一般的に販売されている大根は皮も中身も白色をしていますが、中身が茶色く変色することがあります。本記事では大根の中身が茶色になる原因や中身が茶色い大根は食べられるのかどうかなど詳しく解説します。
大根の中身が茶色になる原因としては、まず鮮度が落ちているということがあげられます。
大根には「アントシアニン」と呼ばれるポリフェノールの一種が含まれています。大根は鮮度が落ちるとポリフェノールが酸化し褐変します。褐変とは、食材を調理や加工、保存することにより茶色っぽく変色することをいいます。
大根に限らず野菜や果物にはポリフェノールが含まれていて、酸化することで茶色く変色することはよくあります。例えばカットしたりんごを置いておくと茶色くなるのもポリフェノールが酸化し褐変するためです。
大根は加熱をしても茶色く変色します。
大根に限らず、食材を加熱すると茶色く変色するのは、加熱によりカラメル化やメライード反応が起こるためです。
カラメル化とは、食材に含まれている糖が加熱によって水分を失っていく過程で、糖の構造が壊れたり別の結合を始めたりなど様々な反応が起こり褐色の物質を作ることをいいます。カラメル化することで苦味成分が作られます。例えばプリンのカラメルソースや鼈甲飴(べっこうあめ)などは、砂糖のカラメル化を利用したものです。
メイラード反応とは食材に含まれている糖とアミノ酸が、加熱によって結合することによってメラノイジンと呼ばれる茶色の物質を作ることをいいます。これは、食材に糖とアミノ酸の2つが存在する場合にのみ起こります。例えば、生肉を焼いたときに茶色く変色するのもこのメイラード反応によるものです。メイラード反応では、茶色の物質の他に芳ばしい香りのする物質もできます。
大根は加熱をすることで、カラメル化とメイラード反応の両方が起こり褐変していると考えられます。
生育環境が悪かったことが原因で、中身が茶色く変色することもあります。
大根は生育環境が悪いと「赤芯症」にかかることがあります。「症」という名がついていますが、厳密には生理現象であり、病気ではありません。湿度や温度が高いことが原因で、リン酸やホウ素の欠乏することにより根にポリフェノールが蓄積され茶色くなるといわれています。
また「黒芯症」と呼ばれるものもあります。黒芯症は生育環境が悪かったり、病原菌によって「黒腐病」などにかかったことが原因で大根の中心部が黒くなってしまいます。茶色くなっている場合も、黒芯症によるものである可能性があり、進行するとどんどん黒くなっていきます。
大根には様々な品種がありますが、元々皮や根が茶色い品種はありません。そのため、購入した大根の中身が茶色に変色していたり、保存中に茶色く変色した場合は鮮度が落ちてしまったり、赤芯症である可能性が高いです。
ちなみに、「黒大根」と呼ばれる皮が黒い品種や「赤大根」と呼ばれる皮が赤い品種はあります。当然のことながら、変色したのではなく元々の色ですので問題なく食べることができます。
鮮度が落ちて茶色く変色してしまっている場合は、腐敗しているわけではないので食べることができます。ただし、鮮度が落ちてしまうと大根本来のシャキシャキとした食感が失われていたり、味も落ちているため調理法を工夫し、早めに食べきりましょう。
鮮度が落ちているだけではなく、腐敗して茶色くなってしまっていることもあります。食べる前は異臭がしたりぶよぶよと柔らかくなっているなど腐敗のサインが見られないか確認してください。食べられない大根の特徴については後述しますのでそちらを参考にしてください。
加熱による変色は防ぐことができません。茶色く変色させたくない場合は、電子レンジを使って加熱をするなどの工夫をすると良いでしょう。
カラメル化やメイラード化は長時間じっくり加熱をすることで起こりやすいので、色をあまり変えずに加熱したいという場合は一度レンジなどで軽く加熱してから焼く・炒めるなどの調理をすると完全に茶色くなってしまうのを多少防ぐことができます。
赤芯症による変色も腐敗しているわけではないので、食べることができます。ただし、赤芯症によって茶色く変色している場合は固くなっていたり、苦味が強くなっていることが多いです。そのため、広範囲でなければ取り除いて調理をするか、加熱調理をするなどの工夫して食べると良いです。
大根は表面に問題がなくてもカットしてみたら中身が変色しているということがよくあります。赤芯症などが原因の場合も見た目ではわからないため、そのまま気づかずに販売されていることが多いのが現状です。
心配な場合は鮮度が落ちていない新鮮な大根を選んで購入したり、カットされた状態の大根を購入しましょう。カットした状態であれば断面が見えるので安心です。
新鮮な大根の特徴は下記の通りです。
青首の部分の色が濃い
白い部分は真っ白な色をしている
ハリとツヤがある
ひげ根の毛穴が浅くて少なく、まっすぐ並んでいる
葉がみずみずしく放射状に広がっている
日本で最も市場に多く出回っているのは「青首大根」とよばれる品種の大根です。青首大根の場合は、しっかりと太陽の光を浴びて育った大根ほど濃い色になり品質が良いとされます。ただし、「白首大根」などの大根品種によっては、太陽光にあたっても緑色にならないものもあります。白くても美味しくいただけますので、そこまで気にする必要はありません。
また、私たちが食べているのは大根の「実」ではなく「根」です。この根の皮の部分が真っ白な色をしているものほど新鮮で美味しい大根です。くすんだ白(淡い黄色)のような色をしている大根は、収穫から時間が経過しており、鮮度が落ちていることを示しています。
皮が白いだけでなく、ハリとツヤがあることも重要なポイントです。収穫したての大根は水分を多く含むため、根全体にハリやツヤ、弾力があります。皮がシワシワになっていたり柔らかくなってしまった大根は、鮮度が落ちて本来のみずみずしさやシャキシャキとした食感が失われている状態です。
私達が食べているのは大根の「根」なので、ひげ根がつくことがあります。新鮮な大根はひげ根の毛穴が浅く、数も少ないです。また、ひげ根が真っ直ぐ並んでいるのも特徴です。ひげ根の位置が不揃いのものは、生育中にストレスにより辛みが強くなってしまうといわれています。
大根の葉がついた状態で販売されている場合は、葉の状態もしっかりと確認をしましょう。新鮮な大根の葉はみずみずしく、放射状に広がっています。これは葉にまだ水分が残っていることを示しており、鮮度が落ちると葉の水分が抜けしおれてきてしまいます。
食べていはいけない大根の特徴は下記の通りです。
全体的に茶色く変色している
葉が黄色く変色している
ブヨブヨと柔らかく簡単に崩れる
ヌメリがある
酸っぱい臭いや味がする
新鮮な大根は、全体的に白色をなしていますが、腐敗が進むと茶色っぽい色に変色してきます。部分的に茶色く変色している場合は、赤芯症や黒芯症が原因であることが考えられますが、全体的に変色してしまっている場合は腐敗で変色している可能性が高いので破棄しましょう。
また、新鮮な大根の葉も腐り始めると黄色く変色します。大根の葉は収穫されると土からの栄養が摂取できなくなるため、緑色を維持することができず黄色に変色してしまいます。大根の葉が黄色くなっている場合、「べと病」や「黒腐病」という病気にかかっている可能性もあります。
大根は鮮度が落ちると柔らかくなっていきますが、軽く触っただけで根(実)が崩れてしまうほどブヨブヨになっている場合はかなり腐敗が進んでいるので食べずに破棄しましょう。
ネバネバとしたヌメリが出始めたり、ドロっとした液体が出てくるのは新鮮な大根にはない症状です。手で触るとぬるぬるとしていたり、表面には異常がないように見えてもカットしたときに切り口がぬるぬるとしている場合は腐敗が進んでいます。
大根は元々そこまで臭いがきつくない野菜ですが、腐敗が進むと酸っぱい臭いがし始めます。腐敗具合によってはカビや生ゴミのような悪臭を放つことも。見た目には問題がなくても、明らかにいつもと違う臭いがする場合は腐っている可能性が高いです。食べずに処分するようにしましょう。
鮮度が落ちていたり、赤芯症が原因で変色している場合は腐敗しているわけではないので食べることができますが、食感が悪かったり苦味が強いことが多いので調理法を工夫して食べるのが良いです。
鮮度が落ちている大根や赤芯症になっている大根は食感が悪くなっているためサラダのような生食には向いていません。
そのため、加熱調理をして食べるのがおすすめです。大根に限らず野菜は加熱をすることにより柔らかくなりますので、悪くなってしまった食感が気にならなくなります。
鮮度が落ちていたり赤芯症になっている大根は苦味が強いことが多いです。そのため、例えば煮物など濃い味付けの料理にすることで苦味が気にならなくなるのでおすすめです。
大根を煮物にするときなどは、下茹でをしてアク抜きすることで苦味やエグみを軽減することができます。アクとは、一般的に苦味やえぐみ、渋みなど味を損ねる成分の総称です。
大根のアク抜きにおすすめなのがお米のとぎ汁です。お米のとぎ汁に含まれる成分が、大根から出るアクを包み込み、またお米のでんぷんと大根のジアスターゼ(消化酵素)が反応して糖となり、甘みが増す効果が期待できます。とぎ汁ではなく、スプーン1杯程度のお米を入れて(ティーバッグ入れても◎)大根と一緒に煮るのもOKです。また、お米以外では片栗粉を使ってアク抜きをすることもできます。その場合は、小さじ1程度の片栗粉を加えて大根と一緒に茹でます。
大根は正しく保存することでより長く美味しく楽しむことができます。大根の正しい保存方法をご紹介します。
丸ごと1本であれば常温での保存が可能です。常温で大根を保存した場合の保存期間目安は約1〜2ヶ月です。
大根の葉は切り落としておきます。葉元から1cmほど根を含めて切り落とし、切り落とした葉は別の方法で保存します。葉を切り落としたら、乾燥防止のために切り口(根の部分)にラップをします。全体を新聞紙で包んで、段ボールなどに入れ立てて直射日光の当たらない冷暗所で保存します。
大根に限らず野菜全体にいえることなのですが、育った環境と同じように保存することで、ストレスを感じることなく鮮度を保って保存することが可能になります。
カットした大根は常温保存はNG。下記でご紹介する、常温以外の方法で保存するようにしましょう。
ちなみに、切り落とした大根の葉にも栄養素がたくさん含まれていますので、捨てずに根とは別々に保存して調理に使いましょう。大根の葉の保存方法についてはこちらの記事で紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
丸ごと1本でも室温が高ければ常温ではなく冷蔵保存がおすすめです。また、カットした大根は季節問わず常に冷蔵で保存します。
大根丸ごと1本を冷蔵で保存する場合も、常温保存時と同じように、葉を切り落とし、切り口にラップをします。大根全体を新聞紙で包み、野菜室で保存します。できれば立てて保存するのがベストです。
丸ごと1本を冷蔵保存する場合、約2週間ほど保存することができます。
丸ごと1本の大根をカットしてから保存することも可能です。また、使いかけの大根や、カットされた状態で購入した大根もこの方法で冷蔵保存します。
大根を切り分ける際は、部位ごとに味や食感が異なるため、3等分(頭・中間・先端)にカットするのがおすすめです。カットしたら全体をラップもしくはキッチンペーパーで包み、ポリ袋に入れて口を閉じ、野菜室で立てて保存します。
カットした大根は、傷みが早いので、約1週間ほどを目安に食べきるようにしましょう。また、キッチンペーパーが湿ってきたら都度取り替えるようにしましょう。
料理に合わせて乱切りやいちょう切りなどお好みの大きさにカットしてから冷蔵することも可能です。
カットした大根は冷蔵用保存袋に入れて冷蔵庫で保存します。2〜3日を目安に使い切るようにしましょう。
皮を剥いてカットする場合、剥いた皮は捨てずに別に保存しましょう。大根の皮はきんぴらや漬物などにして食べると美味しいですよ。
大根は冷凍で保存することもできます。冷凍保存期間の目安は約1ヶ月です。丸ごと1本冷凍するのは大きすぎるので、カットしてから保存するようにしましょう。
カットして生のまま冷凍するのもOKですが、解凍後の食感が変わりやすいので、すりおろしたり茹でたり、下味をつけてから保存するのがおすすめです。
大根の土などの汚れを落とし、皮つきのまますりおろします。軽く水けをきって冷凍用保存袋に平らになるように入れて冷凍庫へ。水分が多いので、急速冷凍機能を使って短時間で凍らせるのがポイントです。急速冷凍機能がない場合は、金属トレイを使って冷凍しましょう。
保存袋以外に、製氷器やアルミカップに入れて冷凍するのも◎です。すりおろしにすれば、解凍後の食感が変わりにくいです。大根おろしとして食べる場合は、前日に冷蔵庫にうつして自然解凍しましょう。
冷凍する前に茹でたり蒸気にあてて加熱処理することを「ブランチング」といいますが、野菜はブランチングすることで変色しづらく、食感も悪くなりづらいというメリットがあります。生のまま冷凍するよりも、食感がスカスカになりづらいです。
大根の皮を剥いて薄めのいちょう切りにし、固めに茹でます。粗熱が摂れたら冷凍用保存袋に入れて急速冷凍。剥いた皮は別に冷凍保存し、調理に使用しましょう(皮の冷凍保存方法はこのあとご紹介します)。
すでに火が通っているので、調理時間が短くて済みます。凍ったまま調理に使用してOKです。
冷凍する前に塩と砂糖をふっておくと、大根が筋っぽくならず、解凍後に味が染み込みやすくなります。
大根の皮を剥いてお好みの大きさ(細きりや輪切りなど)にし、冷凍用保存袋にいれます。そこに塩と砂糖をそれぞれ少々ふって袋ごともんでなじませます。空気を抜いて密封し冷凍庫で保存します。
凍ったまま料理に使用しましょう。
だしで煮てから冷凍するのもおすすめです。
1cmほどの輪切りにし鍋に入れ、ひたひたになるくらいのだし汁を加えます。そこに昆布1枚(5cmほど)を入れ15〜20分ほど煮ます。粗熱が取れたら、だし汁ごと保存袋に入れ冷凍します。
煮てから冷凍した大根は、凍ったままおでんや煮物などに加えて味を染み込ませましょう。なお、炒めてから冷凍するのもOKです。
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