じゃがいもの芽はなぜ食べてはいけないのかご存知でしょうか?本記事ではじゃがいもの芽が危険な理由や、芽が出たじゃがいもの対処法、芽が出にくいじゃがいもの保存方法なども合わせて詳しく解説します。
じゃがいもの芽や芽の根本には天然毒素であるソラニンやチャコニンが含まれており、一定量摂取すると吐き気やおう吐、下痢、腹痛、頭痛、めまいなど症状が出る可能性があります。
ソラニンとチャコニンは、グルコースやガラクトースなどの「糖」と、植物由来の窒素を含んだアルカリ性(塩基性)物質である「アルカロイド」からできているグリコアルカロイド(糖アルカロイド)と呼ばれる成分の一種です。育っていく中で外敵に食べられてしまわないようにソラニンやチャコニンといった有害物質をもつようになったと言われます。
出典:食品中の天然毒素「ソラニン」や「チャコニン」に関する情報(農林水産省)
じゃがいもの芽に含まれるソラニンやチャコニンの毒性は加熱しても残ります。加熱調理をすれば大丈夫ということはないので注意してください。
海外ではじゃがいもの加熱調理によってソラニンやチャコニンが減少したとの報告もあります。しかし、ソラニンやチャコニンの濃度が高いじゃがいもを茹でる・煮るなどの加熱調理をすると、毒素が溶け出します。これにより中毒を発症する可能性は低くなりますが、完全に毒性が消えるわけではありません。また、調理前のじゃがいものソラニンやチャコニンの濃度はそれぞれ異なり、毒素の減り方にもばらつきがあります。高温で揚げたり焼いたりしても6割程度の毒素が残ったという実験結果もありますので、加熱をしても毒性は消えないと思っていた方がよいでしょう。
出典:じゃがいもの加工調理によるソラニン・チャコニンへの影響(農林水産省)
植物の芽といえば、緑色を想像する方が多いでしょう。しかし、じゃがいもは品種によって赤い芽が出ることもあります。
見るからに毒々しいので食べようとはなかなか思わないでしょうが、赤い芽ももちろんソラニンやチャコニンが含まれているので食べることはできません。
何色の芽であっても食べることはできないので注意しましょう。
じゃがいもと違い、玉ねぎの芽は食べることができます。
そのため玉ねぎの芽は食べられるから、じゃがいもも食べられるはずだ、と勘違いしてしまうと大変です。
玉ねぎの芽が食べられるのは、じゃがいものようにソラニンやチャコニンといった毒性のある成分が含まれていないためです。
ただし、毒性がないとはいえ芽が伸びすぎると食感が悪くなったり辛みや苦みが強くなることがあるため、伸びすぎる前に食べたいものです。また、芽が生えた玉ねぎそのものの栄養や風味は落ちてしまいます。芽が生長するために実の水分や栄養を取ってしまうためです。そのため玉ねぎは芽が生える前に食べる方が栄養価が高く、また美味しく食べることができます。
ソラニンとチャコニンの中毒症状としては、上述したように吐き気やおう吐、腹痛、下痢、頭痛、めまいなどが挙げられます。摂取量が多い場合、無気力、衰弱、錯乱などの神経症状や視覚障害など重症になるケースがあります。
濃度が一般的な範囲(2~10mg/100g)であれば健康上の問題はないとされていますが、体重1kgあたり1mg以上摂取すると食中毒症状が出る可能性があり、体重1kgあたり3~6 mg以上摂取すると死に至る可能性があると考えられています。
子どもの場合は、体重あたりのじゃがいもの消費量が多くなるため体重1kgあたり0.42mgで中毒を発症する可能性があると言われています。実際にじゃがいもを食べたことによる中毒症状がでた子供の事例は多いため、特に注意が必要です。
出典:ソラニンやチャコニンによる健康被害(農林水産省)
じゃがいもの芽は出たばかりの短い状態でも、伸びて長くなっている状態でも危険です。短ければ大丈夫ということはないので注意しましょう。
芽があまりに長く伸びている場合は、じゃがいもの栄養が芽を伸ばすために使われてしまっている状態です。じゃがいもの栄養価も低いですし、柔らかくなってしまっていて食感が悪いことも多いです。芽を取っても美味しく食べることは難しいので、破棄するのが良いでしょう。
じゃがいものソラニンやチャコニンによる中毒症状は、食後 30分〜半日で発症すると言われています。
場合によっては数日後に発症する可能性もあるため、万が一食べてしまったときはすぐに症状がでなくても数日は様子を見てください。
万が一芽を処理しないで食べてしまい、吐き気やおう吐、腹痛、下痢、頭痛、めまいなどの中毒症状が出た場合は、ただちに病院を受診しましょう。
ソラニンやチャコニンの毒性は自分で解毒できるものではありません。また、解毒剤もないため症状が重い場合は、胃洗浄などの処置で対処することになることが多いようです。
出典:財団法人 日本中毒情報センター
芽が出たじゃがいもの対処法は下記の通りです。
上述したように芽にはソラニンやチャコニンが含まれていて、中毒症状が出る可能性があるので食べることはできません。しかし、じゃがいも自体を破棄する必要はありません。
じゃがいもに芽が生えている箇所があっても、全体にソラニンやチャコニンが含まれているわけではありません。実の部分は芽を取り除けば食べることができます。
ただし、全体的に大量に芽が出てきてしまっている場合は食べずに破棄するのが無難です。
じゃがいもに芽が出てしまったら、芽を取り除くのはもちろんのこと常に皮を厚めに切りましょう。包丁やピーラーを使ってしっかりと厚めに皮を取り除くことで、30~70%程度毒素が軽減されるとされています。
特に芽の周りなどが緑色に変色している場合は、ソラニンやチャコニンが多く含まれている可能性が高いのでしっかりと取り除く必要があります。
芽が生えていなくても、じゃがいもの皮の一部が緑色に変色している場合、その部分には芽と同様にソラニンやチャコニンが多く含まれています。
緑の部分を厚く剥いて料理に使用しましょう。
また、皮がほとんど緑色になっていなくても、皮を剥いたら実の表面が緑色になっているということもあるので注意してください。
じゃがいも全体が緑色に変色してしまっている場合は、有毒物質が大量に含まれている恐れがありますので、食べずに廃棄することをおすすめします。
芽が出ていなくても、若いじゃがいもは毒素が多く含まれていることがあるので避けましょう。
若いじゃがいもは、皮が未発達の状態で日光に当たることにより毒素となるソラニンやチャコニンの増加が早くなってしまいます。
スーパーなどで販売されているじゃがいもは成長してから収穫されていますが、家庭でじゃがいもを育てて食べる場合は、若いじゃがいもを収穫して直射日光に当ててしまっているとソラニンやチャコニンが多く含まれていることがありますので注意してください。
実際にじゃがいもを皮ごと調理して食べたときに、皮が飲み込めないほど苦かったり、舌が痺れる、酸味を強く感じた場合は、飲み込まずに破棄しましょう。
皮に強い苦味があったり、舌が痺れるのはソラニンやチャコニンといった天然毒素が多く含まれていることが原因です。そのまま食べてしまうと中毒症状が出る可能性があるので、飲み込まずに吐き出しましょう。
また、酸っぱい場合は腐敗している状態です。食材は腐敗するとバクテリアの働きによって発酵するため、酸っぱい臭いがしたり酸味を感じます。あきらかに酸味がある場合も破棄してください。
包丁でじゃがいもの芽を取り除くときは、柄に近い角の部分を使います。
芽の部分に包丁の角を突き刺したら、じゃがいもを回して掘るように綺麗に取り除きましょう。ソラニンやチャコニンは芽の根本に多く存在していますので、大きくえぐり取るようにして芽を取り除くのがポイントです。
ピーラーを使う場合は、ピーラーの刃の横にある輪っかの部分を使って掘るようにして芽を取り除きます。
ピーラーの種類によっては輪っかではなくスコップ状になっていることもあります。この場合も同様に掘るように芽を取り除きます。
ピーラーを使う場合も表面に出ている部分だけではなく根元から身もえぐり取るようにしてください。
上述したようにまだ小さな芽の出始めの部分にもチャコニンやソラニンが含まれています。まだ小さいから大丈夫と思ってしまいがちですが、小さな芽も必ず取り除きましょう。
小さい芽の場合は、爪楊枝をくぼみに当てて掘るようにすると、簡単に取り除くことができます。
芽が出てしまったじゃがいもは芽を取り除き、さらに厚めに皮を剥いているため、カットしても形がいびつになってしまうことが多いです。煮物などにすると、見た目が悪くなってしまうので下記の調理法で食べるのがおすすめです。
芽が出てしまったじゃがいもは、しっかりと処理をして炒め物にするのがおすすめです。炒めものであれば、形がいびつになっていたり、大きさが不揃いでも気になりにくいです。
ジャーマンポトにするなど、濃いめの味付けにすると、悪くなってしまったじゃがいもの風味も気になりにくいのでおすすめです。
コロッケなどじゃがいもをマッシュして形が残らないように調理をするのも良いでしょう。コロッケであれば、衣をつけて揚げるのでボロボロのじゃがいもを使っても全く気になりません。
また、芽を出してしまったじゃがいもは上述したように柔らかくなっていることがありますが、コロッケにすれば柔らかくなってしまった食感をカバーすることができます。
そもそもじゃがいもから芽が出るのは、休眠期間を終えて新たに子孫を残そうとするためです。休眠期間を終えて芽を出す条件として、温度・明暗・湿度が挙げられます。
じゃがいもは、だいたい15度~20度ぐらいの暖かい温度だと芽が出やすくなります。そのため、春や夏などの暖かい季節や、暖房の効いた環境などで常温保存していると芽が出てしまうことがあります。
だからといってあまりに低温の環境で保管してしまうと、食感が悪くなったりしてしまうので注意が必要です。季節や室温に合わせできるだけ15度以上にならないようにしましょう。
じゃがいもは上述したように15度~20度の温度で、さらに日光など明るい環境で芽を出し始めます。そのため、直射日光の当たる場所や蛍光灯が当たるような場所で保存していると芽が出やすくなってしまいます。
じゃがいもは、だいたい90%〜95%の湿度が高い環境だと芽を出しやすいと言われています。温度が高い場所を避けるだけではなく、多湿の場所を避けて保管しましょう。
多湿の環境でじゃがいもを保管してしまうと、芽が出てしまうだけではなくカビが生える原因にもなります。
できるだけ保存する環境になるよう気を配っていても、じゃがいもの品種により休眠期間が異なるため早くに芽が出てしまうことがあります。
例えば、日本で最も収穫量が多いといわれている「男爵」は、休眠期間が長い品種ですので、芽が出にくいです。反対に、「秋馬鈴薯」とも言われる「デジマ」は休眠期間が短いため芽が出やすいです。
芽を出さずに長期保存したい場合は、芽が出にくい品種を選ぶと良いでしょう。
じゃがいもは最も保存しやすい野菜の一つです。基本的に冷暗所で常温保存が推奨され、3ヶ月程保存することができます。上述したように、高温多湿の場所や明るい場所は芽が出やすくなる他、カビを繁殖させるなど腐敗を進める原因となりますので避けましょう。
じゃがいもは水分が多い野菜ですが、貯蔵において低温に弱いわけではありません(低温で保存できないわけではありません)。しかし、0〜5℃の温度で保存すると、でんぷんが糖化し、ホクホクとした食感が損なわれてしまいます。そのため、冷蔵・冷凍保存にはあまり向かず、常温保存をおすすめしている次第です。ちなみに、じゃがいもを20℃の環境に1週間ほど放置しておけば、糖化したでんぷんは8割ほど元に戻ります。
じゃがいもはそこまで乾燥に弱いわけではないので、一つずつ新聞紙(またはキッチンペーパー)に包まなくても、長く保存できます。特に数が多いときは面倒なのでまとめて保湿。直射日光が当たらず風通しのよい涼しい場所なら、秋・冬は3ヶ月、夏場でも1ヶ月は常温保存が可能です。
ビタミンが多く「大地のりんご」ともいわれるじゃがいもですが、りんごと一緒に常温保存するのがおすすめです。りんごから放出されるエチレンガスは果実の熟成を進めますが、じゃがいもの発芽を抑える効果があります。じゃがいもは暖かく明るい場所で発芽が進むので、繰り返しになりますが、冷暗所で保存するのが大切!
前述した通り基本的には常温保存がおすすめなじゃがいもですが、下記の場合は冷蔵保存がおすすめです。
夏場に1ヶ月よりも長く保存したい(夏も安心して保存したい)
冬場であっても3ヶ月より長く保存したい
じゃがいもは正しく冷蔵すれば半年ほど保存することができます。また、じゃがいもは低温保存すると、収穫直後では少なかった糖分(0.1〜0.5%)が、増加(0.5〜2.5%)します。
丸ごとじゃがいもを冷蔵保存する場合は、一つずつキッチンペーパーに包み、ポリ袋に入れて軽く口を締め、野菜室に入れます。キッチンペーパーに包むことで寒さからじゃがいもを守ることができます。ポリ袋に入れることで乾燥しすぎることを防ぎながら、口は軽く締めることで通気性を保ちます。1週間に1度はキッチンペーパーが湿っていないか確認し、湿っている場合は新しいものに取り替えましょう。野菜室は温度・湿度ともに冷蔵室より高いので、じゃがいもに適しています。冷蔵保存でもりんごを一緒に入れると発芽を抑える効果があります。
じゃがいもの表面に白い粉の塊のようなものが付いている場合は、カビである可能性が高いです。ただし、カビを除けば、そのじゃがいもを食べることは可能です。
水洗いしてカビをしっかり洗い流し、カビが生えている部分を切って破棄します。他の部分に異常がないことを確認しましょう。
カビが広範囲に広がっていたり、実がブヨブヨしたり、悪臭がする場合は、廃棄しましょう。
じゃがいもから茶色い液体が出ている場合は、全体的に腐っている可能性が非常に高いです。
中身に問題がなく、表面のみ茶色い液体がついているのであれば、ビニール袋に入れたまま保管していたなど密閉された状態で保管していたことにより湿気で水滴がつき、じゃがいもについていた泥汚れと合わさって茶色い汁が出ているように見えるということが考えられます。
しかし、じゃがいもの中身から茶色い液体がにじみでているようであれば、腐敗しているので食べるのは避け、すぐに廃棄しましょう。
本来じゃがいもはほぼ無臭に近いです。明らかに異臭がする場合は、細菌が入ってしまい腐敗してしまった状態である可能性が高いため、食べるのはやめて処分しましょう。
一見、異常が見えないように見えるじゃがいもでもレンジで温めたり加熱をすると酸っぱい臭いを感じることがあります。見た目で判別できない場合は、皮を剥きカットしたじゃがいもを一度レンジで温めて臭いを確認しておくと安心です。
じゃがいもがブヨブヨしている場合、じゃがいもの水分が抜けてしまっている状態です。あまりにブヨブヨしていたり、中身がネバネバしているなどの異常が見られる場合は腐敗し始めているので食べずに処分しましょう。
じゃがいもは、芽が出始めると芋から芽に栄養を送るため柔らかくなってブヨブヨとしてきます。この場合は生理現象であり腐っているわけではないので、食感は悪くなりますがソラニンやチャコニンが含まれている芽を取り除くなど適切な処理をして調理すれば食べても大丈夫です。しかし、腐敗が始まっている可能性もあるので心配な方は処分することをおすすめします。
じゃがいもを食べた時に、苦味やえぐみ、舌のしびれを感じるようであれば、ただちに食べるのをやめましょう。
このような味がするのは、じゃがいもに含まれる「ポテトグリコアルカロイド」という成分が原因と言われています。ポテトグリコアルカロイドは天然毒素の一種で、食べた時に舌がピリピリしたり、苦味などを感じます。酸っぱい味がする場合も腐っている可能性が大なので、食べないようにしましょう。
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