人参は甘みがある野菜ですが、強い苦味を感じて「腐敗しているのではないか」と心配になった方は多いのではないでしょうか。本記事では人参が苦い原因や、人参の苦味・エグみの消し方などを詳しく解説します。
人参は100gあたり6.5gの糖質が含まれており、芋類よりは低いですが、他の野菜と比べても人参は糖質が高めです。人参の糖類はショ糖が主体であるため甘味が強いのが特徴ですが、苦味を強く感じることもあります。
強い苦味を感じる原因として、まずポリフェノールがあげられます。ポリフェノールとは植物の苦味や渋みとなる化合物の総称です。構造の違いによって様々な種類があり、人参にもポリフェノールが含まれているのですが、生育中や保存中のストレスなどによってポリフェノールの含有量が増えてしまったり、肥料過多や収穫が遅れてしまったことが原因でポリフェノールの含有量が多くなり、強い苦味を感じてしまうことがあります。
窒素肥料とは、その名の通り窒素が含まれた肥料のことです。人参をはじめとする野菜類などの作物は窒素が不足すると生育不良を起こしてしまいます。そのため、窒素を含む肥料が欠かせません。
しかし、一度に大量の肥料をまいてしまうと、吸収した肥料を消費しきれず硝酸態窒素となり人参の中に残留します。この硝酸態窒素が苦味やエグみの原因となります。
特に家庭菜園で育てた人参で発生することが多い現象です。
甘いはずの人参に強い苦味を感じたら「腐敗しているのでは?」と思う方も多いと思いますが、苦味が強い人参は腐敗しているわけではないため食べることができます。
苦味やエグみの原因となるポリフェノールには、抗酸化作用などがあり人体に害のある成分ではありません。
窒素肥料過多による硝酸態窒素が原因で苦味やエグみを感じる場合も、硝酸態窒素によって健康被害を起こすとはされていません。人間が摂取した硝酸態窒素は、大部分が肝臓を通じて尿となり排出されます。また、現在、農林水産省では栽培に使用する肥料の中の硝酸態窒素の含有量や与える量をガイドラインで規制されており、人体に対する影響を極力減らし安全に食べることができるものを生産するように指導しています。
しかし、人にとって硝酸態窒素は摂取する必要がある成分ではありませんので過剰摂取は避けるべきです。家庭菜園で芽キャベツを栽培する際は硝酸態窒素の濃度が高くならないよう注意しましょう。
出典:野菜等の硝酸塩に関する情報(農林水産省)
一般的にスーパーなどで販売されているのは、根が15cm〜20cm程の「五寸人参」と呼ばれるものです。「人参」といえば五寸人参を指しますが、その他にも様々な品種があります。
例えば沖縄県で栽培されている「島人参」と呼ばれるごぼうのような形をした人参は、一般的に販売されている五寸人参と比較して甘く、人参臭さもなく食べやすいのが特徴です。
近年では人参特有の臭いや苦味が少なくなっている品種も増えているので、人参の苦味が苦手な方は苦味を少ない品種を選ぶのも一つの手です。
人参の苦味やエグみはアク抜きをすることで軽減することができます。
人参のアクとなるポリフェノールや硝酸態窒素は水溶性であるため、水や酢水にさらすことで取り除くことができます。
水にさらすときには、人参を洗いカットしたらボウルにためた水に10分ほどさらします。水でも十分アク抜きをすることができますが、水に酢を入れても良いです。酢には消臭効果があるため人参の臭みを軽減することにも繋がります。
水にひたしすぎてしまうとビタミンCやカリウムなどの水溶性の栄養素も流出してしまうので、長時間ひたしすぎないように注意しましょう。
人参に塩を揉み込むと水分と一緒に苦味やエグみのもとになる成分を出すことができます。
塩を揉み込む場合は、人参をお好みの大きさに切り、ボウルなどの容器に入れて塩を適量入れて揉み込みます。塩を揉み込んだら5分程おき、水洗いをして塩を流して完了です。消臭効果のある酢を一緒に加えるとより人参の臭いを軽減することができます。
<塩もみすると水分が出るのはなぜ?>
異なる物質同士の細胞の成分濃度が違うと、成分が薄い方から濃い方へと水が移動して、両方の濃さを揃えようとする力が働く。これを「浸透圧」という。野菜を塩で揉むと、野菜の水分に塩が溶け濃い塩水ができ野菜の外側の塩分濃度が高くなるため、濃度を調整しようと浸透圧が働き、野菜の内側から水分が出てくる。
下茹でをしてアク抜きをする方法もあります。
茹でてアク抜きをする場合は、鍋に水を入れて水から人参を茹でていきます。茹で時間の目安は沸騰してから10分程です。茹でているとアクが出てくるので、こまめに取り除くようにしましょう。
下茹でするとアクが抜けて苦味やえぐみが軽減される他、人参特有の臭いも和らぎます。さらに調味料が染み込みやすくなるので煮物にするときなどは時短になります。
人参の苦味が苦手で食べにくい場合は、他の野菜で代用するのも一つの手です。人参の代用品としておすすめの野菜を紹介します。
人参と同じく甘みのある野菜といえばかぼちゃを思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。かぼちゃの糖質は17.1gと野菜の中でとても高くなっています。かぼちゃの糖類は、でんぷんが1番多く、しょ糖、ブドウ糖と含まれています。そのため、人参の代わりにかぼちゃを入れても料理に甘みをプラスすることができます。
また、かぼちゃにも人参と同じくβ−カロテンが豊富に含まれているので栄養面でも代用になります。また、鮮やかなオレンジ色は料理を彩りにもなります。
カレーや煮物を作るときの人参の代用品としておすすめです。
赤パプリカは人参とは異なり青臭さやクセがなく、果物のような甘みもあるため比較的食べやすいので人参が苦手な方の代用品にピッタリでしょう。
パプリカ100gあたり1100μgのβ−カロテンも含まれており、その他にもビタミン類やカリウム、食物繊維も含まれ栄養価も高いです。
八宝菜などの炒めものをするときや、サラダに彩りを添えたいときの人参の代用品としておすすめです。
れんこんは加熱をするとホクホクの食感になりますが、生で食べるとシャキシャキとした食感を楽しむことができ、歯ざわりが人参ととても良く似ています。
れんこんは白いですし、味も淡白なので栄養があまりないのではと思う方も多いかと思いますが、実は人参と同様にビタミンCやカリウムなどの栄養素を豊富に含まれています。
サラダにするときはもちろんのこと、炒めものにするときの代用品にもおすすめです。
苦い人参でも美味しく食べられるおすすめのレシピをご紹介します。Filyのレシピはすべて小麦粉・乳製品・白砂糖不使用です。
「グラッセ」とはフランス料理で、バターを加え煮つめつやを出した料理のことを指します。ステーキやハンバーグなどの付け合わせにぴったりの一品です。
人参グラッセのレシピはこちら
ツナと人参をトマトジュースで煮込んだ一品です。
ツナと人参のトマト煮のレシピはこちら
ボロネーゼのレシピをご紹介します。牛肉と野菜の旨味が調和した奥深い味付けに仕上げました。ぜひお試しください。
ボロネーゼのレシピはこちら
単に苦味が強い人参は腐敗しているわけではないので食べることができますが、下記の特徴がある人参は腐敗しているので破棄しましょう。
腐敗している人参の見た目の特徴は下記の通りです。
全体的にシワシワ
溶け出している
汁が出ている
人参の表面に白いホコリのようなものがついているときは白カビ、黒い斑点が一箇所にまとまって黒く変色しているように見える箇所がある場合は黒カビが生えている可能性があります。人参のように固い野菜は表面のみにカビが生えていて、中まで侵食していなければ皮を厚めに剥けば食べることができますが、全体的にカビが生えてしまっている場合は食べることができません。カビは、カビ毒を発生させて下痢や嘔吐などの中毒症状を起こす可能性があるため、心配な方や高齢者、小さなお子様が食べる場合は破棄するのが無難です。
新鮮な人参の表面はハリがありますが、全体的にシワシワになっているものは乾燥してしまっている状態です。単に乾燥しているだけであれば食べることができますが、溶け出していたり汁が出ていたりする場合は、腐敗してしまっているので食べることはできません。
腐敗している人参の臭いや味の特徴は下記の通りです。
酸っぱい臭い・味
生ゴミ臭
普段私達が食べているのは、人参の根の部分です。土に埋まった状態で育っているものを掘り起こして出荷されるため、泥臭さを感じることがあります。また、野菜特有の青臭さもありますが、そこまできつい臭いのする野菜ではありません。酸っぱい臭いや味がする場合や、生ゴミのような臭いがする場合は腐敗している可能性が高いです。
人参に限らず食材は腐敗すると、多くのバクテリアが活動し酢酸発酵することが多いので酸っぱい臭いがしたり酸っぱい味がします。この現象は味噌や醤油といった発酵食品にも起きていますが、発酵とは異なり次第に味や臭い、形が崩れるなど食材が変化していく現象はあるときに「腐敗」とよばれます。あきらかにいつもとは異なる酸っぱい味や生ゴミのような異臭がする場合は食べずに破棄するようにしましょう。
カビが生えていないように見えてもカビ臭さを感じる場合は見えない部分にカビの胞子が入り込んでいる可能性があります。カビには様々な種類があり、墨汁のような臭いを感じさせる「2-メチルイソボルネオール」や土臭さや泥臭さを感じさせる「ジェオスミン」といった代表的な悪臭を放つ種類がいます。また、カビ自体は臭いを感じさせる成分を出さない種類もいますが、カビ自体が臭いを出さなくてもカビの餌になる物質がカビの作用によって変化することで発生する臭いなどで、人に「カビ臭い」と感じさせます。心配な方は破棄するのが無難です。
腐敗している人参の触感の特徴は下記の通りです。
ぬめりがある
ぶにょぶにょしていて形が崩れる
人参には比較的多くのでんぷんを含む野菜であり、でんぷんが雑菌の餌となって細菌が繁殖しぬめりが出てきてしまうことがあります。洗うことで簡単に洗い流せる程度のぬめりであれば、皮を厚めに剥けば食べられることがありますが、触るとぶにょぶにょしていてすぐに形が崩れたり、指で押した後が残るようであれば腐敗が進んでしまっている状態ですので、破棄しましょう。
最後に、美味しい人参の選び方を紹介します。人参を購入するときの参考にしてください。
人参は、表面がなめらかでツルツルしてるものを選ぶと良いです。実割れしているなどでこぼこしているものは、人参に含まれているポリフェノールが酸化しているなど、鮮度が落ちてしまっている可能性が高いです。
さらに人参は乾燥してしまうと水分が抜けてしまいます。表面がシナシナになっているものは選ばないようにしましょう。表面にツヤがありみずみずしさがあるかどうかも確認してください。
人参は肩がはっているものが良いと言われています。人参の「肩」とは、上部のことを言います。
ちなみに人参の肩が緑色に変色しているものは、栽培中に土から肩が飛び出して日光に当たっていたことが考えられます。普段私達が食べているのは人参の根(主根)であるため土に埋まった状態で生長しますが、土寄せをしないと生長したときに上部が土から飛び出し日光に当たってしまうため、葉緑体が生成されて緑色になっていきます。緑色になっていても食べることができますが、できるだけ変色していないものを選ぶと良いでしょう。
上述したように、可食部になっているのは根(主根)なのでひげ根が生えてくることもあります。ひげ根が生えていても天然毒素が含まれているわけではないので食べることができますが、ひげ根が生えているということは栄養素をひげ根に吸い取られてしまっているということです。そのため、できるだけひげ根は少ないものを選んだ方が長持ちしますし、長く美味しく食べることができます。
人参をよく見てみると、上から下にかけて縦にまっすぐ入っている横線があるのがわかると思います。これは、ひげ根の跡です。人参は収穫されてから泥汚れやひげ根をブラシで洗い落としてから出荷しているため、綺麗な状態で販売されていることが多いですが、ひげ根の跡は残っています。
ひげ根の跡の間隔が均一でまっすぐに並んでいるということは、適切なスピードで生長しているサインです。肥料の与えすぎなどで急速に生長しているものは均一な間隔になりません。
一般的に販売されている人参は新鮮であれば、濃いオレンジ色をしています。色が薄いものは生育不良であることが考えられますので、しっかりと濃いものを選びましょう。
ちなみに人参がオレンジ色をしているのは、オレンジ色の色素になるβ-カロテン(ビタミンA)が豊富に含まれているためです。濃いオレンジ色になっているということは、β-カロテンが豊富に含まれているということなので、しっかりと色が濃いものを選ぶと良いです。
人参の上部には、人参の葉がついていた芯があります。芯は細く変色していないものを選びましょう。
人参の芯は根から葉まで直線に繋がっています。芯が太い方がしっかりとしているように見えますが、芯が太いということは固さがあるということです。芯が太すぎないものの方が柔らかいので、太すぎるものは選ばないようにしましょう。
また、芯の部分には水分が溜まりやすくカビが生えやすいです。白カビや黒カビが生えていないかもチェックし、変色していないものを選ぶと良いです。
人参の品種にもよりますが、一般的にスーパーなどで販売されている人参は根の先まで太いものを選ぶのが良いです。極端に細くなっているものは、生育不良であることが考えられます。
また、手に持ったときに重量感があるものにしましょう。重量感のないものは水分が抜けて中に空洞が空くスが入った状態である可能性があります。
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