保存していたなすが変色してしまったり、柔らかくなってしまって食べられるのか心配になったことがある方は多いのではないでしょうか。本記事では腐ったなすの特徴やなすが腐る原因、正しいなすの保存方法などを詳しく紹介します。
なすは水分が多く、寒さに弱いのが特徴の野菜です。貯蔵の適温は7〜12℃と報告されています。適切な環境でてきていないと鮮度が落ちて腐敗する原因となります。
冷蔵保存は日持ちはよいですが、そのまま冷蔵庫に入れて冷気に当たると、皮が硬くなり内部の水が抜けて実がしぼみ、風味も落ちます。そのため、新聞紙やキッチンペーパー、ラップ、ポリ袋などを使い、冷気からなすを守るように工夫する必要があります。冷蔵庫保存するときは温度が比較的高い野菜室を利用するようにしましょう。
なすの最適貯蔵湿度は90〜95%です。水分量が多く乾燥にも弱い野菜なので、湿度が低すぎる環境での保存は腐敗してしまう原因になります。なすを腐敗させないためには、湿度を保って保存することも大切です。
ただし、湿度の高い環境はカビが生えやすいです。カビは湿度70%の環境で生えやすいです。カビは20℃以上の温度で生えやすくなるので、梅雨などのカビが生えやすい季節は冷蔵または冷凍で保存するようにしましょう。
出典:野菜の最適貯蔵条件(農研機構)
腐ったなすの見た目の特徴は下記の通りです。
へたの白いホコリのようなものがついているときは白カビ、黒い斑点が一箇所にまとまって黒く変色しているように見える箇所がある場合は黒カビが生えています。
ヘタの部分はとくにカビが生えやすく、ヘタのみであれば切り落せば食べられることもありますが、カビはカビ毒を発生させて下痢や嘔吐などの中毒症状を起こす可能性があります。カビの胞子は目に見えないほど小さいため、実に生えていない状態でも破棄するのが無難です。
カビは加熱すれば大丈夫ということはないので、注意しましょう。
出典:かびとかび毒についての基礎的な情報(農林水産省)
新鮮ななすの表面はハリがありますが、全体的にシワシワになっているものは水分が抜けて乾燥してしまっている状態です。少し水分が抜けてしまった程度であれば問題ありませんが、完全に水分が抜けて乾燥してしまっている状態であれば、残念ながら復活させることはできません。
腐敗している場合はシワシワになっているだけではなく、茶色っぽく変色していることもあります。この場合は、すでに腐敗が進んでいる可能性が高いので、破棄しましょう。
また、皮にもカビが生えることがあります。上記で紹介したようにカビが生えている場合も食べることはできません。
新鮮ななすをカットしたときの断面は白色をしていますが、腐敗している場合は全体的に茶色や黒色に変色していることが多いです。
黒や茶色のつぶつぶが見える場合や部分的に変色している場合は腐敗しているわけではありません(詳しくは後述します)が、全体的に変色してしまっていたり、溶け出してしまっている部分がある場合は腐敗が進んでいるので破棄しましょう。
腐ったなすの臭いや味の特徴は下記の通りです。
酸っぱい匂い・味
生ゴミ臭
カビ臭い
なすは青臭さがある野菜ですが、そこまで臭いがきつい野菜ではありません。酸っぱい臭いや味がする場合や、生ゴミのような臭いがする場合は腐敗している可能性が高いです。
なすに限らず食材は腐敗すると、多くのバクテリアが活動し酢酸発酵することが多いので酸っぱい臭いがしたり酸っぱい味がします。この現象は味噌や醤油といった発酵食品にも起きていますが、発酵とは異なり次第に味や臭い、形が崩れるなど食材が変化していく現象はあるときに「腐敗」とよばれます。あきらかにいつもとは異なる酸っぱい味や生ゴミのような異臭がする場合は食べずに破棄するようにしましょう。
また、カビが生えていないように見えてもカビ臭さを感じる場合は見えない部分にカビの胞子が入り込んでいる可能性があります。カビには様々な種類があり、墨汁のような臭いを感じさせる「2-メチルイソボルネオール」や土臭さや泥臭さを感じさせる「ジェオスミン」といった代表的な悪臭を放つ種類がいます。また、カビ自体は臭いを感じさせる成分を出さない種類もいますが、カビ自体が臭いを出さなくてもカビの餌になる物質がカビの作用によって変化することで発生する臭いなどで、人に「カビ臭い」と感じさせます。心配な方は破棄するのが無難です。
腐ったなすの触感の特徴は下記の通りです。
ぶにょぶにょに柔らかくなっている
全体的にぬめりがある
糸をひいている
新鮮ななすには張りがあり、ある程度硬さがありますが、腐敗が進んでいるとぶにょぶにょとした柔らかい触感になります。また、全体的にぬめりが出ていたり糸をひく場合も腐敗が進んでしまっている状態なので、残念ですが破棄しましょう。
なすをカットしてみたら種が黒や茶色に変色していて驚いたことがある方も多いのではないでしょうか。なすは熟す前に収穫されているため、収穫してから時間が経つと種が熟して黒や茶色に変色します。腐敗しているわけではないので、食べても問題ありません。
ただし、鮮度が落ちている状態なので異臭がしたり溶けている部分があるなど腐敗のサインがないかチェックしてから判断してください。
腐敗のサインが見られなければ食べて大丈夫ですが、味や風味、食感は落ちています。そのままにしておくと腐敗してしまうので早めに食べきりましょう。
なすの表面に茶色い傷があるのは、栽培中に幹や枝になすの実が擦れてしまったり、出荷時に実が傷ついてしまったことが原因です。人間でいうかさぶたができてしまっている状態で、腐敗しているわけではないので食べても大丈夫です。
また、お尻の部分だけ茶色くなってしまうこともあります。これは、なすが子孫を残そうと種を守るために実を固くする自然作用による傷です。
食べることはできますが、表面の茶色い傷やお尻の茶色い部分は固く食べにくいです。変色している部分はカットして取り除いて食べましょう。
カットした断面が茶色く変色する原因は低温障害と酸化の2つあります。どちらも腐敗しているわけではないので食べることができます。
なすを冷蔵庫に保管していて、カットしたときに茶色になっていた場合は低温障害が原因であると考えられます。低温障害は冷蔵保存に適さない野菜や果物を冷蔵保存した時に出る障害のことをいいます。冷蔵庫で長期間保存しているなど、冷気に当たると低温障害が起こり変色するほか皮が硬くなり内部の水が抜けて実がしぼんでしまいます。
カットしたなすの断面が時間が経つにつれて茶色く変色してくるのは、酸化が原因です。なすにはアントシアニンとよばれるポリフェノールの一種が含まれています。アントシアニンは空気中の酸素にふれると茶色→黒と変色していく性質があります。これは、カットしたりんごがどんどん黒くなってくる現象と同じです。
低温障害と酸化、どちらの場合も食べることはできますが、味や風味、食感が悪くなっているので気になるようであればカットして調理すると良いです。また、鮮度が落ちている状態なので早めに食べきりましょう。
新鮮な状態の鮮やかな紫をしているなすでも、加熱調理をすると茶色く変色してしまうことがあります。見た目が悪くなってがっかりしたことがある方も多いのではないでしょうか。茶色く変色すると腐敗なのではと心配になりますが、これはなすの色素となっているナスニンが抜けてしまったことが原因です。腐敗しているわけではありません。
なすの色素はアントシアニンと呼ばれるポリフェノールの一種で、主要成分となっているのがナスニンです。ナスニンは水溶性の成分であるため、加熱によりなすの水分が蒸発するのと一緒に抜けてしまうことがあります。
見た目は悪くなってしまいますが、味や風味、食感に変化はないので問題なく食べることができます。
なすのへたの周りに白い粉のようなものがついていることがあります。「白カビが生えている」と思ったり、中には「農薬なのでは」と心配になる方も多いようですが、こちらも食べて大丈夫です。
ヘタの周りについている白い粉のようなものは「ブルーム」と呼ばれる天然分泌物です。雨や露をはじいて病原菌の侵入を防止し身を守るために分泌されているといわれています。
ブルームは天然毒素ではないので食べても人体に害はありませんが、ポリフェノールのような栄養成分ではありませんので、気になる場合は洗い流して食べると良いでしょう。ブルームは水洗いすれば簡単に落とすことができます。
なすが腐らないためには正しく保存することが大切になります。
ここでは、なすの正しい保存方法を詳しく解説していきます。
気温が10℃前後で直射日光が避けられ風通しのよい部屋(冷暗所)ならば、常温でも1週間ほど保存することができます。夏場や冬場の暖房を使用している環境なら1〜2日です。
新聞紙に包むことで皮が乾燥するのを防ぎます。新聞紙がない場合はキッチンペーパーでもOKです。
また、立てて保存するのもポイントです。野菜は育ったときと同じ状態で保存することでストレスがかからず、栄養を損なわずに済みます。
表面に水けがついている場合はしっかり拭き取り、1個ずつラップで包んでから冷蔵用保存袋にいれて野菜室へ。数日で種は黒くなってしまいますが、味に変化はありません。1週間ほど経っても、皮にはしわがよらず、つややかです。ラップで包むひと手間で鮮度が全くちがいます!
なすを保存するときはへたを切り落とさないようにしましょう。へたを切ってしまうと水分を失いやすくなります。
ラップで包む余裕がないときは、厚手の冷蔵用保存袋に入れて保存するだけでも、買ってきた袋でそのまま冷蔵するのとは鮮度に大きな違いが生まれます。2〜3日で食べきるならば、ラップなしでもOKです。
冷凍保存する場合は、乱切りや厚めの輪切りなど調理しやすいサイズにカットしましょう。丸ごと冷凍することも可能です。
なすはポリフェノールによる褐変が起こりやすいので、気になる方は水に10分ほどさらすか、塩をかけて10分ほど置くことで防ぐことができます。体に悪いわけではないので、そこまで気にしすぎる必要はありません。
乱切りや厚めの輪切りなど食べやすいサイズに切って、オリーブオイルで炒めて粗熱を取ります。その後に冷凍用保存袋に入れて空気を抜き、密閉して冷凍庫へ。
野菜は加熱することで水分が抜けるので、風味や食感が悪くなる原因である氷の結晶が冷凍の過程で発生しにくくなるためです。油で加熱調理をすれば変色の心配もいりません。
そのまま加熱調理に使うことができます。使い方は生のなすと基本的に同じです。煮浸しや揚げ浸しなど味を染み込ませる料理が特におすすめです。麻婆なすやカレーの具にしても◎。
おひたしにしたい場合は、前日に冷蔵庫に移して常温解凍か、流水解凍を。
当たり前ですが、新鮮ななすの方が、保存期間が長くなります。新鮮ななすは下記の特徴があります。
ガクの紫色が濃く、トゲが鋭く尖っている
ヘタの切り口が白い
ガクと実の間が白〜薄紫〜紫に変化している
実の紫色が濃く、ハリ・ツヤがある
手にしたときに軽いものは中身がスカスカになっている可能性が高いので注意しましょう。また、ヘタの大きさに対して実が小さいものは未熟です。傷やシワがあるものも避けましょう。
なすが腐ってしまう前に大量に消費できるおすすめのレシピをご紹介します。
Filyのレシピはすべて小麦粉、乳製品、白砂糖不使用です。
蒸しなすで作るイタリアンサラダです。にんにくがアクセントになっています。
レモン果汁でさっぱりといただきましょう。
蒸しなすのカルパッチョのレシピはこちら
なすの定番料理、煮浸しのレシピのご紹介です。トロトロななすに味がしっかり染み込み、箸が進みます。
なすは切り目(隠し包丁)を入れることで味が染み込みやすくなります。
なすの煮浸しのレシピはこちら
豆板醤の辛さの中になすの甘みがプラスされて、ご飯がよく進む一品です。揚げずにフライパンだけで作れる簡単レシピです。
豆板醤を炒めるのがポイントです。豆板醤を炒めることで辛味や香りを引き出せます。
麻婆なすのレシピはこちら
なすが入ったキーマカレーです。野菜の水分だけで作るので、うまみが濃厚です。
カレー粉を炒めることで、スパイスの成分が溶け出し風味が広がります。
なすのキーマカレーのレシピはこちら
なすに限らず腐敗してしまった野菜には、細菌が繁殖している可能性があります。そのため、腐敗しているなすを食べてしまった場合、細菌の種類によっても異なりますが、嘔吐や下痢、腹痛などの症状が出ることがあります。
症状が出た場合は、自己判断で市販の下痢止めなどの薬を飲むのはやめたほうが良いとされています。自己判断で市販の薬を使うと、症状の原因である細菌やウイルスの排出を邪魔してしまい病状が悪化してしまうことがあります。
症状が出た場合は、速やかに病院を受診しましょう。少しでも怪しいなと感じる場合は、食べずに処分する方が良いです。
出典:食中毒かな?と思ったら(農林水産省)
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