じゃがいもが苦くなってしまうのは主に天然毒素であるソラニンやチャコニンが多く含まれているためです。本記事ではじゃがいもが苦い原因やソラニンやチャコニンが生成される要因、対処法などを解説します。
じゃがいもが苦い原因は下記の通りです。
じゃがいもに苦味がある場合は、有毒な配糖体であるα-ソラニンやα-チャコニンなどのグリコアルカロイドが多く含まれていることが考えられます。
じゃがいもに含まれているソラニンやチャコニンといった天然毒素は、じゃがいもが害虫などの天敵から身を守るために生成されるようになったといわれています。
ソラニンやチャコニンが多く含まれているじゃがいもを食べると、苦いだけではなく腹痛やめまいなどの中毒症状を引き起こす可能性があるので注意が必要です。
そ出典:ソラニンやチャコニンとは(農林水産省)
じゃがいも以外にも苦味やえぐみが強い野菜はたくさんあります。例えば、ごぼうやなすなどのえぐみは、ポリフェノールです。ポリフェノールとは、植物に含まれる苦味・えぐみを感じさせる成分の総称です。
ポリフェノールは人体に害がある成分ではないので、食べても問題ありません。
一方、じゃがいもには上記で紹介したソラニンやチャコニンなどのグリコアルカロイド以外にえぐみを感じさせる成分は基本的に含まれていません。そのため、食べてえぐみを感じたときは天然毒素によるものであるため注意が必要です。
ソラニンとチャコニンの中毒症状としては、上述したように吐き気やおう吐、腹痛、下痢、頭痛、めまいなどがあげられます。摂取量が多い場合、無気力、衰弱、錯乱などの神経症状や視覚障害など重症になるケースがあります。
濃度が一般的な範囲(2~10mg/100g)であれば健康上の問題はないとされていますが、体重1kgあたり1mg以上摂取すると食中毒症状が出る可能性があり、体重1kgあたり3~6 mg以上摂取すると死に至る可能性があると考えられています。
子どもの場合は、体重あたりのじゃがいもの消費量が多くなるため体重1kgあたり0.42mgで中毒を発症する可能性があると言われています。実際にじゃがいもを食べたことによる中毒症状がでた子供の事例は多いため、特に注意が必要です。
出典:ソラニンやチャコニンによる健康被害(農林水産省)
じゃがいものソラニンやチャコニンによる中毒症状は、食後 30分〜半日で発症すると言われています。場合によっては数日後に発症する可能性もあるため、万が一食べてしまったときはすぐに症状がでなくても数日は様子を見てください。
万が一、苦いじゃがいもを食べて吐き気やおう吐、腹痛、下痢、頭痛、めまいなどの中毒症状が出た場合は、ただちに病院を受診しましょう。
ソラニンやチャコニンの毒性は自分で解毒できるものではありません。また、解毒剤もないため症状が重い場合は、胃洗浄などの処置で対処することになることが多いようです。
毒素を食べてしまったと思うと症状がでなくても体内に蓄積されているのではと心配になる方も多いかと思いますが、じゃがいもの毒素が体内に蓄積されるという報告はありません。やがて代謝されて尿や便となって排出されるため心配しなくでも大丈夫です。
出典
苦いじゃがいもの特徴は下記の通りです。下記のようなじゃがいもは特に注意しましょう。
緑色に変色してしまっているじゃがいもは、日光に当たることで葉緑体が生成されている状態です。
葉緑体とは植物が光合成を行う細胞小器官です。葉緑体の中にはクロロフィルと呼ばれる緑色の色素が含まれているため、葉緑体が増えるとじゃがいもは緑色に変色します。
じゃがいもが緑色に変色しているということは、じゃがいもが日光に当たったことを意味しています。上述したようにソラニンやチャコニンは日光に当たることで生成されるので、緑色に変色したじゃがいもは天然毒素が多く苦味があると判断することができます。
じゃがいもの芽は食べてはいけないということはご存知の方が多いと思いますが、じゃがいもの芽を食べていけないのは、じゃがいもの芽にソラニンやチャコニンが多く含まれるためです。
じゃがいもは収穫後だいたい3ヶ月は休眠期間に入るため芽を出したりすることはありません。しかし、休眠期間をすぎると子孫を残そうと成長していくためソラニンやチャコニンを生成し、芽を出してしまいます。
じゃがいもの品種によっては休眠期間が短く3ヶ月よりも前に成長をはじめることもありますし、保存環境によって休眠期間が短くなることもあります。
長持ちする野菜だからといって保存に適さない環境に長時間放置していると、芽を出してしまうので注意が必要です。
未熟なじゃがいもがソラニンやチャコニンが増えやすいと言われていて、苦味があることがあるので注意が必要です。
未熟な状態で収穫されたじゃがいもは、皮が未発達の状態で日光に当たることにより毒素となるソラニンやチャコニンの増加が早くなるため、成長してから収穫されたじゃがいもよりも多くのソラニンやチャコニンが含まれることがわかっています。
スーパーなどで販売されているじゃがいもは成長してから収穫されていますが、家庭菜園でじゃがいもを育てて食べる場合は、未熟なじゃがいもを収穫して直射日光に当ててしまわないよう十分注意が必要です。
苦いじゃがいもの特徴はおわかりいただけたでしょうか。続いて、見るからに苦味があるじゃがいもの対処法を紹介します。
上述したように皮が緑色に変色するのは日光にあたることで葉緑体が生成されるためです。緑の皮の部分には天然毒素が多く含まれていますので、必ず厚めに剥きましょう。
じゃがいもを切ったときに中まで緑色に変色していることがあります。中の緑色の部分にも天然毒素が含まれていますので、変色していた場合は取り除いて調理してください。中まで全体的に緑色になってしまっている場合は破棄したほうが良いでしょう。
じゃがいもの芽の部分には天然毒素が多く含まれていますので、そのまま調理をしてしまうと強い苦味を感じたり中毒症状を引き起こす可能性が高いです。
保存中に芽が生えてきてしまったら、必ず取り除いて調理しましょう。じゃがいもから芽が出てしまっても、ソラニンやチャコニンがじゃがいも全体に浸透しているというわけではないので、芽の部分を取り除けば食べることができます。
包丁でじゃがいもの芽を取り除くときは、柄に近い角の部分を使います。芽の部分に包丁の角を突き刺したら、じゃがいもを回して掘るように綺麗に取り除きましょう。
ピーラーを使う場合は、ピーラーの刃の横にある輪っかの部分を使って掘るようにして芽を取り除きます。ピーラーの種類によっては輪っかではなくスコップ状になっていることもあります。この場合も同様に掘るように芽を取り除きます。
ソラニンやチャコニンは特に芽の根元に多く存在していますので、包丁を使う場合もピーラーを使う場合も表面に出ている部分だけではなく根元から身もえぐり取るようにすることが大切です。まだ小さな芽の出始めの部分にもチャコニンやソラニンが含まれています。まだ小さいから大丈夫と思ってしまいがちですが、小さな芽も必ず取り除きましょう。
じゃがいもに含まれるソラニンやチャコニンは加熱しても毒性は残ります。加熱調理をすれば大丈夫ということはないので注意してください。
海外ではじゃがいもの加熱調理によってソラニンやチャコニンが減少したとの報告もあります。しかし、調理前のじゃがいものソラニンやチャコニンの濃度はそれぞれ異なり、毒素の減り方にもばらつきがあります。高温で揚げたり焼いたりしても6割程度の毒素が残ったという実験結果もありますので、加熱をしても毒性は消えないと思っていたほうがよいです。
また、ソラニンとチャコニンは水に弱い成分ではないので水にさらしても残ります。そのため下処理としてじゃがいもを水にさらしても毒性は消えませんし苦味が軽減されるわけではありません。
出典:じゃがいもの加工調理によるソラニン・チャコニンへの影響(農林水産省)
じゃがいもが苦くならないようにするには、天然毒素であるソラニンやチャコニンが生成されにくい環境で保存することが大切です。
下記でご紹介している保存方法の詳しい解説はこちらの記事でご紹介していますので、ぜひご覧ください。
じゃがいもは最も保存しやすい野菜の一つです。基本的に冷暗所で常温保存が推奨され、3ヶ月程保存することができます。上述したように、高温多湿の場所や明るい場所はソラニンやチャコニンが生成され、芽が出やすくなる他、カビを繁殖させるなど腐敗をすすめる原因となりますので避けましょう。
じゃがいもは水分が多い野菜ですが、貯蔵において低温に弱いわけではありません(低温で保存できないわけではありません)。しかし、0〜5℃の温度で保存すると、でんぷんが糖化し、ホクホクとした食感が損なわれてしまいます。そのため、冷蔵・冷凍保存にはあまり向かず、常温保存をおすすめしている次第です。ちなみに、じゃがいもを20℃の環境に1週間ほど放置しておけば、糖化したでんぷんは8割ほど元に戻ります。
じゃがいもの数がそこまで多くない場合や、ダンボールや新聞紙がない場合は、紙袋に入れましょう。
じゃがいもはそこまで乾燥に弱いわけではないので、一つずつ新聞紙(またはキッチンペーパー)に包まなくても、長く保存できます。特に数が多いときは面倒なのでまとめて保湿。直射日光が当たらず風通しのよい涼しい場所なら、秋・冬は3ヶ月、夏場でも1ヶ月は常温保存が可能です。
ビタミンが多く「大地のりんご」ともいわれるじゃがいもですが、りんごと一緒に常温保存するのがおすすめです。りんごから放出されるエチレンガスは果実の熟成を進めますが、じゃがいもの発芽を抑える効果があります。じゃがいもは暖かく明るい場所で発芽が進むので、繰り返しになりますが、冷暗所で保存するのが大切!
前述した通り基本的には常温保存がおすすめなじゃがいもですが、下記の場合は冷蔵保存がおすすめです。
夏場に1ヶ月よりも長く保存したい(夏も安心して保存したい)
冬場であっても3ヶ月より長く保存したい
じゃがいもは正しく冷蔵すれば半年ほど保存することができます。また、じゃがいもは低温保存すると、収穫直後では少なかった糖分(0.1〜0.5%)が、増加(0.5〜2.5%)します。
丸ごとじゃがいもを冷蔵保存する場合は、一つずつキッチンペーパーに包み、ポリ袋に入れて軽く口を締め、野菜室に入れます。キッチンペーパーに包むことで寒さからじゃがいもを守ることができます。ポリ袋に入れることで乾燥しすぎることを防ぎながら、口は軽く締めることで通気性を保ちます。1週間に1度はキッチンペーパーが湿っていないか確認し、湿っている場合は新しいものに取り替えましょう。野菜室は温度・湿度ともに冷蔵室より高いので、じゃがいもに適しています。冷蔵保存でもりんごを一緒に入れると発芽を抑える効果があります。
じゃがいもは常温や冷蔵以外に、冷凍保存や乾燥保存、漬け保存なども可能です。これらの保存方法についてはこちらの記事で解説していますのでご覧ください。
腐ったじゃがいもの特徴はこちらの記事で詳しく解説しています。
食べられないじゃがいもの特徴は下記の通りです。
皮が緑(青)
芽が大量に生えている
カビが生えている
茶色い液体がでている
上述してきたように皮が緑に変色しているものや芽が大量に生えているものはソラニンやチャコニンが多く含まれていますので注意が必要です。
またじゃがいもには白カビや青カビ、黒カビが生えることがあります。じゃがいものように密度が高く固い野菜は表面のみであればカビの生えた部分を取り除けば食べることができるといわれています。しかし、カビの胞子は小さいため、見えない部分まで侵食している可能性があります。特に黒カビは毒性が強いといわれていますので、小さなお子様や高齢の方など免疫力の少ない方が食べる場合や心配な方は食べずに破棄するのが良いでしょう。
じゃがいもから茶色い液体が出ている場合は、全体的に腐っている可能性が非常に高いです。中身に問題がなく、表面のみ茶色い液体がついているのであれば、ビニール袋に入れたまま保管していたなど密閉された状態で保管していたことにより湿気で水滴がつき、じゃがいもについていた泥汚れと合わさって茶色い汁が出ているように見えるということが考えられます。しかし、じゃがいもの中身から茶色い液体がにじみでているようであれば、腐敗しているので食べるのは避け、すぐに廃棄しましょう。
食べられないじゃがいもの臭いや感触の特徴は下記の通りです。
酸っぱい臭いがする
ぶよぶよしている
じゃがいもに限らず、食材は腐敗すると多くのバクテリアが活動し酢酸発酵することが多いので酸っぱい匂いがしたり酸っぱい味がしたりします。この現象は味噌や醤油といった発酵食品にも起きていますが、発酵とは異なり次第に味や臭い、形が崩れるなど食材が変化していく現象はあるときに「腐敗」とよばれます。腐敗が進むと生ゴミのような臭いがすることもあります。あきらかに異臭がすると感じる場合は破棄しましょう。
じゃがいもがブヨブヨしている場合、じゃがいもの水分が抜けてしまっている状態です。あまりにぶよぶよしていたり、中身がネバネバしているなどの異常が見られる場合は腐敗し始めているので食べずに処分しましょう。
苦い
酸っぱい
上述したようにじゃがいもに強い苦味を感じる原因は天然毒素であるソラニンやチャコニンが原因であるため、口に入れて強い苦味を感じた場合は飲み込まずに吐き出し、食べるのを中止してください。炒めものなど他の食材を使っていた場合、他の食材にも天然毒素がついてしまっていることがありますので残念ですが苦味の強いじゃがいもと一緒に調理をした食材も破棄しましょう。
また、苦味だけではなく酸味を感じることもあります。この場合も腐敗が原因である可能性が高いので食べるのを中止してください。
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