1. Fily
  2. Food
  3. Encyclopedia
  4. きゅうりのアク抜きで真ん中を切ってこすり合わせるのがNGの理由とは?

きゅうりのアク抜きで真ん中を切ってこすり合わせるのがNGの理由とは?

公開日

更新日

きゅうりのアク抜きで真ん中を切ってこすり合わせるのがNGの理由とは?

きゅうりのアクを抜く際、ヘタ(端)を切ってこすり合わせる方法がありますが、真ん中でカットしてこすり合わせてもアクを取り除くことはできるのでしょうか。本記事では、きゅうりのアクを抜く方法について詳しく解説しています。

きゅうりのアク抜きについて

きゅうりに含まれている苦味成分は、ギ酸とククルビタシン(正式名称はククルビタシンC)です。ギ酸は、きゅうりに含まれている有機酸の一種です。ククルビタシンはウリ科の植物がもつ特有の苦味成分で、ステロイドの一種です。これらの成分がいわゆる「アク」と呼ばれるものです。 きゅうりのアク抜きは、ヘタを切り落として切り口同士をこすり合わせる処理を指すことが多いです。このアク抜きによって取り除くことができる成分は主にギ酸です。ギ酸はきゅうりの維管束という管の中に含まれており、維管束が切断されることで周辺の細胞からの圧力によって維管束のギ酸が滲出します。切断するだけではギ酸を含む液体が固化してしまうため十分にギ酸を取り除くことができませんが、切り口同士をこすり合わせることで内容液が固化させることなく、ギ酸を取り除くことができます。ギ酸は維管束の中でもヘタ側の先端に多く含まれているといわれています。 一方で、ククルビタシンは維管束にとどまらず全体に散らばっています。こすり合わせること自体で取り除くことは難しいのですが、ククルビタシンはきゅうりの先端(ヘタの部分)に多く含まれていることが研究結果で分かっているため、先端を切り落とすことでククルビタシンも取り除くことができます。

きゅうりのアク抜きは真ん中でやってもいいの?

きゅうりのアクを抜く時、真ん中をカットしてこすり合わせることでもアクは取れるのでしょうか。アク抜きのポイントを解説します。

真ん中でもギ酸は取れるが端に多い

前述した通り、こすり合わせによって取れるのは維管束に多く含まれるギ酸です。

きゅうりを真ん中で切ってこすり合わせることでもアクを抜くこと自体は可能ですが、苦味成分の一つであるギ酸は真ん中よりも端(ヘタ側)の方に多く含まれています。

そのため、ヘタ側の先端でこすり合わせる方がより多くのギ酸が取れます。

さらに、こすり合わせるために先端をカットすることになるので、これによっても維管束のヘタ側の先端に集中しているギ酸を取り除くことが可能です。

ある研究報告によると、きゅうりを3等分にカットした際、上部(ヘタの方)に一番多くギ酸を含むことが明らかになりました。きゅうりの果皮に含まれるギ酸濃度は上部で60.2mg/L、中部で33.4mg/L、下部で54.7mg/L、きゅうりの維管束に含まれるギ酸濃度は上部で2.13mg/L、中部で0.35mg/L、下部で1.25mg/Lであることが報告されました。

出典:キュウリに含まれるギ酸の部位別分析と味覚特性(日本栄養・食糧学会)

ククルビタシンはこすり合わせではあまり取れない

ククルビタシンは維管束にとどまらず全体に散らばっています。上記でご紹介したこすり合わせで取れる主なアクはギ酸で、ククルビタシンはあまり取れません。

しかし、ククルビタシンはきゅうりの先端(ヘタの部分)に多く含まれていることが研究結果で分かっているため、先端を切り落とすことでククルビタシンも取り除くことが可能になります。

ある研究によると、ヘタ(茎側の端)のククルビタシンの濃度が7.2mg/Lに対し、中央部分や花側の端は0.1mg/Lであることが明らかになりました。

ククルビタシンを効率よく取り除くためにも、きゅうりは真ん中ではなく端を切ってこすり合わせる方がベターです。

出典:Cucurbitacin C-Bitter Principle in Cucumber Plants(JARQ)

きゅうりのアク抜きの方法

きゅうりのアク抜きの基本的なやり方をご紹介します。

水洗いする

きゅうりを水洗いする

まずはきゅうりを水洗いします。一見きれいに見えても、汚れや農薬が付いている可能性があるので、流水で洗い流しましょう。

農薬が気になる方は野菜用洗剤がおすすめ

農薬や雑菌が気になる方におすすめなのが、野菜や果物専用の洗剤で洗うことです。特におすすめなのがホッキ貝です。ホッキ貝は他の貝殻と比較しても除菌効果が高いことが研究で立証されています。

ホタテ貝やホッキ貝のパウダーを溶かした水にブロッコリーを5分~10分漬けておくと水溶液が次第に濁ってきたり薬品が浮いてきたりします。目にみえて残留農薬が落ちていることがわかるので流水で洗い流したりするよりも安心できます。

ヘタをカットする

きゅうりのヘタをカットする

水洗いしたきゅうりのヘタをカットします。カットする側は、茎に繋がっていた部分です(花が付いている側はお尻側です)。
先端から1.5cm程度を切り落とします。切り落とした側も使用するので、捨てないようにしましょう。

30秒こすり合わせる

きゅうりのヘタを切り落とし切り口同士をこすり合わせてアクを取る

ヘタを切り落としたら、切り落とした側の切り口と身の切り口をクルクルとこすり合わせます。こすり合わせる時間の目安は20〜30秒程度です。

ククルビタシンを多く含むと言われるヘタをカットすることで、ククルビタシンを取り除くことができます。また、切り口同士をこすりあわせることで維管束が刺激され、ギ酸を含む液体が出てきます。

水で流す

白いアクを流水で洗い流す

こすり合わせて白い液体が出てきたら、水で洗い流してアク抜き完了です。

出典:キュウリの「ヘタ」と「実」の切り口をこすりあわせることにより渋味を低減できる(農研機構)

きゅうりの他のアク抜き方法

きゅうりをこすり合わせる以外でアクを抜く方法をご紹介します。

板ずり

きゅうりを板ずりしてアクを抜く

板ずりとは、食材に塩をまぶしてまな板の上で転がす下処理のことを指します。

きゅうりを板ずりすることで、表面のイボ(トゲ)が取れて口当たりが良くなったり、塩の殺菌効果により雑菌を取り除いたり、浸透圧によって水分が抜けやすくなる(=味が染み込みやすくなる、食感がしんなりする)などの効果が期待できます。

板ずりすることできゅうりの皮の下にある維管束が刺激され、水分とともにギ酸が滲出します。ヘタを切ってこすり合わせる方法と比べると、取り除かれるギ酸の量は減ってしまいますが、苦味成分を抜くだけでなく上述したような効果が板ずりのみで期待できるのでおすすめです。

ククルビタシンはヘタ側に集中しているので、カットすることでククルビタシンを取り除くことも可能です。

きゅうりの板ずりに関しては、下記の記事でも詳しく解説しています。

塩もみ

きゅうりを塩もみしてアクを抜く

きゅうりを塩もみすることでもアクを取り除くことが可能です。

塩もみをすることで、浸透圧によりきゅうりの水分が抜け、一緒に苦味成分であるククルビタシンやギ酸も取り除くことが可能です。また、水分が抜けることで味が染み込みやすくなったり、食感がしんなりする効果も期待できます。

きゅうりを塩もみする際は、料理に合わせてきゅうりをカットし(写真は小口切り)、きゅうり1本に対して塩小さじ1/4をまぶして軽くもみ、5分ほどそのまま放置します。

アクや汚れ、余分な塩を取り除くために、塩もみ後はさっと水洗いするのがおすすめです。水洗いをしたら手でギュッと絞って水分を抜きます。

きゅうりの塩もみに関しては、下記の記事でも詳しく解説しています。

水につけるのはNG

きゅうりのアクを取り除くために水にさらす方法がありますが、これはあまりおすすめしません。

アクとなるククルビタシンやギ酸はいずれも水溶性なので、水にさらすことで取り除くこと自体はできるのですが、同時に水溶性の栄養素であるビタミンCやカリウムなどの体に良い成分も抜けてしまいます。また、ただでさえ水分量が多いきゅうりがさらに水分を含むことにより、食感が悪くなる可能性もあります。

したがって、アクを抜くためには水にさらすのではなく、上記でご紹介したいずれかの方法を実践することを推奨します。