じゃがいもの食物繊維の含有量について解説していきます。食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があり、じゃがいもにはそれぞれどのくらい含まれるのかも解説します。
食物繊維は、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類に分けられます。
水溶性食物繊維はその名の通り、水に溶ける食物繊維で、溶けるとジェル状になります。水溶性食物繊維を多く含む食材には、わかめや昆布、めかぶなどの海藻類や、野菜、果物があります。
不溶性食物繊維は水に溶けない食物繊維で、水分を吸収します。植物の細胞壁を構成していたりします。玄米やライ麦の穀類や、大豆などの豆類に多く含まれています。
水溶性食物繊維は、水に溶けることで食べたものの粘稠性(ねんちゅうせい)を高めます。粘稠性とは粘り気のことです。それによって食べたものの腸への移動がゆっくりになるため、血糖値の上昇をゆるやかになり糖尿病予防に繋がると考えられています。
一方、不溶性食物繊維は水に溶けず水分を吸って、腸の中で大きく膨らみ、排便をスムーズにし、有害物質が体にとどまる時間を短縮させることで、便秘の予防や改善、腸内環境を整える役割を果たします。腸内環境を整えることは美肌や痩せやすい身体づくりなどに貢献すると考えられています。
厚生労働省が発表してる日本人の食事摂取基準(2020年版)では、18〜64歳の食物繊維の1日あたりの目標量は男性が21g以上、女性が18g以上です。
しかしながら、食物繊維は摂取しすぎると、腹痛や下痢などの原因になるので注意が必要です。
出典:厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020 年版)
じゃがいもに含まれる食物繊維の量を解説していきます。
じゃがいも(生・皮つき)100gあたりの食物繊維の含有量は、9.8gです。そのうち、水溶性食物繊維が5.4g、不溶性食物繊維が4.4gです。
野菜の多くは不溶性食物繊維が多い傾向にありますが、じゃがいもは水溶性食物繊維が多くなっています。
出典:文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)
じゃがいもは皮ありの方が食物繊維が0.9gほど多くなります。水溶性食物繊維が0.5g、不溶性食物繊維が0.4g多いです。
皮にも食物繊維が含まれているため、皮ごと食べる方がより多く食物繊維を摂取できます。しかし、じゃがいもを皮ごと食べるのはリスクもあるので注意が必要です。
新じゃがの方が食物繊維は豊富になります。
食物繊維に限らず、多くの栄養素が新じゃがの方が豊富に含まれています。ビタミンCに関しては通常のじゃがいもの約4倍と言われています。
じゃがいもの食物繊維の量が大幅に増えたと近年話題になっています。
生の皮なしのじゃがいも塊茎の食物繊維の含有量は、「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」から、「日本食品成分表2015年版(七訂)2018年追補版」で、1.2gから8.9gに増えました。
これは、食物繊維の分析方法が変わったためです。以前は「プロスキー変法(P法)」に基づいていましたが、現在は「AOAC.2011.25法(A法またはAOAC法)」に基づいています。
日本食品標準成分表2020年版(八訂)でも、生の皮なしのじゃがいも塊茎の食物繊維量は8.9gと記されています。ちなみに皮付きのじゃがいものP法の値は表記されていません。
可食部100gあたり
じゃがいも:1.2g⇒8.9g
キャベツ:1.8g
トマト:1.0g
ナス:2.2g
ほうれん草:2.8g
大根:1.4g
他の野菜と比べると、じゃがいもの食物繊維が多いことがわかります。
しかし、これにはカラクリがあります。じゃがいも以外の野菜では日本食品標準成分表2020年版(八訂)においても、以前のP法が使用されているため、じゃがいもの食物繊維は他の野菜と単純比較はできません。
従来のP法によるじゃがいも(皮なし・生)の食物繊維量は1.2gなので、他の野菜と比べて特別多くないのがわかります。
出典:文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)
可食部100gあたり
ながいも:1.4g
さつまいも:2.3g
里芋:2.3g
です。
他の芋類と比べた場合、A法では明らかにじゃがいもの方が食物繊維は豊富ですが、P法だとむしろ少ないことがわかります。
食物繊維は植物性食品に多く含まれており、穀類・豆類・野菜類・果実類・きのこ類・藻類などに多く含まれています。
100gあたり
きくらげ(乾):57.4g
大豆(乾):21.5g
切り干し大根(乾):21.3g
グリーンピース:7.7g
糸引き納豆:6.7g
モロヘイヤ:5.9g
わかめ(乾燥の水戻し):5.8g
ごぼう:5.7g
生しいたけ:4.9g
ラズベリー:4.7g
里芋:2.3g
食物繊維の含有量が最も多いのは乾燥きくらげで57.4gも含まれています。ただし、茹でると100gあたりの含有量は5.2gにまで減ります。乾燥させた食材は水分量が少ないため、その分栄養素の割合が高くなります。野菜ではグリンピースが多いです。
出典:厚生労働省|e-ヘルスネット『食物繊維の必要性と健康』
じゃがいもは食物繊維が豊富ですが、加熱料理をすることで増減するか気になりますよね。じゃがいもは加熱すると食物繊維は減ります。水溶性食物繊維、不溶性食物繊維ともに減りますが、割合としては水溶性食物繊維の方が減っています。ただし、上述したように昨今ではじゃがいもの食物繊維量の測定方法が変わっています。以前のP法だと、加熱後の食物繊維量は増えています。
今回は、皮なしじゃがいもの値で比較します。皮なしの生のじゃがいも100gの食物繊維の含有量は8.9gです。
最もシンプルな食べ方である蒸しじゃがいも。そのまま塩コショウで食べてもおいしいですし、つぶしてポテトサラダにしたり、焼いたりしてもおいしいですよね。
蒸したじゃがいも100gあたりの食物繊維は3.5gです。生と比べると半分以下に減ります。
水溶性の栄養素であるビタミンCやカリウムの損失を抑え、お手軽なため人気な調理法である電子レンジによる加熱。じゃがいもなどの野菜とお肉、調味料をボウルに入れて電子レンジで加熱するだけで肉じゃがが出来てしまいます。
電子レンジで加熱したじゃがいも100gあたりの食物繊維は3.5gです。蒸したじゃがいもと変わりません。
水煮した(茹でた)じゃがいもは、肉じゃがやおでんなど味付けをしながら煮たものより味気なく感じますが、オリーブオイルをかけたり、アンチョビやサバ缶などと一緒に食べるとおいしいですよね。
水煮したじゃがいも100gあたりの食物繊維は3.1gです。蒸したり電子レンジで加熱するよりも少し少ないです。
みんな大好きフライドポテト。とてもおいしいですが、カロリーも高いのでダイエット中には控えたい食べ物です。
揚げたじゃがいもの100gあたりの食物繊維は3.9gです。ちなみに皮付きだと4.3gです。他の加熱調理よりもやや多いです。
それ以外の調理法の値は文部科学省が公表していません。
出典:文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)
最後にじゃがいもの食物繊維以外の栄養素・成分を紹介します。じゃがいもの詳しい栄養素に関してはこちらの記事を参考にしてください。
意外かもしれませんが、じゃがいもは「畑のりんご」といわれるほど、ビタミンCが豊富に含まれています。
ビタミンCはたんぱく質からコラーゲンを合成する働きがあります。コラーゲンは、細胞間の結合組織で、血管や皮膚、骨、筋肉などを丈夫にします。コラーゲンによって、肌にハリ・ツヤが生まれます。シミのもとであるメラニン色素の合成も抑えるなど美肌づくりに大切な栄養素です。
そのほか、ビタミンCには白血球を活性化させて免疫力を高める作用もあります。抗ストレスホルモンの合成にも欠かせません。
じゃがいものビタミンCの性質に関しては、後述します。
じゃがいもは「カリウムの王様」と呼ばれるほど、カリウムが豊富な野菜です。
カリウムはミネラルの一種です。
カリウムはナトリウム(食塩)と協力し細胞の浸透圧を維持しています。体内に十分なカリウムがあると、余分な食塩を排出して血圧を正常に保ちます。しかし、カリウム不足や塩分の過剰摂取が続く、むくみなどの原因になります。
そのほか、腎臓の老廃物の排出を助けたり、筋肉の収縮をスムーズにする働きもあります。
パントテン酸は肉や魚介などの動物性食品から、野菜やきのこなどの植物性食品まで、さまざまな食品に含まれます。野菜の中では比較的じゃがいもにも多く含まれています。
三大栄養素(糖質・脂質・たんぱく質)の代謝に働く補酵素コエンザイムAの成分となり、エネルギーの代謝をサポートする役割を担います。
さらに、副腎の働きを強化し、抗ストレスホルモンとよばれる副腎皮質のホルモンの分泌を高める作用もあります。また、皮膚や髪の健康に関わるほか、免疫力も高めます。
ビタミンB6は肉や魚に豊富で、特に生魚に豊富です。野菜の中では比較的じゃがいもにも多く含まれます。
ビタミンB6はたんぱく質を分解する補酵素としての役割を担います。血液のもととなる赤血球や神経伝達物質セロトニンの合成にも働きます。
また、免疫機能を正常に保つ役割も担います。
じゃがいもにはビタミンB1やナイアシン(ビタミンB3)などのビタミンB郡も含まれますが、少量となっています。
GABA(ギャバ)もアミノ酸の一種です。野菜や果物に多く、その中でもじゃがいもは含有量が高くなっています。ただし、明確な含有量は分かっていません。
GABAの代表的な働きはリラックス効果です。ストレスを感じたり運動をして興奮状態になると、脳内で活発にアドレナリンが分泌されますが、GABAはアドレナリンの分泌を抑制します。アドレナリン分泌が抑制されることで血圧が正常にし、酸素の供給を助けるとされています。
参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス
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