わらび餅を作るときに使うわらび粉ですが、原料や成分は何かご存知ですか?本記事ではわらび餅の特徴と代用品を解説します。また、本わらび粉、わらびもち粉、もち粉との違いも紹介します。
わらび粉とは、わらびの根からとれるでんぷんを原料に作られた粉です。片栗粉と同じくでんぷん粉の一種です。
わらびの根からとれるでんぷん粉のみを使用しているものは「本わらび粉」、わらび粉にさつま芋やじゃが芋のでんぷん粉を合わせたのが「わらび粉」または「わらびもち粉」と表記されて販売されています。
つまり、わらび粉・本わらび粉・わらびもち粉の大きな違いは、原料にわらび粉以外のでんぷん粉を加えているかどうかです。
本わらび粉は、シダ植物の一種であるわらび(蕨)の根からとれるでんぷんを原料にして作られたてんぷん粉です。本わらび粉の特徴は、わらびからとれるでんぷん粉のみを使用しているという点です。
わらび粉は、地下に埋まっているわらびの茎を掘り出し、20cm〜25cmほどに切り、臼で粉砕します。粉砕したら水を加えてでんぷんを洗い出し、水洗いします。水洗いしたら、再びでんぷんを沈殿させて洗うの作業を繰り返すという製造方法で作られています。
1kgのわらびから採れるでんぷん粉はわずか7〜8gで、製造に手間がかかるため価格が高いというのも大きな特徴です。奈良や福岡がわらび粉の産地として有名です。
本わらび粉の色は灰色で、さらさらとした粉というよりは、細かい塊がいくつもあります。この塊は指で潰すと簡単に粉々になります。
本わらび粉は、強い粘性が出るのが特徴で、味も良いのでわらび餅など和菓子に使われます。本わらび粉で作るわらび餅は色が黒くなり、良く伸びます。昔は、強い粘性を糊(のり)としても活用しており、和傘や油紙、かっぱなどを作るときに重宝されていました。
わらびもち粉は、上記で紹介したわらび粉に、甘藷でん粉(かんしょでんぷん)や馬鈴薯でん粉(ばれいしょでんぷん)、葛でん粉(くずでんぷん)、タピオカでん粉などを合わせたものです。
甘藷でん粉とは、さつま芋のでんぷんを沈殿させ乾燥させたものです。「甘藷」はさつま芋の別名です。普段口にしているさつま芋よりも一回り大きく、でんぶんを多く含んでいるさつま芋を原料にしています。
馬鈴薯でん粉とは、じゃが芋のでんぷんを沈殿させ乾燥させたものです。「馬鈴薯」はじゃが芋の別名です。じゃが芋の形が馬の首につける鈴に似ていたため「馬鈴薯」と呼ばれるようになったといわれています。
国内で作られる馬鈴薯でん粉は、北海道で生産されたじゃが芋のみを原料として製造されています。
葛でん粉とは、マメ科植物クズの根をつぶしてでんぷんを沈殿させて取り出し、何度も不純物をとりのぞいて乾燥させたものです。「葛粉」ともいわれます。葛粉も、わらび粉と同様に生産量が少なく高価であるため、葛粉と称して一般に売られているものは馬鈴薯でん粉や甘藷澱粉、トウモロコシのでん粉(コーンスターチ)などのデンプンを合わせているものがほとんどで、葛粉のみを使用したものを本葛(ほんくず)といいます。
タピオカでん粉は、キントラノオ目トウダイグサ科植物キャッサバのでんぷんを沈殿させ、乾燥させたものです。タピオカの原料になるものなので「タピオカでん粉」と呼ばれています。
わらび餅粉は、わらび粉以外のでんぷん粉も配合されているため、本わらび粉と比べて値段は安くなります。
わらびもち粉の色は、甘藷でん粉などわらび粉以外の配合量が多ければ多いほど白く、わらび粉の配合量が多いと灰色っぽくなります。見た目は、わらびもち粉も本わらび粉と同じように細かい塊がたくさんあります。
わらびもち粉は火にかけると粘りが出てトロリとした状態になる性質があり、その名の通りわらび餅を作るのに使われます。本わらび粉で作るわらび餅が黒いのに対して、わらびもち粉で作ったわらび餅は、白〜透明になります。また、本わらび粉で作ったわらび餅ほど伸びず、甘藷でん粉や馬鈴薯でん粉の甘みがあります。
わらびもち粉と似た名称の粉にもち粉がありますが、もち粉はもち米を原材料にして作られる米粉の一種なので、全くの別物です。わらびもち粉の名称にも「もち」が入っていますが、これはわらび餅を作る際に使われるからであり、もち米を使用しているからではありません。
もち粉は、精白したもち米を水で洗い、乾燥させた後粉状にするという方法で製造されます。
もち米とは白く不透明で、お餅やお赤飯にする粘性のあるお米のことです。もち米と対になるのは「うるち米」です。うるち米は、一般的に食べられている半透明のお米のことです。有名な銘柄には「あきたこまち」や「コシヒカリ」などがあります。
もち粉は、水で溶くとなめらかで粘りのある生地になるのが特徴で、求肥を作る際に使われることが多いため「求肥粉」とも呼ばれます。求肥の他にも大福などの和菓子を作る際や、ケーキやドーナツといった洋菓子に使用することもできます。
本わらび粉100gあたりに含まれる成分は、下記の通りです。
たんぱく質…約0.4g
炭水化物…約83.2g
食塩相当量…約0.03g
たんぱく質などの栄養素はほとんど含まれず、本わらび粉の多くは炭水化物です。
本わらび粉100gあたりのカロリーは、334kcalです。これはそうめん1人前(100g)を食べたときと同じカロリーです。本わらび粉から作られているわらび餅は、1パック(一人前)あたり314kcalで糖質量(炭水化物から食物繊維を引いたもの)はおよそ60gなので、カロリーだけではなく糖質量も多いです。わらび餅にきな粉や黒糖をかけると、さらにカロリーは高くなり、糖質量も多くなるので、食べすぎると太る原因になってしまいます。
わらびもち粉に含まれる成分は、メーカーによって異なります。
わらび粉に甘藷でん粉や馬鈴薯でん粉を配合しているわらびもち粉100gに含まれている成分は下記の通りです。
たんぱく質…約0.1g
脂質…約0.3g
炭水化物…約84.8g
わらびもち粉100gあたりのカロリーは343Kcal です。でんぷん粉はカロリーが高いため、甘藷でん粉や馬鈴薯でん粉を配合しているわらび餅粉のほうが本わらび粉よりもカロリーが高くなります。
よくスーパーなどで売られているわらびもち粉で作られているわらび餅は、1パック(一人前)あたり285kcalで、糖質約66gです。透明で涼しげな印象のわらび餅は、カロリーが低いと思われがちですが、実はカロリーが高く糖質量も多いので注意が必要です。ちなみに、原材料にタピオカでん粉が配合されているものさらにカロリーが高くなるので、ダイエット中の方は、わらび餅を購入する際は原材料を確認して購入することをおすすめします。
本わらび粉は一般的なスーパーでは取り扱っていないことが多いですが、Amazonなどの通販で購入することができます。上述したように本わらびからとれるでんぷん粉は貴重なものなので、100gで1500円以上する高価なものがほとんどです。
わらびもち粉の方が一般的スーパーなどで手軽に購入することができます。わらびもち粉は、片栗粉などの粉物のコーナーか製菓コーナーに置かれていることが多いです。本わらび粉に比べると値段が安く、200g120円〜200円程で購入することができますが、わらび粉の配合量が多いと値段は高くなります。
本わらび粉は、主にわらび餅を作るのに使われます。
本わらび粉で作ったわらび餅は、柔らかく口溶けが良いのが特徴で、できたて30分以内に食べるのがより美味しく食べるポイントです。
本わらび粉で作られたわらび餅は、時間が経つほど固くなってしまい口溶けが悪くなってしまうので冷蔵庫で粗熱を取る際は冷やしすぎないように注意しましょう。わらび餅にあんこを包むと、水まんじゅうを作ることもできます。
また、山口県の銘菓である「ういろう(外郎)」を作ることもできます。ういろうは、本わらび粉に小豆餡(あずきあん)と小麦粉を練り込み、蒸籠(せいろ)で蒸し上げた和菓子です。
わらびもち粉も、主にわらび餅を作るのに使われます。
わらびもち粉は、主に甘藷でん粉や馬鈴薯でん粉が配合されているので冷やしても固くなりません。特に馬鈴薯でん粉は水分保持力が高いため、冷たいわらび餅を楽しみたいという方は馬鈴薯でん粉が配合されたわらびもち粉を使用してわらび餅を作るのがおすすめです。
本わらび粉と同じように、水まんじゅうやういろうを作ることもできます。また、くず餅なども作ることができます。
わらびもち粉は、本わらび粉より安価で購入することができるため、コーヒーゼリーやプリンなどのデザートや、ケーキやドーナツなどの焼き菓子にも使われることがあります。
わらび餅や水まんじゅう、ういろうなどの和菓子を作る場合、本わらび粉とわらびもち粉はお互いに代用することが可能です。これらの和菓子はもともとは本わらび粉で作られていたものですが、上述したように本わらび粉が高価であったため代用品として作られたのがわらびもち粉です。
ただし、本わらび粉は、わらびのでんぷんのみなので冷やすと固くなってしまいます。そのため、わらびもち粉ではゼリーなどを作ることができますが本わらび粉で代用してゼリーなどを作ることはできません。しかし、そもそも本わらび粉のほうが高価なので、本わらび粉の代用品としてわらびもち粉を使うことはあっても、わらびもち粉の代用品として本わらび粉を使うことはないでしょう。
甘藷でん粉は、上述したようにさつま芋からとれるでんぷんを乾燥させて粉状にしたでんぷん粉の一種です。
甘藷でん粉は、本わらび粉と同様に熱を加えることで非常に粘りが強く出るため本わらび粉と同様にわらび餅などを作ることができます。
さつま芋のでんぷんは、加熱されると「β-アミラーゼ」という酵素が作用し麦芽糖が生成され、甘みが出るという特徴があります。そのため、甘藷でん粉で代用してわらび餅を作ると甘みが出ます。
馬鈴薯でん粉は、じゃが芋のでんぷんを乾燥させて粉状にしたでんぷん粉の一種です。
スーパーなどで売られている一般的な片栗粉の原材料はじゃが芋のでんぷんなので、片栗粉を代用品として使うことができるということになります。
上述した甘藷でん粉と同様に、熱を加えることで粘りが出る性質があるので、本わらび粉の代用品として使うことでわらび餅を作ることができます。ただし、味や食感は異なります。片栗粉で代用すると、やや固めで弾力のある仕上がりになり、柔らかいわらび餅にはなりません。固めの仕上がりが好みの方におすすめです。
葛でん粉(葛粉)は、マメ科植物クズの根からとれるでんぷんを乾燥させて粉状にしたものです。
葛でん粉は水に溶かして加熱することで透明になり、冷やすと固まってぷるぷるとした食感になるという特徴があります。そのため、わらび餅の出来栄えととても近く、代用品としてよく使用されます。
タピオカでん粉は、キャッサバという植物のでんぷんを乾燥させて粉状にしたでんぷん粉の一種です。
「タピオカ粉」ともいいます。
溶かし固めるともっちりとした食感のある液体になるという特徴があり、本わらび粉の代用品として使うことができます。
タピオカでん粉で作ったわらび餅は、本わらび粉で作ったわらび餅よりももっちりとした弾力のある仕上がりになります。
蓮粉(はすこ)は、レンコンからとれるでんぷんを乾燥させて粉状にしたでんぷん粉の一種です。
蓮粉は加熱すると透明で粘性のある液体になるという特徴があり、本わらび粉の代用品として使うことができます。
蓮粉の見た目は茶色で、サラサラとしています。
蓮粉を使ってわらび餅を作ると本わらび粉で作ったわらび餅と同じよう黒くなりなりますが。蓮粉のほうが弾力があり、独特の風味があります。
上述したように、わらびもち粉は本わらび粉の代用品として使うことができるため、わらび餅などの和菓子を作る際は本わらび粉の代用品と同じもので代用することが可能です。
わらびもち粉を使ってゼリーや焼き菓子などを作る際の代用品として使えるものを紹介します。
ゼラチンは、動物の骨や皮に含まれるコラーゲンに熱を加え抽出したものです。コラーゲンを加熱することで、水に溶けやすい水溶性のたんぱく質に変質させています。
ゼラチンは、温めると溶けて冷やすと固まるという性質があり、わらびもち粉を使ってゼリーを作るのと同じようにゼリーやプリンを作ることができます。
ゼラチンが固まる温度は20℃以下で、25℃くらいになると溶解するため、ゼラチンで作るゼリーは口の中に入れると体温で溶けます。そのため、わらび餅のような食感を楽しみたい方はわらびもち粉を使用し、小さな子どもが食べる場合など口溶けの良さを重要視する場合はゼラチンで作るのがおすすめです。
白玉粉は、もち米を原材料として作られる米粉の一種です。古くは寒い冬の季節に作られていたため「寒晒粉」という別名があります。
ケーキなどの焼き菓子を作る際にわらびもち粉の代用品として使うことができ、わらびもち粉よりももちもちとした食感を出すことができます。
白玉粉は、もち米を水洗いして水に浸して吸水させ、原料に対して1〜2倍の水を加えながら石臼で水びきします。この時に出る乳液をふるいにかけて粗粒を分離して、再び粗粒を水びきしたら、沈殿したもの(でんぷん)を圧搾機で脱水し、脱水したものを賽の目切りにして乾燥させるという製造方法で作られます。
白玉粉はもち米のでんぷんを乾燥させて作られているため、米粉というよりはでんぷん粉に近く、独特の風味があります。白玉粉にはやわらかくなめらかな食感が出る他、冷めても固くならないという特徴があり、白玉団子や大福などの和菓子に使われることが多いですが、もちもちとした食感を出すためにケーキなどの焼き菓子に使われることも多いです。
本記事では一般的なわらび餅の作り方のレシピを紹介します。
本わらび粉…50g
水…250ml
砂糖…150g
きな粉…適量
黒蜜…適量
まず、ボウルに本わらび粉を入れます。ボウルに入れたわらび粉に、水を少しずつ加えながら粉のかたまりを指で軽く握って潰します。ダマが残らないようにサラサラになるまで潰しましょう。指で潰してもダマが残っている場合があるので、ざるでこしながら鍋に入れ、火をかける前にグラニュー糖を加えます。次に、鍋を中火にかけて、木べらでかき混ぜながら煮ます。このとき、底から返すように混ぜてしまうと、うまく粘り気が出ないので、鍋肌(鍋の内側の側面)に沿って混ぜるのがポイントです。生地が半透明になり、艶が出て強い粘り気が出てきたら、きな粉を敷いたバットに移してきな粉をまぶし、一口大に丸めます。一口大に丸めて粗熱がとれたら黒蜜をかけて完成です。
食べる直前に冷蔵庫で冷やしても美味しく食べることができますが、上述したように本わらび粉で作るわらび餅は冷やしすぎると固くなってしまうので冷やしすぎないように注意しましょう。
わらびもち粉…80g
水…400ml
砂糖…40g
きなこ…適量
黒蜜…適量
まず、鍋にわらびもち粉を入れます。鍋にわらびもち粉を入れたら、水を少しずつ加えながら砂糖を入れてダマにならないようによく混ぜます。混ざったら、鍋を強火にかけて木べらで混ぜながら生地が透き通ってくるまでよく煮ます。火の通りが不十分だったり焦げてしまうと透き通ってこないので、焦げないように注意しながらしっかりと混ぜましょう。生地が透き通ってきたら、火を弱めて透明になるまで練りあげます透明になったら、内側を濡らしたバットの上に取り出し、平にしてそのまま粗熱をとります。粗熱がとれたら、バットごと冷水にさらすか冷蔵庫に入れて冷まします。生地がよく冷えたら適当な大きさに切り分けて、きな粉や黒蜜をかけて完成です。
Most Popular
中が茶色いじゃがいもは食べられる?空洞や輪になってる場合は?
食品事典
なすを切ったら種だらけ...食べられる?原因と対処法を解説
食品事典
なすの中身がスカスカ...食べられる?原因と対処法を解説
食品事典
カビが生えた人参は食べられる?見分け方は?原因と対処法も解説
食品事典
小麦粉の捨て方。爆発注意?燃えるゴミでよい?再利用の方法とは
食品事典
麻婆豆腐が辛い時に甘くする方法。おすすめの調味料や食品は?
食品事典
ハンバーグが固くなる原因と柔らかく作るコツを徹底解説
食品事典
大根は中身が茶色に変色しても食べられる?原因と対処法を解説
食品事典
トマトの中が黒い!腐ってる?食べられる?原因と対処法を解説
食品事典
エリンギが水っぽい...食べられる?濡れてる原因と対処法は?
食品事典