キュッキュッという食感が美味しいいんげん(さやいんげん)の旬の時期について解説します。旬の時期に増加する栄養素にも注目し、おすすめのレシピも紹介します。
一般的にいわれる旬とは、野菜や果実が全国的に露地栽培でよく収穫され、味が美味しい時期を指します。露地栽培とは、ハウスなどの施設を使わず屋外の畑で栽培する方法のこと。
店頭には一年中出回っていますが、いんげんは夏野菜であり、旬の時期は6月〜9月です。
いんげんは近年作型が分化されており、露地栽培以外にも、ハウス半促成栽培(4〜6月どり)、高冷地栽培(8〜10月どり)、抑制栽培(9〜12月どり)などがあります。いんげんの別名「四季豆」は1年中収穫できることに由来し、関西での「三度豆」という呼び名は栽培期間が短く1年に3度も収穫できることによります。
さらに、いんげんは北は北海道から南は沖縄まで全国的に栽培されています。年間収穫量ランキングは下記の通りです。
旬である夏は全国的に栽培されています。寒冷期に出回るのは沖縄産やオマール産の輸入品です(沖縄産いんげんは冬が旬といえます)。沖縄県では温暖な気候を生かし、本州の野菜生産の端境期(はざかいき)に出荷を行っています。
このように栽培方法の分化と産地の分散により、いんげんは通年市場に出回っています。
出典:令和3年産指定野菜(秋冬野菜等)及び指定野菜に準ずる野菜の作付面積、収穫量及び出荷量(農林水産省)
インゲンマメには若いサヤを食べるサヤ用インゲンマメと、豆を食べる種実用インゲンマメがあります。サヤ用インゲンマメをサヤインゲンといいます。私たち日常的に「いんげん」と呼ぶのはこのサヤインゲンです。種実用インゲンマメのことは一般的に「いんげん豆」と呼びます。
いんげん豆の代表的な品種である金時豆ですが、9月に収穫された後しばらく寝かせて甘みを増やし、1〜3月に市場に出回りはじめ、周年出荷されます。金時豆は1〜3月が旬といえます。おなじインゲンマメでもサヤと種子では旬の時期が全く違います。
いんげんは傷むのが早い野菜であるため、旬の時期であっても、なるべく新鮮なものを選びたいものです。新鮮ないんげんには下記の特徴があります。
全体が均一な細さで真っ直ぐ
全体に均一な緑色
しっとりとしてつやがある
豆の形がくっきり見えるものは育ちすぎな可能性が大です。また、へたの先に黒ずみがあったり、表面に傷や変色があるものも避けましょう。
旬の時期の野菜は他の時期と比べて栄養価が数倍増加することがあります(もはや違う野菜といえます)。いんげんなどの春夏野菜は、ハウス栽培のものと比べて、露地栽培では太陽光をたっぷり浴びるため、緑黄色野菜に含まれるβ-カロテン(ビタミンA)とビタミンCが特に増加します。夏場は青物が少なくなるのでいんげんは重宝されます。
いんげんにはβ-カロテンが豊富に含まれています。旬の時期、β-カロテンの含有量は特に多くなります。
β-カロテンは体内で必要量がビタミンAに変換される成分のうちのひとつで、その中でも最も活性が高いのが特徴です。
β-カロテンには強い抗酸化作用があり、体内に発生した活性酸素を除去します。活性酸素は本来ウイルスと闘うなど健康維持に大切ですが、増えすぎると害を及ぼし、老化の促進などに繋がります。活性酸素はストレスや紫外線、不規則な生活習慣や加工食品、また喫煙などによって増加しすぎると言われています。
ビタミンAは、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあります。視力を正常に保つ役目もあり、夜盲症の予防や視力低下の抑制があります。そのため、体外からのウィルスや細菌の侵入を防ぎ感染症を予防する効果が大きく、免疫力を高めます。また皮膚の健康維持に関与していることから、美肌効果もあります。皮膚の新陳代謝が高まることで、乾燥肌やニキビ肌の改善が考えられます。
いんげんにはビタミンCも豊富に含まれます。旬の時期、ビタミンCの含有量は特に多くなります。
ビタミンCはたんぱく質からコラーゲンを合成するのに必要不可欠な栄養素です。身体を作っているたんぱく質の30%がコラーゲンで、細胞と細胞を繋ぐ接着剤のような役割を果たしており、皮膚や血管、筋肉、骨などを丈夫にします。また、ビタミンCはシミのもとになるメラニン色素の生成を抑えたり、肌に弾力やハリをもたらすため、美肌づくりにも重要な栄養素です。
さらに、ビタミンCの抗酸化力はトップクラスですので、細胞を酸化から守り老化や生活習慣病の予防にもなります。白血球を活性化させて免疫力を高める作用もあります。
また抗ストレスビタミンと言われているように、ストレス時に副腎に働きかけてアドレナリンの分泌を促す作用もあり、ストレスを撃退します。
日本人が不足しがちなビタミンB1がいんげんには含まれています。ビタミンB1は夏バテ防止効果があるので旬の夏場に積極的に摂取したい栄養素です。
ビタミンB1は糖質がエネルギーに変換されるのをサポートする栄養素です。不足すると、体のだるさや倦怠感、足のむくみ、動悸の症状、太りやすくなったりします。また、糖質は脳や神経系のエネルギー源なので、ビタミンB1には精神を安定させる作用があるといわれています。
昔、日本人の主食は精白米ではなく玄米で、その玄米にはビタミンB1が含まれていたために、意識していなくても摂取することができました。
しかし、昨今ではビタミンB1が豊富に含まれている米ぬかの部分が、精白米にする段階でほとんど取り除かれてしまいます。他にもお菓子やジュースなどの過剰摂取でビタミンB1は不足するとも言われているため、積極的に摂取したい栄養素です。
アスパラギン酸にも夏バテ防止効果が期待できるので、旬の夏場に積極的に摂取したいアミノ酸です。
アスパラギン酸は非必須アミノ酸のひとつで、その名の通りアスパラガスから発見されたアミノ酸です。アスパラギン酸は酸味を含むうま味成分で、日本人が古くから重宝している醤油や味噌などの発酵調味料のうま味の正体だと言われています。
アスパラギン酸はうま味成分としてだけでなく、人の体調を整える働きもあります。疲労回復効果があることから医薬品や栄養ドリンクにも使われています。アスパラギン酸はカリウムやマグネシウムを細胞に取り込みやすくし、クエン酸回路を円滑に回すことで乳酸をエネルギーに変換して、疲労回復の働きをしています。さらには人間の体液のバランスを整えたり、アンモニアを解毒して肝臓の負担を減らす働きもあります。
また新陳代謝を活発にし角質の水分を保持してくれるので、肌の保湿効果もあります。そのため化粧品にも使われています。
旬のいんげんの調理のポイントとおすすめレシピを紹介します。Filyのレシピはすべて小麦粉・乳製品・白砂糖不使用です。
いんげんの定番料理である胡麻和えのレシピです。旬のいんげんの風味と歯ざわりをシンプルに楽しめます。さらに、ごまに豊富に含まれるビタミンEは抗酸化作用(老化防止作用)があるのですが、いんげんのビタミンCと組み合わさるとさらに効力がアップします。ビタミンCの含有量が特に上がる旬の時期に食べたいひと皿です。
いんげんの胡麻和えのレシピ・作り方
ガーリックの風味が美味しいいんげんのベーコン炒めです。彩りも◎。あと一品ほしい時に簡単に作れるレシピです。旬のいんげんに特に豊富に含まれるβ-カロテンは油と一緒に摂ると吸収率がアップするのでおすすめです。
いんげんのベーコン炒めのレシピ・作り方
いんげんの独特のうまみと歯ごたえを活かしたレシピです。鶏肉のうまみがいんげんに染み込み◎。旬のいんげんに特に豊富に含まれるビタミンCは、鶏肉に豊富に含まれるたんぱく質がコラーゲンになるのに必要不可欠です。旬の時期に食べることで、美肌効果アップが期待できます。
いんげんと鶏むね肉の甘辛煮のレシピ・作り方
いんげんは1週間ほどなら冷蔵で美味しく保存することができます。夏が旬のいんげんは寒さに弱いのが特徴で、低温貯蔵の最適温度は4〜7℃で、それより低い温度だと低温障害を起こしてしまうので注意が必要です。
夏野菜のいんげんは寒さと乾燥に弱いので、キッチンペーパーに包みポリ袋に入れ、コップなどに立てて保存します。
夏の終わりにたくさん手に入ったときは、新鮮なうちに硬めに塩茹でし、冷凍保存しましょう。1ヶ月程保存することが可能です。生のまま冷凍すると食感や風味、色が悪くなるので、下茹でしてから冷凍しましょう。旬の時期に豊富なビタミンCは水溶性で長く茹ですぎると流れ出てしまうので短めがポイントです。
いんげんを硬めに塩茹でし、ザルに上げて冷まし(水に落とすのもあり)、重ならないようにジッパー付きポリ袋に敷き詰めて空気を抜きながら封を閉じ、冷凍庫へ。
いんげんのより詳しい保存方法に関してはこちらの記事を、いんげんの下ごしらえに関してはこちらの記事を参考にしてください。
通年出回っているいんげんですが、旬の時期(6〜9月)は大量に市場に出回ることから価格がやや下がります。令和3年7月の1kgあたりの平均価格は616円と、1年の中で最も低価格で販売されました(ちなみに最高価格は1月で1,138円でした)。
栄養価も高く、その上いんげんは調理も簡単なので大変おすすめです。今回ご紹介した旬の時期や選び方を参考に、美味しいいんげんをお楽しみください。
出典:東京都中央卸市場
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