大根は水分量の多い野菜ですので、保存環境が悪かったりするとカビが生えることがあります。本記事では大根に生えるカビの種類や腐敗が進んだ大根の特徴などを解説します。
大根は水分を多く含む野菜であるため、高温多湿の場所で保存していたりするとカビが生えてしまうことがあります。
大根の皮やカットした断面に黒い斑点(はんてん)があったり、集中して黒い炭がついているように見える箇所がある場合は黒カビが生えている可能性が高いです。
黒カビはクラドスポリウム属の病原菌で、170種以上いると言われています。その中でも代表的な黒カビは、クラドスポリウム・クラドスポリオイデスとクラドスポリウム・スフェロスパーマムです。空気中に舞っていて、繁殖できる場所を見つけると一気に増えていきます。多湿の場所を好み、食べ物以外でもお風呂のサッシやエアコンの内部などに多く見られます。
大根の皮やカットした断面に白いふわふわとしたほこりのようなものがついている場合は、白カビが生えています。
白カビは食品にできるカビで最も身近な種類です。黒カビと同様に普段は空気中に舞っていて、繁殖できる場所を見つけるとどんどん増えていきます。大根は元々皮も中身も白いので、なかなか気がつきにくいです。購入してから時間が経っている大根を使用する場合はチェックするようにしましょう。
大根をカットした断面のふちが黒く変色している場合は「ダイコンバーティシリウム黒点病」にかかっている可能性があります。ダイコンバーティシリウム黒点病は維管束部が黒変してしまう病気で、中心部では放射状に黒変し皮に近い部分では輪状に黒点が配列されます。
ダイコンバーティシリウム黒点病は「バーティシリウム・ダーリエ」という糸状菌による土壌汚染が原因で、20~25℃のやや涼しい時期に栽培をしている大根を中心に発症しやすい病気です。栽培中に感染する病気ですが、表面には異常が現れないため、購入した後にカットして初めて気がつくということはよくあります。
切り口が透明〜黒っぽい紫になっている場合は水晶現象と呼ばれる生理現象によるものです。
水晶現象は、栽培中に雨などで大根の水分が多くなってしまった場合に、その後の温度変化が原因で起こります。カットしないとわからないため、水晶現象が起こっている大根が店頭に並んでいることもあります。また、気温が高い夏場などに長い間常温で置いていたり、冷蔵と常温での保存を繰り返した場合など保存中に起こることもあります。
大根の中心部分が青に近い黒色に変色している場合は「ダイコン青変症」と呼ばれる生理現象が起こることによるものです。「青あざ症」とも言われます。
ダイコン青変症が起こる原因は、生育中の土壌が高温多湿の状態になり、ホウ素が不足することです。ホウ素は、大根に限らずあらゆる野菜や果物の生育に重要な成分です。大根の場合、ホウ素が不足すると芯の中心が青く変色したり、形がいびつになったり、皮の表面が肌荒れしたような状態になったりします。研究により20℃前後で発生しやすいことがわかっており、品種によって起こりやすいものとそうでないものがあります。
青っぽくなるのはアントシアニン系色素ではないかと考えられていましたが、アブラナ科野菜に微量に含まれる物質が酸化した青色物質群であることが明らかになってきています。
出典:農林水産省
大根の中心部が黒く変色している場合は、「黒芯症」である可能性が高いです。黒芯症を発症する原因は2つあります。
1つは土が固すぎたり水はけが悪い、風通しが悪いといった生育環境が原因の生理障害です。
2つ目は病原菌が原因で発症する「黒斑細菌病」や「斑点細菌病」「黒腐病」によるものです。黒斑細菌病は、根の中心部または表皮の下に向かって黒く変色していきます。斑点細菌病は、葉身を茎や枝につないでいる葉柄の根本から根の中心部に向かって黒く変色していきます。黒腐病は、導管部から黒く変色していきます。
生理障害が原因によるものか病原菌が原因によるものか判別するのは難しいですが、病原菌による黒芯症の場合は症状が進行すると腐敗したり空洞化することがあります。
出典:ダイコン黒芯症の防除対策(和歌山県農業試験場)
害虫による被害は基本的に、大根の根の外皮と葉ですが、虫が大根の中まで侵食し、その結果黒くなっている場合があります。
例えば、キスジノミハムシの成虫は葉を、幼虫は根を食害します。根を食べる害虫は、大根の中まで侵食して黒く変色させてしまうだけではなく、食痕が軟腐病などの原因になることもあります。
一般的にスーパーなどで販売されている大根は皮も中身も白いものですが、「黒大根」と呼ばれる皮が黒い品種もあります。この場合はもちろん腐敗や病気が原因で黒くなっているわけではありませんので、問題なく食べることができます。
黒大根の原産地はヨーロッパで、長細い「黒長大根」と丸い形の「黒丸大根」があります。日本ではあまり食べられていない品種ですが、ヨーロッパでは古くから食べられている品種です。
大根の中に黒カビが生えてしまった場合は残念ですが破棄しましょう。
皮だけに黒カビが発生してしまった場合は、固い野菜であれば密度が高いため、中身に異常が見られなければ皮を厚めに剥けば問題ないとされています。しかし、表面だけであってもカビの胞子は目に見えないほど小さいため、中身や見えない部分まで侵食してしまっている可能性もあります。小さなお子様や高齢者などが食べる場合や心配な方は破棄するのが無難です。
白カビが生えてしまった場合は、皮のみや狭い範囲であれば皮を厚めに剥いたり切り取れば食べることができます。
表面のみであれば、白カビは洗い流すことができます。ただし、上述したように大根自体が白いため白カビがどの範囲まで広がっているのか見た目では判断できないことが多いです。心配な方は破棄する方が良いでしょう。
白カビでも中身全体まで侵食してしまっている場合は、残念ですが破棄しましょう。
「加熱すれば大丈夫なのでは」と考える方も多いかと思いますが、カビの菌も多くは熱に弱いと言われているものの、種類によっては加熱をしても死滅しない場合があります。また、一旦カビが繁殖すると菌が死滅しても「カビ毒」を発生させることがあり、中毒症状を引き起こす可能性もあります。カビ毒は加熱で除去することはできません。
出典:カビとカビ毒についての基礎的な情報(農林水産省)
新鮮な大根は全体的に白色をなしていますが、腐敗が進むと茶色っぽい色に変色してきます。カビが生えている状態で茶色く変色していたら破棄しましょう。
カビが生えているわけではないのに部分的に茶色く変色している場合は、赤芯症や黒芯症などが起きている可能性があります。「症」という名がついていますが、厳密には生理現象であり、病気ではありません。湿度や温度が高いことが原因で起こる生理現象で、大根の根の中心部分が茶色っぽく変色します。この場合、変色の部分を取り除けば食べることは可能です。
腐敗が進んだ大根は、軽く触っただけで根(実)が崩れてしまうほどブヨブヨになっています。
柔らかいからといって必ずしも腐っているというわけではありません。収穫から時間が経って鮮度が落ちた大根も柔らかくなりますが、味や食感が落ちているだけで食べること自体は可能です。しかし、カビが生えている場合は腐敗が進んでいる可能性が高いです。
大根が腐ると、ネバネバとしたヌメリが出始めます。これは新鮮な大根にはない症状です。
手で触るとぬるぬるとしていたり、表面には異常がないように見えてもカットしたときに切り口がぬるぬるとしている場合は腐敗が進み、中が腐ってしまっていることが多いです。
カビが生えてヌメリが出てきた大根は、残念ですが食べずに処分する方がベターです。
腐敗がかなり進むと、大根から汁が出るようになります。
元々大根は水分を多く含む野菜です。新鮮なうちはその水分が自ら外に出ることはありませんが、腐っている大根は中から汁が出て実も溶け出してしまいます。
このような大根は食べずに処分しましょう。
大根は元々そこまで臭いがきつくない野菜ですが、腐敗が進むと酸っぱい臭いがし始めます。腐敗具合によってはカビや生ゴミのような悪臭を放つことも。
明らかにいつもと違う臭いがする場合は食べずに処分するようにしましょう。万が一食べてしまっても味に異変を感じたら直ちに食べるのを止め、すべて廃棄するようにしましょう。
最後に大根の正しい保存方法を紹介します。
丸ごと1本であれば常温での保存が可能です。常温で大根を保存した場合の保存期間目安は約1〜2ヶ月です。
大根の葉は切り落としておきます。葉元から1cmほど根を含めて切り落とし、切り落とした葉は別の方法で保存します。葉を切り落としたら、乾燥防止のために切り口(根の部分)にラップをします。全体を新聞紙で包んで、段ボールなどに入れ立てて直射日光の当たらない冷暗所で保存します。カビを防ぐためには直射日光の当たる場所や高温多湿の場所で保管することが大切です。
大根に限らず野菜全体に言えることなのですが、育った環境と同じように保存することで、ストレスを感じることなく鮮度を保って保存することが可能になります。
カットした大根は常温保存はNG。下記でご紹介する、常温以外の方法で保存するようにしましょう。
ちなみに、切り落とした大根の葉にも栄養素がたくさん含まれていますので、捨てずに根とは別々に保存して調理に使いましょう。大根の葉の保存方法についてはこちらの記事で紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
丸ごと1本でも夏などの気温が高い季節や室温が高ければ、常温ではなく冷蔵保存の方がカビが生えるのを防ぐことができます。また、カットした大根は季節問わず常に冷蔵で保存します。
大根丸ごと1本を冷蔵で保存する場合も、常温保存時と同じように、葉を切り落とし、切り口にラップをします。大根全体を新聞紙で包み、野菜室で保存します。できれば立てて保存するのがベストです。
冷蔵室では湿度が高いため、カビを防ぐためには湿度が低い野菜室での保存が良いです。
丸ごと1本を冷蔵保存する場合、約2週間ほど保存することができます。
丸ごと1本の大根をカットしてから保存することも可能です。また、使いかけの大根や、カットされた状態で購入した大根もこの方法で冷蔵保存します。
大根を切り分ける際は、部位ごとに味や食感が異なるため、3等分(頭・中間・先端)にカットするのがおすすめです。カットしたら全体をラップもしくはキッチンペーパーで包み、ポリ袋に入れて口を閉じ、野菜室で立てて保存します。
カットした大根は、傷みが早いので、約1週間ほどを目安に食べきるようにしましょう。また、キッチンペーパーが湿ってきたら都度取り替えるようにしましょう。湿ったままにしているとカビが生える原因となります。
料理に合わせて乱切りやいちょう切りなどお好みの大きさにカットしてから冷蔵することも可能です。
カットした大根は冷蔵用保存袋に入れて冷蔵庫で保存します。2〜3日を目安に使い切るようにしましょう。
皮を剥いてカットする場合、剥いた皮は捨てずに別に保存しましょう。大根の皮はきんぴらや漬物などにして食べると美味しいですよ。
大根は冷凍で保存することでもカビが生えるのを防ぐことができます。冷凍保存期間の目安は約1ヶ月です。丸ごと1本冷凍するのは大きすぎるので、カットしてから保存するようにしましょう。
カットして生のまま冷凍するのもOKですが、解凍後の食感が変わりやすいので、すりおろしたり茹でたり、下味をつけてから保存するのがおすすめです。
大根の土などの汚れを落とし、皮つきのまますりおろします。軽く水けをきって冷凍用保存袋に平らになるように入れて冷凍庫へ。水分が多いので、急速冷凍機能を使って短時間で凍らせるのがポイントです。急速冷凍機能がない場合は、金属トレイを使って冷凍しましょう。
保存袋以外に、製氷器やアルミカップに入れて冷凍するのも◎です。すりおろしにすれば、解凍後の食感が変わりにくいです。大根おろしとして食べる場合は、前日に冷蔵庫に移して自然解凍しましょう。
冷凍する前に茹でたり蒸気に当てて加熱処理することを「ブランチング」と言いますが、野菜はブランチングすることで変色しづらく、食感も悪くなりづらいというメリットがあります。生のまま冷凍するよりも、食感がスカスカになりづらいです。
大根の皮を剥いて薄めのいちょう切りにし、固めに茹でます。粗熱が摂れたら冷凍用保存袋に入れて急速冷凍。剥いた皮は別に冷凍保存し、調理に使用しましょう(皮の冷凍保存方法はこのあとご紹介します)。
すでに火が通っているので、調理時間が短くて済みます。凍ったまま調理に使用してOKです。
だしで煮てから冷凍するのもおすすめです。
1cmほどの輪切りにし鍋に入れ、ひたひたになるくらいのだし汁を加えます。そこに昆布1枚(5cmほど)を入れ15〜20分ほど煮ます。粗熱が取れたら、だし汁ごと保存袋に入れ冷凍します。
煮てから冷凍した大根は、凍ったままおでんや煮物などに加えて味を染み込ませましょう。なお、炒めてから冷凍するのもOKです。
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