じゃがいもの品種である「デストロイヤー」について解説します。
デストロイヤーの形は一般的なじゃがいもよりやや長く、楕円形です。
表皮は濃い赤紫で、芽の周りだけ鮮やかな赤色です。まだら模様のようにみえます。
肉色(中身の色)は、鮮やかな黄色です。
デストロイヤーは甘さが特徴です。じゃがいもとさつまいも、栗を組み合わせたような濃厚な味わいです。見た目もじゃがいもとさつまいもを掛け合わせたような形をしています。低温で保存することでさらに甘みが増します。蒸すだけで調味料なしでスイーツのように、食べることができます。
肉質は「レッドムーン」に比べやや粉質で、「ニシユタカ」より粘質といわれます。もう少し分かりやすく説明すると、なめらかな舌触りである「メークイン」と、デンプン量が多く加熱するとホクホクする「男爵」のいいとこ取りをしたような食感です。
デンプン量が多い品種なので、加熱するとと粘り気が出て、ホクホクとした食感です。
見た目のインパクトが強烈で皮は硬そうに見えますが薄く、新ジャガイモの時期ならそのまま剥かずに食べられます。デストロイヤーの皮はさつまいもよりも薄いです。
デストロイヤーは春植えすることができ、植え付けは2~3月です。成長すると、紫色の綺麗な花を咲かせます。デストロイヤーは丈夫な品種なので、やせ地でも育ちます。
また、耐陰性があるため日陰でも栽培可能で、無農薬でも病害虫被害を受けずに収穫できるため家庭菜園初心者でも育てやすいジャガイモです。
長崎県の農家の方々が、安心安全のじゃがいもとして全国普及に力を入れています。ネット通販でも無農薬のデストロイヤーが販売されていますので、興味のある方はぜひ調べてみてください。500g(約5個)で600円程度の値段で売られています。
長崎県雲仙市で多くのじゃがいも品種を生み出した故・俵正彦氏が自身の農場で「レッドムーン(上の写真)」の突然変異として発見し、その後育成したもので、2000年に品種登録がされています。出願時の名称は「ですとろいや」だったようです。
公的機関や民間企業ではなく個人で育種するのはかなり珍しく、俵さんは突然変異育種法を採用し一人で10もの品種を登録しました。2018年6月下旬に63歳でお亡くなりになっています。
「デストロイヤー」の由来は、皮のまだら模様が、プロレスラーのマスクのように見えるからです。実際にマスクをした人の顔のように見えますよね。知らない方も多いかと思いますが、「ザ・デストロイヤー」という名前の米国出身のプロレスラーが昔おり、ジャイアント馬場や力道山と対決しお茶の間で人気を博していました。
「デストロイヤー」は英語「destroyer」が由来で「破壊者」という意味です。この意味は、このじゃがいもの品種とは関係ありません。
正式名称は「グラウンド ペチカ」です。
「グラウンド」は「地面」を意味する英語です。「ペチカ」は「暖炉」を意味するロシア語です。黒色に近い濃い赤紫色の皮を地面に、芽の周りの真っ赤な部分を暖炉から出る炎に例えて、地面(グラウンド)から暖炉(ペチカ)の炎が出てるようなじゃがいもということで、このように命名されました。
デストロイヤーの旬は他のじゃがいもと同じです。
寒い地域、主に北海道では、春に植えて夏過ぎに収穫されるため、北海道産のデストロイヤーの旬は秋です。北海道以外の土地では、冬(2〜3月)に植えて夏前に収穫されるため、旬は5〜6月頃です。
じゃがいもは保存が効くため、通年出回っています。
春から初夏にかけて収穫され出回るものを新じゃがといいます。収穫されてすぐに出荷されるため皮が薄く、水分量が多いのが特徴です。
デストロイヤーは、主に発祥の地である長崎県で栽培されています。また、じゃがいもの代表的な産地である北海道でも栽培されています。その他、福岡県、長野県、山口県などでも生産されています。
発祥地の長崎県でも、そこまでメジャーな品種ではなく、スーパーでは見かけることは少ないです。ネット通販では販売されています。
文科省の出している「食品データベース」には、デストロイヤーの栄養素については記載がありません。しかし、じゃがいもの一種であることから、じゃがいもに含まれる栄養素は一定量デストロイヤーにも含まれていると考えられます。
一般的にじゃがいもに豊富な栄養素・成分は、ビタミンCやカリウム、ビタミンB6、パントテン酸、食物繊維などです。
通常のじゃがいもには含まれておらず、デストロイヤーに含まれているのは、皮の紫色の元になっている、ポリフェノールの一種アントシアニンです。
ポリフェノールとは植物がもつ苦味や渋みの成分となる化合物の総称で、構造の違いによって様々な種類があります。アントシアニンは紫色の色素です。例えば、ぶどうの皮や紫キャベツの元になっているのもアントシアニンです。
アントシアニンは水溶性であるため、水に溶かして紫色の着色料として使われることもあります。
デストロイヤーは毒々しい色合いなので「着色料で色をつけているのではないか」「体に悪いのではないか」と心配になる方も多いようですが、アントシアニンには抗酸化作用があり身体によい成分として注目されています。
基本的に、一般的なじゃがいもと同じようにデストロイヤーも食べることができます。一般的なじゃがいもよりも火の通りが早いという特徴があります。
煮崩れしにくい特徴に注目すれば、肉じゃがやカレー、ポトフなどの煮物におすすめといえます。しっかり煮込んで味を染み込ませても、煮崩れしません。皮をあえて残すといつもと違う見た目も楽しめます。
じゃがいもの煮崩れを防ぐには、
水から茹でる
茹でる前に水にさらす
電子レンジで加熱
大きめに切って火力に気をつける
クエン酸の調味料や食品を投入
など様々な方法があります。
デストロイヤーは甘みが強いので、クリームシチューやグラタンなどクリーム系の料理にもよく合います。
さつまいものレシピを参考に、デストロイヤーでスイートポテトなどスイーツを作るのもおすすめです。蒸してそのまま食べるだけでもまるでスイーツのような甘さです。その他、お菓子づくり全般に向いています。
ホクホクな食感に注目すれば、コロッケやポテトフライなどの揚げ物、マッシュポテトやポテトサラダなどの蒸し料理にも適しています。
じゃがいもをカリカリに揚げるには、
水にさらしてデンプンをとる
薄力粉(米粉)3:片栗粉2
2度揚げ
を実践しましょう。
また、じゃがいもをホクホクにしたい場合は電子レンジはおすすめできません。蒸し器で蒸すのがベストです。
皮に豊富なポリフェノールをたくさん摂りたい場合は、皮を残してじゃがバターやホイル焼きなどにするのがよいでしょう。いつもとは違う見た目も楽しめます。
皮をそのまま使うとき、残留農薬が心配な方はしっかり洗うようにしましょう。
ホタテ貝やホッキ貝を原料に作られたパウダーを使うのも、残留農薬を落とすのに有効的です。特におすすめなのがホッキ貝です。ホッキ貝は他の貝殻と比較しても除菌効果が高いことが研究で立証されています。
ホッキ貝を高温で焼きパウダー状にしたものを水に溶かすことで、アルカリ水を作ることが出来ます。上述したように農薬は酸性であるためアルカリ水につけることで農薬が中和されて落としやすくなります。
ホタテ貝やホッキ貝のパウダーを溶かした水に人参を5分~10分漬けておくと水溶液が次第に濁ってきたり油が浮いてきたりします。目にみえて残留農薬が落ちていることがわかるので流水で洗い流したりするよりも安心できます。
これを使って水にさらすのが一番おすすめです。
デストロイヤーに限らず、じゃがいもの芽は大変危険です。
じゃがいもの芽や芽の根本には天然毒素であるソラニンやチャコニンが含まれており、一定量摂取すると吐き気やおう吐、下痢、腹痛、頭痛、めまいなど症状が出る可能性があります。
ソラニンとチャコニンは、グルコースやガラクトースなどの「糖」と、植物由来の窒素を含んだアルカリ性(塩基性)物質である「アルカロイド」からできているグリコアルカロイド(糖アルカロイド)と呼ばれる成分の一種です。育っていく中で外敵に食べられてしまわないようにソラニンやチャコニンといった有害物質をもつようになったといわれます。
出典:食品中の天然毒素「ソラニン」や「チャコニン」に関する情報(農林水産省)
デストロイヤーに限らず緑色に変色したじゃがいもは絶対に食べてはいけません!
芽と同じく、緑化した皮にもソラニンやチャコニンなどの天然毒が含まれます。日光や蛍光灯などの光に当たると、ソラニンやチャコニンの量が増え、皮や実の表面が緑色に変化します。
普通のじゃがいもではソラニンやチャコニンが100g中に2〜13mg程度含まれますが、日光や蛍光灯などの光を浴びることで緑色になったじゃがいもには30〜50mg、発芽部分には500mgも含まれることがあります。ソラニンやチャコニンを30mg以上とると中毒を起こすといわれており、腹痛やめまい、眠気などを引き起こす可能性があります。また、ソラニンやチャコニンには苦味もあります。
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