「ス」とは、かぶに隙間や穴が開いてスポンジ状になることをいいます。かぶをカットしたときに断面がスカスカになっていたら驚きますよね。本記事ではかぶにスが入る原因や対処法などを解説します。
「ス」とは、野菜の中に隙間や穴が開いてスポンジ状になることです。このような状態のことを「スが入る」などといいます。
漢字では「鬆」と表記します。「鬆」には「あらい。ゆるい」という意味があり、骨がスカスカになりもろくなってしまう病気「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」などにも使われています。
見た目は異変がないかぶでも、カットしたら断面がスカスカになっているということは意外とよくあります。また、正しく保存できていないと保管中にスが入ってしまうということもあります。
スが入るという現象は下部だけではなく大根にもよく起こります。
かぶにスが入る原因としてまず挙げられるのは、収穫遅れです。
私たちが食べているのはかぶの「実」ではなく「胚軸」です。胚軸とは、発芽して最初に地上に現れる茎の組織のことです。胚軸の下に生えているのが「根」です。
かぶは収穫すべき時期をすぎてしまうと葉が養分を上手く作れなくなってしまい、根に養分を送れなくなります。植物は呼吸をする際に養分を使うため、胚軸の養分が奪われる一方となりスが入っていきます。家庭菜園でかぶを育てる際は、収穫の時期をすぎてしまうとスが入ってしまうので適切な時期に収穫するようにしましょう。
かぶにスが入るもうひとつの原因は水分不足です。
かぶは高温の日が続いたり土が乾燥して土から水を吸い上げることができなくなると、胚軸から水分を取り込んでいってしまい隙間や穴ができてしまいます。特に夏に栽培されているかぶは栽培中の水分不足が原因でスが入りやすくなります。
保存中のかぶも水分不足が原因でスが入ることがあります。例えば、かぶはだいたい葉が付いている状態で販売されていますが、葉がついたままで保存していると胚軸の水分が葉に吸収されてしまいスが入ってしまいます。
スが入っているだけではなく異臭がしたり茶色い汁が出ているなど腐敗している様子が見られたら残念ですが食べることはできませんので破棄しましょう。食べられないかぶの特徴は後述しますので、そちらを参考にしてください。
スが入っているだけで腐敗している様子が見られなければ、スが入るのは腐敗が原因ではないので食べることができます。しかし、スが入ってしまったかぶは鮮度が落ちてる状態で、本来大根がもつみずみずしさがなく味も食感も新鮮なかぶには劣ります。
上述したようにスが入ったかぶは水分量が少なくなっていますので、干してさらに水分を飛ばして食べるのがおすすめです。
野菜は干すことで保存期間が伸びるのはもちろんですが、栄養価が高まる、甘みが増す、噛みごたえが増す(いつもとは違う食感が楽しめる)、かさが減るのでたくさん食べられる(その分栄養が取れる)などのメリットがあります。
かぶを干す方法には天日干しなどがあります。天日干しする際は、5〜6mm幅に輪切りしたかぶをキッチンペーパーで水けをしっかり取り、ザルに並べ、3日ほど天日干しします。常温で1ヶ月ほど保存できます。新鮮なかぶは葉つきのまま干してもOKです。
天日干しすることでビタミンDが増加し、風味が増します。通常のかぶとは違うコリコリとした食感が楽しめます。味をよく染み込むので、煮物やスープ、味噌汁におすすめです。
漬物は塩をもみこみ野菜に含まれている水分を出してから作るので、元々水分量が少なくなってしまったスが入ってしまったかぶに適した調理法です。
漬物を作るときは、食べやすい大きさに切って塩をもみこみ水分を抜いた後に醤油や酢、砂糖などの調味料を入れて漬けておきます。スが入っているかぶの場合、穴が空いていたりして見た目が悪くなってしまうので気になる方は短冊切りにして漬けると良いでしょう。
スが入ってしまったかぶは、味が染み込みやすい状態なので煮物にするのも良いでしょう。煮込むことで柔らかくなるので、食感の悪さもカバーすることができます。
ちなみに、かぶはそれほど強いアクがあるわけではないので下茹ではしなくても大丈夫です。火も通りやすく煮崩れしやすいため煮すぎないように注意しましょう。
大根おろしのようにかぶをおろせば、食感の悪さをカバーすることができます。ただし、スが入ってしまったかぶは鮮度が落ちてしまっている状態なので味も落ちていて、おろしには向いていないという意見もあり賛否両論です。
薬味として使いたいときには避け、おろし煮に使うと良いでしょう。もともとかぶは、大根よりも辛味が弱く甘味もあるため大根おろしは辛くて食べられないという方でも食べやすいです。
スが入っているかどうかは見た目ではわからないことが多いです。生産者にも気がつかれずそのままスーパーなどに並び、購入してカットしてみたらスが入っていたということはよくあります。かぶを購入する際はできるだけ状態の良いかぶを選ぶことが対策になります。
かぶは色が白く、ツヤがしっかりとあって傷がないものを選ぶようにしましょう。傷があると、その部分から腐ったり乾燥したりするので、なるべく無傷のかぶを選ぶことで、より長くかぶを保存することが可能になります。
茶色などの色に変色している場合は、病気になっていたり腐敗が進んでいる可能性があるので食べないのがベター。水分が抜けてしまっているかぶはツヤがなくしおれてしまっているのでなるべく早く食べるようにしましょう。
形はきれいな丸みを帯びているものが◎。変形しているかぶは味や食感が悪かったり、調理の見栄えが悪くなることがあります。
かぶには様々な種類がありますが、一般的なかぶは、卵よりやや大きいくらいのサイズ感◎。皮がやわらかいため、皮付きのまま食べることも可能です。
大きすぎるかぶは、繊維が固く食感が悪く感じることがあります(品種によっては大きいサイズが標準サイズなものもあります)。
かぶの葉がついた状態で販売されているものは、葉がしなびておらずハリがあるものを選びましょう。葉が鮮やかな緑色をしていてみずみずしいものが鮮度がよいかぶです。
収穫から時間が経った状態のかぶの葉はしおれていたり、葉が黄色く変色してしまっているものがあります。乾燥が進んでいる可能性があるので、できるだけ早く使い切るようにしましょう。
茎が真っ直ぐ伸びていて、色にムラがないものは新鮮な証拠です。茎が真っ直ぐ伸びているということは、収穫からまだそんなに日が経っておらず、まだ茎の中にしっかりと水分が残っているということになります。
ちなみに茎の部分も食べることができますので、捨てずに取っておきましょう。炒め物やふりかけなどにすると美味しく食べることができます。
かぶを実際に手に持ってみたときに、しっかりと重みのあるものが新鮮なかぶです。かぶは94%も水分を含む野菜なので、重い=水分量が多くみずみずしいということになります。
大きさの割に軽く感じるかぶは、中の水分が抜けてしまっていて鮮度が落ちている可能性が高いです。外見は問題なさそうなかぶも、切ってみるとスが入っていてスカスカだったり、病気などの理由で腐っていることもあります。
スーパーなどで並んでいるかぶはすでにひげ根が切られてた状態で販売されているものがほとんどですが、ひげ根がついている場合は、できるだけひげ根が多くかつ長いものを選びましょう。
ひげ根が多い、長い=生命力が強いかぶだからです。また、ひげ根は根や葉と同じように食べることができる部位です。捨てずにふりかけなどにして食べると美味しくいただけますよ。
かぶは本来、固い野菜ですが、腐ってしまうとブヨブヨと柔らかくなります。手で軽く触った時に、かぶの表面が凹むような柔らかさである場合、腐っている可能性が高いです。
さらに腐敗が進むと、軽く触っただけで崩れてしまうことも。かぶを全体的に触ってみて、かたさに問題がないかをチェックしましょう。かぶの一部だけが柔らかくなっている場合、その部分を取り除いて食べるのも可能です。全体的に柔らかくなってしまっていて、かつ実が溶けるほどブヨブヨになってしまっている場合は、食べずに廃棄するようにしましょう。
白や青の綿のようなものがかぶに付着している場合、それらはカビであることがほとんどです。かぶには白カビや青カビが生えやすく、特に根(実)と茎のつなぎ目やひげ根の部分に生えることが多いです。
カビの範囲がかぶの一部だけの場合は、その部分を取り除けば食べることは可能ですが、カビの胞子は目に見えないほど小さいため、カビが生えていない部分にもすでに移ってしまっている可能性もあります。
かぶの表面や中身が茶色や黒に変色していることがあります。変色してしまう原因は様々ですが主に栽培時の生理障害による変色であることがほとんどです。
かぶの表面が茶色や黒に変色している場合、栽培や収穫時の傷であったり、酸化していたり、カビであることなどが考えられます。また、土の汚れが残ってしまっていることもあるため、しっかりと水洗いしてみましょう。
かぶを切った時にかぶの中身が茶色や黒く変色していることもあります。黒い斑点が中に広がっている場合、「カブ内部黒変病」という生理障害にかかってしまっている可能性が高いです。これは土壌のカリ不足や日光不足などによって生じるものです。
かぶを切った時に、中心部分が赤や茶色に変色してしまっている場合は「赤芯病」という生理障害が生じている可能性が高いです。赤芯病は畑の栄養バランスの乱れ(ホウ素不足)によって生じるものだといわれています。
かぶを切った時に中身が透明や半透明になっていることがありますが、これは保存時の温度が原因と考えられます。冷蔵庫や冷凍庫の温度が低い場所に保存すると「冷凍焼け」という現象が起きます。これによりかぶが透明や半透明に変色してしまうのです。変色を防ぐには、正しく保存する必要がありますので、この記事の後半で詳しく解説していきます。
生理障害の場合は、病気というわけではありませんので、食べられないことはありません。心配な方は変色部分を切り取ってから食べるか、食べずに処分するようにしましょう
出典:カブ内部黒変症の発生要因と対策技術
かぶは元々そこまで臭いがきつくない野菜ですが、腐敗が進むと酸っぱい臭いがし始めます。腐敗具合によってはカビや生ゴミのような悪臭を放つことも。
見た目には問題がなくても、明らかにいつもと違う臭いがする場合は腐っている可能性が高いです。食べずに処分するようにしましょう。
かぶが腐ると、葉にも異変が生じます。新鮮なかぶの葉は鮮やかな緑色をしていますが、腐ると黄色や黒に変色します。
かぶの葉に黒い斑点模様がついている場合は「黒腐病」という病気にかかっている可能性があります。病原細菌が根の傷などから侵入することで感染します。症状が進むと根の部分も黒く変色し、空洞化してしまいます(ただし悪臭を放つことはありません)。
かぶの葉は収穫されると土からの栄養が摂取できなくなるため、緑色を維持することができず黄色に変色してしまいます。また、「萎黄病」という病気にかかっている可能性もあります。これはカビの一種である「フザリウム オキシスポラム 分化型 ラパエ」が原因で起こる病気です。症状が進むとカブの根(実)の中心部が茶色く変色します。
病気にかかったかぶは、出荷時に選別され市場には出回らないことがほとんどですが、もしも葉が変色しているものがある場合は、その部分を取り除いてから調理するか、食べずに廃棄する方が安全といえます。
かぶが腐ると、本来は感じない苦みを感じることがあります。食べてみて苦みやえぐみなどを感じる場合は、ただちに食べるのをやめましょう。
かぶの葉はもともと苦みを感じやすいです。塩もみをしたりさっとゆがいてアク抜きをし、多めの油で炒めることで苦みがマイルドになります。それでもかなり強い苦みを感じる場合は、腐っていることも考えられますので、食べるのをやめて廃棄する方がベターです。
かぶが腐ると、ネバネバとした糸を引くことがあります。これは新鮮なかぶにはない症状です。
包丁で切った時に断面がネバネバとしているかぶは、使わずに捨てるようにしましょう。
腐敗がかなり進むと、かぶから汁が出るようになります。
もともとかぶは水分を多く含む野菜です。新鮮なうちはその水分が自ら外に出ることはありませんが、腐っているかぶは中から汁が出て実も溶け出してしまいます。
このようなかぶは食べずに処分しましょう。
冬場に限り、かぶの実(茎)は常温で保存することができます。保存日数の目安は1〜2日です。かぶの茎は新聞紙(新聞紙がない場合はキッチンペーパーで代用可)で、一つずつ丁寧に包み、保存します。切り落とした葉は常温保存することはできません。
すぐに食べない場合は常温保存せずに冷蔵保存します。かぶは実(茎)と葉を分けて保存します。上述したように葉をつけたままにしてしまうと、スが入る原因となります。
また、冷蔵保存では生で保存するのが基本。下茹でしてから冷蔵保存することもできますが、傷むのが早いので避けましょう。
冷蔵保存の期間の目安は1週間です。かぶの茎は下茹でが必要ない野菜なので、生のまま冷蔵保存します。一つずつキッチンペーパーに包み、ポリ袋に入れて口を締めます。
カットしたものを冷蔵するときはラップをきっちり巻き、ジッパー付きポリ袋に入れて保存します。切ったかぶは傷みが早いので、2〜3日で食べ切るようにしましょう。
かぶの葉は常温保存できないので、購入した日に切って冷蔵保存します。濡れたキッチンペーパーで茎の部分を包み、ポリ袋に入れて立てて冷蔵庫へ。野菜室に入れる必要はありません。保存期間は2〜3日です。
野菜は育った姿と同じように保存するのが基本。無駄なストレスがかからず、長く保存することができます。
かぶの葉はふりかけや和え物、炒め物など幅広く使えます。ハンバーグやナゲットのタネとしてひき肉と混ぜて使うのもおすすめです。
かぶを長期保存したいときは、冷凍保存します。様々な冷凍方法を紹介しますが、用途(作りたい料理)によって使い分けるとよいでしょう。
一番お手軽な方法は丸ごと冷凍です。かぶをよく洗い、キッチンペーパーで水けを取ったら、ラップで包み、ジッパー付きポリ袋に入れて空気を抜いて、ジッパーを閉じます。
冷凍したかぶはシャキシャキ感がなくなり、柔らかくなるのが特徴。丸ごと冷凍したかぶは凍ったまま電子レンジで加熱(600Wで3分ほど)するとトロトロの状態になります。塩コショウで丸ごと食べたり、スープに入れたりするのがおすすめです。
かぶを食べやすい大きさにカットして、硬めに塩茹でしてから冷凍する方法も。ラップは使わず直接ジッパー付きポリ袋に入れます。冷凍する前に茹でることを「ブランチング」といいますが、野菜はブランチングすることで変色しづらく、食感も悪くなりづらいというメリットがあります。生のまま冷凍するよりも、食感がスカスカになりづらいです。解凍方法ですが、塩茹でした冷凍かぶはそのまま煮物や味噌汁に入れて使うのがおすすめです。
生のかぶをいちょう切りなど、薄めに切って塩もみする方法も。塩もみした後は水けを絞り、ジッパー付きポリ袋に入れて冷凍庫へ。塩もみすることで水が出て、かつ茹でないので柔らかくならず、この方法が一番シャキシャキ感が残ります。塩もみした冷凍かぶは前日に冷蔵庫に移し自然解凍し、あえ物やサラダに使うのがおすすめです。
生のかぶを味つけして冷凍する方法もあります。かぶ1個(100g)と、めんつゆ小さじ2の割合で、ジッパー付きポリ袋に入れます。平らにして冷凍します。前日に冷蔵庫に移して自然解凍し、そのまま食べます。もう一品ほしいときの簡単副菜になります。
かぶの葉は生のまま冷凍はNGです。ブランチングしてから冷凍します。保存期間の目安は1ヶ月です。かぶの葉は苦味が苦手な方がいると思いますが、茹でて冷凍すると苦味がとぶので食べやすくなります。ふりかけにしてご飯のお供に最高です。
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