「いんげん」「さやいんげん」「いんげん豆」の3つの言葉の意味の違いと使い分けを分かりやすく解説します。
栽培中のインゲンマメ
「インゲン」という名称の野菜は厳密には存在しません。正式名称は「インゲンマメ」です。インゲンマメは豆(種子)のことを指すわけではなく、複数の豆がさやに包まれた細長い緑色の野菜そのものを指します(上記写真)。ただし、一般的にはインゲンマメの種子のことを「いんげん豆」という場合があります。
また、一般的には食される部分(実)をインゲンマメといいますが、植物学では実以外にも葉や花、ツルも全て含めてインゲンマメという場合もあります。ちなみに、インゲンマメは白や紫の花が咲きます。
インゲンマメは大別すると、豆が成熟する前の若いさやを食べる「サヤ用」と、完熟した豆を食べる「種実(子実)用」の2種類があります。サヤ用はさやが柔らかく野菜として用いられ、種実用はさやが硬く種子を煮豆、あんなどの加工原料とします。
サヤ用が生長して種実用になる品種もありますが、別々に栽培される品種が多いです。サヤ用インゲンマメはインゲンマメの全作付面積の20%程度を占めます。
さらに、サヤ用・種実用それぞれが蔓性(つるあるという意味)と、矮性(小さいという意味)に分けられます(インゲンマメの蔓性は実が大きく、矮性はつるがありません)。
定番料理のサヤインゲンの胡麻和え
そして、この「サヤ用種」を一般的に「サヤインゲン」といいます(つまり、サヤインゲンは若いさやを食べるタイプのインゲンマメの総称)。世間一般ではサヤインゲンのことを「いんげん」と略して言うことが多いです。ここが混乱するポイントですね。サヤインゲンは世界中で食べられるポピュラーな野菜です。日本では塩茹でして和え物やおひたしにされることが多く、ヨーロッパではバターで炒めて(ソテーにして)食べられることが多いです。
種実用インゲンマメには特に個別の名称はありません。種実用インゲンマメは乾燥種実用と未熟生種実用の2種類に分類され、乾燥種実用が炭水化物とタンパク質の給源として広く利用されます。日本でも、インゲンマメの成熟した豆はほとんどが乾燥させて貯蔵し、煮豆や甘納豆、菓子用の餡(あん)などに使われます。
サヤ用インゲンマメ(サヤインゲン)は日本各地で作られますが、国産の種実用インゲンマメは9割以上が北海道で栽培されています。
ちなみに、インゲンマメの原産地は中央アメリカといわれていますが、日本へは1654年に中国から帰化僧の隠元が伝えたとされ、それがインゲンマメの由来となったといわれています。
モロッコいんげん
サヤインゲンはつるの有無や大きさ(と形)によって、多くの品種があります。
ケンタッキー・ワンダー(どじょういんげん、尺五寸)
モロッコいんげん
平ざやいんげん
カラーいんげん(紫いんげん・黄いんげん)
南星(はいぶし)いんげん
かんぴょういんげん
紅花いんげん
金時豆(キントキマメの豆が未熟なうちにさやごと若採りしたもの)
キヌガサ
穂高
赤三度
烏姉子(からすあねっこ)
マスターピースなど
最も一般的なのは「ケンタッキー・ワンダー」で、日本に馴化したものは「どじょういんげん」「尺五寸」とも呼ばれます。つるあり、まるざやの代表的な品種です。スーパーでよく見かけるのはこの品種です。柔らかく独自の香りで味がよいとされます。
「モロッコいんげん」は幅が広く平な形が特徴の平ざや種です。花豆の若ざやで、良質なタンパク質やビタミン、ミネラルを含み、柔らかく味もよいです。長さは20cm以上にもなります。モロッコは名称であり、モロッコ原産なわけではありません。
「平ざやいんげん」はさやが平ですがモロッコいんげんよりも小さい品種です。甘味が強く味が濃い。曲がりが少なく、真っ直ぐなので切りやすいのが特徴です。
金時豆(金時の種子)
種実用インゲンマメにも多くの種類があります。
金時(きんとき)
白金時(しろきんとき)
手亡(てぼう)
大福
うずら
とら豆
金時(豆)はインゲンマメの中でも代表的な品種です。インゲンマメの豆の中で粒のサイズは中くらいで赤紫色をしています。北海道で栽培されているインゲンマメの7割が金時豆といわれています。金時豆は種実だけではなく、若いサヤを食べる場合もあります。「金時豆の甘煮」が最もポピュラーなレシピです。
手亡は白い種皮色を持つ小粒のいんげんまめです。手亡は煮豆やあんに使われます。手亡より大粒の大福や白金時など他の白色のいんげんまめの銘柄とともに「白いんげんまめ」と総称されます。大福や白金時は煮豆やあん以外にも甘納豆を作るときにも使われます。
ササゲ
インゲンマメと見た目も調理法もそっくりな野菜に「ササゲ」があります。インゲンマメとササゲはどちらもマメ科の植物ですが品種群が違います。インゲンマメはマメ科インゲン属で、ササゲはマメ科ササゲ属です。
ささげはアフリカ原産です。ささげも非常に種類が多く、若いさやをサヤインゲンのように食べるもの、乾燥させた実を利用するもの、そして飼料になるものがあります。サヤ用ささげの代表的な品種は「十六ささげ」「あきしまささげ」「姫ささげ」「柊野(ひいらぎの)ささげ」などがあります。十六ささげは愛知県特産で長さが20cmにもなり豆の数が16個であることからこのように名付けられました。ささげの種実は小豆の代わりにお赤飯に使われます。
西日本ではフジマメのことをインゲンマメと呼び、一般的なインゲンマメのことをサンドマメと呼ぶことがあります。フジマメもインゲンマメに似ていますが、品種群が違います。フジマメはマメ科フジマメ属です。アフリカやアジアが原産地とされています。
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