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人参を加熱するメリット&デメリット。栄養や甘みが増す?

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人参を加熱するメリット&デメリット。栄養や甘みが増す?

人参を加熱する際の栄養を無駄にしない方法を解説していきます。

人参を加熱するメリット

β-カロテンの吸収率が上がる

人参といえばβ-カロテンが多く含まれているのが特徴で、人参のオレンジ色はβ-カロテンの色です。カロテンの語源はキャロット(carrot)であることからもわかるように、人参のβ-カロテン含有量は野菜の中でトップです。

しかし、実はカロテンは吸収されにくい成分であることがわかっており、生の状態での吸収率は約10%といわれています。カロテンの吸収率を上げる方法の一つが加熱です。

β-カロテンは加熱すると細胞内で溶解するため、吸収率が1.5〜2倍にアップすることがわかっています。β-カロテンを無駄なく摂取することができるのは大きなメリットです。

ビタミンCの酸化を抑える

生の人参に含まれる酵素「アスコルビナーゼ」はビタミンCを破壊するため、ビタミンCを含む他の食材と一緒に食べると、ビタミンCの吸収率が下がるという定説があります。

しかし、実際には酸化させるだけで、酸化したビタミンCは体内で還元され通常のビタミンCと同じ働きをするといわれています。そのためそこまで神経質になる必要はないといえますが、ビタミンCを酸化させる原因となる酵素は、50℃以上の温度で失活することがわかっているため、ビタミンCの酸化が気になる方は加熱をしたほうが安心です。

ちなみに、アスコルビナーゼは人参をカットしたときに空気中の酸素に触れる面積が広くなってしまうと活性化されることがわかっています。心配な方は生食する場合はスティック状にするなど酸素に触れる面積が少なくなるようにカットするのがおすすめです。

人参特有の臭いが軽減される

人参はセリ科ニンジン属の二年草です。セリ科のセロリやパクチーがあり、特有の臭いをもつのが特徴です。セロリやパクチー程強くはありませんが、青臭さやフルーティーな匂い、セリ科植物がもつツンとした匂いなど人参特有の臭いがあります。

人参がもつ香気成分は、茹でたり油で炒めるなど加熱することで揮発するためまろやかになり、食べやすくなります。

ちなみに人参がもつ香気成分には、

  • サビネンネン

  • 酢酸ボルニル

  • テルピノレン

  • γ-テルピネン

  • β-ミルセン

  • β-ピネン

などがあります。

青臭さは、サビネンやβ-ミルセン、β-ピネン、酢酸ボルニルで、甘いフルーティーな匂いは、テルピノレンやγ-テルピネン、セリ科植物がもつツンとした匂いにはサビネンや酢酸ボルニルが大きく関係していることがわかっています。サビネンや酢酸ボルニルは、青臭いとツンとした匂いの両方に関係していることからもわかるように、一つの成分が一つの匂いの原因になってるわけではありません。

現在は品種改良により人参特有の臭いがきついものはほとんどなくなりましたが、個体差があることもあり、まれに人参特有の匂いがきついものもあります。

人参を加熱するデメリット

流出する栄養素も

人参にはビタミンCやカリウムなど水溶性の栄養素が含まれています。例えば、煮物にするなど茹でると水溶性の栄養素は流出してしまうのはデメリットであるといえます。

ビタミンCには「還元型ビタミンC」と「酸化型ビタミンC」というものがあり、2つを合わせてビタミンC(または「総ビタミンC」)と言われています。

熱に弱いのは酸化型ビタミンCです。還元型ビタミンCはほとんど分解されることはないのですが、酸化型ビタミンCは一度分解してしまうとビタミンCには戻ることができず、この分解反応が加熱することで早く進むので「ビタミンCは加熱に弱い」と言われます。厳密には酸化型ビタミンCは熱に弱い、ですね。

新鮮な野菜や果物に含まれるビタミンCは大部分が還元型なので、基本的にビタミンCが加熱によって壊れることはありません。

しかし、切ったりすりおろすことで還元型ビタミンCの一部が酸化型ビタミンCに変換されてしまうので(つまり酸化するということ)、やや加熱に弱くなってしまいます。また、人参に含まれている「アスコルビン酸(ビタミンC)酸化酵素」の作用でも、還元型ビタミンCの一部が酸化型ビタミンCに変換され、やや熱に弱くなってしまいます。

カリウムは水溶性ではありますが、熱には強い成分です。そのため茹でると流出してしまいますが、炒めたりレンジで加熱するぶんには流出することはありません。

食感が失われる

人参を加熱することで食感が柔らかくなり、シャキシャキとした食感が失われてしまうデメリットもあります。

人参に限らず野菜の細胞壁は、セルロースからできた繊維が重なっており、その間をペクチンが塗り固めて固い壁をつくっています。人参に限らず野菜を加熱すると軟らかくなるのは、固い壁を作っているペクチンが熱によって分解されるためです。

小さなお子様や高齢者など固いと食べにくい場合は加熱をして柔らかくしたほうが食べやすいのですが、柔らかい食感の食べ物よりもしっかりとした食感がある食べ物のほうが咀嚼回数が増えるため満腹中枢が刺激され満腹感を得ることができますし、満腹感も長続きします。ダイエット中の方にとってはデメリットであると言えるでしょう。

黒く変色することも

人参は加熱することで黒く変色することもあります。これは人参に含まれているポリフェノールが加熱によって褐変したことが原因であると考えられます。

ポリフェノールとは植物の苦味や渋みとなる成分の化合物の総称です。構造の違いによって様々な種類があり、人参にもアントシアニンなどのポリフェノールが含まれています。ポリフェノールは空気中の酸素に触れて酵素が働くことで酸化し変色する性質があることで知られていますが、加熱することでも変色することがわかっています。

加熱により褐変してしまっても腐敗しているわけではないので問題なく食べることができますが、やはり見た目が悪くなってしまうのでデメリットであるといえます。

また、電子レンジで加熱する際はマイクロ波で温める構造上、マイクロ波が集中して当たってしまうと焦げてしまい黒い斑点ができてしまうこともあります。

出典:ポリフェノール化合物の加熱による褐変反応について(J-stage)

人参の栄養素を無駄にしない加熱調理の方法

皮ごと調理する

β-カロテンは皮のすぐ下に最も多く含まれています。その量なんと中心部の2.5倍です。ポリフェノールも中心部の4倍多く含まれています。皮は正式には「内鞘(ないしょう)細胞」と呼ばれ、可食部の一部です。

根菜は皮に繊維が集まっていて固く、口当たりも悪くなるため厚めに皮を剥いて食べることも多いですが、人参の場合はそれほど皮が分厚い野菜ではないので無農薬のものなどはなるべく皮ごと調理をしたほうが栄養素を無駄にすることなく摂取することができます。

カットするときはもちろんのこと、すりおろす際も皮ごとすりおろすのがおすすめです。

油で炒める

カットした人参を油で炒める

上述したようにβ-カロテンは加熱することで吸収率が1.5〜2倍にアップします。さらに、β-カロテンは脂溶性であるため油を使って調理することでβ-カロテンの吸収率が6倍にもなることがわかっています。人参は炒め物などで調理し、積極的に油と一緒に摂ると良いでしょう。

また鶏肉などと一緒に炒めて食べれば、鶏肉の脂質でβ-カロテンの吸収率が高まります。β-カロテンの吸収率が高くなれば、動脈硬化の改善や美肌効果にも繋がります。ただし、油の使いすぎは肥満や肌荒れの原因となるので注意しましょう。

ちなみにドレッシングと一緒に摂取しても同じ効果が得られます。生食する場合も油が入ったドレッシングと合わせるだけでそのまま食べるより4倍の吸収率になります。

すりおろす

人参をすりおろす

β-カロテンは細かくするほど増えます。また、大きく切った人参よりもすりおろした方がβ-カロテンの吸収率もアップすることがわかっています。しかし、細かく切ったりすりおろすことでビタミンCを酸化させる酵素も活性化します。上述したように加熱することで酵素の働きが失活することがわかっているので、心配な方は人参を皮つきのまますりおろして加熱調理するのがおすすめです。 すりおろした人参はポタージュや、野菜スープにすることができます。オムレツやハンバーグ、お好み焼きに混ぜて焼いてもおいしいですよ。人参の臭いや食感が苦手な方や人参嫌いな子供にもおすすめです。

ちなみに、細かくカットしたりすりおろした人参を生で食べる場合は酢やレモン汁などの酸を加えることでビタミンCの酸化を抑えることができます。

加熱時間は短めに

β-カロテンは加熱をすることで吸収率が上がるものの、高温での加熱が長いと一部が壊れてしまうので、火を通す時間は短時間にするといいでしょう。

また、人参を茹でる際も長時間茹でてしまうと水溶性の栄養素が流出してしまいます。茹でるときもレンジで加熱するなど短時間にしたほうが栄養素の流出を最小限に抑えることができます。

加熱時間を短くすることで、人参の食感を残すことができるので食べごたえもUPします。

人参の栄養素・成分

人参100gあたりに含まれる主な栄養素・成分

β-カロテン(ビタミンA)

上述したように人参は特にβ-カロテンが豊富に含まれています。

β-カロテンは、皮膚や喉などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあり、体外からのウィルスや細菌の侵入を防ぐ事で免疫力をアップし病気にかかりにくくなります。また抗酸化作用もあるので、アンチエイジング作用があります。亜鉛が補酵素に入ると、β-カロテンがレチナールへ、さらにレチナールにナイアシンが結合することで体内に作用します。ビタミンAとしての働きを促すにはミネラルの亜鉛、ビタミンB群のナイアシンも必要になります。

カロテンの語源はキャロット(carrot)であることからも、人参のβ-カロテン含有量は野菜の中でトップです。

α-カロテン

α−カロテンは、緑黄色野菜に含まれるカロテノイドのひとつで、β-カロテンと同じく体内でビタミンAに変換されます。ビタミンAは、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあるため健康に保ちます。そのため、体外からのウィルスや細菌の侵入を防ぎ感染症を予防する効果が大きく、免疫力を高めます。

カリウム

カリウムはミネラルの一種です。

カリウムはナトリウム(食塩)と協力し細胞の浸透圧を維持しています。体内に十分なカリウムがあると、余分な食塩を排出して血圧を正常に保ちます。しかし、カリウム不足や塩分の過剰摂取が続く、むくみなどの原因になります。

そのほか、腎臓の老廃物の排出を助けたり、筋肉の収縮をスムーズにする働きもあります。

食物繊維

上述したように、人参には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維どちらも含まれており、不溶性食物繊維は水溶性食物繊維の3倍多いです。

水溶性は水に溶解する性質を持っており、水溶性食物繊維は水に溶けるととろとろ・ネバネバして糖質の消化や吸収を穏やかにする作用があります。不溶性は液体に溶解しない性質を持っており、不溶性食物繊維は水分を吸って腸の中で大きく膨らみ、排便をスムーズにし、有害物質が体にとどまる時間を短縮させ、便秘の予防・改善、腸内環境を整えます。

新鮮な人参の選び方

新鮮な人参を選ぶときの注目すべきポイントは下記です。

  • なめらかな肌のもの、でこぼこのない

  • 肩がはっている

  • ひげ根の少ないもの

  • ひげ根の跡の間隔が均一で真っ直ぐに並んでいる

  • オレンジ色が濃い

  • 根の先まで太い

鮮度が落ちている人参は味や食感が落ちているのはもちろんのこと、栄養価も下がっているので、できるだけ新鮮な人参を選んで購入するようにしましょう。

人参のおすすめ加熱調理レシピ

春人参は柔らかくみずみずしいのが特徴で、サラダや野菜スティックにおすすめです。秋冬に旬を迎える人参は甘く加熱に強いので、煮物や炒め物など加熱調理に向いています。

鶏肉と人参のいり煮

鶏肉と人参のいり煮

鶏肉のうまみが人参に移って美味しい一品に仕上がります。 人参に含まれるβ-カロテンは加熱することで吸収率が1.5〜2倍にアップ。これは細胞内で溶解して、吸収されやすくなるからです。そのため、加熱料理がおすすめです。さらに、β−カロテンは脂溶性なので、鶏肉と一緒に食べることで鶏肉の脂質でβ−カロテンの吸収率が高まります。 煮汁が少なくなってきたら、鍋をゆすり照りよくからめて仕上げましょう。 鶏肉と人参のいり煮のレシピはこちら

肉じゃが

肉じゃが

和食の定番、肉じゃがのレシピをご紹介します。野菜の甘みが楽しめる一品です。ご飯のおかずとしてお楽しみください。 てんさい糖を使うことで、まろやかな甘さに仕上がり、コクも増します。 落としぶたを使うことで短時間で食材に味が染み込みます。また、食材の煮崩れ防止にもなります。落としぶたはアルミホイルやクッキングシートを鍋より一回り小さいサイズに切り、中央に穴を開けて作れます。 肉じゃがのレシピはこちら 簡単に作れる肉じゃがや、めんつゆで作る肉じゃが電子レンジで作る肉じゃがのレシピもご紹介しています。また、塩肉じゃがのレシピはこちらでご紹介していますので、ぜひご覧ください。

五目玄米ご飯

五目玄米ご飯

だしがきいた、ほっとなごむ美味しさです。 こちらのレシピでは人参やごぼう、こんにゃく、油揚げ、干ししいたけなど様々な具材を使用しています。ごぼうには食物繊維(不溶性食物繊維と水溶性食物繊維ともに)が多く含まれていますので、腸内環境を整えたり、血糖値の上昇速度を緩やかにしてくれることが期待できます。 具材は細かく切ることで味のなじみがよくなります。 五目玄米ご飯のレシピはこちら