夏が旬ですが通年出回っており家庭料理での使用頻度の高いピーマンですが、どんな栄養素が含まれているのでしょうか?ピーマンの栄養素とそれらの効能、栄養学的におすすめな食べ方を解説していきます。
ピーマンは唐辛子の仲間で、中南米原産の唐辛子がコロンブスによってヨーロッパに伝わり、辛みのない唐辛子に改良されてピーマンが生まれました。日本で栽培が始まったのは明治時代で、一般的に食べられるようになったのは戦後といわれています。
ピーマンは栄養価は抜群で、抗酸化作用のあるビタミンCの含有量の多さは特筆モノです。ビタミンCの量は、なんとトマトの4倍。抗酸化3大ビタミンであるビタミンA・C・E(ビタミンエース)を含み、さらに、コレステロール値の改善の効能があるビタミンPや、塩分を体の外に排出するカリウムなども含まれます。
ビタミンA・C・Eはその文字から「ビタミンエース」と呼ばれ、抗酸化3大ビタミンです。活性酸素に抗酸化作用を発揮して、細菌やウイルスの体内侵入を防いでいます。また錆びついた細胞の修復も助ける、素晴らしい栄養素です。その3つがピーマンには含まれています。
ピーマンに含まれるβ-カロテンは100gあたり400μgで、緑黄色野菜の基準である600μgに満たないのですが、一度に食べる量が多いことから緑黄色野菜とみなされます。
β-カロテンは体内で必要量がビタミンAに変換されます。皮膚や喉など全身の粘膜を健康に保ち、体外からのウィルスや細菌の侵入を防ぐことで免疫力をアップします。また、抗酸化作用もあるので、アンチエイジング効果や生活習慣病の予防効果が期待できます。
変換されたビタミンAは、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあります。視力を正常に保つ役目や視力低下の抑制効果、他にも皮膚の健康維持に関与していることから乾燥肌やニキビ肌の改善など美肌効果も期待できます。
ピーマンはビタミンCがとても豊富で、なんとレモンよりも多く含まれており、トマトの約4倍ものビタミンCが含まれています。
ビタミンCはたんぱく質からコラーゲンを合成する働きがあります。コラーゲンは、細胞間の結合組織で、血管や皮膚、骨、筋肉などを丈夫にします。コラーゲンによって、肌にハリ・ツヤが生まれます。シミのもとであるメラニン色素の合成も抑えるなど美肌づくりに大切な栄養素です。
そのほか、ビタミンCには白血球を活性化させて免疫力を高める作用もあります。抗ストレスホルモンの合成にも欠かせない栄養素です。
ビタミンEは強力な抗酸化作用があります。体内の脂質が酸化するのを抑え、老化の予防をしてくれます。ビタミンEは血液中の悪玉コレステロールの酸化を抑える働きがあり、酸化によって進行してしまう動脈硬化の予防に役立ちます。
さらにビタミンEは末梢血管の拡張させる働きがあるため、血行促進に繋がります。また副腎や卵巣の性ホルモンの分泌の調整にもビタミンEは関与しているので、生殖機能の維持にも役立ちます。
ヘスペリジンやルチンなどのフラボノイドをあわせてビタミンPと呼ばれています。ビタミンPは熱に弱いビタミンCを守ってくれる作用があります。そのため、本来熱に弱いビタミンCですが、ピーマンのビタミンCは熱に強くなっています。
他にも、ビタミンPには毛細血管を強化し、歯茎の止血の効果や動脈硬化や高血圧を改善する効果もあります。また強い抗酸化作用もあるので全般的な生活習慣病の予防にも効果が期待できます。
カリウムはミネラルの一種です。
カリウムはナトリウム(食塩)と協力し細胞の浸透圧を維持しています。体内に十分なカリウムがあると、余分な食塩を排出して血圧を正常に保ちます。しかし、カリウム不足や塩分の過剰摂取が続く、むくみなどの原因になります。
そのほか、腎臓の老廃物の排出を助けたり、筋肉の収縮をスムーズにする働きもあります。
鉄分はミネラル成分のひとつです。体に必要な栄養素で、成人のからだには約3〜5gの鉄が存在しています。ピーマンには100gあたり0.4mgの鉄が含まれています。
鉄は大きく分けて2種類あります。ひとつは機能鉄といって赤血球のヘモグロビンの材料となり、酸素を運びます。
もうひとつは貯蔵鉄といって肝臓や骨髄、筋肉などに蓄えられており、機能鉄が不足すると体内に放出されます。また、酵素の構成成分で、エネルギー代謝を助ける働きがあります。
ピラジンはピーマンの特有成分で、ピーマンの香りや苦味の元となっています。ピラジンは血流促進作用があります。さらに血流が良くなることで夏の冷え性対策にも効果があります。
また、血液が固まるのを防ぐので、血液が固まって血管を塞ぐ血栓の予防が期待できます。ピラジンはピーマンのワタにほとんど含まれているので、ぜひワタごと調理しましょう。
苦味成分のもう一つの成分がクエルシトリンです。クエルシトリンはドクダミに多く含まれるポリフェノールの一種で脂肪蓄積を抑制する作用があります。更に高血圧抑制、抗うつ作用、血流改善などの効果があるため、ピーマンはとても健康面で優れた野菜です。
クロロフィルは葉緑素とも言われている、植物や藻類に含まれる緑色の天然色素です。主成分はマグネシウムで、体内からダイオキシンやコレステロールなどの排出をしたり、胃腸粘膜の保護や修復をする作用があります。クロロフィルには抗酸化作用と浄化作用があり、口臭・便秘予防の効果があると言われています。
ピーマンは唐辛子の仲間ですが、唐辛子の辛味成分であるカプサイシンはほとんど含まれていません。カプサイシンが変化して辛さが1/1000であるカプシエイトという成分がピーマンには含まれています。
カプシエイトは辛くないため胃腸への刺激や血圧の上昇がほとんどないながらも、カプサイシン同様に交感神経を活発にする働きがあるので、代謝をアップさせて脂肪燃焼のサポートをしてくれます。
ピーマンには食物繊維も含まれます。
食物繊維は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分けられますが、ピーマンの食物繊維はどちらも含まれていますが、不溶性食物繊維の方が約3倍多いです。
不溶性食物繊維は水分を吸って腸の中で大きく膨らみ、排便をスムーズにし、有害物質が体にとどまる時間を短縮させ、便秘の予防・改善、腸内環境を整えます。腸内環境を整えることは痩せやすい身体づくりに大切だといわれています。
水溶性食物繊維は、水に溶けることで食べたものの粘稠性を高めます。それによって食べたものの腸への移動がゆっくりになるため、血糖値の上昇をゆるやかになります。
また、食物繊維はお腹の中で膨らむため満足感が高く、先に食べることで他の食事の食べ過ぎを抑えることができます。
参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス
三大栄養素とは炭水化物・脂質・たんぱく質を指します。野菜には少ないたんぱく質や炭水化物(糖質)が主成分です。
生のピーマン可食部100gあたり
エネルギー...20kcal
水分...93.4g
たんぱく質...0.9g
炭水化物...5.1g
脂質...0.2g
食物繊維...2.3g
ピーマンは90%以上が水分です。これは他の野菜でも同じなので、特に水分量が多いわけではありません。
炭水化物から食物繊維を引いたのが糖質で、ピーマン100gあたり2.8g含まれています。ピーマンの糖類は、ブドウ糖が多く、続いて果糖が多くなっています。ショ糖は微量含まれています。
ほうれん草:カロリー18kcal、糖質0.3g
大根:カロリー15kcal、糖質2.8g
トマト:カロリー20kcal、糖質3.7g
じゃがいも:カロリー59kcal、糖質8.4g
さつまいも:カロリー127kcal、糖質30.3g
であり、野菜の中でも糖質が低い方といえます。
出典:文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)
野菜のビタミンCはそもそも加熱に弱くない&ビタミンPがあるので熱に強いです。そのため、加熱によって減ることはあまりありません。
ただしビタミンCやカリウムは水溶性であるため、煮たりする場合は煮汁に溶け出してしまい、減ってしまいます。そのためスープなど水分ごと食べられる調理法がいいでしょう。
ビタミンAやEは脂溶性であるため、油を使い揚げ物や炒めものにすることで吸収率が上がります。そのため油炒めや良質な油を使ったドレッシングで油と一緒に食べる調理法がいいでしょう。
ピーマンは生でも食べられますが、繊維が硬いので生で食べる場合は刻んでサラダに入れるといいでしょう。しかし、加熱することで繊維が軟化し、クセも抜けて食べやすくなります。
また、生のままだと苦味も感じやすいです。ピーマンはへたの角の数が多いと栄養素が隅々まで行き渡っており糖度が高いと言われています。そのためピーマンを選ぶ際は、へたが6角以上のものを選ぶと生で食べやすいでしょう。
そして、生で食べる場合は新鮮なものを選ぶようにしましょう。新鮮なピーマンの特徴は下記です。
鮮やかな緑色で、皮にハリとツヤがある
ヘタのまわりがへこみ、肩が盛りあがっている
底の部分はフカフカせず、つややかで締まっている
ヘタの切り口が新鮮で変色していないもの
冷凍した場合、ほとんどの脂溶性の栄養素は損なわれることはありませんが、水溶性であるビタミンCなどは減ってしまうことがあります。
また、茹でてから冷凍保存されることも多く、その際に栄養素が流れ出てしまっている可能性があります。
しかし、ブランチングせずに急速冷凍をすれば、栄養素が壊れにくいので、大幅に栄養素が減る等の心配はありません。市販されている冷凍食材も急速冷凍をしているので、栄養はそこまで損なわれていません。
ピーマンの保存方法については、この記事の最後にご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
上述しましたが、ピーマンに含まれるβ-カロテンは100gあたり400μgで、緑黄色野菜の基準である600μgを満たしません。しかし、ピーマンは一度に食べる重量や食べる回数が多く摂取量が高くなることから、緑黄色野菜に分類されます。
「一度にたくさん食べられる」というのは栄養学的にも大切な指標で、その分栄養もたくさん摂ることができます。
先程も少し説明しましたが、ピーマンの種やワタには多くの栄養が含まれています。
種にはカリウムが多く含まれていて、ワタにはピーマン特有の栄養素であるピラジンやカプサイシンが含まれています。なんとワタの栄養は皮の10倍にもなるんです。体に良い効果がたくさんの栄養素が詰まっているため、種やワタは一緒に調理して食べるといいでしょう。
ピーマンは苦味があり、子供が嫌いな野菜の代表格です。
ピーマンに特に多いのはビタミンCです。それと、ビタミンEとカリウム、食物繊維が多いので、それらの栄養素が高い野菜で代用するといいでしょう。
ビタミンCを摂りたければ、ブロッコリーがおすすめです。ブロッコリーはビタミンCが野菜の中でも群を抜いて豊富で、ピーマンのように苦味がないためおすすめです。また、ブロッコリーは食物繊維も多く含みます。
ビタミンEはナッツ類に豊富ですが、野菜だと西洋かぼちゃやほうれん草に豊富に含まれています。また、ほうれん草はカリウムもビタミンEも豊富なので代用におすすめです。
ピーマンの代用におすすめの野菜は下記の記事でご紹介しています。ぜひご覧ください。
ピーマンの代用におすすめの野菜は?食感・栄養が近いのは?
ピーマンの旬は7〜9月です。
旬の時期のピーマンはビタミンや鉄分が多くなります。ですので、野菜は旬のものを食べるといいでしょう。栄養をより多く摂取できます。
一般的にピーマンと呼ばれるものは青ピーマンで実が未熟なものです。この青ピーマンが成長すると赤ピーマンになります。ちなみに赤ピーマンになるまで約7週間かかり、独自の青臭さが減り、甘みが増します。
赤ピーマンとパプリカはともにナス科トウガラシ属の野菜で、トウガラシの仲間ではありますが、同じ野菜ではありません。パプリカの方が大きく肉厚で、甘みが強く苦味が弱いので食べやすいのが特徴。ピーマンはトウガラシの辛味をなくし、果実を肉厚に改良されたものです。そしてパプリカもピーマンと同様に、とうがらしを品種改良したものです。
赤ピーマンはビタミンCが約2倍、β-カロテンが約3倍、ビタミンEは約5倍にもなります。実は赤ピーマンの方が、流通しているピーマンよりも栄養が豊富なんですね。ただ、ピラジンは減ってしまいます。赤ピーマンには、カプサンチンという赤の色素が含まれています。カロテノイドの一種で、抗酸化作用があり善玉コレステロールを上昇させる働きもあります。
黄ピーマンも、青ピーマンが熟したものです。赤ピーマンになる手前が黄ピーマンです。赤ピーマンに近づくほどオレンジ色になり、最終的に赤色になります。
ビタミンCはたんぱく質がコラーゲンになるのに必要不可欠な栄養素です。コラーゲンには肌に潤いをもたらす、丈夫な骨を形成する、丈夫な筋肉を形成する、関節の働きをよくするなど様々な効能があります。たんぱく質が豊富な食材には肉類や魚介類、卵、大豆などがあります。
ビタミンCは、鉄の吸収率をアップさせます。
鉄は、吸収率が低いと言われています。そのため鉄を含む食材を食べる際は、ビタミンCを豊富に含むピーマンを一緒に食べるようにするといいでしょう。鉄を多く含む食材にはレバーや赤身肉があります。他にもカツオや鶏卵、あさりや牡蠣、野菜では小松菜に多く含まれています。
鉄は赤血球のヘモグロビンの材料となり、酸素を運びます。このヘモグロビンですが、ヘムという赤い色素とグロビンというたんぱく質から成っており、赤血球が赤い色をしているのはこのヘモグロビンの色です。肺に取り込まれた酸素は、このヘモグロビンと結合して心臓に送られ、そこから全身へと運ばれていきます。そして、ヘモグロビンは酸素が届け終わると二酸化炭素と結びつき、また心臓を経て肺に戻っていきます。鉄を材料としたヘモグロビンは、体内でとても重要な役割をしているのです。
そのため、鉄が不足するといわゆる「貧血」になってしまうことがあります。また、鉄が不足するとヘモグロビンが作れなくなるため、体内が酸欠状態になってしまいます。そうすると様々な不調が出てきしまいます。特に脳は多くの酸素が必要で酸欠に弱いため自律神経のバランスが乱れたり、代謝が悪くなったりします。
にんにくや玉ねぎに含まれるアリシンはビタミンB1と結びつき、効果を持続させる働きがあります。ビタミンB1には疲労回復を助ける効果があり、ビタミンB1が不足すると疲れやすくなってしまいます。
ビタミンB1は日本人に不足しがちな成分と言われています。多く摂取しても体外に排出されてしまうので、たくさん食べたところで効果アップが期待できるわけではありません。しかし、アリシンと結びつくことで体内に長く留まらせることができ、疲労回復の効果を持続させることができます。
なので、ピーマンをにんにくや玉ねぎなどと一緒に炒めて食べると、疲労回復効果の持続が期待できます。
最後に、ピーマンの正しい保存方法をご紹介します。
ピーマンは常温保存することも可能です。保存期間の目安は1週間ですが、次の日に食べないならば冷蔵保存がおすすめです。また、夏場は必ず冷蔵保存するようにしましょう。
常温保存する場合は、直射日光が当たらず低い室温に保たれた冷暗所に新聞紙かキッチンペーパーで包んで、なるべく立てて保存しましょう。一つずつ丁寧に包みましょう。新聞紙やキッチンペーパーによって乾燥から守ります。
ピーマンは保存する場合は野菜室での冷蔵保存がベストです。風味や食感をあまり損なうことなく、それなりの長さ保存することができます。冷蔵保存の期間の目安は約3週間です。
できれば丸ごと冷蔵保存がおすすめ。野菜が傷みにくいです。キッチンペーパーに一つづつ包み、ポリ袋に入れます。ピーマンは夏野菜なのでキッチンペーパーを包むことで冷えすぎるのを防ぎます。ポリ袋はやや口を開けておくか、フォークで穴を空けるなどし密閉をさけ通気性を高めるようにするのがポイントです。湿気やガスが貯まるのを防ぎます。
購入時の袋でそのまま保存するのはおすすめしません。取り出してキッチンペーパーで一つずつ水けを拭き取るようにしましょう。
カットしたピーマンを冷蔵保存することも可能です。ラップで一つづつきっちり包むのがポイントです。酸化を防ぎます。その後、冷蔵用のジッパー付きポリ袋に入れて保存します。切ってしまったものは傷みが早いので、密閉します。2〜3日で使い切るようにしましょう。
また、種とわた、へたは傷みが早いので、切ってから保存する場合はなるべく取り除くようにしましょう。
長期保存させたい方は冷凍がおすすめです。
ピーマンは丸ごと冷凍保存することもできます。水けをしっかり取り除き、一つずつラップに包み、冷凍用のジッパー付きポリ袋に入れて保存しましょう。
冷凍したピーマンを和え物に使うときは、前日に冷蔵庫に移して自然解凍します。炒め物やスープに使うときは凍ったまま使うことができます。
あらかじめカットしておくと調理するときが楽です。ラップで小分けにし、ジッパー付きポリ袋に入れて保存します。
前述した通り、ピーマンに限らず野菜は冷凍すると、変色したり風味が落ちたりします。加熱調理をしてから冷凍することでそれを防ぐことができます。
2個のピーマンを1cm幅に細切りし、オリーブオイル小さじ1、塩小さじ1/4で炒め、冷ましたものを保存しています。
ピーマンを使ったおすすめのレシピをご紹介します。Filyのレシピはすべて小麦粉、乳製品、白砂糖不使用です。
淡白なささみにコクのある味噌味をからめて、美味しくいただきます。ご飯とよく合います。鶏ささみ肉に含まれるたんぱく質がコラーゲンになるには、ピーマンのビタミンCが必要不可欠なので相性抜群です。
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