通年市場に出回っている人参ですが、旬の時期があることをご存知でしょうか。本記事では人参の旬について詳しく解説します。
人参には、基本的に春播き(6月〜10月採り)の夏ニンジンと、夏撒き(10月〜3月採り)の冬ニンジン、冬撒き(4月〜6月採り)の春ニンジンがあり、季節によって産地が異なる他、ビニール栽培なども行われているため通年市場に出回っています。
あまり旬を感じない野菜ではありますが、人参はもともと冷涼性の野菜で、寒暑が厳しいと発育不良となってしまいます。そのため、一般的に旬は晩秋〜冬といわれています。
そもそも旬って?
一般的にいわれる旬とは、野菜や果実が全国的に露地栽培でよく収穫され、味が美味しい時期を指します。露地栽培とは、ハウスなどの施設を使わず屋外の畑で栽培する方法のことです。
冬に旬を迎えた人参は、糖度が高く実も柔らかいです。これは寒さで凍ってしまわないよう細胞に糖が蓄えられるためです。同じく冬に旬を迎える大根などにも起こる現象で、冬に旬を迎える野菜は甘みがあるのが特徴です。特にサラダなど生で食べる場合は、旬の時期に販売されている人参がおすすめです。
また、人参に限らず旬を迎えた野菜は旬でない時期のものに比べ栄養素の含有量が多くなる特徴があります。野菜によっては旬の時期ではないものと比較して約2倍の差がでることもあります。
ちなみに旬の野菜は収穫量も多くなるので旬ではない季節と比較して値段も安くなることが多いですが、人参は収穫後貯蔵し、需要に合わせて供給量を調整して出荷されているため1年を通して価格の変動はあまりない野菜です。
令和3年度の日本の人参の生産量(収穫量)638,800トンです。主な生産地は北海道や千葉県、徳島県、青森県で、生産地別の収穫量は下記の通りです。
北海道(204,700トン)
千葉県(112,200トン)
徳島県(49,900トン)
青森県(42,500トン)
出典:令和3年産指定野菜(秋冬野菜等)及び指定野菜に準ずる野菜の作付面積、収穫量及び出荷量(農林水産省)
人参は、表面がなめらかでツルツルしてるものを選ぶと良いです。実割れしているなどでこぼこしているものは、人参に含まれているポリフェノールが酸化しているなど、鮮度が落ちてしまっている可能性が高いです。
さらに人参は乾燥してしまうと水分が抜けてしまいます。表面がシナシナになっているものは選ばないようにしましょう。表面にツヤがありみずみずしさがあるかどうかも確認してください。
人参は肩がはっているものが良いと言われています。人参の「肩」とは、上部のことをいいます。
ちなみに人参の肩が緑色に変色しているものは、栽培中に土から肩が飛び出して日光に当たっていたことが考えられます。普段私達が食べているのは人参の根(主根)であるため土に埋まった状態で生長しますが、土寄せをしないと生長したときに上部が土から飛び出し日光に当たってしまうため、葉緑体が生成されて緑色になっていきます。緑色になっていても食べることができますが、できるだけ変色していないものを選ぶと良いでしょう。
上述したように、可食部になっているのは根(主根)なのでひげ根が生えてくることもあります。ひげ根が生えていても天然毒素が含まれているわけではないので食べることができますが、ひげ根が生えているということは栄養素をひげ根に吸い取られてしまっているということです。そのため、できるだけひげ根は少ないものを選んだほうが長持ちしますし、長く美味しく食べることができます。
人参をよく見てみると、上から下にかけて縦にまっすぐ入っている横線があるのがわかると思います。これは、ひげ根の跡です。人参は収穫されてから泥汚れやひげ根をブラシで洗い落としてから出荷しているため、綺麗な状態で販売されていることが多いですが、ひげ根の後は残っています。
ひげ根の跡の間隔が均一でまっすぐに並んでいるということは、適切なスピードで生長しているサインです。肥料の与えすぎなどで急速に生長しているものは均一な間隔になりません。
一般的に販売されている人参は新鮮であれば、濃いオレンジ色をしています。色が薄いものは生育不良であることが考えられますので、しっかりと濃いものを選びましょう。
ちなみに人参がオレンジ色をしているのは、オレンジ色の色素になるβ-カロテン(ビタミンA)が豊富に含まれているためです。濃いオレンジ色になっているということは、β-カロテンが豊富に含まれているということなので、しっかりと色が濃いものを選ぶと良いです。
人参の品種にもよりますが、一般的にスーパーなどで販売されている人参は根の先まで太いものを選ぶのが良いです。極端に細くなっているものは、生育不良であることが考えられます。
また、手に持ったときに重量感があるものにしましょう。重量感のないものは水分が抜けて中に空洞が空くスが入った状態である可能性があります。
人参の原産地はアフガニスタンで、トルコを経てヨーロッパに伝わった西洋種と、アジア東方に伝わった東洋種があります。
日本には江戸時代に東洋種が伝わり、西洋種が入ってきたのは明治以降といわれています。現在日本で流通しているのはほとんどが西洋種です。
西洋種はカロテノイド系色素によって鮮やかなオレンジ色をしているのが特徴で、肉質は柔らかく甘みがあるのが特徴です。まさに一般的にスーパーで販売されている人参ですね。西洋種にはオレンジ色以外の品種はありません。
東洋種は赤色の色素であるリコピンや紫色の色素であるアントシアニンが中心で、赤色や紫色、白色のものなどがあります。東洋種と同じく肉質は柔らかいのですが、煮崩れしにくく、人参特有の匂いが少ないという特徴があります。
また、人参には長さによって長根種、短根種、五寸、三寸とわけられます。現在日本で一般的にスーパーなどで販売されているのは、西洋種で根が15cm〜20cm程の五寸が中心となっています。
上述したように「五寸ニンジン」は、現在店頭で見かけるにんじんの系統です。
その名の通り長さは15~20cmほどで、重さは200g前後です。明るいオレンジ色をしていてある程度の太さがあるのが特徴です。
品種には「長崎五寸」や「丸山五寸」、これらを交雑した「黒田五寸」などがありますが、現在は栽培のしやすさから「向陽」や「ひとみ五寸」などの一代交雑種が主流になっています。
金時ニンジンは、中国より伝わった東洋系の品種のうち唯一残っている品種です。「京人参」ともいわれます。
金時ニンジンは11月〜3月にかけて市場に出回るようになり、旬は12月から1月といわれています。栽培の難しさから収穫量が少なく、スーパーなどで見かけることはあまりありませんが、お正月料理などで使われることもあります。
鮮やかで赤い紅色をしていて、これはトマトに多く含まれていることで知られているリコピンによるものです。一般的にスーパーで販売されている五寸ニンジンよりも細い円錐型をしているのが特徴で、肉質が柔らかく甘みがあります。
ミニキャロットは、長さ7~10cm程度、直径は1~1.5cmほどの小型のにんじんの総称です。「ベビーにんじん」や「姫にんじん」と呼ばれることもあります。
ミニキャロットの収穫が増えるのは初夏と、秋から冬にかけてです。
果肉はやわらかくて甘味があり、にんじん特有の匂いは少なめなのが特徴です。
「ベビーキャロット」や「ピッコロ」といったミニキャロットの品種もありますが、「五寸にんじん」を小さいうちに間引いたものなどがミニキャロットとして売られていることもあります。
葉ニンジンは、一般的な人参をまだ根が成長する前に間引きして収穫されたものや、葉を食用とするために栽培されたもののことをいいます。
一般的には7月〜10月頃に収穫量が多くなりますが、水耕栽培も行われているため1年を通して市場に出回ります。
一般的な人参の場合、根が完全に成長した状態では葉が硬くなっていますが、葉ニンジンは葉が柔らかく食べやすいのが特徴です。
人参の栄養素はなんといってもβ-カロテン(ビタミンA)です。ちなみに、京人参など東洋系人参の赤みは、トマトに豊富に含まれていることで有名なリコピンによるものです。
人参は特にβ-カロテンが豊富に含まれており、カロテンの語源はキャロット(carrot)であることからもわかるように、人参のβ-カロテン含有量は野菜の中でトップです。
β-カロテンは、皮膚や喉などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあり、体外からのウィルスや細菌の侵入を防ぐ事で免疫力をアップし病気にかかりにくくなります。また抗酸化作用もあるので、アンチエイジング作用があります。亜鉛が補酵素に入ると、β-カロテンがレチナールへ、さらにレチナールにナイアシンが結合することで体内に作用します。ビタミンAとしての働きを促すにはミネラルの亜鉛、ビタミンB群のナイアシンも必要になります。
変換されたビタミンAは、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあります。視力を正常に保つ役目もあり、夜盲症の予防や視力低下の抑制があります。また皮膚の健康維持に関与していることから、美肌効果もあります。皮膚の新陳代謝が高まることで、乾燥肌やニキビ肌の改善が考えられます。
α−カロテンは、緑黄色野菜に含まれるカロテノイドのひとつで、β-カロテンと同じく体内でビタミンAに変換されます。ビタミンAは、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあるため健康に保ちます。そのため、体外からのウィルスや細菌の侵入を防ぎ感染症を予防する効果が大きく、免疫力を高めます。
食物繊維は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分けられます。人参にはどちらも含まれていますが、不溶性食物繊維が3倍多いです。
水溶性は水に溶解する性質を持っており、水溶性食物繊維は水に溶けるととろとろ・ネバネバして糖質の消化や吸収を穏やかにする作用があります。不溶性は液体に溶解しない性質を持っており、不溶性食物繊維は水分を吸って腸の中で大きく膨らみ、排便をスムーズにし、有害物質が体にとどまる時間を短縮させ、便秘の予防・改善、腸内環境を整えます。
カリウムはミネラルの一種です。
カリウムはナトリウム(食塩)と協力し細胞の浸透圧を維持しています。体内に十分なカリウムがあると、余分な食塩を排出して血圧を正常に保ちます。しかし、カリウム不足や塩分の過剰摂取が続く、むくみなどの原因になります。
そのほか、腎臓の老廃物の排出を助けたり、筋肉の収縮をスムーズにする働きもあります。
参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス
人参を長く鮮度を保ち、美味しくいただくためには、正しく保存することが大切です。ここからは人参の正しい保存方法を紹介します。
人参は冬場ならば常温保存することができます。一本ずつ新聞紙に包みます。新聞紙がない場合は、キッチンペーパーでもOKです。暑さ・湿気を嫌うので、温度が低く一定に保たれており、直射日光が当たらず、風通しがよい冷暗所で保存するようにしましょう。
土に浅く埋める方法もあります。通常の常温保存よりも長持ちします。
立てて保存するのもポイントです。野菜は育った状態に同じように保存するとストレスがかからず、長く保存できます。
キッチンペーパーが湿気ったら、こまめに替えるようにしましょう。
人参は夏場は必ず冷蔵保存します。冬場でも2〜3週間保存したい場合は冷蔵庫の野菜室に入れましょう。このときもキッチンペーパーに包み、ポリ袋に入れて、立てて保存します。買ってきた袋のまま冷蔵するのは厳禁です!
2週間以上保存したい場合は、ヘタの部分は切ると長持ちします。にんじんのヘタの近くに生長点があり、保存期間が長くなると葉を生やそうと根の栄養分を消費してしまうためです。すぐ食べる場合はわざわざカットする必要ありません。かえって酸化が進みます。
カットした人参はラップできっちり包み、ポリ袋に入れて冷蔵保存できますが、切った野菜は傷みが早いので数日以内に使い切るようにしましょう。前述した通り、半分だけ保存する場合は先の方を保存用にします(へたの方を先に食べます)。
人参は冷凍保存することもできますが、丸ごと冷凍してしまうと使うときに不便なので、必ずカットしてから冷凍しましょう。
人参は生のまま冷凍してもOKです。使い勝手いいように、お好みでカットをしましょう。写真はいちょう切りと細切りです。切った後にキッチンペーパーで水けをしっかり拭き取って、冷凍用のジッパー付きポリ袋に入れて、空気をしっかり抜き、冷凍庫へ。
冷凍する前に茹でることをブランチングといいます。ブランチングすると使うときに火の通りが早くて使い勝手がよい、以外に、変色しにくい、食感が悪くなりにくい、風味が落ちにくい、というメリットがあります。家庭用の冷凍庫は温度が急速冷凍ができませんので、ダイレクトフリージング(茹でずに冷凍)は向きません。時間がある方はなるべくブランチングするようにしましょう。
調理するときに使う切り方にします。写真では輪切りにしています。
冷凍するときは硬めに下茹でします。竹串を強く刺してやっと刺さるくらいが目安です。解凍方法ですが、基本的に冷凍したまま調理に使ってOKです。冷凍した人参は直接料理に使うと水が出るので、炒め物などで水けを嫌う料理の場合は、前日に冷蔵庫に移し自然解凍しましょう。お急ぎの場合は電子レンジを使って解凍する方法もあります。
その他にも、人参を天日干したりオーブンで水分を飛ばしてから乾燥保存したり、味噌や酢などに漬けて漬け保存することもできます。詳しい人参の保存方法についてはこちらの記事を参考にしてください。
人参には秋冬と春の2回、旬があります。秋冬の人参は実がしっかりしていて甘みが強いのが特徴です。加熱しても崩れにくいので煮物や炒め物に向いています。春人参は柔らかくみずみずしいのでサラダや野菜スティックに向いています。
鶏肉のうまみが人参に移って美味しい一品に仕上がります。旬の人参を使えば、甘くておいしい煮物に仕上がります。
人参に含まれるβ-カロテンは加熱することで吸収率が1.5〜2倍にアップ。これは細胞内で溶解して、吸収されやすくなるからです。そのため、加熱料理がおすすめです。さらに、β−カロテンは脂溶性なので、鶏肉と一緒に食べることで鶏肉の脂質でβ−カロテンの吸収率が高まります。
煮汁が少なくなってきたら、鍋をゆすり照りよくからめて仕上げましょう。
鶏肉と人参のいり煮のレシピはこちら
人参を茹でて切り、調味料と和えるだけの簡単レシピです。
春人参なら湯に通す必要もなく、皮ごと食べられます。
人参のナムルのレシピはこちら
Most Popular
中が茶色いじゃがいもは食べられる?空洞や輪になってる場合は?
食品事典
大根は中身が茶色に変色しても食べられる?原因と対処法を解説
食品事典
スカスカなかぶは食べてOK?スが入る原因は?
食品事典
麻婆豆腐が辛い時に甘くする方法。おすすめの調味料や食品は?
食品事典
ハンバーグが固くなる原因と柔らかく作るコツを徹底解説
食品事典
冬におすすめの天ぷら具材36品。冬野菜や冬が旬の魚介類を紹介
食品事典
トマト缶は一缶でトマト何個分?サイズ別に解説
食品事典
冷凍したじゃがいもが黒っぽく変色...食べてOK?原因と対処法を解説
食品事典
エリンギが水っぽい...食べられる?濡れてる原因と対処法は?
食品事典
里芋は生で食べられる?生食のメリットと注意点を解説。
食品事典