玉ねぎの皮を剥いてみたら中が茶色く変色していたという経験がある方は多いのではないでしょうか。本記事では玉ねぎが茶色に変色する原因や対処法などを詳しく解説します。
玉ねぎの皮を剥いたときに、上部のみが茶色または黒色に変色している場合は、灰色腐敗病に感染している可能性が高いです。
灰色腐敗病は収穫直後や貯蔵中に発症することが多いボトリチス菌が原因の病気で、初期の段階では外観で判別することはできませんが病勢が進むと内部に拡大し、さらに進行すると表面に灰緑色のかび(菌糸、分生子)を生じ、黒褐色の団塊状の菌核をつくります。
収穫前に長期間雨にあたっていた場合に発生しやすいと言われています。
玉ねぎの皮を剥いてカットしたときに、重なっている層の一部のみが茶色く変色している場合も病気に感染している可能性があります。
りん片腐敗病は、育っていく過程で強風や機械的に生じた傷やアザミウマなどの害虫の食害痕などの傷口から細菌が侵入することによって発症し、たまねぎの中間葉が枯死する症状がみられ切ると実の一部が腐敗していることが多いです。また低温高湿でも発症しやすいため冷蔵庫で保管していることで発症することもあります。
玉ねぎの皮を剥いて切ったときに、中心よりも外側に近い層が茶色く変色し柔らかくなっている場合、軟腐病に感染している可能性があります。
軟腐病は、フザリウム属菌という放線菌が原因で発症する病気で、外側から内側に変色が広がり悪臭を放つという特徴があります。灰色腐敗病などとは異なり匂いがきつくなるため、匂いで気がつくことも多いです。軟腐病は栽培中はもちろんのこと、保管中にも発症し進行する病気です。
玉ねぎの表皮や根の部分に白い綿のようなフワフワとした白カビが生えていて、根本が茶色く変色している場合は「タマネギ乾腐病(かんぷびょう)」という伝染病である可能性が高いです。根から腐敗が進み、可食部である白い実まで侵食します。上述した軟腐病との違いは、根本から腐敗していくという点です。玉ねぎのおしりの部分から茶色く変色していき、軟腐病のようなきつい匂いはありません。
乾腐病の原因は、「フザリウム オキシスポルム フォルマスペシャーリス セペ(Fusarium oxysporum f.sp. cepae)」という病原菌です。土壌伝染や玉ねぎの傷の部分から侵入します。また、この病原菌は、28度前後の高温で活発に活動する性質を持っています。そのため、玉ねぎの肥大期である真夏に繁殖しやすいです。
皮がついている状態で何の異常も見られなくても、皮を剥いたり切ったりすると全体が変色してしまっていることもあります。この場合は、腐敗が進行してしまっている状態です。残念ですが破棄しましょう。
一部が変色している場合は取り除いて食べることができることがありますが、全体が茶色くなってしまっている場合は広範囲に細菌が繁殖してしまっている可能性が高いです。
玉ねぎが加熱すると褐変(かっぺん)する理由は主に2つあります。褐変とは、食材を調理や加工、保存することにより茶色っぽく変色することをいいます。
玉ねぎが褐変するひとつ目の理由は、玉ねぎに含まれている糖分がカラメル化することです。
カラメル化とは、糖が加熱によって水分を失っていく過程で、糖の構造が壊れたり別の結合を始めたりなど様々な反応が起こり褐色の物質を作ることを言います。カラメル化することで苦味成分が作られます。例えばプリンのカラメルソースや鼈甲飴(べっこうあめ)などは、砂糖のカラメル化を利用したものです。
玉ねぎが褐変するもう一つの理由は、玉ねぎに含まれている糖分がメイラード反応を起こすことです。
メイラード反応とは食品に含まれている糖とアミノ酸が、加熱によって結合することによってメラノイジンと呼ばれる茶色の物質を作ることを言います。これは、食材に糖とアミノ酸の2つが存在する場合にのみ起こります。例えば、生肉を焼いたときに茶色く変色するのもこのメイラード反応によるものです。
メイラード反応では、茶色の物質の他に芳ばしい香りのする物質もできます。
玉ねぎの場合は、カラメル化とメイラード反応の両方が起こるため加熱をすると褐変が起こります。
加熱をして褐変した玉ねぎは「飴色玉ねぎ」と呼ばれ、オニオンスープやハンバーグなど様々な調理に使われます。玉ねぎを加熱して飴色玉ねぎにすると甘味が増すということをご存知の方は多いかと思いますが、実は上記で紹介した褐変によって甘味が増しているというわけではありません。
硫化アリルが「プロピルメルカプタン」と呼ばれる成分に変化するためと言われてきましたが、最近の研究結果でこのことは否定されています。加熱によって玉ねぎの甘みが増すのは下記の3つの理由が考えられます。
辛味成分である硫化アリルの揮発によって、甘みを強く感じる
水分の蒸発によって、糖濃度が上昇する
加熱による組織の破壊や軟化により甘味を強く感じる
まず、玉ねぎのツンとした辛味は硫化アリルが多く含まれていることによるものです。加熱することにより硫化アリルが蒸発、甘味を強く感じるようになります。また、硫化アリルが蒸発するのと同時に玉ねぎに含まれている水分も蒸発し、糖濃度が上昇します。さらに食物繊維が分断されるなどの玉ねぎの組織破壊により柔らかくなり甘味を強く感じるといわれています。
出典:加熱タマネギの甘いフレーバーについて
玉ねぎの色が全体的に茶色く変色してしまっていたり、変色が一部であっても、匂いがきつくなっていたり全体的に柔らかくなってしまっているなど全体的に腐敗している場合は残念ですが破棄しましょう。
軟腐病にかかっている場合も匂いがきつくなるため、全体的に腐敗しているのか判断するのが難しい場合は破棄するのが無難です。
病気が原因で一部のみが変色している場合は、変色している箇所は食べることができませんのでしっかりと取り除く必要があります。その他の異常がない部分は基本的に食べることができます。
ただし、乾腐病の原因であるフザリウムはカビ毒を発生させる可能性があり、中毒症状を引き起こす可能性もあります。カビ毒は加熱で除去することはできませんので、根っこ部分のカビが中まで侵食している場合や、心配な方は処分するのが良いでしょう。
複数の玉ねぎをネットやダンボールなどに保存している際に、病気に感染している玉ねぎやカビが生えてしまった玉ねぎを発見した場合は、必ず取り除きましょう。
そのまま放置してしまうと病原体の胞子が舞って他の玉ねぎにも感染が広がってしまう可能性があります。野菜室などであればアルコールで拭き掃除をするなどしてカビ対策を行うことが大切です。
腐った玉ねぎの特徴を解説します。
中身が茶色く変色している
茶色い汁が出ている
切ったら中身がスカスカ
上述したように皮を剥いたときに中身全体が茶色く変色していたり、茶色い汁が出ていたら残念ですが腐敗がかなり進んでしまっています。食べずに破棄しましょう。
皮に黒や茶色のススのような斑点がある場合は、黒カビが発生してます。皮に生えているカビは、基本的には内部まで侵食することはないので、皮を剥いたら問題なく食べることが可能です。ただし、中には玉ねぎの可食部にまでカビが生えてしまっている場合もあります。カビの範囲が狭い場合は、その部分を取り除けば食べることができますが、広範囲にカビが生えている場合は食べずに処分しましょう。
玉ねぎを切ったら、実が乾燥してスカスカになっていることがあります。この場合は腐っているというわけではありませんが、水分量がかなり減っていて食感や味が劣っていますので、食べずに廃棄する方がよいでしょう。
ブヨブヨしている
全体的に柔らかい
玉ねぎは本来固い野菜ですが、腐敗が進むと実がブヨブヨと柔らかくなってしまいます。玉ねぎは中心部から傷み始めることが多いため、手で軽く触ってみてブヨブヨしていたり、全体的に柔らかさを感じたら腐っている可能性が高いです。玉ねぎを触ったときに、全体が柔らかく凹むぐらいになってしまっていたら食べずに破棄しましょう。
玉ねぎを切ってみて一部のみがブヨブヨしていたり柔らかくなっている場合は、その部分を取り除けば食べることができます。
ガスのような臭い
卵が腐ったような臭い
青臭い
玉ねぎは元々ツンとする強い香りが特徴的ですが、腐敗が進んでいる玉ねぎはさらに臭いが強くなります。ガスのような臭いや、卵が腐った時のような臭いがする場合は、玉ねぎが腐っている可能性が高いです。
また、青臭い場合は、青カビが原因である可能性があります。青カビは玉ねぎの皮や、可食部の外側に発生することが多いです。カビ自体が見えなくてもカビの菌が増殖しはじめていることがあります。
玉ねぎの正しい保存方法をご紹介します。
玉ねぎは、日光を浴びたり、湿度が高い場所で保存することで、病気が進行したりカビが増殖しやすくなります。したがって玉ねぎは直射日光が当たらない風通しの多い室温が低い場所(冷暗所)で、ネットで吊るして保存するのが理想的です。
ポリ袋に入って売ってる場合は買ってきたらすぐに取り出します。冷蔵・冷凍保存よりも長く保存できます。玉ねぎの薄皮は剥いてしまうと乾燥を進めてしまうので、剥かずに保存します。野菜用ネットがない場合は、洗濯ネットやストッキングでも代用可能です。通気性の悪いビニール袋に入れるのはNGです。
大量にあるときは新聞紙を敷いたダンボールにまとめて入れて新聞紙をかぶせます。新聞紙が湿ったら取り替えます。新聞紙をかぶせたら通気性が悪くなるのでは?と思うかもしれませんが、かぶせるだけなので通気性は保たれるのと、むしろ新聞紙は水けを吸収するので、こまめに取り替えれば湿度対策になります。
上述したように、複数の玉ねぎをネットやダンボールなどに保存していて病気にかかっている玉ねぎやカビの生えた玉ねぎを見つけた場合は、すぐに取り除きましょう。
春・秋・冬は基本的に玉ねぎは常温保存しましょう。ただし、室内の湿度が上がる夏場は冷蔵庫の方がよい場合があります。通年玉ねぎは冷蔵室で2週間ほど保存できます。
また、カットしたものも常温保存できないので冷蔵保存します。使いかけはラップできっちり包み、ポリ袋に入れて口をしっかり締めます。3日ほどしか保存できないのですぐに使うようにしましょう。
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