大根はよく栄養がないといわれますが、真実なのでしょうか?そもそも、なぜそのように言われるようになったのでしょうか?大根に含まれる栄養素や、期待できる効能について解説していきます。
大根に栄養がないといわれてしまう最大の理由は、大根に含まれる水分量が多いためです(その分カロリーが低い)。実際大根は約94%が水分です。しかし、他の野菜もだいたい9割程度は水分です。例えば、トマトは94%、ゴーヤも94%、きゅうりは95%、さやいんげんは92%、キャベツも92%、にらも92%が水分です。
水分量が多い=栄養がない、としてしまうと、ほとんどの野菜に栄養がないことになってしまいます。大根は確かに9割以上が水分ですが、その残りに栄養素が含まれています。
野菜は品種改良が繰り返され、特有の香りやクセをなくし食べやすくした結果、栄養価が大幅に減少しているのは事実です。例えば、1950年と2005年で比較すると、人参はβ-カロテン(ビタミンA)は8割減、ほうれんの鉄分も8割減、アスパラガスのビタミンB2は半減、キャベツのビタミンCも半減しています。
しかし、味が薄い=栄養がない、とは一概にいえません。味があまり感じられない栄養素の方が多いためです。ピーマンの香り成分であるピラジンや、ゴーヤの苦み成分であるモモルデシンのように強い風味がある栄養素はむしろ稀です。
大根の実(根)の部分は白色です。色が薄いと、なんとなく栄養がないと感じる方が多いかと思います。一般的に色が濃い野菜の方が栄養価が高いといえますが、必ずしもそうではありません。すべての栄養素に色素があるわけではありません。
大根は淡色野菜です。
緑黄色野菜とは、原則として可食部100g中に600μg以上のβ-カロテンが含まれている野菜を指します。600μg未満の野菜は淡色野菜です。600μg未満でも、食べる量や回数が多いと緑黄色野菜に分類されます。
淡色野菜は白っぽい野菜が多いです。淡色野菜である大根は確かにβ-カロテンの量は少ないですが、だからといって栄養がないわけではなく、他の野菜にはない酵素などが豊富に含まれます。
出典:厚生労働省|e-ヘルスネット
「大根に栄養はない」は間違いですが、おでんの大根にはほとんど栄養がないというのは事実です。大根に含まれる消化酵素ジアスターゼは加熱にとても弱く50〜70℃で消滅してしまいます。大根に含まれているビタミンCも水溶性なので、流れ出てしまいます。ビタミンCは皮の付近に多くあるため、皮をむいて茹でてしまうと大損してしまいます。
大根おろしと人参おろしを混ぜる「紅葉おろし」にすると、人参のアスコルビナーゼという酵素が大根のビタミンCを破壊するとよく言われますが、これは誤解です。人参の中の酵素は大根のビタミンCを酸化させてしまうので確かに一旦破壊しているように見えますが、体内では再び還元されてビタミンCとして作用することがわかっています。ただし、大根おろしのビタミンCは時間が経つと効力が低下するので、食べる直前におろすのが大切です。
大根は栄養がないというのは誤解ですが、栄養が豊富な野菜とはお世辞にもいえません。大根にあまり含まれていない、または全く含まれていない栄養素を紹介します。
淡色野菜である大根は、β-カロテン(ビタミンA)の含有量がゼロです。
β-カロテンは体内で必要量だけビタミンAに変換され、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きをします。視力を正常に保つ役目もあり、夜盲症の予防や視力低下の抑制があります。また、皮膚の健康維持に関与していることから、美肌効果もあります。皮膚の新陳代謝が高まることで、乾燥肌やニキビ肌の改善が考えられます。
β-カロテンを特に豊富に含む野菜は人参です。他の野菜と比較すると、
人参…8600μg
ほうれん草…5400μg
赤色パプリカ…1100μg
かぼちゃ…730μg
トマト…540μg
ピーマン…400μg
で圧倒的なのがわかります。
生の大根の実(根)にはビタミンDは全く含まれていません。大根に限らずほとんどの野菜にはビタミンDが含まれません。
ビタミンDの働きには正常な骨格と歯の発育促進があります。また、小腸でのカルシウムとリンの腸管吸収を促進させ、血中カルシウム濃度を一定に調節することで、神経伝達や筋肉の収縮などを正常に行う働きもあります。
ビタミンDを多く含む食品は、きくらげ、干し椎茸、サケ、イワシ、サンマなどが挙げられます。
大根にビタミンKは微量しか含まれていません。
ビタミンKは血液を凝固させる成分を合成する働きがあり、出血を止める役割があります。月経による出血が多い場合も、症状を軽減する効果が期待できます。ただ、血液は出血している箇所以外(血管内など)は正常に流れていなければなりませんが、ビタミンKは血流が悪くならないよう凝固の抑制にも働きかけています。
さらにビタミンKは、骨から血液中にカルシウムが放出されるのを抑え、骨にカルシウムが沈着するのを助けてくれます。そしてカルシウムの合成に必要なたんぱく質を生み出し、腸内でカルシウムが吸収されるのを助けます。ビタミンDと並び、健康な歯や骨を作るのに欠かせないビタミンです。
ビタミンKが豊富な食品には
モロヘイヤ…640μg
ほうれん草…270μg
ブロッコリー...210μg
などがあります。
大根のビタミン・ミネラル類は、脂溶性ビタミン(A・D・K)を除いて、少量ですがバランスよく含まれています。
大根に含まれる食物繊維もそれほど多くありませんが、一度にたくさん食べられるので、冬の時期には食物繊維のよい供給源になります。
大根の栄養素で特に注目したいのはアミラーゼやオキシダーゼなどの酵素類です。
アミラーゼはでんぶんを分解する酵素なので、米を主食とする日本人には大根は欠かせません。食べ過ぎによる胃もたれや胸やけを解消してくれます。
大根おろしのピリッとした辛味の成分はイソチオシアネートで、肝臓の解毒作用を助けたりするといわれています。
大根の葉は根とは別の野菜といえるほど、豊富な栄養素を含みます。
カルシウムや鉄、カリウムなど、なかなか摂りにくいミネラル類を、根の部分の2〜10倍も含んでいます。骨粗鬆症や貧血、高血圧を防いだりしてくれます。
ビタミン類では根に全く含まれていない、β-カロテン(ビタミンA)がほうれん草と同じくらい含まれています。野菜にはほとんど含まれないビタミンEも含まれます。ビタミンCも根の倍の量が含まれます。ビタミンA・C・Eはビタミンエースといわれ、体内で活性酸素による害を除外する役割があります。
大根の栄養を無駄なく摂るなら、皮ごと生で食べられる「大根おろし」がベストです。農薬の心配があるので皮はよく洗います。辛味成分イソチオシアネートはおろして空気に触れることで活性化します。ただし、15分ほど経つと半減してしまうので、食べる直前におろすのが大切です。
切り干し大根はよく栄養の塊と表現されます。それは水分が少ないため、そのように見えるだけで、実際には一回に100gも食べれないので、そこまで期待しない方がよいといえます。
大根の葉にはβ-カロテンが豊富に含まれています。βカロテンは体内でビタミンAになりますが、体内で吸収されにくいと言われています。このβカロテンの吸収率を油がアップしてくれるので、炒めものなどにして油と一緒に食べることをおすすめします。
さらに、ビタミンKも含まれていますが、同じく脂溶性なので油炒めや良質な油を使ったドレッシングで油と一緒に食べる調理法がいいでしょう。
おもちに大根おろしをかけて食べるからみもちがありますが、実はこれ栄養学的にとても理にかなっています。大根に含まれるアミラーゼが、おもちのデンプンを分解してくれるんです。デンプンはそのままでは体内に吸収できないので、糖に分解する必要があります。それをアミラーゼが助けてくれるわけです。消化液のひとつである唾液にも含まれています。
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