寒梅粉は落雁などの和菓子を作るときに使われる米粉です。本記事では寒梅粉の原料や製造方法、用途などを詳しく解説します。
寒梅粉(かんばいこ)は、もち米を原材料にして作られる米粉の一種であり、みじん粉の種類に分類されます。
もち米とは白く不透明で、お餅やお赤飯にする粘性のあるお米のことです。もち米と対になるのは「うるち米」です。うるち米は、一般的に食べられている半透明のお米のことです。有名な品種にはコシヒカリやあきたこまちなどがあります。
みじん粉とは、蒸したもち米を平たく伸して乾燥させた後に細かく砕いて粉状にしたものです。
みじん粉をさらに加工して作られる穀粉には下記があります。
寒梅粉の伝統的な製法は、煎餅上に平たく伸した後に炭火で熱した鉄板で焼き、粉砕してふるいにかけて粒子を揃えて完成させるという焼き煎餅製法です。
現在は、平たく伸して乾燥させたもち米をホットローラーという機械を使い、電熱やガスまたは蒸気などで焦げないように焼いた後粉砕して作られます。ホットローラーを使うと香ばしさはなくなりますが、焼きムラなく仕上がるので、打物菓子などの出来栄えがよくなります。寒梅粉に空気を入れてフワっとさせ、干菓子や打物菓子に使うこともあります。
寒梅粉は、寒梅(寒中に咲く早咲きの梅)が咲く頃にもち米の新米を加工して作ることから「寒梅粉」と名付けられたといわれています。
寒梅粉はうるち米を原料にして作られることもあり、その場合は「並寒梅粉(なみかんばいこ)」といいます。
寒梅粉は、「焼きみじん粉」や「上焼味甚(じょうやきみじん)」とも呼ばれます。製造方法が焼きみじん粉と同じであるからだと考えられますが、焼きみじん粉よりも細かくしたものが寒梅粉なので、厳密には焼きみじん粉と寒梅粉は別のものです。
寒梅粉の色は白色で、粒子が細かくなめらかで口溶けがよいという特徴があります。また、寒梅粉は製造過程でもち米を加熱しているため、火を通さずに食べることができます。そのため、火を通さずに作る和菓子などに使われる事が多いです。
ちなみに、寒梅粉のように製造過程で加熱している米粉を「α型(アルファがた)」といい、製造過程で加熱されていない米粉は「β型(ベータがた)」といい、β型は火を通して食べる必要があります。β型の米粉には、例えば白玉粉や上新粉などがあります。
寒梅粉は、落雁を作るときに使われることが多いです。
落雁とは打ち菓子の一種で、みじん粉などの米粉に、水あめや砂糖などを混ぜてから型に入れて乾燥させたものです。日持ちすることからお盆や葬儀などで仏壇にお供えする砂糖菓子として有名です。
通常のみじん粉や焼きみじん粉でも作ることができますが、粒子の細かい寒梅粉で作ることで、よりなめらかで口溶けの良い落雁を作ることができます。
ちなみに、落雁は和三盆(わさんぼん)と見た目が似ているため混同されがちですが、和三盆とは別物です。
和三盆は主に香川県や徳島県で作られている高級砂糖のことで、落雁とは原材料や製造方法が異なります。
寒梅粉を使って、塩釜を作ることもできます。
塩釜は、寒梅粉またはみじん粉に砂糖や塩、海藻の粉や塩漬けのしその葉などを混ぜて押し固めて作る押し菓子の一種です。塩釜は宮城県の塩釜市や仙台市の名物で、「算木菓子(さんぎがし)」「算木餅(さんぎもち)」ともいわれます。
寒梅粉は、島根県の銘菓「若草」にも使われています。若草は、白玉粉に水飴や砂糖を加えてじっくり練り、蒸した求肥に緑色に着色した寒梅粉をまぶした和菓子です。
寒梅粉は、豆菓子の材料としても使われます。
豆菓子とは、豆に寒梅粉をかけて焼き、味付けをした和菓子です。豆菓子が作られはじめた当初はピーナッツが使われていましたが、現在は大豆やアーモンド、カシューナッツが使われることも多いです。
有名な商品には「でん六豆」や、醤油と海苔で味つけされた「おのろけ豆」などがあります。
寒梅粉は、練りきりを作る際のつなぎとして使うこともできます。
練りきりは、白餡(しろあん)につなぎになる寒梅粉や求肥などを入れ、木ベラでしっかりと練り作る和菓子です。製造工程でよく練ることから「練りきり」との名前が付けられています。
寒梅粉は水で溶くと粘りが出るため、糊(のり)としても使われます。
「寒梅粉のり」「寒梅糊(かんばいのり)」ともいわれ、のびが良く溝に入れやすいため、木目込み人形を作る際に使うことが多いです。木目込み人形とは、桐塑(とうそ)といわれる粘度の一種または木で作られた人形に溝を彫り、その溝に沿ってヘラで布などをを押し込んで作る人形のことをいいます。押し込む作業を「木目込む」ということから、「木目込み人形」といわれるようになりました。
また、つりをする際の「練り餌(ねりえさ)」にも使われます。練り餌とは釣り用の餌の一種で、材料を水で練って作ったもののことをいい、寒梅粉は練り餌の粘り増強剤として使うことができます。
寒梅粉は、スーパーでは片栗粉などのが置かれている粉もののコーナーもしくは製菓コーナに置かれています。しかし、取り扱っていないスーパーも多いので、Amazonなどの通販で購入するのがおすすめです。
値段は100g200円〜500円程です。国産のもち米を原料にしているものだと値段が高くなります。
寒梅粉の賞味期限は、製造しているメーカーによって異なりますが、だいたい半年〜1年程です。早いものでは2〜3月ということもあります。
基本的に賞味期限は開封前か、正しく保存できていることを前提に設定されているので、開封したら賞味期限に関わらず早めに使い切りましょう。
寒梅粉は基本的に直射日光が当たる場所や高温多湿を避けて、冷暗所で常温(20℃以下)で保存します。
タッパーに入れておくと、湿気とコナダニ対策になります。
粉糖…100g
みじん粉(つなぎ用)…10g
水…5ml
お好みの着色料またはパウダー…適量
落雁型
まず、ボウルに粉糖とお好みの着色料を入れて、手でよく混ぜます。着色料は、抹茶パウダーやほうじ茶パウダーなどで代用可能です。着色したら、水を加えてこねるようによく混ぜます。空のボウルの上にザルを置いたら混ぜた生地をザルに通し、細かくします。ザルを通した生地を落雁型に入れて押し固めます。この時、固く詰めすぎると口どけが悪くなってしまうので注意しましょう。型に押し固めたら、型から出してそのまま一晩置き、乾燥させて固まったら完成です。
寒梅粉100gあたりに含まれる成分は下記の通りです。
たんぱく質…約6g
脂質…約7g
炭水化物…約82g
食物繊維…約0.6g
ナトリウム…約1mg
寒梅粉100gあたりのカロリーは約370kcalです。これは、大き目の茶碗一膳分(220g)のご飯を食べたときのカロリーに相当します。糖質量(炭水化物から食物繊維を引いたもの)は、約80gです。
寒梅粉を使った和菓子は寒梅粉の他にも砂糖や白あんなどを使っているものがほとんどなので、さらにカロリーが高くなり、糖質量も多くなります。ちなみに落雁1個(10g)あたりのカロリーは約40kcalで、糖質は約9gです。落雁1個であれば神経質になる必要はありませんが、食べすぎには注意が必要です。
みじん粉は寒梅粉の代用品として落雁や豆菓子、練りきりなどの和菓子を作ることができます。ただし、寒梅粉とは粒子の大きさが違うため食感などに違いがでます。例えばみじん粉は寒梅粉ほど粒子が細かくないので、よりなめらかで口溶けのよい落雁を作りたい場合は寒梅粉を使いましょう。
みじん粉も寒梅粉と原料は同じなので、糊(のり)として使うこともできます。しかし、やはり粒子が細かい寒梅粉のほうが適しているため、みじん粉が糊として使われることはあまりありません。
みじん粉は上述したように蒸したもち米を平たく伸して乾燥させた後に細かく砕いて粉状にしたものです。粒子が細かいことから「みじん粉」という名前がついたといわれており、「微塵粉」または「味甚粉」と表記されることもあります。
落雁粉(らくがんこ)も、寒梅粉の代用品として落雁を作ることができます。ただし、寒梅粉とは製造方法が異なるため、食感に違いがでます。寒梅粉は蒸したもち米を乾燥させているので、寒梅粉で作る落雁は食べた時に口の中で粘りが出て歯にくっつくことがありますが、もち米を蒸さずに乾燥させている落雁粉で作る落雁は、口の中に入れても粘りがでません。
一方、粘りがあまり出ないため豆菓子を作る場合や練りきりなどのつなぎとして使う場合の代用品には不向きです。また、木目込み人形の作る場合の糊(のり)として使う場合の代用品に不向きといえます。
落雁粉も、もち米を原料にして作られた米粉の一種であり、みじん粉の種類に分類されます。
落雁粉は、もち米を洗ってから蒸さずに乾燥させ、焙煎して粉状にするという方法で製造されています。
ちなみに、みじん粉の種類の多くは落雁を作ることができるため、煎りみじん粉(いりみじんこ)や上南粉(じょうなんこ)なども「落雁粉」と称されて販売されていることがあります。
道明寺粉は、寒梅粉の代用品として落雁や豆菓子などの和菓子を作ることはできません。なぜなら、道明寺粉は寒梅粉と同じくα型に分類される米粉ですが、粒子が粗く非常に固いため蒸したり炊いたりして柔らかい状態に戻してから使う必要があり、柔らかい状態に戻すと強い粘りがでるため落雁や豆菓子には使うことがでません。
一方で、粘りが出るため糊として使うことはできます。ただし、木目込み人形の作る場合の糊(のり)として使う場合の代用品に不向きといえます。
道明寺粉は、もち米を浸水して蒸した後、乾燥させて粗めにひくという製造方法で作られています。
粒のサイズによって、
6ツ割
5ツ割
4ツ割
3ツ割
2ツ割
全粒
と種類が分けられており、数字は粒の大きさを表しています。数字が大きいほど粒サイズは小さくなります。
道明寺粉は、桜餅やおはぎ、おこしなどの和菓子を作る際や揚げ物の衣にすることが多いです。
道明寺粉100gあたりのカロリーは、372kcalで、糖質量は約80gです。道明寺粉のほうが若干カロリーが高いですが、糖質量は同じです。
白玉粉は寒梅粉の代用品として落雁を作ることはできません。なぜなら、白玉粉は製造過程で加熱していないβ型であるためです。白玉粉では落雁などの火を通さない和菓子を作ることはできません。一方で練りきりを作るときのつなぎの代用品にはなります。ただし寒梅粉とは製造方法が違うため風味や食感などに違いが出ます。
また、白玉粉を使って糊を作ることもできます。ただし、寒梅粉で作る糊ほど伸びず粘りも少ないため木目込み人形の作る場合の糊(のり)として使う場合の代用品に不向きです。
白玉粉ももち米を原材料にして作られる米粉の一種です。
白玉粉は、もち米を水洗いして水に浸して吸水させ、原料に対して1〜2倍の水を加えながら石臼で水びきします。この時に出る乳液をふるいにかけて粗粒を分離して、再び粗粒を水びきしたら、沈殿したもの(でんぷん)を圧搾機で脱水し、脱水したものを賽の目切りにして乾燥させるという製造方法で作られます。そのため、米粉というよりはでんぷん粉に近いです。
白玉粉の見た目は寒梅粉と同じく白いですが、米粉というよりはでんぷん粉に近いので小さな塊がいくつもあり、ザクザクとしています。
白玉粉にはやわらかくなめらかな食感が出る他、冷めても固くならないという特徴があり、白玉団子や大福などの和菓子に使われることが多いです。
白玉粉のカロリーは100gあたり347kcalで、糖質はおおよそ80gです。白玉粉のほうがカロリーは低いですが、糖質量は寒梅粉よりも多いです。
上新粉は寒梅粉の代用品として落雁を作ることはできません。なぜなら、上新粉は製造過程で加熱していないβ型の米粉であるためです。落雁のように火を通さずに作る和菓子を作ることはできません。また粘りが少ないため糊として使うことはできても、木目込み人形の作る場合の糊(のり)として使う場合の代用品に不向きです。一方でつなぎとして練りきりを作ることはできます。ただし、寒梅粉とは原料が異なるため風味や食感に違いがでます。
上新粉はうるち米を原材料にして作られる米粉の一種です。
上新粉は、水洗いしたうるち米を5〜6時間寝かせたあとに、臼でひいて粉末状にして粉状にし、ふるいにかけて細かいものとやや粗いものとで分けて乾燥させるという製法で作られています。この2つのうち、目の細かく上等なほうが上新粉となります。ちなみに、目の粗いほうは「並新粉(なみしんこ)」といいます。
上新粉はまんじゅうの主原料として使われる他、お湯を加えてこねるとお餅のようになる特徴があるため団子やすあま、ういろうなどの和菓子を作る際に使われることが多いです。また、ちまきに使われたり料理にとろみをつけるための片栗粉の代用として使われることもあります。
上新粉のカロリーは、100gあたり約362kcalで、糖質はおおよそ77gです。寒梅粉よりもカロリーが低く、糖質量も少ないです。
米粉は、寒梅粉の代用品として落雁を作ることができません。なぜなら、米粉は製造過程で加熱していないβ型の米粉であるためです。落雁のように火を通さずに作る和菓子を作ることはできません。また粘りが少ないため糊として使うことはできても、木目込み人形の作る場合の糊(のり)として使う場合の代用品に不向きです。一方でつなぎとして練りきりを作ることはできます。ただし、寒梅粉とは原料が異なるため風味や食感に違いがでます。
米粉とは、米を製粉した白い粉の総称です。米粉は大別してもち米から作られるものと、うるち米から作られるものがあります。
もち米からなる代表的な米粉は白玉粉です。
うるち米からなる代表的な米粉は上新粉です。
スーパーなどで「米粉」として売られているものには「製菓用米粉」と「製パン用米粉」の二種類があり、一般的には製菓用米粉が使われることが多いです。原料はうるち米なので上新粉に分類されますが、上新粉として売られているものよりも粒が細かいのが特徴です。
一般的に「米粉」や「米の粉」の名称で売られているものは、主にクッキーなどを作る際の小麦粉の代用品として使われます。
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