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玉ねぎの中が黒い原因はカビ?食べても大丈夫?対処法は?

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玉ねぎの中が黒い原因はカビ?食べても大丈夫?対処法は?

玉ねぎを切ると中が黒くなってしまっていることがあります。外見は問題ないのに、中だけ変色してしまうのはなぜなのでしょうか。主に栽培中に発生する病気であることが多いのですが、生理現象であることもあります。そこで今回は、玉ねぎの中が黒くなってしまう原因や、黒くなるのを防ぐ方法などを詳しくご紹介します。

玉ねぎの中が黒い原因

玉ねぎの中が黒くなっているのは、玉ねぎが何かしらの病気であることが多いです。ここでは、玉ねぎの中が黒くなってしまう主な原因をご紹介します。

軟腐病

玉ねぎを切ったときに、玉ねぎの中心部分が茶色や黒に変色していることがあります。その場合は、「軟腐病」という病気である可能性が高いです。腐敗とともに独特の悪臭を放つのが軟腐病の特徴です。貯蔵や輸送中にも発生し、軟腐病に感染した玉ねぎを切ると、切断部分から白く濁った汁が出ます。

軟腐病の原因となる病原菌は、「ペクトバクテリウム カロトボラム(Pectobacterium carotovorum)」です。この病原菌は、玉ねぎだけでなくネギやキャベツ、ピーマンなどアブラナ科やナス科を中心とした多くの種類の野菜を侵します。この病原菌は土の中に生存し、雨や風などで飛散したり、傷口や食害の痕から侵入し感染します。特に雨が多い年に発生することが多いです。

腐敗病

玉ねぎが褐色や淡いピンク色などに変色してしまっていることがあります。これは「腐敗病」という病気である可能性が高いです。

腐敗病の原因は、8種類の病原菌であることが報告されています。

  • バークホルデリア セパシア(Burkholderia cepacia)

  • バークホルデリア アンビファリア(Burkholderia Ambifaria)

  • バークホルデリア セノセパシア(Burkholderia cenocepacia)

  • エルウィニア ラポンティシ/ラポンティキ(Erwinia rhapontici)

  • シュードモナス マージナリス(Pseudomonas marginalis)

  • シュードモナス アリ(Pseudomonas allii)

  • バークホルデリア ピロシニア

  • ルビニア ペルシナ

これらの病原菌は土壌中に生息しており、風害や虫害、農作業などによる傷から侵入し感染します。腐敗病は、発育温度が低い環境で発生しやすいといわれており、適温は20〜23℃です。軟腐病菌よりも病原力は弱く、腐敗が進むスピードが遅いといわれています。また、軟腐病とは異なり悪臭を放つことはほとんどありません。レタスや白菜、ネギなども腐敗病にかかりやすいです。

出典:

灰色腐敗病

腐敗病と病名が似たものに「灰色腐敗病」があります。病名通り、灰色のカビが密生する病気です。灰色のカビが玉ねぎの中まで侵入することは少ないですが、上部の皮や外皮との間にベルベット状の灰色のカビが密生します。玉ねぎの形がやや縦長になるのが特徴です。

これはボトリチス アリ(Botrytis allii)という病原菌が原因で起こる病気です。灰色腐敗病は世界的には首腐れ病(ネックロット)とよばれます。腐敗が玉ねぎの内側から始まる特徴からこの名が付いています。なお、玉ねぎの収穫時に表面に傷が付いてしまうと、その部分から感染し腐敗することもあります。

灰色腐敗病の症状は、主に冷蔵貯蔵中に現れることが多いです。栽培中に土壌から入り込んだ感染菌が原因となり、玉ねぎの皮や内部が腐敗します。

切ってから(黒・茶に)変色する

玉ねぎを切ってからしばらく放置すると、切断面がピンク色や茶色などに変色することがあります。これは玉ねぎが酸化することにより起こる生理現象です。玉ねぎに含まれているポリフェノールが空気に触れることで酸素と反応してピンク色や茶色へと変色します。

切って後に黒く変色することはほとんどありませんが、万が一黒く変色しても、短時間で腐敗することはないため、そのまま食べることができます。不安な方は黒い部分を取り除いてから食べましょう。

切った玉ねぎは腐敗するのが早いため、切った玉ねぎはなるべく早く使い切りましょう。

皮・実の表面が黒いのは黒カビ

玉ねぎの皮に炭のような黒い斑点が付いていることがあります。これは汚れではなくカビの一種で、「黒カビ病」という名前が付いています。

玉ねぎの黒カビの原因は、「アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)」という病原菌です。「クロコウジカビ」ともいいます。玉ねぎの表皮から数層にわたり黒色のカビが発生します。皮の内側に発生した黒カビが、白い実の表面に付着することはありますが、中まで侵食することはほとんどありません。玉ねぎに含まれる硫化アリルの一種であるアリシンには、強力な殺菌作用があるといわれており、カビの発生を抑える働きがあります。そのため、玉ねぎの内部にはカビが発生しにくいのです。

黒カビが発生する主な原因は、高温と多湿です。玉ねぎは収穫後、保存性を高めるために貯蔵されますが、貯蔵中の温度や湿度が高い場合に発生しやすいといわれています。収穫後すぐに出荷される新玉ねぎにも、黒カビが生えることがあります。

ちなみに玉ねぎに付着する黒カビは、お風呂場やエアコンに発生するものとは菌の種類(クラドスポリウム)が異なります。

出典:石川県農業総合研究センター農業試験場

中が黒い玉ねぎは食べられる?

上述したような病気(軟腐病、腐敗病、灰色腐敗病)に感染した玉ねぎは、出荷前の選別時に取り除かれることが多いためスーパーに出回ることはほとんどありません。万が一上記で紹介したような症状が出た場合は、軽度であれば食べることが可能ですが、悪臭がしたり腐っている場合は食べずに廃棄しましょう。

切った後に変色してしまうのは病気ではなく生理障害なのでそのまま食べて問題ありません。変色が気になる場合や見た目を重視したい場合は、変色部分を切り落としてから調理しましょう。

最後に、黒カビは玉ねぎの皮だけに発生することがほとんどで、皮を剥くと実は問題ないことが多いです。実の一部が黒くなっていても、洗えば落ちます。万が一洗っても落ちない場合は、その部分を取り除いて食べることが可能です。ただし、免疫力が低い小さい子どもや高齢者は、食べるのを避けた方が無難でしょう。

玉ねぎの腐敗が進んでいて大部分が黒くなっている場合や、心配な方は、食べずに廃棄する方がベターです。黒くなる以外の腐った玉ねぎの特徴は、この記事の後半でご紹介しますので参考にしてください。

中が黒くなるのを防ぐ保存方法

腐敗病や軟腐病は主に栽培中にかかる病気なので、保存で黒くなることを防ぐことは難しいです。しかし正しく保存することで、腐敗のスピードを抑えることは可能です。

直射日光・多湿を避け風通しのよい場所で常温保存

玉ねぎは、日光を浴びたり、湿度が高い場所で保存することで、腐敗が進みやすくなったりカビが増殖しやすくなります。したがって玉ねぎは直射日光が当たらない風通しの多い室温が低い場所(冷暗所)で、ネットで吊るして保存するのが理想的です。

ポリ袋に入って売ってる場合は買ってきたらすぐに取り出します。冷蔵・冷凍保存よりも長く保存できます。玉ねぎの薄皮は剥いてしまうと乾燥を進めてしまうので、剥かずに保存します。野菜用ネットがない場合は、洗濯ネットやストッキングでも代用可能です。通気性の悪いビニール袋に入れるのはNGです。

大量にあるときは新聞紙をひいたダンボールにまとめて入れて新聞紙をかぶせます。新聞紙が湿ったら取り替えます。新聞紙をかぶせたら通気性が悪くなるのでは?と思うかもしれませんが、かぶせるだけなので通気性は保たれるのと、むしろ新聞紙は水けを吸収するので、こまめに取り替えれば湿度対策になります。

夏は冷蔵保存

春・秋・冬は基本的に玉ねぎは常温保存しましょう。ただし、室内の湿度が上がる夏場は冷蔵庫の方がよい場合があります。通年玉ねぎは冷蔵室で2週間ほど保存できます。通年玉ねぎであってもカットしたものは常温保存できないので冷蔵保存します。使いかけはラップできっちり包み、ポリ袋に入れて口をしっかり締めます。3日ほどしか保存できないのですぐに使うようにしましょう。

腐った玉ねぎの特徴

黒くなる以外の腐った玉ねぎの特徴をいくつかご紹介します。下記のような特徴がある場合は食べずに破棄しましょう。

白カビ・青カビが生えている

玉ねぎのカビは黒だけでなく、白カビや青カビが生えることがあります。

白カビを発生させるタマネギ乾腐病の原因は、「フザリウム オキシスポルム フォルマスペシャーリス セペ(Fusarium oxysporum f.sp. cepae)」という病原菌です。土壌伝染や玉ねぎの傷の部分から侵入します。また、この病原菌は、28度前後の高温で活発に活動する性質を持っています。そのため、玉ねぎの肥大期である真夏に繁殖しやすいです。

青カビの原因はアオカビ属(ペニシリウム属)の病原菌です。アオカビ属(ペニシリウム属)には約300種類以上の菌があり、中にはゴルゴンゾーラなどのチーズの製造に用いられる青カビもあります。アオカビ属(ペニシリウム属)は低温度でも極微量の栄養物に発育しカビ臭を放ちます。

ちなみに青カビは、みかんやレモンなどの柑橘系や食パンなどにも発生します。

出典
第5話・タマネギの乾腐病〜農学博士・児玉不二雄の植物の病気の話(SAc WEB)
食品のカビについて(株式会社 東邦微生物病研究所)

異臭がする

玉ねぎは元々ツンとする強い香りが特徴的ですが、腐敗が進んでいる玉ねぎはさらに臭いが強くなります。ガスのような臭いや、卵が腐った時のような臭いがする場合は玉ねぎが腐っている可能性が高いので、食べずに廃棄する方がよいでしょう。

茶色に変色している

玉ねぎを切ると一部だけが茶色く変色していることがあります。この場合は玉ねぎが腐っているため、変色している部分をしっかりと取り除いてから食べるようにしましょう。変色の範囲が広い場合は、食べずに廃棄しましょう。

触るとブヨブヨする

玉ねぎは本来固い野菜ですが、腐敗が進むと実がブヨブヨと柔らかくなってしまいます。玉ねぎは上部の中心部から傷み始めることが多いため、手で軽く触ってみて柔らかさを感じたら腐っている可能性が高いです。

玉ねぎを切ってみて一部のみがブヨブヨと柔らかくなっている場合は、その部分を取り除けば食べることができます。

玉ねぎ全体が柔らかく凹むような玉ねぎを食べるのは避けましょう。

茶色い汁が出ている

玉ねぎから茶色い汁が出ている場合、かなり腐敗が進んでいますので、食べずに廃棄しましょう。

下記で詳しく解説しますが、白い汁が出る場合は腐っているわけではありませんので、食べることが可能です。

切ったら実がスカスカ

玉ねぎを切ったら、実が乾燥してスカスカになっていることがあります。この場合は腐っているというわけではありませんが、水分量がかなり減っていて食感や味が劣っていますので、食べずに廃棄する方がよいでしょう。

酸味を感じる

玉ねぎが腐っている場合は見た目や臭いなどで気づくことがほとんどです。腐っていることに気づかずに万が一食べてしまった場合、酸味を感じることが多いようです。

味が少しでも変だなと思ったときは、それ以上食べるのをやめて処分するようにしましょう。

まだ食べられる玉ねぎの特徴

一見腐っているようでも、下記のような状態の玉ねぎは腐っているわけではありません!

芽が出ている

玉ねぎの上部から芽が出ている場合は、必ずしも腐っているというわけではありません。芽に毒性があるわけではありませんので食べること自体は可能ですが、心配な方は取り除いてから食べましょう。

芽が伸びすぎていると、可食部がしわしわになっていて味や栄養が劣っていることがあります。この場合は無理に食べようとせず、処分する方がよいでしょう。

薄い皮がヌルヌルする

皮を剥いてヌルヌルしていてもそれは腐っているわけではありません。玉ねぎにはヌルヌルとした薄い膜が元々あります。このぬめりは旨味成分で「粘質物」といわれており、セルロースやペクチンなどの水溶性の糖類が水分と混ざってぬめりが発生します。

白い汁が出る

玉ねぎを切った時に白い汁が出る場合も、腐っているわけではありません。白い汁の正体は、玉ねぎに多く含まれる辛味成分の硫化アリルです。白い汁が出ることは、その玉ねぎが新鮮であることを示しています。

硫化アリルとは?


玉ねぎを切ったときに涙が出る原因はこの硫化アリル類によるものです。


硫化アリルの一種は血栓を予防する作用があります。また、血液中の悪玉コレステロールを減らして、善玉コレステロールを増やす働きがあります。動脈硬化を遅くして、心臓血管障害や脳血管障害を予防すると考えられています。


また、ある種の硫化アリルは胃の中に住み着いているピロリ菌を殺す作用も期待できるといわれています。さらには、血糖値の上昇を抑えて糖尿病を予防したり、血圧を下げて高血圧を防ぐ働きも知られています。

皮が汚れていてボロボロになっている

新鮮な玉ねぎの皮は茶色でツヤがあります。皮がボロボロになっていても、腐っているというわけではありませんので、普通に食べることができます。

ただし、皮がボロボロになってしまっている場合は、中身の水分が蒸発し乾燥している場合があります。乾燥してスカスカになった玉ねぎは、食感や味が劣っている可能性があるので注意しましょう。

玉ねぎの大量消費レシピ

玉ねぎが大量にあって腐ってしまう前に使い切りたい方におすすめのレシピをご紹介します。Filyのレシピはすべて小麦粉・乳製品・白砂糖不使用です。

酢玉ねぎ

酢に含まれるクエン酸は、食べた物を体内でエネルギーに変えるときに必要な栄養素です。そのため疲労回復に効果的と言われています。さらに代謝アップにもつながるので、ダイエットにも効果的と言われています。新玉ねぎで作っても美味しくいただけます。

酢玉ねぎのレシピはこちら

ゴロッと玉ねぎスープ

簡単につくれる玉ねぎスープです。玉ねぎは加熱すると目がしみる元である硫化アリル類が糖に変化して甘みが増します。

ゴロッと玉ねぎスープのレシピはこちら

玉ねぎ丼

食材は玉ねぎだけ。玉ねぎの甘みがおいしい玉ねぎ丼のレシピです。シンプルですが満足感のある一品です。

玉ねぎ丼のレシピはこちら