大根は下茹で必須の野菜ではありませんが、下茹でをすることでアクが取れたり味が染み込みやすくなるといった効果があります。本記事では大根の下茹でについて詳しく解説します。
大根を下茹ですることでアクを取ることができます。アクとは、一般的に苦味やえぐみ、渋みなど味を損ねる成分の総称です。下茹でをしてアクを取り除くことで大根そのものの旨味が引き立ち、えぐみや渋みがなくなるので料理全体の味をよくすることができます。
大根はほうれん草やたけのこなどの野菜と比較してそれほどアクが強いわけではないので、アクを取らなくても食べることができますが、辛味成分が多く含まれていると苦味を感じることがあるので少しでも雑味をなくしておきたいという方は下茹でをしておいた方が安心です。
下茹でをして予め加熱をすることで、柔らかくなり味が染み込みやすくなります。
野菜は細胞膜と呼ばれる固い膜に覆われています。大根が固いのも細胞膜があるためです。主成分はペクチンと呼ばれる成分で、ペクチンには加熱すると溶ける性質があります。そのため下茹でをしておくことで柔らかくなり、おでんや煮物などを作る際にしっかりと味を染み込ませることができます。
下茹ですることで大根特有のニオイを抜くことができます。大根臭さの正体は「メチルカブダン」という硫黄を含んだ化合物です。下茹ですることで水に溶け出すので匂いが軽減され、他の具材にニオイが移るのを防ぐことが可能になります。
大根は生の状態だと白く見えますが、下茹ですることで透明感が出て見栄えが良くなるというメリットもあります。
大根が白く見えるのは、細胞や繊維質の間に空気の細かい粒が含まれているためです。大根の細胞や繊維質は本来は透明なのですが、空気の粒が含まれていることにより細胞や繊維質と空気との境目で光があらゆる方向に屈折・反射するため白く見えます。透明な雪が積もると白く見えるのも、大根と同じく光の屈折・反射によるものです。
大根を茹でることで、細胞や細胞質の間にある空気が外に出るため光の反射が少なくなって透明感が出てきます。下茹でをしなくても煮物にする場合などはある程度透明になりますが、時間がかかります。そのため下茹でをしておくことで時短になります。
大根は上部・中部・下部と3つにわけられ、大根がもつ辛味成分の含有量や固さなどそれぞれ異なる特徴があるため料理に合わせて使い分けることでより大根をおいしく食べることができます。
大根を下茹でする料理は主におでんや煮物、ふろふき大根などです。これらの料理では、大根の中部を使うのがおすすめです。大根の中部の辛味成分の含有量は上部と下部の中間です。甘味と辛味のバランスがちょうどよいのが特徴で、やや固めの部位です。生で食べることもできますが、加熱した方が柔らかくなり食べやすくなります。
大根の下茹では必ずしもしなければならないものではありません。近年では品種改良によりアクがそこまで強くないものが多いので、下茹でをしなくてもそこまで料理の味を損ねることにはなりません。
また、たけのこやほうれん草のように体に害を及ぼすような成分は入っているわけではないので、下茹でをしなくても問題ありません。たけのこやほうれん草はシュウ酸と呼ばれる成分が多く含まれており、シュウ酸は結石を作る原因となったりカルシウムの吸収を阻害すると言われています。また苦味やエグみも強いので下茹では必須となります。
大根を生で食べる場合は、下茹でをするのではなく水にさらすだけでも大丈夫です。水にさらすことでもアクを取り除くことができます。また、大根が水分を吸ってシャキシャキッとした食感になるため食感をよりしっかりと楽しみたいという方は水にさらしてから調理をするのがおすすめです。
下茹でをすることでアクを取り除くことができたり、味を染み込ませやすくするといったメリットがある一方で、栄養素が流れ出てしまうというデメリットがあります。
大根には、アミラーゼやプロテアーゼなどの消化酵素が豊富に含まれています。アミラーゼは「ジアスターゼ」とも呼ばれ、上述したようにでんぷんを分解し体内に吸収するのを助けてくれます。また、アミラーゼは消化液の一つである唾液にも含まれています。食べ物の消化や吸収を助けるため、胃腸の負担を軽くし胃もたれや胸焼け、食欲不振などの改善に役立つと言われています。
また大根にはビタミンCも含まれています。
しかし大根に含まれる消化酵素ジアスターゼは加熱にとても弱く50〜70℃で消滅してしまいます。また、ビタミンCも水溶性なので、下茹でをすることで流れ出ていってしまいます。
栄養素を重視する場合は、下茹でせずに調理をするか生で食べるのが良いでしょう。
まず、大根を3~5cm幅の輪切りに切り皮を剥きます。包丁以外ではピーラーや爪楊枝などを使って皮を剥く方法もあります。
大根の皮付近の筋には、ポリフェノールが含まれています。ポリフェノールとは、ほとんどの植物に存在する苦味や色素の成分です。大根の場合は皮付近の筋に集結しているため、皮を厚めに剥いていた方が苦味を感じにくくなります。
ただし、大根の皮にも栄養素が含まれているため、皮を剥かずに加熱しても大丈夫です。
大根の皮を剥いたら断面に十字の切り込みを入れます。これを「隠し包丁」と言います。
切り込みは入れなくても大丈夫ですが、ふろふき大根やおでんにする場合など厚めの大根を使う場合は切り込みを入れていた方が火の通りが早くなりますし、味も染み込みやすくなります。
切り込みは大根の厚さの1/3程度の深さまで入れるのが良いです。切り込みが浅すぎるとあまり意味がありません。反対に深く入れすぎてしまうと加熱しているときに形が崩れてしまうので注意しましょう。
この時、面取りをしても良いです。面取りとは野菜の角を薄く削ぐことを言います。面取りをしておくと煮崩れしにくくなり、さらに面積が広くなるので味が染み込みやすくなります。
大根の皮を剥き切り込みを入れたら鍋に入れて、大根がかぶるぐらいのとぎ汁を入れます。
お米のとぎ汁を使う理由としては、とぎ汁に含まれているでんぷんが大根から出たアクを包み込む働きをすることが挙げられます。でんぷんが大根のアクを包み、さらに茹でているときに大根に再び戻るのを防いでくれます。
また、大根に含まれているジアスターゼ(消化酵素)が、とぎ汁に含まれているでんぷんを分解することで、でんぷんが糖となるため大根の甘みが増す効果も期待できます。
お米のとぎ汁以外に糠(ぬか)を使う方法も。その場合は鍋に水を注ぎ、糠1カップを加えて泡立て器でよく混ぜ合わせます(吹きこぼれ防止のため)。その後、大根と赤唐辛子1本を入れます。
鍋に大根ととぎ汁を入れたら、鍋を強火にかけて沸騰させます。沸騰したら弱火にして竹串などがスッと通るようになるまで加熱します。
茹で時間は大根の量や厚さによっても異なりますが、2cmの厚さで10分程度、ふろふき大根やおでんを作る場合など4cmの厚さめであれば30分程度です。沸騰してから弱火にした後10分〜15分ほどで一度竹串などを刺して様子を見ましょう。
茹でた後のとぎ汁の匂いが気になるという場合は、水でさっと洗い流すと軽減することができます。匂いがきつい場合は、再度真水で茹でた後ザルにあげて水気を切る「陸上げ」を行うと良いです。
ぬかを入れて下茹でした場合は必ず水洗いを行いましょう。
とぎ汁がなければ、お米で代用することが可能です。とぎ汁はお米をといだときに出る汁ですから、米を使っても同じ効果を得ることができます。
生米を使う場合は、スプーン1杯程度のお米を入れて(ティーバッグに入れても◎)大根と一緒に煮ます。お米を入れるタイミングは水を入れたときです。
また、お米以外では片栗粉を使ってアク抜きをすることもできます。片栗粉にもでんぷんが含まれていますので、とぎ汁を使ったときと同じようにアクを吸着したり大根の甘味を増す効果が期待できます。片栗粉で代用する場合は、小さじ1程度の片栗粉を加えて大根と一緒に茹でます。
水だけで下茹ですることもできます。水だけで下茹でをしても大根は柔らかくなり味が染み込みやすくなります。
ただし、水だけではでんぷんが含まれていないためアクが残ってしまったり、大根の甘味を増すということはできません。水だけでは無意味ということはありませんが、下茹でをするのであればとぎ汁や米、片栗粉を入れたほうがよいでしょう。
大根を下茹でするときはとぎ汁を使うのが定番ですが、砂糖を加えて茹でるという裏技もあります。
砂糖には食材を柔らかくする性質があるため、砂糖を加えることで大根が柔らかくなり味がしみこみやすくなります。これはプロの料理人もよく使っている技です。
さらに昆布を加えて下茹でをするという裏技もあります。下茹でをすると水を吸い込み大根の味が薄くなってしまうことがありますが、昆布を加えることで大根は昆布だしを吸い込むことなるので味が薄くなるのを防ぐことができます。
また、あらかじめ昆布出汁を染み込ませておくことでおでんや煮物など後から味付けをする場合も、より旨味のある仕上がりにすることができます。
昆布を入れるときは、昆布に切り込みを入れておくとしっかりと昆布の出汁がでます。
大根の下茹ではレンジで行うことも可能です。電子レンジを使うことで一気に大根を加熱することができるので、鍋を使って茹でるよりも時短になります。
電子レンジを使う場合は、大根をカットし皮を剥いた後耐熱皿に並べ、大根がかぶるぐらいのとぎ汁を入れたらラップをして600Wで5分〜6分程加熱します。大根を裏返して再度5分〜6分加熱をします。
鍋を使うときと同じように大根の大きさによっても加熱時間は異なります。竹串などを通してスっと入るぐらいになったら完了です。
炊飯器を使うと、吹きこぼれる心配もないので楽に下茹ですることができます。
炊飯器を使う場合は、大根をカットし皮を剥いたあとお釜に入れて大根が浸るぐらいまでとぎ汁を入れて通常の炊飯モードで炊きます。スイッチを押したらそのまま放置で大丈夫です。炊飯が完了したら竹串などを刺して確認します。途中でつっかかって上手く刺さらない場合は、追加で炊飯します。
圧力鍋を使って下茹でするのも時短になります。
圧力鍋を使う場合も、カットして皮を剥いた後鍋に入れてかぶるぐらいの茹で汁を入れます。とぎ汁を入れたら蓋をして、高圧にセットして強火にかけます。高圧になったら弱火にして6分程加圧したら火を止め、圧力が抜けるまで時間を置いて蓋をあけます。圧力鍋の取り扱いについてはメーカーによっても異なるので取扱説明書を読み確認してください。
下茹でした大根は冷まさずにそのまま調理をすることも可能ですが、とぎ汁や米を入れて茹でることでぬめりが出ます。また、米特有の匂いが気になるという方も多いです。そのため、水洗いをして冷まし、ぬめりや米の匂いを落としておくのがおすすめです。
ちなみに、味付けをして煮物にした後は基本的には冷ました方が良いです。大根に限らず、食材は加熱して冷ますと、細胞内の水分が収縮します。細胞内の水分が収縮することで細胞に空いたスペースに煮汁が入り込むため、より味を染み込ませることができます。ただし、魚の場合は冷ますと身がしまって硬くなってしまうので冷まさない方が良いです。
大根を下茹でしたら、まず火から下ろして粗熱を取ります。粗熱がとれたら、流水でさっと洗いぬめりと匂いを洗い流して完了です。
水洗いした大根はザルなどに移し替えて水分と粗熱を取りましょう。下茹でした大根を長時間水に浸けておくと、食感や栄養が劣ってしまいますのでNGです。
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