人参の側面から生えてくる白いひげのようなものは、ひげ根と呼ばれる根っこです。本記事ではひげ根が生えた人参の対処法などを解説します。
人参を保存していると、人参の側面から白いひげのようなものが出てくることがあります。この白いひげのようなものの正体は「ひげ根」です。
私達が可食部として普段食べているのは人参の根(主根)であり、元々ひげ根はついているものです。収穫時に泥汚れと一緒に落としてから出荷されていることが多いので、販売時にはひげ根がついていることは少ないのですが、人参は収穫されてからも生長するため保存期間が長くなると、ひげ根が生えてきてしまうことがよくあります。
人参のひげ根には、じゃがいもの芽に含まれるソラニンやチャコニンのような天然毒素は含まれていません。そのため食べても人体には何の影響もありませんが、口当たりが悪くなってしまうため取り除いて食べるのが一般的です。
ひげ根が生えてしまった人参の可食部(オレンジ色の部分)自体も、もちろん食べることができます。
ひげ根は、可食部となる根から水分や栄養を吸い取って生長していきます。そのためひげ根が生えているということは、可食部である根の水分や栄養が吸い取られている状態です。
根から水分や栄養が吸い取られてしまうと、味や栄養価が落ちてしまうのはもちろんのこと、中に穴が空いてスカスカになり食感が悪くなることもあります。
人参からひげ根が出ていても食べることができるとはいっても、やはり根が生える前に食べきるようにすることが大切です。
人参を保管しているとひげ根だけではなく、ヘタの部分(上部)から芽が出てくることもあります。芽もひげ根と同様に天然毒素は含まれておりませんので、芽が生えた人参を食べても問題ありません。芽自体も食べることができますが、そもそも人参を食べるときはヘタを切り落として食べるので、出てきた芽も一緒に調理をして食べるということはなく、切り落として調理をするのが一般的です。
ひげ根は食べても問題ありませんが、口当たりが悪くなってしまうので取り除いてから食べます。
ひげ根はとても細いので、ブラシなどを使ってこすり洗いすれば簡単に取ることができます。人参を皮ごと調理したい場合にはこちらの方法がおすすめです。
皮を剥いて調理するのも一つの手です。皮を剥けばひげ根も一緒に取り除くことができます。
しかし、β-カロテンは皮のすぐ下に最も多く含まれています。その量なんと中心部の2.5倍です。ポリフェノールも中心部の4倍多く含まれています。無農薬のものなどはなるべく皮ごと食べるのが良いです。剥く場合もなるべく薄く剥くようにしましょう。皮は正式には「内鞘(ないしょう)細胞」と呼ばれ、可食部の一部です。
「傷んだ人参を切ったら、中がスカスカだった」という経験がある方も多いかと思います。実際、ひげ根や芽が生えてしまった人参は、水分や栄養を吸い取られてしまうため、中心部は時間が経つと栄養が抜けて食物繊維のみの状態になっていきます。そのため、皮ごと輪切り、乱切りなどが無駄なく栄養を摂ることができるのでおすすめです。
人参からひげ根や芽が出てきても食べることができますが、早めに食べきるようにしましょう。
そのままにしてしまうと、どんどん生長を続けて「とう立ち」してしまいます。とう立ちとは、植物が花を咲かせるために芯の部分から茎を伸ばす現象のことを言います。とう立ちした人参は、花を咲かせるために根の栄養がどんどん吸い上げられている状態ですので、中心部が白くなっていきます。さらに中心部は固くなってしまいます。とう立ちがそこまで進んでいなければ食べられないこともないのですが、とう立ちが進んでしまうと固くて食べられなくなってしまいます。
ひげ根が生えていても食べることができるとはいっても、やはり味や食感、栄養価が落ちてしまうのは残念ですよね。人参を保存する際はひげ根が生えないよう正しい保存方法で保存しておくことが大切です。
人参は冬場ならば常温保存することができます。一本ずつ新聞紙に包みます。新聞紙がない場合は、キッチンペーパーでもOKです。暑さ・湿気を嫌うので、温度が低く一定に保たれており、直射日光が当たらず、風通しがよい冷暗所で保存するようにしましょう。
土に浅く埋める方法もあります。通常の常温保存よりも長持ちします。
立てて保存するのもポイントです。野菜は育った状態に同じように保存するとストレスがかからず、長く保存できます。
キッチンペーパーが湿気ったら、こまめに替えるようにしましょう。
人参は夏場は必ず冷蔵保存します。冬場でも2〜3週間保存したい場合は冷蔵庫の野菜室に入れましょう。このときもキッチンペーパーに包み、ポリ袋に入れて、立てて保存します。買ってきた袋のまま冷蔵するのは厳禁です!
2週間以上保存したい場合は、ヘタの部分は切ると長持ちします。にんじんのヘタの近くに生長点があり、保存期間が長くなると葉を生やそうと根の栄養分を消費してしまうためです。すぐ食べる場合はわざわざカットする必要ありません。かえって酸化が進みます。
カットした人参はラップできっちり包み、ポリ袋に入れて冷蔵保存できますが、切った野菜は傷みが早いので数日以内に使い切るようにしましょう。前述した通り、半分だけ保存する場合は先の方を保存用にします(へたの方を先に食べます)。
人参は冷凍保存することもできますが、丸ごと冷凍してしまうと使うときに不便なので、必ずカットしてから冷凍しましょう。
人参は生のまま冷凍してもOKです。使い勝手いいように、お好みでカットをしましょう。写真はいちょう切りと細切りです。切った後にキッチンペーパーで水けをしっかり拭き取って、冷凍用のジッパー付きポリ袋に入れて、空気をしっかり抜き、冷凍庫へ。
冷凍する前に茹でることをブランチングといいます。ブランチングすると使うときに火の通りが早くて使い勝手がよい、以外に、変色しにくい、食感が悪くなりにくい、風味が落ちにくい、というメリットがあります。家庭用の冷凍庫は温度が急速冷凍ができませんので、ダイレクトフリージング(茹でずに冷凍)は向きません。時間がある方はなるべくブランチングするようにしましょう。
調理するときに使う切り方にします。写真では輪切りにしています。
冷凍するときは硬めに下茹でします。竹串を強く刺してやっと刺さるくらいが目安です。解凍方法ですが、基本的に冷凍したまま調理に使ってOKです。冷凍した人参は直接料理に使うと水が出るので、炒め物などで水けを嫌う料理の場合は、前日に冷蔵庫に移し自然解凍しましょう。お急ぎの場合は電子レンジを使って解凍する方法もあります。
その他にも、人参を天日干したりオーブンで水分を飛ばしてから乾燥保存したり、味噌や酢などに漬けて漬け保存することもできます。詳しい人参の保存方法についてはこちらの記事を参考にしてください。
ひげ根が生えているだけであれば食べても問題ありませんが、腐敗のサインが見られる場合は残念ながら食べることができません。腐敗している人参の特徴は下記の通りです。
腐敗している人参の見た目の特徴は下記の通りです。
全体的にシワシワ
溶け出している
汁が出ている
人参の表面に白いホコリのようなものがついているときは白カビ、黒い斑点が一箇所にまとまって黒く変色しているように見える箇所がある場合は黒カビが生えている可能性があります。人参のように固い野菜は表面のみにカビが生えていて、中まで侵食していなければ皮を厚めに剥けば食べることができますが、全体的にカビが生えてしまっている場合は食べることができません。カビは、カビ毒を発生させて下痢や嘔吐などの中毒症状を起こす可能性があるため、心配な方や高齢者、小さなお子様が食べる場合は破棄するのが無難です。
新鮮な人参の表面はハリがありますが、全体的にシワシワになっているものは乾燥してしまっている状態です。単に乾燥しているだけであれば食べることができますが、溶け出していたり汁が出ていたりする場合は、腐敗してしまっているので食べることはできません。
腐敗している人参の臭いや味の特徴は下記の通りです。
酸っぱい臭い・味
生ゴミ臭
普段私達が食べているのは、人参の根の部分です。土に埋まった状態で育っているものを掘り起こして出荷されるため、泥臭さを感じることがあります。また、野菜特有の青臭さもありますが、そこまできつい臭いのする野菜ではありません。酸っぱい臭いや味がする場合や、生ゴミのような臭いがする場合は腐敗している可能性が高いです。
人参に限らず食材は腐敗すると、多くのバクテリアが活動し酢酸発酵することが多いので酸っぱい臭いがしたり酸っぱい味がします。この現象は味噌や醤油といった発酵食品にも起きていますが、発酵とは異なり次第に味や臭い、形が崩れるなど食材が変化していく現象はあるときに「腐敗」とよばれます。あきらかにいつもとは異なる酸っぱい味や生ゴミのような異臭がする場合は食べずに破棄するようにしましょう。
カビが生えていないように見えてもカビ臭さを感じる場合は見えない部分にカビの胞子が入り込んでいる可能性があります。カビには様々な種類があり、墨汁のような臭いを感じさせる「2-メチルイソボルネオール」や土臭さや泥臭さを感じさせる「ジェオスミン」といった代表的な悪臭を放つ種類がいます。また、カビ自体は臭いを感じさせる成分を出さない種類もいますが、カビ自体が臭いを出さなくてもカビの餌になる物質がカビの作用によって変化することで発生する臭いなどで、人に「カビ臭い」と感じさせます。心配な方は破棄するのが無難です。
腐敗している人参の触感の特徴は下記の通りです。
ぬめりがある
ぶにょぶにょしていて形が崩れる
人参は比較的多くのでんぷんを含む野菜であり、でんぷんが雑菌の餌となって細菌が繁殖しぬめりが出てきてしまうことがあります。洗うことで簡単に洗い流せる程度のぬめりであれば、皮を厚めに剥けば食べられることがありますが、触るとぶにょぶにょしていてすぐに形が崩れたり、指で押した後が残るようであれば腐敗が進んでしまっている状態ですので、破棄しましょう。
新鮮な人参を選んで購入すれば、より長く鮮度を保って保存しておくことができます。ここからは新鮮な人参の特徴を紹介しますので、購入するときの参考にしてください。
人参は、表面がなめらかでツルツルしてるものを選ぶと良いです。実割れしているなどでこぼこしているものは、人参に含まれているポリフェノールが酸化しているなど、鮮度が落ちてしまっている可能性が高いです。
さらに人参は乾燥してしまうと水分が抜けてしまいます。表面がシナシナになっているものは選ばないようにしましょう。表面にツヤがありみずみずしさがあるかどうかも確認してください。
人参は肩がはっているものが良いといわれています。人参の「肩」とは、上部のことをいいます。
ちなみに人参の肩が緑色に変色しているものは、栽培中に土から肩が飛び出して日光に当たっていたことが考えられます。普段私達が食べているのは人参の根(主根)であるため土に埋まった状態で生長しますが、土寄せをしないと生長したときに上部が土から飛び出し日光に当たってしまうため、葉緑体が生成されて緑色になっていきます。緑色になっていても食べることができますが、できるだけ変色していないものを選ぶと良いでしょう。
上述したように、ひげ根が生えているということは収穫してから時間が経っていることが考えられます。また、栄養素をひげ根に吸い取られてしまっているということです。そのため、できるだけひげ根は少ないものを選んだ方が長持ちしますし、長く美味しく食べることができます。
人参をよく見てみると、上から下にかけて縦にまっすぐ入っている横線があるのがわかると思います。これは、ひげ根の跡です。人参は収穫されてから泥汚れやひげ根をブラシで洗い落としてから出荷しているため、綺麗な状態で販売されていることが多いですが、ひげ根の跡は残っています。
ひげ根の跡の間隔が均一でまっすぐに並んでいるということは、適切なスピードで生長しているサインです。肥料の与えすぎなどで急速に生長しているものは均一な間隔になりません。
一般的に販売されている人参は新鮮であれば、濃いオレンジ色をしています。色が薄いものは生育不良であることが考えられますので、しっかりと濃いものを選びましょう。
ちなみに人参がオレンジ色をしているのは、オレンジ色の色素になるβ-カロテン(ビタミンA)が豊富に含まれているためです。濃いオレンジ色になっているということは、β-カロテンが豊富に含まれているということなので、しっかりと色が濃いものを選ぶと良いです。
人参の上部には、人参の葉がついていた芯があります。芯は細く変色していないものを選びましょう。
人参の芯は根から葉まで直線に繋がっています。芯が太い方がしっかりとしているように見えますが、芯が太いということは固さがあるということです。太すぎないないものの方が柔らかいので、太すぎるものは選ばないようにしましょう。
また、芯の部分には水分が溜まりやすくカビが生えやすいです。白カビや黒カビが生えていないかもチェックし、変色していないものを選ぶと良いです。
人参の品種にもよりますが、一般的にスーパーなどで販売されている人参は根の先まで太いものを選ぶのが良いです。極端に細くなっているものは、生育不良であることが考えられます。
また、手に持ったときに重量感があるものにしましょう。重量感のないものは水分が抜けて中に空洞が空くスが入った状態である可能性があります。
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