玉ねぎを料理で使おうと思ったときに、玉ねぎに黒い灰のようなものがついていた経験をしたことがある方は多いのではないでしょうか。黒いものの正体は「黒カビ」であることがほとんどです。よく見ると黒い虫がついているなんてことも。ちなみに黒色の玉ねぎも存在します。
玉ねぎの皮に炭のような黒い斑点が付いていることがあります。これは汚れではなくカビの一種で、「黒カビ病」という名前が付いています。
玉ねぎの黒カビの原因は、「アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)」という病原菌です。「クロコウジカビ」とも言います。玉ねぎの表皮から数層にわたり黒色のカビが発生します。皮の内側に発生した黒カビが、白い実の表面に付着することはありますが、中まで侵食することはほとんどありません。玉ねぎに含まれる硫化アリルの一種であるアリシンには、強力な殺菌作用があるといわれており、カビの発生を抑える働きがあります。そのため、玉ねぎの内部にはカビが発生しにくいのです。
黒カビが発生する主な原因は、高温と多湿です。玉ねぎは収穫後、保存性を高めるために貯蔵されますが、貯蔵中の温度や湿度が高い場合に発生しやすいといわれています。収穫後すぐに出荷される新玉ねぎにも、黒カビが生えることがあります。
ちなみに玉ねぎに付着する黒カビは、お風呂場やエアコンに発生するものとは菌の種類(クラドスポリウム)が異なります。
出典:石川県農業総合研究センター農業試験場
黒カビではなく、黒い虫が付着している場合もあります。黒い虫の正体は「ネギアブラムシ」です。玉ねぎをはじめ、ネギやニラ、にんにく、らっきょうなどネギ属の野菜に寄生する虫で、成虫の体長は約1.7〜2.2mmです。
ネギアブラムシは主にネギ類の葉や花に寄生することが多いですが、可食部にまで付着し皮の中にまで入り込んでしまうこともあります。
玉ねぎの中には、黒玉ねぎという品種も存在します。黒玉ねぎの場合、玉ねぎの表面だけでなく玉ねぎ全体が濃茶色もしくは黒色になります。
生の玉ねぎを熟成すると黒玉ねぎになります。熟成させることで元々玉ねぎに含まれるケルセチン(抗酸化作用、抗炎症作用)やシクロアリイン(血液サラサラ効果、中性脂肪やコレステロール低下作用)など栄養成分が増えると言われています。
玉ねぎの表面は問題ないが、玉ねぎを切った時に中身が茶色や黒に変色していることもあります。この場合は黒カビではなく「腐敗病」や「軟腐病」である可能性が高いです。
両方、細菌によって生じる病気ですが、腐敗病と軟腐病はそれぞれ病原菌や原因などが異なります。
腐敗病の原因となる病原菌には、
バークホルデリア セパシア(Burkholderia cepacia)
バークホルデリア アンビファリア(Burkholderia Ambifaria)
バークホルデリア セノセパシア(Burkholderia cenocepacia)
エルウィニア ラポンティシ/ラポンティキ(Erwinia rhapontici)
シュードモナス マージナリス(Pseudomonas marginalis)
シュードモナス アリ(Pseudomonas allii)
など8種類の病原菌があります。軟腐病菌よりも病原力は弱く、腐敗が進むスピードが遅いと言われています。外から見ると一見問題ないように見える玉ねぎでも、玉ねぎの中(特に上部)が茶色や黒色に腐敗することがあります。腐敗病は、発育温度が低い環境で発生しやすいといわれています。レタスや白菜、ネギなども腐敗病にかかりやすいです。
軟腐病の原因となる病原菌は、「ペクトバクテリウム カロトボラム(Pectobacterium carotovorum)」です。この病原菌は、玉ねぎだけでなくネギやキャベツ、ピーマンなどアブラナ科やナス科を中心とした多くの種類の野菜を侵します。この病原菌は土の中に生存し、雨や風などで飛散したり、傷口や食害の痕から侵入し感染します。特に雨が多い年に発生することが多いです。腐敗とともに独特の悪臭を放つのが軟腐病の特徴です。貯蔵や輸送中にも発生し、軟腐病に感染した玉ねぎを切ると、切断部分から白く濁った汁が出ます。
黒カビの病原菌であるアスペルギルス・ニガーは、吸い込むことによって肺炎になる可能性がある毒性の強い菌です。そのため、もちろん食べることはできません。しかし上述の通り、黒カビは表皮のみに発生し、中まで到達することはほとんどありません。
したがって、皮を剥けば普通に食べられることがほとんどです。万が一中の白い実に付いている場合でも、その部分を取り除けば食べることができます。ただし、免疫力が低い小さい子どもや高齢者は、食べるのを避けた方が無難でしょう。
玉ねぎの腐敗が進んでいる場合は、食べずに処分する方が安心です。
例えば、異臭がしたり、触ると柔らかい部分がある玉ねぎは、腐敗が進んでいます。体調を崩す可能性が高いため、腐った玉ねぎは廃棄しましょう。
腐った玉ねぎの見分け方は、この記事の後半で詳しく解説します。
黒カビが生えている状態で加熱調理をしても、黒カビがなくなることはありません。調理する前に必ず黒カビは取り除きましょう。
ちなみに玉ねぎは、加熱すると玉ねぎ特有の辛みが抑えられ甘みが増します。これは、辛み成分である硫化アリルが熱に弱く、加熱することで揮発・分解しやすいです。玉ねぎを炒めると甘みが増すのはこのためで、辛み成分が分解され、元々玉ねぎがもっている甘み成分を感じやすくなるのです。
誤って黒カビを食べてしまった場合、嘔吐や下痢、腹痛などの症状が出る可能性があります。これらの症状が長引くような場合は、専門医の受診を推奨します。
上記でご紹介した腐った玉ねぎの特徴を参考に、腐ってしまった玉ねぎを食べないようにすることが大切です。少しでも怪しいなと感じる場合は、食べずに処分する方がいいでしょう。
せっかく買った玉ねぎにカビが生えるのは嫌ですよね。玉ねぎを正しく保存することで黒カビは回避することが可能ですので、今一度保存の仕方を見直してみましょう。
複数の玉ねぎをネットやダンボールなどに保存していて、1個の玉ねぎに黒カビが生えているのを見つけた場合、その玉ねぎはすぐに取り除きましょう。
黒カビは、空気に舞って他の玉ねぎに移ってしまう可能性があります。黒カビに限らず、カビは移りやすいので、カビが生えているのを発見したら取り出して、野菜室などであればアルコールで拭き掃除をするなどしてカビ対策を行いましょう。
玉ねぎは、日光を浴びたり、湿度が高い場所で保存することで、カビが増殖しやすくなります。したがって玉ねぎは直射日光が当たらない風通しの多い室温が低い場所(冷暗所)で、ネットで吊るして保存するのが理想的です。
ポリ袋に入って売ってる場合は買ってきたらすぐに取り出します。冷蔵・冷凍保存よりも長く保存できます。玉ねぎの薄皮は剥いてしまうと乾燥を進めてしまうので、剥かずに保存します。野菜用ネットがない場合は、洗濯ネットやストッキングでも代用可能です。通気性の悪いビニール袋に入れるのはNGです。
大量にあるときは新聞紙を敷いたダンボールにまとめて入れて新聞紙をかぶせます。新聞紙が湿ったら取り替えます。新聞紙をかぶせたら通気性が悪くなるのでは?と思うかもしれませんが、かぶせるだけなので通気性は保たれるのと、むしろ新聞紙は水けを吸収するので、こまめに取り替えれば湿度対策になります。
春・秋・冬は基本的に玉ねぎは常温保存しましょう。ただし、室内の湿度が上がる夏場は冷蔵庫の方がよい場合があります。通年玉ねぎは冷蔵室で2週間ほど保存できます。通年玉ねぎであってもカットしたものは常温保存できないので冷蔵保存します。使いかけはラップできっちり包み、ポリ袋に入れて口をしっかり締めます。3日ほどしか保存できないのですぐに使うようにしましょう。
黒カビが生える以外の腐った玉ねぎの特徴をご紹介します。怪しいなと思う玉ねぎがあったら無理やり食べるのではなく、処分する方が無難です。
玉ねぎのカビは黒だけでなく、白カビや青カビが生えることがあります。
白カビを発生させるタマネギ乾腐病の原因は、「フザリウム オキシスポルム フォルマスペシャーリス セペ(Fusarium oxysporum f.sp. cepae)」という病原菌です。土壌伝染や玉ねぎの傷の部分から侵入します。また、この病原菌は、28度前後の高温で活発に活動する性質を持っています。そのため、玉ねぎの肥大期である真夏に繁殖しやすいです。
青カビの原因はアオカビ属(ペニシリウム属)の病原菌です。アオカビ属(ペニシリウム属)には約300種類以上の菌があり、中にはゴルゴンゾーラなどのチーズの製造に用いられる青カビもあります。アオカビ属(ペニシリウム属)は低温度でも極微量の栄養物に発育しカビ臭を放ちます。
ちなみに青カビは、みかんやレモンなどの柑橘系や食パンなどにも発生します。
出典
− 第5話・タマネギの乾腐病〜農学博士・児玉不二雄の植物の病気の話(SAc WEB)
− 食品のカビについて(株式会社 東邦微生物病研究所)
玉ねぎは元々ツンとする強い香りが特徴的ですが、腐敗が進んでいる玉ねぎはさらに臭いが強くなります。ガスのような臭いや、卵が腐った時のような臭いがする場合は玉ねぎが腐っている可能性が高いので、食べずに廃棄する方がよいでしょう。
玉ねぎを切ると一部だけが茶色く変色していることがあります。この場合は玉ねぎが腐っているため、変色している部分をしっかりと取り除いてから食べるようにしましょう。変色の範囲が広い場合は、食べずに廃棄しましょう。
玉ねぎは本来固い野菜ですが、腐敗が進むと実がブヨブヨと柔らかくなってしまいます。玉ねぎは上部の中心部から傷み始めることが多いため、手で軽く触ってみて柔らかさを感じたら腐っている可能性が高いです。
玉ねぎを切ってみて一部のみがブヨブヨと柔らかくなっている場合は、その部分を取り除けば食べることができます。
玉ねぎ全体が柔らかく凹むような玉ねぎを食べるのは避けましょう。
玉ねぎから茶色い汁が出ている場合、かなり腐敗が進んでいますので、食べずに廃棄しましょう。
下記で詳しく解説しますが、白い汁が出る場合は腐っているわけではありませんので、食べることが可能です。
玉ねぎを切ったら、実が乾燥してスカスカになっていることがあります。この場合は腐っているというわけではありませんが、水分量がかなり減っていて食感や味が劣っていますので、食べずに廃棄する方がよいでしょう。
玉ねぎが腐っている場合は見た目や臭いなどで気づくことがほとんどです。腐っていることに気づかずに万が一食べてしまった場合、酸味を感じることが多いようです。
味が少しでも変だなと思ったときは、それ以上食べるのをやめて処分するようにしましょう。
下記のような状態の玉ねぎは腐っているわけではないので食べることができます!食品を無駄にしないためにもしっかりと見分けることが大切です。
玉ねぎの上部から芽が出ている場合は、必ずしも腐っているというわけではありません。芽に毒性があるわけではありませんので食べること自体は可能ですが、心配な方は取り除いてから食べましょう。
芽が伸びすぎていると、可食部がしわしわになっていて味や栄養が劣っていることがあります。この場合は無理に食べようとせず、処分する方がよいでしょう。
皮を剥いてヌルヌルしていてもそれは腐っているわけではありません。玉ねぎにはヌルヌルとした薄い膜が元々あります。このぬめりは旨味成分で「粘質物」と言われており、セルロースやペクチンなどの水溶性の糖類が水分と混ざってぬめりが発生します。
玉ねぎを切った時に白い汁が出る場合も、腐っているわけではありません。白い汁の正体は、玉ねぎに多く含まれる辛味成分の硫化アリルです。白い汁が出ることは、その玉ねぎが新鮮であることを示しています。
硫化アリルとは?
玉ねぎを切ったときに涙が出る原因はこの硫化アリル類によるものです。
硫化アリルの一種は血栓を予防する作用があります。また、血液中の悪玉コレステロールを減らして、善玉コレステロールを増やす働きがあります。動脈硬化を遅くして、心臓血管障害や脳血管障害を予防すると考えられています。
また、ある種の硫化アリルは胃の中に住み着いているピロリ菌を殺す作用も期待できるといわれています。さらには、血糖値の上昇を抑えて糖尿病を予防したり、血圧を下げて高血圧を防ぐ働きも知られています。
新鮮な玉ねぎの皮は茶色でツヤがあります。皮がボロボロになっていても、腐っているというわけではありませんので、普通に食べることができます。
ただし、皮がボロボロになってしまっている場合は、中身の水分が蒸発し乾燥している可能性があります。乾燥してスカスカになった玉ねぎは、食感や味が劣っている可能性があるので注意しましょう。
玉ねぎが腐ってしまう前に大量消費できるレシピをご紹介します。どれも簡単に作れる料理なので、ぜひお試しください。Filyのレシピはすべて小麦粉・乳製品・白砂糖不使用です。
酢に含まれるクエン酸は、食べた物を体内でエネルギーに変えるときに必要な栄養素です。そのため疲労回復に効果的と言われています。さらに代謝アップにもつながるので、ダイエットにも効果的と言われています。新玉ねぎで作っても美味しくいただけます。
酢玉ねぎのレシピはこちら
簡単に作れる玉ねぎスープです。玉ねぎは加熱すると目がしみる元である硫化アリル類が糖に変化して甘みが増します。
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食材は玉ねぎだけ。玉ねぎの甘みがおいしい玉ねぎ丼のレシピです。シンプルですが満足感のある一品です。
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