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じゃがいもは栄養ないと言われる理由|不足している栄養とは?

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じゃがいもは栄養ないと言われる理由|不足している栄養とは?

じゃがいもが栄養がないと言われる理由を解説します。実際に不足する栄養素、実は豊富に含まれている栄養素を分かりやすく解説します。

じゃがいもに栄養がないと言われる理由

主成分が糖質(炭水化物)

じゃがいもは炭水化物の含有量が多く、糖質は8.4gです。野菜の中では高めです。

しかし、糖質(炭水化物)が高い=栄養がない、ということにはなりません。

そもそも、炭水化物は人間のエネルギー源になる大切な栄養素です。ダイエッターから忌み嫌われる糖質ですが、適量なら筋肉が活動するためのエネルギーとなり、運動をする方にとっては、大変重要な役割を果たします。

また、糖質が高いからといってビタミン・ミネラル類が少ない、ということにもなりません。

色が白い

じゃがいもは皮を剥くと全体的に白色です。

色が薄いと、なんとなく栄養がないと感じる方が多いかと思います。一般的に色が濃い野菜の方が栄養価が高いと言えますが、必ずしもそうではありません。すべての栄養素が色素をもつわけではありません。

じゃがいもは淡色野菜に分類されます。

緑黄色野菜とは、原則として可食部100g中に600μg以上のβ-カロテンが含まれている野菜を指します。600μg未満の野菜は淡色野菜です。600μg未満でも、食べる量や回数が多いと緑黄色野菜に分類されます。

淡色野菜は白っぽい野菜が多いです。

淡色野菜であるじゃがいもは確かにβ-カロテン(ビタミンA)の含有量は少ないですが、だからといって栄養がないわけではなく、β-カロテン以外の栄養素が含まれます。

あまり味がしない

野菜は品種改良が繰り返され、特有の香りやクセをなくし食べやすくした結果、栄養価が大幅に減少しているのは事実です。例えば、1950年と2005年で比較すると、人参はβ-カロテン(ビタミンA)は8割減、ほうれんの鉄分も8割減、アスパラガスのビタミンB2は半減、キャベツのビタミンCも半減しています。

しかし、味が薄い=栄養がない、とは一概にいえません。味があまり感じられない栄養素の方が多いためです。ピーマンの香り成分であるピラジンや、ゴーヤの苦み成分であるモモルデシンのように強い風味がある栄養素はむしろ稀です。

じゃがいもに実際に不足する栄養素

机に並べられたじゃがいも

「じゃがいもに栄養がない」のは誤りですが、実際あまり含まれていない、または全く含まれていない栄養素も存在します。

β-カロテン

β-カロテンは体内で必要量がビタミンAに変換されます。皮膚や喉など全身の粘膜を健康に保ち、体外からのウィルスや細菌の侵入を防ぐことで免疫力をアップします。また、抗酸化作用もあるので、アンチエイジング効果や生活習慣病の予防効果が期待できます。

変換されたビタミンAは、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあります。視力を正常に保つ役目や視力低下の抑制効果、他にも皮膚の健康維持に関与していることから乾燥肌やニキビ肌の改善など美肌効果も期待できます

ビタミンD

ビタミンDは野菜や穀物、豆類にはほとんど含まれていない栄養素です。主に魚類やきのこ類に多く含まれています。ビタミンDの働きには正常な骨格と歯の発育促進があります。

また、小腸でのカルシウムとリンの腸管吸収を促進させ、血中カルシウム濃度を一定に調節することで、神経伝達や筋肉の収縮などを正常に行う働きもあります。

ビタミンDを多く含む食品は、きくらげ、干し椎茸、サケ、イワシ、サンマなどが挙げられます。

ビタミンE

ビタミンEは強力な抗酸化作用があります。体内の脂質が酸化するのを抑え、老化の予防をしてくれます。ビタミンEは血液中の悪玉コレステロールの酸化を抑える働きがあり、酸化によって進行してしまう動脈硬化の予防に役立ちます。

さらにビタミンEは末梢血管の拡張させる働きがあるため、血行促進に繋がります。また副腎や卵巣の性ホルモンの分泌の調整にもビタミンEは関与しているので、生殖機能の維持にも役立ちます。

ビタミンK

ビタミンKは血液を凝固させる成分を合成する働きがあり、出血を止める役割があります。月経過多の症状を軽減する効果も期待できます。また、出血を止めるだけでなく、血流が悪くならないよう凝固の抑制にも働きかけます。

さらにビタミンKは、骨から血液中にカルシウムが放出されるのを抑え、骨にカルシウムが沈着するのを助けてくれます。ビタミンDと並び、健康な歯や骨を作るのに欠かせないビタミンです。

じゃがいもの豊富に含まれる栄養素

じゃがいも100gあたりの主な栄養素

じゃがいもの詳しい栄養素に関してはこちらの記事を参考にしてください。

ビタミンC

意外かもしれませんが、じゃがいもは「畑のりんご」といわれるほど、ビタミンCが豊富に含まれています

ビタミンCはたんぱく質からコラーゲンを合成する働きがあります。コラーゲンは、細胞間の結合組織で、血管や皮膚、骨、筋肉などを丈夫にします。コラーゲンによって、肌にハリ・ツヤが生まれます。シミのもとであるメラニン色素の合成も抑えるなど美肌づくりに大切な栄養素です。

そのほか、ビタミンCには白血球を活性化させて免疫力を高める作用もあります。抗ストレスホルモンの合成にも欠かせない栄養素です。

じゃがいものビタミンCの性質に関しては、後述します。

カリウム

じゃがいもは「カリウムの王様」と呼ばれるほど、カリウムが豊富な野菜です。

カリウムはミネラルの一種です。

カリウムはナトリウム(食塩)と協力し細胞の浸透圧を維持しています。体内に十分なカリウムがあると、余分な食塩を排出して血圧を正常に保ちます。しかし、カリウム不足や塩分の過剰摂取が続く、むくみなどの原因になります。

そのほか、腎臓の老廃物の排出を助けたり、筋肉の収縮をスムーズにする働きもあります。

パントテン酸(ビタミンB5)

パントテン酸は肉や魚介などの動物性食品から、野菜やきのこなどの植物性食品まで、様々な食品に含まれます。野菜の中では比較的じゃがいもにも多く含まれています。

三大栄養素(糖質・脂質・たんぱく質)の代謝に働く補酵素コエンザイムAの成分となり、エネルギーの代謝をサポートする役割を担います。

さらに、副腎の働きを強化し、抗ストレスホルモンとよばれる副腎皮質のホルモンの分泌を高める作用もあります。また、皮膚や髪の健康に関わるほか、免疫力も高めます。

ビタミンB6

ビタミンB6は肉や魚に豊富で、特に生魚に豊富です。野菜の中では比較的じゃがいもにも多く含まれます。
ビタミンB6はたんぱく質を分解する補酵素としての役割を担います。血液の元となる赤血球や神経伝達物質セロトニンの合成にも働きます。

また、免疫機能を正常に保つ役割も担います。

じゃがいもにはビタミンB1やナイアシン(ビタミンB3)などのビタミンB郡も含まれますが、少量となっています。

食物繊維

食物繊維には、水に溶ける「水溶性食物繊維」と、水に溶けない「不溶性食物繊維」があります。食物繊維と糖質を足したものが炭水化物です。

じゃがいもにはどちらも含まれますが、不溶性食物繊維の方が多いです。近年(2018年)の計測方法の変更により、じゃがいもの食物繊維の含有量は大幅にアップしています。

不溶性食物繊維は水に溶けずに水分を吸収すると膨らみます。その結果、腸が刺激されて、ぜん動運動が盛んになります。また、便のかさも増します。これらの働きによって、スムーズな排便が促されます。腸内環境も整います。

水溶性食物繊維は、水に溶けることで食べたものの粘稠性を高めます。それによって食べたものの腸への移動がゆっくりになるため、血糖値の上昇がゆるやかになります。また、水溶性食物繊維は、腸でのコレステロールの吸収を抑え、体外に排出する役割もあります。

参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス

じゃがいもの効果的な食べ合わせ

お皿に入ったじゃがいも

たんぱく質と一緒に

ビタミンCはたんぱく質がコラーゲンになるのに必要不可欠な栄養素です。コラーゲンには肌に潤いをもたらす、丈夫な骨を形成する、丈夫な筋肉を形成する、関節の働きをよくするなど様々な効能があります。ビタミンCが豊富なじゃがいもには、たんぱく質が豊富な食材を合わせるといいでしょう。たんぱく質が豊富な食材には肉類や魚介類、卵、大豆などがあります。

また、じゃがいもに豊富に含まれるカリウムは血圧を下げ、たんぱく質は血管をしなやかにする作用が期待できるので、カリウムにとても良い組み合わせです。

鉄と一緒に

ビタミンCは非ヘム鉄の吸収率もアップさせます。鉄分はヘム鉄と非ヘム鉄に分けることができますが、特に非ヘム鉄は吸収率が低いと言われています。そのため、じゃがいもなどビタミンCを豊富に含む食材と一緒に食べることで貧血予防に役立つでしょう。

非ヘム鉄を多く含む食材には野菜や卵、豆類、海藻類などです。野菜だとほうれん草や小松菜、豆類なら大豆やココア、納豆などに含まれています。

ヘム鉄が豊富に含まれるものは、お肉の赤身やレバー、魚(まぐろやかつお)、赤貝などです。ヘム鉄はもともと非ヘム鉄に比べると吸収されやすい特徴があります。

ビタミンEと一緒に

ビタミンCには、ビタミンEの抗酸化作用を持続させる作用があります。ビタミンEには体内の脂質部分を活性酸素から守る抗酸化作用があるのですが、このときにビタミンCがいることで、サビ取りをして疲れたビタミンEをもう一度復活させる効果があります。

また、もやしにはないβ-カロテンの野菜と組み合わせるのもよいでしょう。β-カロテンは必要な分だけ体内でビタミンAに変換されます。ビタミンA・C・Eはどれも抗酸化作用が強く、ビタミンエースと言われます。例えば、中華料理のレバニラ炒めなどは、栄養素の組み合わせがとても良い料理です。ニラにはβ-カロテン、もやしのビタミンC、レバーのビタミンEが一緒に摂取できます。

抗酸化作用で言うと、ジャガイモに含まれるビタミンCとトマトに含まれるリコピンは一緒に摂ると相加効果で抗酸化作用がアップします。シミやシワ、老化の原因となる活性酸素の発生を防いでくれます。

じゃがいもの栄養に関する豆知識

机の上にあるじゃがいも

新じゃがは栄養価が高い?

3月から7月頃までに採れたじゃがいもを新じゃがいも(新じゃが)と呼びます。7月に出回っているじゃがいもは最もビタミンCが多いというデータがあります。また、新じゃがは皮が薄く皮ごと食べやすいため栄養をより摂取しやすいというメリットもあります。皮ごと食べる際は、農薬をしっかり洗い流すようにしましょう。

一方、新じゃがいもは粉吹きいもに不向きと言われています。粉吹きいもとは塩茹でしたじゃがいもの表面一層だけ組織を壊し、細胞を離ればなれにしたものです。新じゃがのペクチン(食物繊維の一種)は未熟で不溶性なので、でんぷんの吸水を妨げ、表面がボロボロになりづらく、かつ、新じゃがは細胞自体は柔らかくて崩れやすいので、中がボロボロになり表面は粉を吹かないという真逆な仕上げになってしまいます。

ダイエットには?筋肉になる?

じゃがいもの100gあたりのカロリーは76kcalです。ご飯100gあたり156kcal。じゃがいもは野菜の中ではカロリーが高い方ですが、ごはんに比べれば低いのが特徴です。また、イモ類は人によっては少量でも満腹感を得やすいメリットがあります。

さらに、じゃがいもには糖質をスムーズにエネルギーに変えてくれるビタミンB1や、血糖値の急激な上昇を抑えてくれる食物繊維、むくみ予防してくれるカリウムなどダイエッターにうれしい栄養素が豊富に含まれています。また、たんぱく質を筋肉に変えてくれるビタミンB6も含まれているためトレーニングしている人には筋力アップにも効果があります。

食べすぎればもちろん太りますが、ご飯の量を減らしてじゃがいもに置き換えるとダイエット効果が期待できるといえます。

加熱調理はOK?

ビタミンCは熱に弱いと言われがちですが、ビタミンCには2種類あり、主に野菜や果物に含まれているものは熱に弱くありません。しかし、熱に強くてもビタミンCは水溶性なので、水にさらすと溶けて流失してしまいます。加熱調理の中では茹でることで、ビタミンCは多く流失します。

ただし、じゃがいものビタミンCは、じゃがいもに豊富に含まれるデンプンに守られていて、水に触れにくい構造になっています。そのためビタミンCが失われにくい野菜と言われています。それでも皮を剥いたり細かくカットしてから茹でると流れ出てしまうこともあります。水溶性の栄養素が多い場合は、じゃがいもはみそ汁やスープなど煮汁ごと食べられる料理がおすすめです。また、お鍋やシチューなどもいいですね。

皮は栄養がたっぷり

じゃがいもは皮ごと食べるほうがカリウム、鉄、食物繊維の量が多くなります。また、皮にはポリフェノールの一種であるクロロゲン酸が多く含まれています。クロロゲン酸には強い抗酸化作用があるためシミ、シワ、老化を防止する働きがあります。そのほかにも、脂肪肝や糖尿病の予防にも効果があると言われています。

じゃがいもの有害物質に注意

芽が出たじゃがいも

じゃがいもの芽緑色になった皮にはソラニンやチャコニンという毒素が含まれています。大量に摂ると下痢、腹痛、吐き気、めまいなどの症状が現れます。心配な方は、芽は取り除き、皮は厚めに剥いてから使いましょう。

また、じゃがいもを揚げたり炒めたり焼いたりするとじゃがいもに含まれる糖とアミノ酸の一部が反応してアクリルアミドという有害物質ができます。冷蔵保存するとじゃがいもの糖の濃度は高くなるため、冷蔵保存したじゃがいもを揚げたり炒めたりするとアクリルアミドのできる量が増える可能性があります。煮る、蒸す、茹でるなど水を使った調理ではアクリルアミドができにくいと言われています。