大根おろしを家庭で作る方は多いと思いますが、大根おろしにするメリットや適した部位、辛味を抑える方法などご存知でしょうか。本記事で大根のおろし方について詳しく解説していきます。
大根には多くの消化酵素が含まれており、すりおろすことで作用しやすくなるというメリットがあります。
大根に含まれている消化酵素は下記の通りです。
アミラーゼ(別名ジアスターゼ)
プロテアーゼ
グリコシダーゼ
アミダーゼ
オキシダーゼ
カタラーゼ
ベルオキシダーゼ
アミラーゼはでんぷんを分解する酵素で、食べ物の消化をサポートし、さらに胸焼けや胃もたれを防ぐ効果があります。大根のアミラーゼはpH5.2〜5.8(酸性)、60〜65℃のときが最も活性が強くなっています。浅漬けのように短期保存では活性がありますが、たくあん漬けにはありません。
オキシダーゼにも同じ作用があり、焼き魚に大根おろしを添えるのは理にかなっていることが分かります。
大根特有の辛味は「イソチオシアネート」と呼ばれる成分によるものです。
イソチオシアネートは、抗酸化作用があると言われています。体内の活性酸素を除去することができるため老化予防に繋がる他、代謝を促進したり免疫力向上などの効果も期待できます。また、殺菌効果もあり、サルモネラ菌を使った実験では大根の辛味成分により、細胞に変異を起こさせる作用があることがわかっています。
辛味成分のイソチオシアネートの母体となっているのはイオウ化合物のグルコシソレートで、大根の組織が破壊されると酵素ミロシナーゼにより加水分解されてイソチオシアネートが生じます。そのため、大根を細かく刻んだりすりおろした方がイソチオシアネートを効率的に摂取することができます。
ただし、イソチオシアネートは刺激性のある成分であるため大量に摂取すると、胃腸に過度な刺激を与えてしまうため食べすぎには注意が必要です。場合によっては胃痛・腹痛や下痢といった症状が出ることがあります。
大根に含まれている消化酵素のジアスターゼは酸化に弱い成分です。すりおろしてから時間を置いてしまうと、大根が空気に触れることで酸化してしまいます。
また、辛味成分であり抗酸化作用や抗菌作用のあるイソチオシアネ−トは揮発性の高い成分で、空気にさらしていると蒸発してしまいます。
そのため、大根おろしは食べる直前におろすのが良いです。
大根は上部(首部)・中部・下部と3つにわけられ、それぞれ辛味成分の含有量が異なります。最も辛味成分の含有量が少ないのは葉に近い上部です。マイルドな辛味なので、辛いのが苦手な方は上部を大根おろしにするのがおすすめです。
ちなみに、上部は冬の時期に採られたものの方が甘いです。大根は、気温の低下や日照時間の変化に合わせてショ糖やブドウ糖、果糖など甘味成分を葉や根に蓄積していきます。これは水分の多い大根が低温でも凍らないようにするためであると言われています。そのため、冬の大根は甘味が増し美味しくなります。大根は冬が旬と言われているのはこのためです。
辛味成分が最も多く含まれているのは下部(先端)です。大根は上部から下部にいくにつれて下部の含有量が増えていきます。そのため、上部の辛味では物足りないという方やしっかりとした辛味を感じたいという方は下部を使うのがおすすめです。
下部に最も辛味成分が含まれている理由には諸説ありますが、下部で活発に細胞分裂を行い成長するため、害虫などの天敵を寄せ付けないよう辛味成分を多く含むようになったと考えられています。
ちなみに、大根は気温が高いほど辛味成分が多くなります。そのため、大根の上部や中部は冬に採られた大根と比較して初夏に採られた大根の方が基本的には辛味が強いです。しかし、下部は冬の時期に採られたものの方が辛いです。
上述したように辛味が苦手な方は辛味成分の含有量が少ない大根の上部を使うのが良いですが、より辛味をなくしたいという場合や辛味が強い下部しか家にない場合もあるでしょう。そんな場面で役立つ大根を甘くする方法を紹介します。
大根の辛味成分であるイソチオシアネートは、揮発性の高い成分です。そのため、すりおろしてから空気にさらしておくだけで辛味は軽減されます。ただし、空気にさらすことで辛味は軽減されても栄養価が下がってしまう他、味や風味も落ちてしまうというデメリットもあります。
ちなみに玉ねぎは辛味を取って食べやすくするために水にさらすことがありますが、大根の場合は水にさらしても辛味は軽減されにくいです。玉ねぎの辛味は「硫化アリル」と呼ばれる成分によるもので大根の辛味成分とは異なります。硫化アリルは揮発性が高い成分であることに加えて水溶性であるため水にさらすことで辛味を軽減することができます。
大根は空気にさらしておくだけでも辛味を軽減することができますが、電子レンジで加熱をするとより早く辛味成分を飛ばして辛味を抑えることができます。
電子レンジを使う場合は、大根おろしを耐熱容器に入れて600Wのレンジ30秒ほどずつ好みの辛さになるまで様子を見ながら加熱します。
ただし、大根に含まれているアミラーゼなどの酵素は熱に弱いためレンジで加熱してしまうと酵素が働かなくなってしまいます。また大根に含まれているビタミンCも熱に弱いため、大根の栄養素をしっかりと摂取したいという方は加熱はしない方が良いです。
大根おろしにレモンや酢など酸味のあるものを加えることで、辛みを中和することができます。ポン酢などのしっかりした味の調味料を入れても食べやすいです。例えば天ぷらを食べるときの薬味として使う場合などのおすすめです。
辛味成分自体がなくなるわけではないので、レモンや酢を混ぜるだけではまだ食べにくいと感じる方もいるかと思いますが、できるだけ栄養素はそのまま残したいという方は、空気にさらしたり加熱をするよりもレモンや酢を加えるなど食べやすくする方法を選ぶのが良いでしょう。
大根おろしにするときの大根の切り方は大別して、縦に切る方法と輪切りにする方法の2つがあります。
大根おろしにするときに縦に切って棒状にすると、握りやすいためおろしやすいです。
皮は剥いても剥かなくてもどちらでも大丈夫です。大根の皮付近にはビタミンCや食物繊維などが含まれているため栄養価を下げたくない方は皮ごとするのが良いでしょう。ただし、大根の皮付近の筋には、ポリフェノールが含まれています。ポリフェノールとは、ほとんどの植物に存在する苦味や色素の成分です。大根の場合は皮付近の筋に集結しているため苦味を強く感じることがあります。そのため、苦味が苦手な方は皮は厚めに剥いた方が良いです。
大根を縦に切るときは、大根を縦向きに4等分に切ります。
輪切りにして大根をすりおろすこともできます。皮は縦切りと同様に苦味を出したくない方は剥きましょう。
輪切りにする場合は、薄く切りすぎると持ちにくくなってしまうので片手で持てる厚さに輪切りにしていきます。
上述したように大根は細胞が破壊されることにより辛味が強くなります。そのため、辛味が苦手な方は繊維に沿っておろすと良いです。
縦に切った場合も輪切りにした場合も、繊維を壊さないように優しく「の」の字に動かすと辛味を軽減することができます。「の」の字にすることで繊維がつぶれて水分がたくさん出ます。また、繊維が残らないので口当たりもなめらかになります。
反対に辛めがよい場合は繊維を壊すようにおろすと良いです。大根を力を入れて素早く上下に動かすと繊維が断ち切られて辛味が強くなります。
繊維に逆らっておろすと、繊維が残るので大根の食感も残りやすく食べごたえがあります。
ふわっとした大根おろしにしたい場合は、大根をおろし器に対して垂直になるように当てて奥に押す時だけ力を入れるようにするとふんわりとした仕上がりになります。
大根おろしは、おろし方はもちろんのことおろし器によっても辛味や口当たりが変わります。
例えばプラスチック製やセラミック製のおろし器、フードプロセッサーは細胞を傷つけにくく繊維が残りやすいため、辛味を抑えることができます。フードプロセッサーは粗めに仕上がるため大根の食感も楽しむことができます。
金属製やアルミ製のおろし器は、プラスチック製のおろし器と比較して細胞を傷つけやすいため辛味が強くなります。
プラスチック製のおろし器は、おろす面が広いものから小さいものまで、様々なタイプのものがあり、大根に限らず野菜をおろす際にも使いやすいのが特徴です。
やや粗めにすることができるため、繊維を傷つけにくく金属製やアルミ製のおろし器と比較して辛みを抑えることができる他、しっとりとした口当たりに仕上がります。
セラミック製のおろし器は、土台が大きく重さもあるため大根のように固い食材でも不安定になりにくくおろしやすいのが特徴です。
すりおろすための突起が小さいため、鬼おろしよりも辛く金属製よりも辛くない中間の辛さです。仕上がりは少し水っぽくなりますが、きめ細かくなめらかな口当たりに仕上がります。
また、セラミック製のおろし器はそのまま食卓に並べることができるタイプのものも多いので便利です。
「おろし器の元祖」と言えば金属製やアルミ製のおろし器です。
金属製やアルミ製のおろし器は、プラスチック製やセラミック製のおろし器と比較して繊維を傷つけやすいため辛味が強くなります。そのため、辛めの大根おろしが良い方は金属製やアルミ製のおろし器を使うのがおすすめです。
金属製やアルミ製のおろし器はおろすための突起が短いため不揃いになりがちで、大根の歯ごたえが残り食べごたえがあります。
鬼おろし器はおろすための突起が粗いおろし器です。
鬼おろし器を使うと繊維が傷つかないので甘味のある大根おろしになります。また、適度な水分と空気を含んだ状態でおろすことができるため歯ごたえのある食感になり、口当たりはふわふわとしています。
伝統的な鬼おろし器は竹製のものです。竹製の鬼おろし器は熱伝導率が低いため、おろすときの摩擦熱を抑えることができ、食材のよさを損なわずふんわりシャキシャキとした上質な大根おろしに仕上げることができます。
鬼おろし器は家庭にないけれど、鬼おろし器でおろしたように仕上げたいという場合はフードプロセッサーを使うのがおすすめです。フードプロセッサーを使っても粗めの仕上がりになるので辛味が出にくく、食感を残すことができます。
大根をすりおろすと水分がたくさん出ます。料理によっては水分を絞ってから使用する方が見栄えや味がよくなります。ここでは、大根おろしの水分の切り方をご紹介します。
大根をおろしたときに出る水分には、辛味成分であるイソチオシアネートはもちろんのことアミラーゼなどの酵素やビタミンCも含まれています。そのため、絞りすぎてしまうと栄養素も流出してしまうことになります。
水分が出てもそのまま食べるのが一番良いですが、水っぽいのが嫌という方や料理の味が薄くなるのを防ぎたいという方は絞りすぎずに適度に水分を残しておくと良いでしょう。
大根をおろしたら、ボウルや保存容器などに移します。容器に移したら流しの上でおろした大根を手で抑え、出てきた水分を流しに捨てていきます。数回繰り返しぽたぽたと数滴落ちるぐらいになったら完了です。上述したように絞りすぎてしまうと栄養素まで完全に流出してしまうため、ポタポタと垂れるぐらいがちょうど良いです。
こちらのやり方は、本来残しておきたいおろした大根まで水分と一緒に流れてしまいやすいので注意してください。ボウルよりもタッパーなどの四角い容器の方が角を使って水分を流すことができるので絞りやすいです。
容器だとおろした大根まで流れてしまいやすいですが、ザルだと水分のみを流すことができるので便利です。
ザルを使う場合は、ザルに大根おろしを入れたら押し当てるようにして水気を絞ります。この場合も絞りすぎると栄養価が低くなってしまうので注意しましょう。
ザルを使った絞り方は、大根おろしと水分をしっかり分けることができるのでやりやすいですが、ザルの網目に大根の繊維がついて洗う時が大変というデメリットもあります。
まきすを使って大根おろしの水分を絞ることもできます。まきす(巻きす)とは、海苔巻などを作るときに使うすだれのような調理器具です。「巻き簾(まきすだれ)」とも言います。
まきすを使う場合は、まきすの上におろした大根を乗せて、海苔巻を作るときのようにくるくると巻いていきます。巻いていったらギュッと力を入れて水分を絞ります。
大根おろしは保存することができます。冷蔵保存する場合は、大根をおろしたら保存容器に大根おろしを汁ごと密閉できる容器に移して冷蔵庫に入れます。冷蔵保存で1日〜3日ほど保存することができます。上述したように大根の辛味成分は揮発性が高いので、長くおいておくと味が落ちてしまいます。また酸化して色も変色していきますので、できるだけ早めに食べきるようにしましょう。
長く保存したい場合は、冷凍保存がおすすめです。冷凍保存する際は、軽く水けをきって冷凍用保存袋に平らになるように入れて冷凍庫へ。水分が多いので、急速冷凍機能を使って短時間で凍らせるのがポイントです。急速冷凍機能がない場合は、金属トレイを使って冷凍しましょう。
保存袋以外に、製氷器やアルミカップに入れて冷凍するのも◎です。すりおろしにすれば、解凍後の食感が変わりにくいです。大根おろしとして食べる場合は、前日に冷蔵庫に移して自然解凍しましょう。
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