人参には様々な種類があることをご存知でしょうか。本記事では人参の種類について詳しく解説します。
人参はセリ科ニンジン属の植物で、原産地はヒンズークシ山脈とヒマラヤ山脈の合流地点一帯と言われています。中国から16世紀頃に日本に渡来しました。
渡来した当時薬用として栽培されていたウコギ科の「オタネニンジン(朝鮮人参)」の根と、セリの葉と似た葉をもつことから「セリニンジン」と呼ばれたり、畑に植えることから「畑人参(はたにんじん)」などと呼ばれていました。現在では一般的に「人参」といえばオタネニンジンではなくセリ科の人参を指します。
人参には、基本的に春播き(6月〜10月採り)の夏ニンジンと、夏撒き(10月〜3月採り)の冬ニンジン、冬撒き(4月〜6月採り)の春ニンジンがあり、季節によって産地が異なる他、ビニール栽培なども行われているため通年市場に出回っています。
あまり旬を感じない野菜ではありますが、人参は元々冷涼性の野菜で、寒暑が厳しいと発育不良となってしまいます。そのため、一般的に旬は晩秋〜冬と言われています。
一般的に言われる旬とは、野菜や果実が全国的に露地栽培でよく収穫され、味が美味しい時期を指します。露地栽培とは、ハウスなどの施設を使わず屋外の畑で栽培する方法のことです。
人参の主な生産地は北海道や千葉県、徳島県、青森県です。
人参は特にβ-カロテンが豊富に含まれています。人参のオレンジ色はβ-カロテンの色です。
β-カロテンは、皮膚や喉などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあり、体外からのウィルスや細菌の侵入を防ぐ事で免疫力をアップし病気にかかりにくくなります。また抗酸化作用もあるので、アンチエイジング作用があります。亜鉛が補酵素に入ると、β-カロテンがレチナールへ、さらにレチナールにナイアシンが結合することで体内に作用します。ビタミンAとしての働きを促すにはミネラルの亜鉛、ビタミンB群のナイアシンも必要になります。
カロテンの語源はキャロット(carrot)であることからも、人参のβ-カロテン含有量は野菜の中でトップです。
また、人参には食物繊維や葉酸、カリウムなども含まれています。
人参には大別して原産地からトルコを経てヨーロッパに伝わった西洋種と、アジア東方に伝わった東洋種の2つのタイプがあります。
日本には江戸時代に東洋種が伝わり、西洋種が入ってきたのは明治以降といわれています。現在日本で流通しているのはほとんどが西洋種です。
西洋種はカロテノイド系色素によって鮮やかなオレンジ色をしているのが特徴で、肉質は柔らかく甘みがあるのが特徴です。まさに一般的にスーパーで販売されている人参ですね。西洋種にはオレンジ色以外の品種はありません。
東洋種は赤色の色素であるリコピンや紫色の色素であるアントシアニンが中心で、赤色や紫色、白色のものなどがあります。東洋種と同じく肉質は柔らかいのですが、煮崩れしにくく、人参特有の匂いが少ないという特徴があります。
人参は長さによって長根種、短根種、五寸、三寸と分けられます。現在日本で一般的にスーパーなどで販売されているのは、五寸(15cm〜20cm程)が中心となっています。
五寸ニンジンは、現在店頭で見かける人参の系統です。
その名の通り長さは15~20cmほどで、重さは200g前後です。明るいオレンジ色をしていてある程度の太さがあるのが特徴です。
品種には「長崎五寸」や「丸山五寸」、これらを交雑した「黒田五寸」などがありますが、現在は栽培のしやすさから「向陽」や「ひとみ五寸」などの一代交雑種が主流になっています。
三寸ニンジンは、一般的に販売されている五寸ニンジンよりも短い西洋種です。
その名の通り長さは10cm程と短く、早生品種であるため生育が早いという特徴もあります。しかし、収穫量が少ないため現在ではほとんど栽培されておらず、市場に出回ることも少ないです。
リコピン人参は、五寸ニンジンと金時ニンジンを交配させてできた人参です。「京くれない」ともいわれます。
大きさは一般的に販売されている五寸人参と同じくらいで、ややスリムな円錐の形をしています。色は五寸ニンジンより赤みが強いですが、金時ニンジン程は赤くなく、まさに五寸ニンジンと金時ニンジンの中間と言えます。「リコピン人参」と呼ばれていますが、リコピンの含有量が圧倒的に多いわけではなく、リコピンとβ-カロテンがバランス良く含まれています。
リコピン人参はきめ細かい肉質で、五寸人参と比較して人参特有の匂いがが少なく、甘みがあります。加熱調理はもちろんのこと、サラダやジュースなどの生食にも適しています。
金時ニンジンは、中国より伝わった東洋系の品種のうち唯一残っている品種です。「京人参」とも言われます。
鮮やかで赤い紅色をしているのが特徴で、これはトマトに多く含まれていることで知られているリコピンによるものです。一般的にスーパーで販売されている五寸ニンジンよりも細い円錐型をしています。肉質が柔らかく甘みがあり、青臭さが少ないため人参が苦手な方でも食べやすいと人気があります。
栽培の難しさから収穫量が少なく、スーパーなどで見かけることはあまりありませんが、お正月料理などで使われることもあります。
紫ニンジンは東洋種の人参です。
その名の通り紫色をしているのが大きな特徴で、サイズは20〜25cmほどで細長い形をしています。紫色をしているのはポリフェノールの一種で紫色の色素であるアントシアニンが多く含まれているためです。外側は紫色で内側はオレンジ色の「パープルスティック」や、「パープルスイート」、内側が白から黄色のような色の「ダークパープル」、全体的に黒っぽい色をしている「黒ニンジン」など様々な品種があります。
紫ニンジンは、アントシアニンが水溶性であるため茹でると色素が流出し、茹で汁が紫色になってしまうため生食がおすすめです。ほんのりと甘味があり、コリコリとした食感を楽しむことができます。
黄ニンジンも東洋種のニンジンです。
その名の通り黄色い色をしているのが特徴で、五寸ニンジンと同じくβ-カロテンが多く含まれています。黄ニンジンにも「金美人参」や「島にんじん」、「イエローハーモーニー」、「ゴールドラビット」など様々な品種があります。
一般的に黄ニンジンとして出回っているのは金美人参です。五寸ニンジンと同じくらいの大きさで、甘みが強く人参特有の匂いが少ないため、サラダなど生食するのにおすすめです。
熊本長ニンジンは東洋種の人参で、古くから熊本で栽培されてきた伝統野菜として「肥後野菜」の一つに指定されています。
熊本長ニンジンの太さは1.5cm〜2.5cmほどで、長さは50cmほどと細長いのが特徴で、その見た目は人参というよりごぼうに近いといえます。熊本人参も五寸ニンジンと同じくβ-カロテンを多く含みます。
生食することもできますが、焼くとより甘味が引き立つため、きんぴらや天ぷらなど加熱調理をして食べるのがおすすめです。熊本県では細く長い見た目から縁起物としてお節料理の煮しめや雑煮にされることが多いようです。
ミニキャロットは、小型のにんじんの総称です。「ベビーにんじん」や「姫にんじん」とも言われます。「ベビーキャロット」や「ピッコロ」といったミニキャロットの品種もありますが、「五寸にんじん」を小さいうちに間引いたものなどがミニキャロットとして売られていることもあります。
長さ7~10cm程度、直径は1~1.5cmほどと小さいのが特徴で、栄養素は五寸ニンジンと変わりません。
果肉は柔らかくて甘味があり、にんじん特有の匂いは少なめなのが特徴です。生食しやすく、小さいのでシチューやスープにも丸ごと入れることができます。
葉ニンジンは、一般的な人参をまだ根が生長する前に間引きして収穫されたものや、葉を食用とするために栽培されたもののことをいいます。
ニンジンの根が生長する前に間引きされた葉ニンジンは根の部分に細く小さな人参が出来ているのが特徴で、間引きされた時期によって人参の大きさが変わり、葉の軸の硬さも変わります。近年では、葉を食用とするために水耕栽培で根が形成される前に収穫しているものも増えています。水耕栽培されたものは、葉や軸がとても柔らかいのが特徴です。
葉人参はβ-カロテン以外のビタミン類も多く含まれる他、ミネラル類や葉酸も豊富に含まれています。
独特のほろ苦さがありますがサラダなどにして生食にしたり、炒め物にして食べることもできます。
人参には様々な栄養素・成分が含まれており、「どれが栄養価が高いから良い」とは一概には言えません。
ただ、上述したように、オレンジ色や黄色のものはβ-カロテン、赤いものはリコピン、紫色のものはアントシアニンが多く含まれているといった違いはあります。そのため、リコピンを多く取りたい場合はリコピン人参といったように選ぶと良いでしょう。
人参は種類によって糖度が異なります。一般的に甘くて食べやすいといわれているのは東洋種で黄ニンジンの「島人参」や「金美人参」などです。
西洋種では五寸ニンジンは、例えば「シロムタルカス(オランジェ)」などがあります。シロムタルカスは、フルーツ人参と言われるほど、甘みが強いのが特徴です。
スーパーなどではなかなか見かけることができませんが、ホームセンターなどでは様々な種類・品種の人参の種が販売されています。家庭菜園で育ててみるのもおすすめです。
一般的にスーパーなどで販売されている人参を選ぶ際の注目すべきポイントは下記です。人参を購入する際の参考にしてください。
なめらかな肌のもの、でこぼこのない
肩がはっている
ひげ根の少ないもの
ひげ根の跡の間隔が均一で真っ直ぐに並んでいる
オレンジ色が濃い
根の先まで太い
人参は冬場ならば常温保存することができます。一本ずつ新聞紙に包みます。新聞紙がない場合は、キッチンペーパーでもOKです。暑さ・湿気を嫌うので、温度が低く一定に保たれており、直射日光が当たらず、風通しがよい冷暗所で保存するようにしましょう。
土に浅く埋める方法もあります。通常の常温保存よりも長持ちします。
立てて保存するのもポイントです。野菜は育った状態に同じように保存するとストレスがかからず、長く保存できます。
キッチンペーパーが湿気ったら、こまめに替えるようにしましょう。
人参は夏場は必ず冷蔵保存します。冬場でも2〜3週間保存したい場合は冷蔵庫の野菜室に入れましょう。このときもキッチンペーパーに包み、ポリ袋に入れて、立てて保存します。買ってきた袋のまま冷蔵するのは厳禁です!
2週間以上保存したい場合は、ヘタの部分は切ると長持ちします。にんじんのヘタの近くに生長点があり、保存期間が長くなると葉を生やそうと根の栄養分を消費してしまうためです。すぐ食べる場合はわざわざカットする必要ありません。かえって酸化が進みます。
カットした人参はラップできっちり包み、ポリ袋に入れて冷蔵保存できますが、切った野菜は傷みが早いので数日以内に使い切るようにしましょう。前述した通り、半分だけ保存する場合は先の方を保存用にします(へたの方を先に食べます)。
人参は冷凍保存することもできますが、丸ごと冷凍してしまうと使うときに不便なので、必ずカットしてから冷凍しましょう。
人参は生のまま冷凍してもOKです。使い勝手いいように、お好みでカットをしましょう。写真はいちょう切りと細切りです。切った後にキッチンペーパーで水けをしっかり拭き取って、冷凍用のジッパー付きポリ袋に入れて、空気をしっかり抜き、冷凍庫へ。
冷凍する前に茹でることをブランチングといいます。ブランチングすると使うときに火の通りが早くて使い勝手がよい、以外に、変色しにくい、食感が悪くなりにくい、風味が落ちにくい、というメリットがあります。家庭用の冷凍庫は温度が急速冷凍ができませんので、ダイレクトフリージング(茹でずに冷凍)は向きません。時間がある方はなるべくブランチングするようにしましょう。
調理するときに使う切り方にします。写真では輪切りにしています。
冷凍するときは硬めに下茹でします。竹串を強く刺してやっと刺さるくらいが目安です。解凍方法ですが、基本的に冷凍したまま調理に使ってOKです。冷凍した人参は直接料理に使うと水が出るので、炒め物などで水けを嫌う料理の場合は、前日に冷蔵庫に移し自然解凍しましょう。お急ぎの場合は電子レンジを使って解凍する方法もあります。
その他、詳しい人参の保存方法はこちらの記事をご覧ください。
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