きゅうりに苦味やエグみを感じて美味しくないと感じたことがある方は多いのではないでしょうか。本記事ではきゅうりの苦味やエグみについて解説します。
きゅうりは青臭さがあるものの、クセがなく比較的食べやすい野菜ですが、苦味やエグみを感じたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。きゅうりに苦味やエグみを感じる原因は下記の通りです。
きゅうりには、元々苦味成分が含まれている野菜です。その一つが「ククルビタシン」と呼ばれる成分です。
ククルビタシンはウリ科の植物がもつ特有の苦味成分で、ステロイドの一種です。きゅうり以外にも同じくウリ科の植物であるかぼちゃやズッキーニ、メロンやスイカなどにも含まれ、主にヘタの部分に多く含まれています。
一般的にスーパーなどで販売されているきゅうりのククルビタシンの含有量は微量であるため、そこまで強い苦味を感じることはありませんが、生育環境によってククルビタシンの含有量が増えてしまったり、個体差が出ることもあります。
例えば、水分不足や低温の環境で育つことによって低温障害になってしまうこともククルビタシンの含有量が増える原因であるといわれています。家庭菜園で育てているきゅうりも、水分不足などが原因でククルビタシンの含有量が増えてしまうことがあるので注意しましょう。
きゅうりに含まれている有機酸の一種である「ギ酸」も苦味成分の一つです。きゅうりの皮のすぐ下には、維管束と呼ばれる水や養分などが流れている管があります。この維管束にアクとなるギ酸が多く含まれています。また、ギ酸はきゅうりの果皮にも含まれています。
きゅうりに含まれているギ酸もそれほど多くないため、そこまで強い苦味があるわけではありませんが、個体差があるため含有量が増えてしまっている個体であった場合苦味を強く感じるでしょう。
出典:キュウリに含まれるギ酸の部位別分析と味覚特性(J−stage)
窒素肥料とは、その名の通り窒素が含まれた肥料のことです。野菜類などの農作物は窒素が不足すると生育不良を起こしてしまいます。そのため、窒素を含む肥料が欠かせません。
しかし、一度に大量の肥料をまいてしまうと、吸収した肥料を消費しきれず硝酸態窒素となり野菜の中に残留します。この硝酸態窒素が苦味やエグみの原因となります。
窒素肥料によって苦味が強くなる現象は、トマトなどきゅうり以外の野菜にも起こります。
日本で栽培されている野菜の多くは栽培中の害虫の被害や病気などを防止したり、スムーズに成長するために薬剤が使われています。苦味を強く感じると「農薬の味なのでは?」と思う方も多いようですが、農薬による味への影響はないとされています。
日本で使われている農薬は、国に認められたもののみです。残留性が高く人体影響を及ぼすものや環境に影響を与えるほど毒性が強い農薬は、販売が禁止されていますし、使用が認められている農薬に関しても使用できる作物や時期、量などの使用基準が定められています。そのため、農薬が使われているからといって神経質になる必要はありませんが、心配な方はホタテ貝やホッキ貝を原料に作られたパウダーを使って残留農薬を落とすのがおすすめです。
きゅうりの苦味が強くなる原因はおわかりいただけたかと思いますが、食べて大丈夫なの?と心配になりますよね。食べても大丈夫なのか解説します。
上述したように、きゅうりにはククルビタシンやギ酸など苦味成分が含まれている野菜です。腐敗によって苦味が強くなってしまっているわけではないので、多少苦味を感じるくらいであれば食べても問題ありません。
きゅうりの苦味成分による苦味は、アク抜きをすることによって軽減することができるため、きゅうりの苦味が苦手で食べにくさを感じる方も比較的食べやすくなります。
きゅうりのアク抜き方法は後述しますので、そちらを参考にしてください。
きゅうりの苦味成分であるククルビタシンは、大量に摂取してしまうと食中毒を招く可能性があり、下痢や嘔吐などの症状が出ることがあります。過去にはククルビタシンを多く含むウリ科の植物である観賞用の「ひょうたん」を食べたことによって食中毒になってしまった事例もあります。
また、もう一つの苦味成分ギ酸も摂取量が多い場合には健康への影響が懸念されます。
それほど多く含まれているわけではないので、神経質になる必要はありませんが、特に家庭菜園で育てたきゅうりは少々かじってみて飲み込めないほど強い苦味を感じる場合は、ククルビタシンやギ酸の含有量が多いと考え無理せず破棄しましょう。
出典:食品安全関係詳細(食品安全委員会)
窒素肥料過多による硝酸態窒素が原因で苦味やエグみを感じる場合も、硝酸態窒素によって健康被害を起こすとはされていません。人間が摂取した硝酸態窒素は、大部分が肝臓を通じて尿となり排出されます。また、現在、農林水産省では栽培に使用する肥料の中の硝酸態窒素の含有量や与える量をガイドラインで規制されており、人体に対する影響を極力減らし安全に食べることができるものを生産するように指導しています。
しかし、硝酸態窒素は人にとって摂取する必要がある成分ではありませんので過剰摂取は避けるべきです。家庭菜園できゅうりを栽培する際は硝酸態窒素の濃度が高くならないよう注意しましょう。
出典:野菜等の硝酸塩に関する情報(農林水産省)
きゅうりの苦味成分によって苦味を感じて食べにくい場合の対処法を紹介します。まずは苦味を軽減するアク抜きの方法です。
きゅうりのアク抜きの方法としては、まずヘタをカットし身の切り口とこすり合わせる方法があります。
こすりあわせることで維管束が刺激され、液体が出てきます。この液体の中に苦味成分であるギ酸が含まれており、予め切り口をすり合わせて液体を取り除いておくことできゅうり全体をカットしたときのギ酸の量をへらすことができることがわかっています。
出典:キュウリの「ヘタ」と「実」の切り口をこすりあわせることにより渋味を低減できる(農研機構)
きゅうりを板ずりすると、ヘタと切り口をすり合わせるのと同様に維管束が刺激されるため、苦味成分を出すことができ苦味を軽減することができます。
板ずりをするときは、きゅうりに塩を振ってまな板の上で手の平を使って転がします。水分が出てきたら、流水で洗い流します。板ずりをした塩には汚れがたくさんついているので、そのまま使わないようにしましょう。
板ずりには雑菌や農薬を取り除いたり、色を鮮やかにするなどのメリットもあります。
板ずりをするだけでも良いのですが、板ずりをした後に茹でるともっと効果的です。苦味成分であるククルビタシンは水溶性なので、茹でることでよりしっかりと取り除くことができます。また、きゅうりの色が鮮やかになり、食感が全然違う仕上がりに。普通の塩もみと比べて、ボリボリッとした食べごたえのある歯ざわりが楽しめます。
きゅうりを塩もみすることでもアクを取り除くことが可能です。
塩もみをすることで、浸透圧によりきゅうりの水分が抜け、一緒に苦味成分であるククルビタシンやギ酸も取り除くことが可能です。また、水分が抜けることで味が染み込みやすくなったり、食感がしんなりする効果も期待できます。
きゅうりを塩もみする際は、料理に合わせてきゅうりをカットし(写真は小口切り)、きゅうり1本に対して塩小さじ1/4をまぶして軽くもみ、5分ほどそのまま放置します。
アクや汚れ、余分な塩を取り除くために、塩もみ後はさっと水洗いするのがおすすめです。水洗いをしたら手でギュッと絞って水分を抜きます。
きゅうりの塩もみの方法はこちらの記事で詳しく解説しています。
アク抜き以外にもきゅうりの苦味を軽減する方法はあります。
きゅうりは皮ごと食べることができる野菜ではありますが、きゅうりの皮にも苦味成分が含まれています。そのため、少しでも苦味を軽減したい場合は皮を剥いて食べると良いでしょう。
きゅうりの皮はピーラーを使えば簡単に剥くことができます。
きゅうりの皮を剥くことで青臭さも軽減されますし、口当たりもよくなります。ただし、きゅうりの皮にも栄養素が含まれているため栄養価を下げたくない方はアク抜きをして皮ごと食べるのが望ましいです。
苦みがあって食べにくいきゅうりは、漬物にするのがおすすめです。塩をしっかりもみこみ漬物にすることで、きゅうりに含まれる水分と一緒に苦味成分を出すことができます。また、しっかりと味が染み込むので美味しく食べることができます。
<塩もみすると水分が出るのはなぜ?>
異なる物質同士の細胞の成分濃度が違うと、成分が薄い方から濃い方へと水が移動して、両方の濃さを揃えようとする力が働く。これを「浸透圧」という。野菜を塩でもむと、野菜の水分に塩が溶け濃い塩水ができ野菜の外側の塩分濃度が高くなるため、濃度を調整しようと浸透圧が働き、野菜の内側から水分が出てくる。
きゅうりの苦味成分であるククルビタシンは加熱をしても変化はありませんが、ギ酸は揮発性が高い成分であるといわれているため、炒めることで揮発し苦味を軽減できると考えられます。
生食されることが多いきゅうりですが、加熱調理をしても美味しく食べることができますし、加熱をすれば青臭さも軽減することができます。
さらに、きゅうりの外皮に多く含まれるβ-カロテンは油と一緒に摂ると吸収率がアップすることがわかっています。そのため、苦味を軽減するだけではなく栄養面でも利点があります。
濃いめの味付けの炒めものにすると、より苦味が気になりにくく食べやすくなるでしょう。
きゅうりをサラダにして食べるときは、マヨネーズをかけるとまろやかになり苦味が気になりにくいのでおすすめです。マヨネーズを使って和え物にするのも良いでしょう。
上述したようにβ−カロテンはマヨネーズと一緒に摂取すると吸収率があがるので、生で食べる場合もマヨネーズやドレッシングをかけて油と一緒に摂取するのがおすすめです。
ただし、油のとりすぎは肌荒れや肥満の原因になるので注意しましょう。
苦いきゅうりを食べやすくするのにおすすめのレシピをご紹介します。
Filyのレシピはすべて小麦粉、乳製品、白砂糖不使用です。
味噌味のきゅうりの一本漬けです。ジッパー付きの袋に入れてひと晩冷蔵庫で寝かせるだけの簡単レシピです。
冷蔵庫でひと晩寝かせたら、食べやすい大きさに切って食卓に並べましょう。
みそ味きゅうりの一本漬けのレシピはこちら
マスタードの甘酸っぱさがきゅうりとよく合います。あともう一品ほしいときにどうぞ。
すぐに食べても美味しいですが、半日ほど冷蔵庫で寝かせるのも◎。
きゅうりの粒マスタード和えのレシピはこちら
きゅうりと卵は意外にも相性◎。味付けは塩・こしょうのみのシンプルレシピです。
豆乳を使って卵をふわっと仕上げています。
きゅうりの卵炒めのレシピはこちら
きゅうりの苦味=腐敗ではありませんが、下記のような特徴があるきゅうりは腐敗しているので食べることができません。普段のきゅうりとは違う味がすると感じる場合や、購入してから時間が経っているきゅうりは腐敗のサインが見られないか確認しましょう。
腐ったきゅうりの見た目の特徴は下記の通りです。
カビが生えている
全体的にシワシワ
溶け出している
白い液体がでている
全体的に変色している
表面に白いホコリのようなものがついているときは白カビ、黒い斑点が一箇所にまとまって黒く変色しているように見える箇所がある場合は黒カビが生えている可能性があります。ヘタの部分はとくにカビが生えやすく、ヘタのみであれば切り落とせば食べられることもありますが、全体的にカビが生えてしまっている場合は破棄しましょう。カビは、カビ毒を発生させて下痢や嘔吐などの中毒症状を起こす可能性があります。
新鮮なきゅうりの表面はハリがありますが、全体的にシワシワになっているものは水分が抜けて乾燥してしまっている状態です。少し水分が抜けてしまった程度であれば問題ありませんが、完全に抜けてシワシワになっていたり、溶け出している場合は腐敗しています。
また、白い液体が表面についている場合や全体的に茶色っぽくなっていたり黒っぽく変色している場合も破棄してください。
きゅうりが変色する原因や対処法については下記の記事で詳しく解説しています。
腐ったきゅうりの臭いや味の特徴は下記の通りです。
酸っぱい臭い・味
生ゴミ臭
カビ臭い
きゅうりは青臭さがある野菜ですが、そこまで臭いがきつい野菜ではありません。酸っぱい臭いや味がする場合や、生ゴミのような臭いがする場合は腐敗している可能性が高いです。
きゅうりに限らず食材は腐敗すると、多くのバクテリアが活動し酢酸発酵することが多いので酸っぱい臭いがしたり酸っぱい味がします。この現象は味噌や醤油といった発酵食品にも起きていますが、発酵とは異なり次第に味や臭い、形が崩れるなど食材が変化していく現象はあるときに「腐敗」とよばれます。あきらかにいつもとは異なる酸っぱい味や生ゴミのような異臭がする場合は食べずに破棄するようにしましょう。
また、カビが生えていないように見えてもカビ臭さを感じる場合は見えない部分にカビの胞子が入り込んでいる可能性があります。カビには様々な種類があり、墨汁のような臭いを感じさせる「2-メチルイソボルネオール」や土臭さや泥臭さを感じさせる「ジェオスミン」といった代表的な悪臭を放つ種類がいます。また、カビ自体は臭いを感じさせる成分を出さない種類もいますが、カビ自体が臭いを出さなくてもカビの餌になる物質がカビの作用によって変化することで発生する臭いなどで、人に「カビ臭い」と感じさせます。心配な方は破棄するのが無難です。
腐ったきゅうりの触感の特徴は下記の通りです。
ぶにょぶにょしている
全体的にぬめりがある
糸をひいている
新鮮なきゅうりは上述したように張りがあり、ある程度硬さがありますが、腐敗が進んでいるとぶにょぶにょとした触感になります。また、全体的にぬめりが出ている場合や糸をひく場合も腐敗が進んでしまっている状態なので、残念ですが破棄しましょう。
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