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上南粉とは?用途や代用品、上新粉・上早粉・寒梅粉との違いを解説

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上南粉とは?用途や代用品、上新粉・上早粉・寒梅粉との違いを解説

上南粉は和菓子を作るときに使われることが多い米粉です。本記事では上南粉の原料や製造方法、用途などを詳しく解説します。

上南粉の原料・製造方法

上南粉(じょうなんこ)は、もち米を原料に作られた米粉の一種であり、みじん粉の種類に分類されます。一般的にもち米を原料にして作られますが、うるち米を原料にして作られることもあります。

もち米とは白く不透明で、お餅やお赤飯にする粘性のあるお米のことです。もち米と対になるのはうるち米です。うるち米とは、半透明で一般的に食べられているお米のことです。有名な品種には「コシヒカリ」や「あきたこまち」などがあります。

みじん粉とは、蒸したもち米を平たく伸して乾燥させた後に挽(ひ)いて粉状にしたものです。

みじん粉をさらに加工して作られる穀粉には下記があります。

  • 焼きみじん粉

  • 寒梅粉(かんばいこ)

  • 煎りみじん粉(いりみじんこ)

  • 上南粉(じょうなんこ)

  • 上早粉(じょうはやこ)/落雁粉(らくがんこ)

  • 新引粉(しんびきこ)

上南粉は、蒸したもち米をよく乾燥させたものをザラメ上に粉砕して、200℃前後の平らな焙煎機で少しずつ煎りあげるという製造方法で作られています。上南粉を少し焦がしたものを茶みじん粉、または焦がしみじんこといいます。

上南粉は、製造過程で火を通しているため火を通さずに食べることができる「糊化製品」(α型)に分類されます。製造過程で火を通しておらず、調理の過程で火を通す必要がある米粉は「生粉製品」(β型)といい、例えば白玉粉や上新粉などが生粉製品(β型)に分類されます。

上南粉の別名

上南粉は、粒子がとても細かいため「極みじん粉」ともいわれます。また、石川県加賀市で作られていたことから「加賀みじん」といわれたり、「上みじん」「細真引き(ほそしんびき)」といわれることもあります。

上南粉の用途

和菓子

上南粉は、打物(うちもの)や押物(おしもの)、棹物(さおもの)、桜餅、玉あられ、おこしなど和菓子を作るときに使われます。

打物は、みじん粉に分類される米粉に砂糖などを加えて木型に詰めて固め、打ち出したものです。「打ち菓子(うちがし)」ともいい、代表的な打物には「落雁(らくがん)」などがあります。落雁は、みじん粉などの米粉に水あめや砂糖などを食わせて混ぜてから型などに入れて乾燥させた干菓子(ひがし)で、お盆や葬儀などで仏壇にお供えする砂糖菓子として有名な和菓子です。

押物は、材料を型に入れた後押して固め、その後包丁で切るなどして作る和菓子です。代表的な押物には「塩釜(しおがま)」があります。塩釜は、みじん粉分類される米粉に砂糖や塩、海藻の粉や塩漬けのしその葉などを混ぜて押し固めて作るお菓子です。塩釜は宮城県の塩釜市や仙台市の名物であり、「算木菓子(さんぎがし)」「算木餅(さんぎもち)」ともいわれます。

棹物は、細長く棒状に作った和菓子の総称で、流し物ともいいます。代表的な棹物には、羊羹(ようかん)やういろうなどがあります。

桜餅は桜のようなピンク色のつぶつぶとした生地に餡(あん)を包んだお餅です。基本的に道明寺粉を使って作られますが、上南粉を代用品として使い桜餅を作ることもできます。

玉あられは、小さな粒状の和菓子です。

おこしは、上南粉や新引粉などを飴で固めた和菓子の一種です。雷おこしのように固いものから、柔らかいものまで様々な種類があり、つぶつぶとした食感を楽しむことができます。

揚げ物の衣

上南粉は、天ぷらなどの揚げ物の衣として使うこともできます。小麦粉や片栗粉のみで揚げるよりもサクサクとした食感になります。

上南粉の販売場所・値段

上南粉を取り扱っているスーパーは、あまりありません。直接購入するのであれば、製菓材料専門店が良いでしょう。ただし製菓材料専門店でも取り扱っていない場合もあるので直接お店に問い合わせをして確認してみてください。

上南粉はAmazonなどの通販でも100g300円〜400円程で購入することができます。
近くに上南粉を取り扱っている店舗がないという場合は、通販を利用するのがおすすめです。

上南粉として販売されているものの中には、もち米だけではなくでんぷん粉が加えられているものもあります。

上南粉の賞味期限・保存方法

上南粉の賞味期限は製造メーカによって異なりますが、120日〜1年程です。ただし、これは開封前の賞味期限であるため開封後は、賞味期限に関わらずできるだけ早めに使いきりましょう。

上南粉は、直射日光のあたる場所や高温多湿を避けて冷暗所に置き常温保存します。
開封後は密閉できる容器に移し替えて保存しましょう。

上南粉の成分・カロリー

上南粉の成分やカロリーは文部科学省の食品成分データーベースなどにも記載がないため不明ですが、みじん粉とほぼ同じであると考えるため、みじん粉の食品成分表を本記事では紹介します。

みじん粉100gに含まれる成分は下記の通りです。

  • 水分…約1.9g

  • たんぱく質…約0.5g

  • 脂質…約0.3g

  • 炭水化物…約97.1g

  • 灰分…0.2g

  • ナトリウム…約7.87mg

  • 食塩相当量…約0.02g

灰分とは、 物が燃え尽きたあとに残る不燃性の鉱物質のことで、栄養学では食品成分として含まれる鉱物質(カルシウム・鉄・ナトリウムなど)のことをいいます。

みじん粉の100gのカロリーは約393kcalで、6枚切りの食パンを二枚食べたときのカロリーに相当します。糖質は炭水化物から食物繊維を引いたものですが、みじん粉の場合は灰分に食物繊維が含まれるので、みじん粉の糖質量はおよそ96gと高めです。したがって、上南粉を使って作る落雁などの和菓子もカロリーや糖質量が高くなり、食べすぎてしまうと太ってしまう原因になってしまうので注意しましょう。

上南粉の代用品と違い

寒梅粉

寒梅粉(かんばいこ)は玉あられや桜餅、おこしを作る場合の上南粉の代用品にはなりません。なぜなら、粒子が上南粉よりも細かいためです。一方で、落雁などの和菓子を作る際や揚げ物の衣の代用品にはなります。ただし、食感に違いがでます。例えば寒梅粉を使って落雁を作ると、上南粉よりも寒梅粉のほうが粒子が細かいので、よりなめらかで口溶けのよい落雁を作ることができます。

寒梅粉ももち米を原料に作られた米粉の一種であり、みじん粉の種類に分類されます。

寒梅粉は、蒸したもち米を伸した後に、焼き色がつかない程度に軽く焼いて(白焼き)から砕いた焼きみじん粉をふるいにかけてさらに細かくしたものです。

寒梅(寒中に咲く早咲きの梅)が咲く頃にもち米の新米を加工して作ることから「寒梅粉」と名付けられたといわれています。「焼きみじん粉」や「上焼味甚(じょうやきみじん)」とも言われますが、通常のみじん粉や焼きみじん粉よりも粒子が細かいです。もち米ではなくうるち米で作られることもあり、その場合は「並寒梅粉(なみかんばいこ)」といいます。

上早粉(落雁粉)

上早粉は上南粉の代用品になります。ただし、上南粉とは製造方法が異なるため食感に違いがでます。上早粉は上南粉とは異なりもち米を蒸さずに煎って作られているため、上南粉のように粘りがでません。そのため、例えば上南粉で作る落雁は食べた時に口の中で粘りが出て歯にくっつくことがありますが、もち米を蒸さずに乾燥させている上早粉で作る落雁は、口の中に入れても粘りがでないので食べやすいです。

上早粉も、もち米を原料にして作られる米粉の一種です。「落雁粉(らくがんこ)」「上早味甚粉(じょうはやみじんこ)」ともいわれます。

水洗いしたもち米を煎って、膨張させたものを粉状にしたものです。通常のみじん粉と同じくもち米を加熱して作っている点や、使用用途が同じという点ではみじん粉の一種といえますが、上早粉はもち米を蒸さずに煎って製粉しているという点で、通常のみじん粉とは製造方法が異なるのでみじん粉とは違う種類の粉ともいえます。

基本的にみじん粉に分類される粉の多くは落雁を作ることができるため、上南粉なども「落雁粉」として販売されていることがあります。

道明寺粉

道明寺粉(どうみょうじこ)は、落雁を作るときの代用品にはなりません。道明寺粉は上南粉と同じく「糊化製品(α型)」ですが、和菓子を作る際は使用する際は炊いたり蒸したりして柔らかく戻してから使う必要があり、柔らかくすると粘りが出てお餅のようになってしまうため、落雁を作ることはできません。一方で、桜餅やあられ、おこしを作ることはできます。また、道明寺粉も揚げ物の衣として使うことができます。

ただし、食感などに違いがでます。道明寺粉は上南粉よりも粒子が大きいため、上南粉よりサクサクとした食感になります。

もち米を原料にして作られている米粉の一種です。

道明寺粉は、もち米を浸水して蒸した後、乾燥させて粗めにひくという製造方法で作られています。
粒のサイズによって、

  • 6ツ割

  • 5ツ割

  • 4ツ割

  • 3ツ割

  • 2ツ割

  • 全粒

と種類が分けられており、数字は粒の大きさを表しています。数字が大きいほど粒サイズは小さくなり、よりなめらかな仕上がりになります。粒の大きさによって、丸粒道明寺粉、中荒道明寺粉、細道明寺粉ということもあります。京都や名古屋などの上菓子店では5ツ割り程度のものが使われることが多いです。

道明寺粉は小さな琥珀の集まりのように粒子が粗いため、「粉」とついていますが上南粉のような粉末ではありません。

道明寺粉は関西風の桜餅やおはぎなどの和菓子や、揚げ物の衣として使われることが多いです。

白玉粉

白玉粉は上南粉の代用品として落雁を作ることはできません。なぜなら、白玉粉は製造の過程で火を通していない「生粉製品(β型)」の米粉であり、落雁のように火を通さずに作る和菓子を作ることができないためです。一方で揚げ物の衣の代用品にはなります。

ただし、原料や製造方法が異なるため上南粉とは食感などが異なります。白玉粉を使うと、もちっとした食感になります。

白玉粉ももち米を原料にして作られる米粉の一種です。

白玉粉は、もち米を水洗いして水に浸して吸水させ、原料に対して1〜2倍の水を加えながら石臼で水びきします。この時に出る乳液をふるいにかけて粗粒を分離して、再び粗粒を水びきしたら、沈殿したもの(でんぷん)を圧搾機で脱水し、脱水したものを賽の目切りにして乾燥させるという製造方法で作られます。

白玉粉はもち米のでんぷんを乾燥させて作られているため、米粉というよりはでんぷん粉に近く、上南粉とは見た目も大きく異なります。白玉粉は細かい粉のかたまりが多くあり、ザクザクとしています。白玉粉の細かいかたまりは、触れるとすぐに崩れます。

白玉粉には強い粘り気を出すという特徴があります。また、粒子が細かいためやわらかくなめらかな食感を出すことができる他、冷めても固くならないという特徴があり、白玉団子や大福などの和菓子に使われることが多いです。

上新粉

上新粉は上南粉の代用品として落雁を作ることはできません。なぜなら、上新粉も製造の過程で火を通していない「生粉製品(β型)」の米粉であり、落雁のように火を通さずに作る和菓子を作ることができないためです。一方で揚げ物の衣の代用品にはなります。

ただし、原料が異なるため食感に違いがでます。上新粉を衣にするとクリスピーのような食感に仕上がります。

上新粉はうるち米を原料に作られた米粉の一種です

上新粉は、2ロール製法という製造方法で作られています。まず、水洗いしたうるち米を乾燥させロール製粉機で製粉します。製粉したものをふるいにかけて粒子の粗いものと細かいものとでわけたもののうち、目の細かいほうが上新粉になります。目の粗いほうは「並新粉(なみしんこ)」といいます。

2ロール製法は、洗米した後にもち米を乾燥させてロール製粉機で製粉する製法です。胴搗き製法したものよりも強い粘性がありますが、水分量が少ないため硬化が早いです。

上新粉は食品の表面を滑らかにし、やわらかくもっちりとした歯ごたえ出します。そのため、まんじゅうの主原料として使われます。また、お湯を加えてこねるとお餅のようになる特徴があり、団子や柏餅、すあま、ういろうなどの和菓子を作る際に使われることも多いです。ちまきに使われたり料理にとろみをつけるための片栗粉の代用として使われることもあります。

上用粉

上用粉は上南粉の代用品として落雁を作ることはできません。なぜなら、上用粉も製造の過程で火を通していない「生粉製品(β型)」の米粉であり、落雁のように火を通さずに作る和菓子を作ることができないためです。一方で揚げ物の衣の代用品にはなります。

ただし、食感に違いが出ます。上用粉は粒子が細かいため上南粉ほどサクサクとした食感を出すことはできません。

上用粉もうるち米を原料に作られる米粉の一種です。

上用粉は、うるち米を胴搗き製法(どうつきせいほう)で上新粉よりもさらに粒子を細かくしています。

胴搗き製法は、精米後にお米の水分が多く保たれた状態で、杆搗き臼(きねつきうす)で徐々に細かくしていく製法です。ロール製法よりも時間はかかりますが、より質のよい粉が得られます。関西地方では古くよりこの製法が主流であり、関西では上用粉がよく使われます。

上用粉は、すべての粉の中でもっともきめの細かいというのが大きな特徴で、なめらかさや柔らかさを求める和菓子などに使われることが多いです。例えば、上用粉を使って作る和菓子には上述した薯蕷饅頭(上用饅頭)や浮島(うきしま)があります。また、上新粉と同じくお湯を加えてこねるとお餅のようにな粘りがでるという特徴があるため団子を作ることもできます。上用粉で団子を作ると、なめらかで歯切れのよい団子ができます。