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人参の黒ずみ・斑点は食べられる?原因は?対処法はある?

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人参の黒ずみ・斑点は食べられる?原因は?対処法はある?

人参の表面に黒ずんでいる箇所があったり、黒い斑点があったりして「腐敗しているのではないか」と不安になったことがある方は多いのではないでしょうか。本記事では、人参が黒く変色してしまう原因や対処法について詳しく解説します。

人参が黒い原因は?

ポリフェノール

人参の表面やカットした断面に黒ずんでいる箇所があったり、黒い輪や黒い斑点、黒い筋ができている場合は、まず含まれているポリフェノールが酸化することが原因で変色していることが考えられます。

ポリフェノールとは植物がもつ苦味や渋みとなる化合物の総称で、構造の違いによって様々な種類があります。黒く変色させているのはアントシアニンであると考えられます。アントシアニンは元々紫色の色素で、酸性になると赤→茶色→黒と変色していく性質があります。

人参にはポリフェノールオキシターゼなどの酵素が含まれており、人参が空気中の酸素に触れることでポリフェノールが酸化し、黒っぽく変色してしまいます。カットしたりんごが黒く変色していってしまうのも同じ理由で、これは生理現象です。

人参に含まれているポリフェノールが酸化する原因として下記の3つが挙げられます。

  • 表面に傷ができてしまった。

  • 乾燥してしまった。

  • 温度が高い場所に置いていた。

人参は収穫された後、ブラシなどを使ってヒゲ根や泥を落としてから出荷されることが多いのですが、洗浄する際に表面にできた傷や、出荷時に擦れたりすることでできてしまった傷などが原因で長く空気に触れる状態が続いてしまうことが原因でポリフェノールが酸化し、表面が黒くなってしまうことがあります。

また、収穫後に人参が乾燥してしまうのも原因の一つです。乾燥すると細胞膜が壊れてしまうためポリフェノールとオキシダーゼが接触することになり、さらに空気中の酸素に触れることで酸化してしまいます。

さらに、高温でポリフェノールオキシターゼが活発に活動することがわかっており、夏場などの暖かい季節などの常温保存なども黒く変色させてしまう原因となります。

黒カビ

黒カビの生えた人参

人参の表面に黒い斑点が一箇所にまとまって黒く変色しているように見える箇所がある場合は、カビが生えている可能性が高いです。

黒カビは、クラドスポリウム属の病原菌で、170種以上いるといわれています。その中でも代表的な黒カビは、クラドスポリウム・クラドスポリオイデスとクラドスポリウム・スフェロスパーマムです。黒カビは空気中に舞っていて、繁殖できる場所を見つけると一気に増えていきます。多湿の場所を好み、食べ物以外でもお風呂のサッシやエアコンの内部などに多く見られます。

また、栽培中に土壌に含まれていた糸状菌(カビ)が原因で起こる病気に感染することで黒カビが生えてしまうこともあります。

土汚れ

普段私達が食べているのは、人参の「根」です。土の中で成長したものを掘り出して出荷しています。人参の場合は土汚れや泥汚れを落としてから出荷されていることが多いですが、上述したように洗浄することで傷がついて黒ずんでしまうこともあるため、しっかり洗わずに出荷されることもあります。

そのため、土汚れや泥汚れがついていて黒く見えることもあります。

病気

人参は栽培中にかかってしまった病気が原因で腐敗して、黒く変色してしまうこともあります。人参を腐敗させてしまう病気には「黒色根腐病」や「軟腐病」などがあります。

黒色根腐病は、糸状菌(カビ)が原因で起こる病気で、感染すると表面に黒褐色や黒色の水染み状の病斑が現れ、病気が進行すると病斑部の周辺が褐変し軟化してしまいます。さらに進行すると中央部分が陥没してしまうことがあります。

軟腐病は、ペクトバクテリウム・ カロトボーラムと呼ばれる病原細菌が原因でかかる病気です。感染すると細胞をつなぐ壁(細胞壁)に含まれるペクチンが分解されてしまうため細胞が壊れ、病気が進行すると軟化していき腐敗してしまいます。

人参に限らず病気に感染している野菜は取り除かれて出荷されていることがほとんどですが、害虫による食痕や傷口などから感染し、輸送中や貯蔵中に発症してしまうこともあります。

腐敗

腐敗した人参

人参が全体的に黒く変色してしまっている場合は、腐敗している可能性が高いです。腐敗が原因で黒く変色している場合は、全体的に柔らかくなっていたり異臭がするなど、変色以外の腐敗のサインが見られることが多いです。腐敗している人参の特徴は後述しますので、そちらを参考にしてください。

黒くなった人参の対処法

ポリフェノールの酸化は食べて問題ない

ポリフェノールが酸化したことが原因で黒く変色した人参は、食べても問題ありません。変色の原因となっているポリフェノールは、抗酸化作用があり体に害のある成分ではありません。

ただし、酸化して黒く変色している人参は鮮度が落ちている状態です。酸化が進むと腐敗していってしまいますので、早めに食べきるようにしましょう。黒く変色してしまうと料理の見た目を損ねてしまうので、気になる方は変色している部分をカットして食べると良いです。

黒カビは中身を確認

黒カビが生えてしまった場合は、カビが生えている部分を切って破棄し中身を確認してください。一度カビの生えた食品は、カビを除いてもカビの菌などが内部に入り込んでいる可能性があるため基本的には破棄する必要がありますが、人参のように固い野菜は密度が高いため表面にカビが生えただけで中身に上記のような異常が見られなければ、皮を厚めに剥きしっかりと取り除けば食べることができます。

ただし、下記のような異常が見られる場合は食べられませんので、破棄しましょう。

  • カビが広範囲に広がっている

  • 柔らかくなって溶け出している

  • 変色している

本来の人参はオレンジ色をしています。切ってみて中身全体にカビが侵食していたり、全体的に変色している、柔らかくなって溶け出している場合は腐敗してしまっています。

しかし、カビの胞子は目に見えないほど小さいため見えない部分にも侵食している可能性もあります。カビはカビ毒を発生させて下痢や嘔吐などの中毒症状が起きる可能性もあるため、心配な方や小さなお子様、高齢者の方が食べる場合は破棄するのが無難です。カビ毒は加熱すれば大丈夫ということはないので、注意しましょう。

出典:かびとかび毒についての基礎的な情報(農林水産省)

土汚れはよく洗って落とす

泥汚れがついている人参は食べるても問題ありませんが、土汚れには細菌が分布していることもあるため、しっかりと洗って汚れを落としてから食べるようにしましょう。

表面についている土汚れは、流水で洗い流せば綺麗に落とすことができます。こびりついてしまっている場合は、水に5分ほどつけて柔らかいスポンジで優しくこすると落ちます。ヘタの部分は、くぼんでいて泥汚れがつきやすいので、包丁のはもとを使ってくり抜いてから洗うようにしましょう。

病気・腐敗は破棄

栽培中に感染してしまった病気が進行して腐敗してしまったり、正しく保存できていなかったことなどが原因で腐敗し黒く変色してしまった人参は、残念ながら食べることはできませんので破棄しましょう。

人参の黒変を防ぐ方法

病気による変色は防げない

栽培中に感染してしまった病気が原因で黒く変色してしまうのは、残念ながら防ぐことができません。病気に感染している人参は、出荷する際に取り除かれていることがほとんどですが、出荷中に発症してしまうこともあります。万が一病気にかかっている人参を購入してしまった場合は、店舗によっては交換や返金などの対応をしてくれることもありますので、購入した店舗に相談してみるのが良いです。

家庭菜園で人参を育てる場合は、病気に感染しないようしっかり対策をしておくことが大切です。

ポリフェノールの酸化・カビ・腐敗による変色は正しい保存方法で防げる

ポリフェノールが酸化してしまうことによる「黒ずみ症」やカビ、腐敗による変色は正しく保存することである程度防ぐことができます。

正しく保存することで鮮度を保ち、長く美味しく食べることができるので、人参を購入したら正しい保存方法で保存しましょう。

人参の正しい保存方法

常温保存

人参をキッチンペーパーに包み立てて常温保存

人参は冬場ならば常温保存することができます。一本ずつ新聞紙に包みます。新聞紙がない場合は、キッチンペーパーでもOKです。暑さ・湿気を嫌うので、温度が低く一定に保たれており、直射日光が当たらず、風通しがよい冷暗所で保存するようにしましょう。

土に浅く埋める方法もあります。通常の常温保存よりも長持ちします。

立てて保存するのもポイントです。野菜は育った状態に同じように保存するとストレスがかからず、長く保存できます。

キッチンペーパーが湿気ったら、こまめに替えるようにしましょう。

冷蔵保存

人参をキッチンペーパーで包みポリ袋に入れ立てて冷蔵保存

人参は夏場は必ず冷蔵保存します。冬場でも2〜3週間保存したい場合は冷蔵庫の野菜室にいれましょう。このときもキッチンペーパーに包み、ポリ袋に入れて、立てて保存します。買ってきた袋のまま冷蔵するのは厳禁です!

2週間以上保存したい場合は、ヘタの部分は切ると長持ちします。にんじんのヘタの近くに生長点があり、保存期間が長くなると葉を生やそうと根の栄養分を消費してしまうためです。すぐ食べる場合はわざわざカットする必要ありません。かえって酸化が進みます。

カットした人参はラップできっちり包み、ポリ袋に入れて冷蔵保存できますが、切った野菜は傷みが早いので数日以内に使い切るようにしましょう。前述した通り、半分だけ保存する場合は先の方を保存用にします(へたの方を先に食べます)。

冷凍保存

人参は冷凍保存することもできますが、丸ごと冷凍してしまうと使うときに不便なので、必ずカットしてから冷凍しましょう。

生のまま冷凍

人参をカットして生のままジッパー付きポリ袋に入れて冷凍

人参は生のまま冷凍してもOKです。使い勝手いいように、お好みでカットをしましょう。写真はいちょう切りと細切りです。切った後にキッチンペーパーで水けをしっかり拭き取って、冷凍用のジッパー付きポリ袋に入れて、空気をしっかり抜き、冷凍庫へ。

茹でてから冷凍

人参をカットして茹でてからジッパー付きポリ袋に入れて冷凍

冷凍する前に茹でることをブランチングといいます。ブランチングすると使うときに火の通りが早くて使い勝手がよい、以外に、変色しにくい、食感が悪くなりにくい、風味が落ちにくい、というメリットがあります。家庭用の冷凍庫は温度が急速冷凍ができませんので、ダイレクトフリージング(茹でずに冷凍)は向きません。時間がある方はなるべくブランチングするようにしましょう。

調理するときに使う切り方にします。写真では輪切りにしています。

冷凍するときは硬めに下茹でします。竹串を強く刺してやっと刺さるくらいが目安です。解凍方法ですが、基本的に冷凍したまま調理に使ってOKです。冷凍した人参は直接料理に使うと水が出るので、炒め物などで水けを嫌う料理の場合は、前日に冷蔵庫に移し自然解凍しましょう。お急ぎの場合は電子レンジを使って解凍する方法もあります。

その他にも、人参を天日干したりオーブンで水分を飛ばしてから乾燥保存したり、味噌や酢などに漬けて漬け保存することもできます。詳しい人参の保存方法についてはこちらの記事を参考にしてください。

食べられない人参の特徴

黒変以外にも気をつけなければならない人参の特徴は、下記の通りです。

見た目

腐敗している人参の見た目の特徴は下記の通りです。

人参には黒カビだけではなく、白カビが生えることもあります。人参の表面に白いホコリのようなものがついているときは白カビです。黒カビと同じように中まで侵食していなければ皮を厚めに剥けば食べることができますが、全体的にカビが生えてしまっている場合は食べることができません。

新鮮な人参の表面はハリがありますが、全体的にシワシワになっているものは乾燥してしまっている状態です。単に乾燥しているだけであれば食べることができますが、溶け出していたり汁が出ていたりする場合は、腐敗してしまっているので食べることはできません。

臭い・味

腐敗している人参の匂いや味の特徴は下記の通りです。

上述したように、人参は土に埋まった状態で育っているものを掘り起こして出荷されるため、泥臭さを感じることがあります。また、野菜特有の青臭さもありますが、そこまできつい臭いのする野菜ではありません。酸っぱい臭いや味がする場合や、生ゴミのような臭いがする場合は腐敗している可能性が高いです。

人参に限らず食材は腐敗すると、多くのバクテリアが活動し酢酸発酵することが多いので酸っぱい臭いがしたり酸っぱい味がします。この現象は味噌や醤油といった発酵食品にも起きていますが、発酵とは異なり次第に味や臭い、形が崩れるなど食材が変化していく現象はあるときに「腐敗」とよばれます。あきらかにいつもとは異なる酸っぱい味や生ゴミのような異臭がする場合は食べずに破棄するようにしましょう。

カビが生えていないように見えてもカビ臭さを感じる場合は見えない部分にカビの胞子が入り込んでいる可能性があります。カビには様々な種類があり、墨汁のような臭いを感じさせる「2-メチルイソボルネオール」や土臭さや泥臭さを感じさせる「ジェオスミン」といった代表的な悪臭を放つ種類がいます。また、カビ自体は臭いを感じさせる成分を出さない種類もいますが、カビ自体が臭いを出さなくてもカビの餌になる物質がカビの作用によって変化することで発生する臭いなどで、人に「カビ臭い」と感じさせます。心配な方は破棄するのが無難です。

触感

腐敗している人参の触感の特徴は下記の通りです。

  • ぬめりがある

  • ぶにょぶにょしていて形が崩れる

人参は比較的多くのでんぷんを含む野菜であり、でんぷんが雑菌の餌となって細菌が繁殖しぬめりが出てきてしまうことがあります。洗うことで簡単に洗い流せる程度のぬめりであれば、皮を厚めに剥けば食べられることがありますが、触るとぶにょぶにょしていてすぐに形が崩れたり、指で押した跡が残るようであれば腐敗が進んでしまっている状態ですので、破棄しましょう。