、抗酸化作用があると言われています。体内の活性酸素を除去することができるため老化予防に繋がるほか、代謝を促進したり免疫力向上などの効果も期待できます。また、殺菌効果もあり、サルモネラ菌を使った実験では大根の辛味成分により、細胞に変異を起こさせる作用があることがわかっています。
辛味成分のイソチオシアネートの母体となっているのはイオウ化合物のグルコシソレートで、組織が破壊されると酵素ミロシナーゼにより加水分解されてイソチオシアネートが生じます。そのため、大根を細かく刻んだりすりおろした方がイソチオシアネートを効率的に摂取することができます。またイソチオシアネートは揮発性が高い成分なので、食べる直前にすりおろすのが良いです。
ただし、イソチオシアネートは刺激性のある成分であるため大量に摂取すると、胃腸に過度な刺激を与えてしまうため食べすぎには注意が必要です。場合によっては胃痛・腹痛や下痢といった症状が出ることがあります。
一般的に辛いのが苦手な方が多いので、大根おろしでは上部(首部)がおすすめです。上述したように辛味成分の含有量が少ないため、マイルドな辛味で食べやすいと感じる方が多いです。
ただし、上部では辛味が足りず物足りないという方もいます。辛めが好きな方は下部を使うのが良いでしょう。そばの薬味などには辛味が強い下部を使ったり、あえて辛味の強い品種の大根を使うことも多いです。
大根のすりおろしは、部位はもちろんのことすりおろし方でも辛味が変化します。
繊維に沿って「の」の字に大根を動かしてすると辛味が少なくなり、反対に繊維を断ち切るように上下に大根を動かしてすると辛味が強くなります。
大根は組織が破壊されると辛味が出てくるので、辛味を抑えたい方は細胞を壊さないようにするのがポイントとなります。そのため、できるだけ力を入れずにゆっくりとおろしていく方が辛味を抑えることができます。また、のの字に動かすことで大根の繊維が潰れるため口当たりも滑らかになります。
力を入れて上下にすりおろすと繊維が破壊されて辛味強くなり、大根の食感が残ります。
大根のすりおろし方については、こちらの記事でご紹介していますので参考にしてください。
すりおろし方だけではなく、おろし器によっても辛味は変化します。
例えばプラスチック製やセラミック製のおろし器、フードプロセッサーは細胞を傷つけにくく繊維が残りやすいため、辛味を抑えることができます。フードプロセッサーは粗めに仕上がるため大根の食感も楽しむことができます。
金属製やアルミ製のおろし器は、プラスチック製のおろし器と比較して細胞を傷つけやすいため辛味が強くなります。
大根は、春まき初夏どりと夏まき秋どりのものがあり一年中市場に出回っている野菜です。いつ購入しても同じだと思っている方も多いですが、実は辛味成分は栽培条件によっても変化します。
大根は気温が高いほど辛味成分が多くなります。そのため、春まき初夏どりの方が基本的には辛味が強いです。暖かい季節に販売されている大根が辛かったりして食べにくいと感じる方が多いのはこのためです。また、寒い季節は糖類の含有量も増えるため上部の甘味も強くなります。
しかし、下部(先端)だけは夏まき秋(冬)どりの方が辛味成分が強くなります。そのため、夏の大根の下部(先端)が最も辛く、冬の大根の上部(首部)が最も甘い、ということになります。
「大根」と一口に言っても様々な品種があり、品種によって辛味が弱いものと強いものとがあります。大根の辛味が苦手な方は甘い品種の大根を選ぶのも一つの手です。
例えば「聖護院大根(しょうごいんだいこん)」という品種は、甘味が強い大根で小さなお子様でも食べやすく煮物や漬物などに使われることが多いです。聖護院大根は京野菜で伝統野菜に指定されていて大きいものだと2キロ以上にもなる大型の丸大根です。
反対に「辛味大根」と総称される辛味の強い品種もあります。辛味大根の品種には、「親田辛味大根」や「ねずみ大根」などがあります。辛味大根は主に大根おろしにして薬味として使われることが多いです。
大根の部位による保存期間の差はありません。そのため、上部・中部・下部のどの部分から使っても大丈夫です。どの部分も共通して乾燥に弱いです。また水分量が多い野菜ですので暖かい季節に常温で保存してしまうと腐敗の原因となります。乾燥や温度に注意して正しく保存し、新鮮な状態で美味しく食べましょう。
大根の葉は冷蔵保存する場合、2〜3日と保存期間は短めです。ほうれん草などの葉野菜と同じように、しなしなになったり味が落ちたりするので、そのまま冷蔵保存する場合は根よりも早く食べきるのが良いでしょう。冷凍したり天日干しして乾燥させれば長く保存することもできます。
葉がついた状態の大根を購入した場合は、すぐに切り落として別々で保存することが大切です。葉を残した状態で保存してしまうと水分や養分が葉に吸い取られ、可食部に穴が空きスポンジ状になって食感が悪くなったり味が落ちてしまいます。
大根の葉と根を切り分けるときは、葉の付け根は土が付いてるので、根の上部を2〜3cm残して切り落としましょう。保存するときは残した上部をキッチンペーパーで包んでからポリ袋に入れて野菜室で保管すると、乾燥を防ぐことができます。
また、根の上部を水を入れたお皿に入れておけば水耕栽培を楽しむこともできます。
普段私達が食べている部分は大根の「根」に当たる部分です。大根は「葉」の方が栄養価が高く、もはや違う野菜とも言えるほどです。
大根の葉にはカルシウムや鉄、カリウムなど、なかなか摂りにくいミネラル類を、根の部分の2〜10倍も含んでいます。骨粗鬆症や貧血、高血圧を防止効果があると言われています。また、ビタミン類では根に全く含まれていない、β-カロテン(ビタミンA)がほうれん草と同じくらい含まれています。野菜にはほとんど含まれないビタミンEも含まれます。ビタミンCも根の倍の量が含まれます。ビタミンA・C・Eはビタミンエースと言われ、体内で活性酸素による害を除外する役割があると言われています。
葉がついた状態の大根を購入した場合は、葉も捨てずに食べましょう。
ちなみに根の先端に伸びてるのは「ひげ根」です。食べている部分は「根」なので、ひげ根がつくことがありますが、新鮮な大根はひげ根の毛穴が浅く、数も少ないです。また、ひげ根が真っ直ぐ並んでいるのも特徴です。ひげ根の位置が不揃いのものは、生育中にストレスにより辛みが強くなってしまうと言われています。
現在日本で最も市場に出回っている大根は「青首大根」と呼ばれる品種です。青首大根は上部が青(緑)になっているのが特徴です。
上部が青くなるのは、成長すると上部が地上に出て日光に当たることで葉緑体が生成されるためです。毒素など人体に影響が出る成分は含まれていませんので、青い部分も問題なく食べることができます。
青首大根が主流になる前は「白首大根」と呼ばれる品種が一般的に食べられていました。白首大根は根が上部から下部まで真っ白なのが特徴です。日本書紀や古事記にも記載があるほど古くから食べられていた品種ですが、病気になりやすいなどの問題から現在では青首大根が主流となりました。現在では、たくあんにしたり、真っ白な根の特徴を活かした大根のツマにして刺し身と一緒に食べられることが多いです。
出典:独立行政法人農畜産業振興機構
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