きしめんは愛知県・名古屋の名物料理の一つです。麺が平らなのが特徴で、名古屋では赤つゆと白つゆの2種類のつゆがあります。今回はきしめんに使用する定番の具材や、定番ではないが一緒に食べるのにおすすめの変わり種具材をご紹介します。また、きしめんのアレンジレシピもあわせてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
きしめんは愛知県・名古屋の名物として知られている平打ちのうどんです。漢字では棊子麺・碁子麺と表記します。また、きしめんはひもかわ、ひもかわうどんと呼ぶこともあります。
うどんよりも麺が平らで味が染み込みやすいため、しっかりとした味付けが好まれている愛知県で主に浸透したのではないかと考えられています。
伝統的なきしめんのつゆは、ムロアジとたまり醤油で味付けをします。ムロアジはカツオなどよりも濃いダシがとれるため、しっかりとした味のつゆを作ることができます。名古屋ではたまり醤油ベースの「赤つゆ」と、白醤油ベースの「白つゆ」の2種類のつゆがあるようです。
出典:うちの郷土料理「きしめん」(農林水産省)
きしめんの正確な語源や由来ははっきりしていませんが、麺を指す言葉や麺作りの工程に由来すると考えられています。下記が「きしめん」の語源の説です。
尾張藩主にキジ肉を入れて提供した「きじめん」
紀州(和歌山県)の人が名古屋の人に教えた「紀州麺」
麺を作る際に生地を棒で薄く延ばす作業「きしめる」
中国のお菓子「碁石麺(きしめん)」
「碁石麺(きしめん)」は、もともとは中国でお菓子として食べられていたものです。小麦粉を練って平たく伸ばし、竹筒などで棊子(きし)(=碁石)のように丸くくり抜いて茹で、きなこをかけて食べていました。日本には鎌倉・室町頃に僧侶により伝わってきました。この説が有力である場合、お菓子であった碁石麺(きしめん)がなぜ平打ちのうどん麺を指すようになったのかは未だわかっていません。
きしめんとうどん、そしてほうとうの違いは原材料や製造方法、つゆにあります。
きしめんとうどんの原材料は塩、小麦粉、水、ほうとうの原材料は小麦粉と水のみです。きしめんとうどんは生地を寝かせますが、ほうとうは出来上がった生地をすぐに伸ばして加工します。うどんは厚さ3mm、幅3mm程度に、きしめんは厚さ2mm未満、幅4.5mm以上(大体5〜8mm)になるようにカットします。ほうとうの麺はきしめんの形状に近く、幅1.5〜3mm、幅8mm〜1cmほどにカットすることが多いです。
きしめんとうどんはダシや醤油でつくるつゆで食べ、ほうとうは味噌仕立てのつゆで煮込んで食べるのが基本です。ほうとうは原材料に塩を使用せず生地を寝かせないため、汁にとろみがつくのも特徴です。
また、きしめんに煮た料理に群馬県の郷土料理「おきりこみ(おっきりこみ)」があります。おきりこみ(おっきりこみ)で使用している麺はほうとうと同様に小麦粉と水のみで作られます。具材にはにんじんや大根、しいたけ、ねぎなど家庭にある野菜を使用します。
出典:
・うちの郷土料理「ほうとう」(農林水産省)
・うちの郷土料理「おきりこみ/おっきりこみ」(農林水産省)
ここではきしめんに入っている定番の具材をご紹介します。それぞれの具材の下ごしらえ方法なども合わせて解説します。
きしめんの上にはほうれん草をのせるのが定番です。ほうれん草の鮮やかな緑色で彩りがよくなります。
ほうれん草にはアクの原因であるシュウ酸が含まれています。シュウ酸によりえぐみや苦味を感じやすいので、きしめんの具材として使用する前にアク抜きをする必要があります。ほうれん草のアク抜きの方法についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
アク抜きをしたら4〜5cm程度の食べやすい大きさにカットし、水けを絞ってきしめんの上にのせます。
うどんにおあげをのせるように、きしめんのトッピングにも油揚げを用います。
油揚げには予め味をつけておきましょう。油抜きをした油揚げを醤油、酒、甘味料(メープルシロップやアガベシロップなど)、和風だし、水を加えた鍋で煮て作ります。大きい油揚げは食べやすい大きさに切ってから煮るとよいです。
きしめんのトッピングにはかまぼこを用います。かまぼこの代わりになるとをのせることもあります。きしめんが名物の名古屋では、たまり醤油ベースの色が濃いつゆに映えるように赤いかまぼこ(名古屋かまぼこともいう)がよく使われます。また、きしめんが提供される飲食店では、店名がかまぼこに印字されていることもあります。
かまぼこは加熱処理されているので、食べやすい大きさにカットしてそのままきしめんの上にのせて食べることができます。
うどんの薬味としてネギをトッピングするように、きしめんにもネギを加えて食べるのが定番です。ネギの風味が加わって美味しく食べることができます。
ネギには様々な種類がありますが、長ねぎを使用することが多いです。青ネギ(万能ねぎ)でも◎。小口切りにカットして他の具材と一緒に盛り付けます。
きしめんには花かつお(かつお節)をトッピングします。うどんではなかなか見ない具材ですよね。かつお節を加えることで、より風味が増します。
他の具材をすべて盛り付け、最後に花かつお(かつお節)を上からふりかけて完成となります。量はお好みでいいですが、たっぷりのせるのが美味しいですよ。
次に、定番ではありませんがきしめんに入れると美味しい変わり種の具材をご紹介します。定番の具材がない時の代用品としてもおすすめです。
定番の具材にほうれん草がありましたが、小松菜を代用品としてのせることもあります。小松菜はほうれん草と比べるとシュウ酸の含有量が少ないため、アク抜きせずにそのまま食べることも可能です。
小松菜をきしめんのトッピングにする場合は、水洗いして食べやすい大きさにカットします。生のままのせてもOKですし、フライパンや電子レンジで加熱してからのせて食べても美味しいです。
小松菜のアクに関してはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
うどんと同様に、きしめんにわかめを加えても美味しく食べることができます。
生わかめは一度湯通しして水けを絞ります。乾燥わかめを使用する場合は、たっぷりの水またはお湯で戻して水けを絞ります。
わかめをトッピングとして盛り付けるのではなく、きしめんと一緒に煮てもOKです。
意外かもしれませんが、たけのこをきしめんに入れて食べても美味しいですよ。シャキシャキとした食感がクセになります。特にたけのこが旬を迎える春にいただくたけのこは格別です。旬以外の時期は、水煮されているカットたけのこを加えると◎。
生のたけのこにはアクやえぐみの原因となるシュウ酸やホモゲンチジン酸が含まれています。そのため、食べる前にはアク抜きをする必要があります。アク抜きには米ぬかと赤唐辛子を使用するのがおすすめです。米ぬかがない場合は米の研ぎ汁やお米で代用可能です。たけのこの下ごしらえの方法はこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
アク抜きしたたけのこを食べやすい大きさにカットして盛り付けます。
天ぷらやかき揚げはうどんのトッピングとすることが多いですが、同じようにきしめんとの相性も良いです。サクサクとした衣につゆが染み込み、美味しく食べることができます。
天ぷらやかき揚げの具材はお好みのもので結構ですが、ちくわやなす、かぼちゃ、えび、海苔などがおすすめです。
天ぷらにするのにおすすめの具材はこちらで、かき揚げにおすすめの具材はこちらの記事でご紹介していますのでぜひ参考にしてください。
きしめんのトッピングに海苔を加えるのもおすすめです。磯の香りがアクセントとなり、だしベースのつゆとの相性も◎。
海苔をトッピングする際は、すべての具材をのせた後に、1枚の状態でのせたり、器の上で手で細かくして散らします。刻み海苔を使用してもOKです。
海苔を火で炙って焼き海苔にしてからのせても美味しいですよ。
きしめんに鶏肉を加えると、鶏肉から出る旨味や甘みが加わって◎。一味違うきしめんを楽しむことができます。
鶏肉には様々な部位がありますが、もも肉はジューシーに、むね肉やささみはさっぱりとした味わいになります。きしめんのつゆで鶏肉を煮るか、つゆとは別に甘辛く煮た鶏肉をトッピングします。
肉うどんがあるように、豚肉を加えたきしめんも美味しくいただけます。
きしめんにのせるのにおすすめなのは薄切りの豚肉です。豚肉をしょうゆやみりん、砂糖、酒で味をつけ、きしめんの上にトッピングします。また、薄切り以外にも豚の角煮でも◎。例えば、豚の角煮や紅生姜、ねぎをトッピングすれば沖縄のソーキそば風のきしめんを作ることができます。
これもかなり意外かもしれませんが、きしめんとツナの組み合わせもおすすめです。特に、冷やしきしめんにツナをのせると、さっぱりとした味わいに仕上がります。
シーチキン(ツナ)の缶詰は油を多く含むのでキッチンペーパーに取り出し油を絞ると◎。ツナ自体にしっかりと味がついているので、調味料をプラスする必要はありません。
きしめんにかいわれ大根をのせて食べるのもおすすめです。シャキシャキとした歯ごたえが美味しいですよね。
かいわれ大根は生で食べられる野菜なので、水洗いして水けを拭き取ったら麺の上に盛り付けます。特に冷やしきしめんとの相性が良く、さっぱりとした味わいを楽しむことができます。
シャキシャキとした野菜といえばもやしですよね。もやしは安価なわりにボリュームがあるので、きしめんに加えることでより満足感が増します。
もやしのひげ根を取る方が舌触りがよくなりますが、ひげ根をつけたままでも食べることができます。もやしは生食を避けるべき食材なので、さっと加熱して火を通してからトッピングしましょう。
こちらも意外かもしれませんが、きしめんに絹さやを加えても美味しいですよ。色味を加えるといった意味でも絹さやはおすすめです。
絹さやには筋があるので取り除き、さっと塩ゆでをしてから盛り付けます。絹さやの筋取りや茹で方などの下ごしらえの方法はこちらの記事で解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
きしめんに卵を加えるとよりまろやかな味わいに仕上がります。
かきたまうどんのように、卵を溶いて鍋に加えてもいいですし、茹で卵やだし巻き卵を作ってのせて食べても美味しいです。
白醤油ベースの「白つゆ」を使ったきしめんには、だし巻き卵を具材として入れることが多いようです。
きしめんにかぼちゃを加えれば、ほうとう風に仕上がりますよ。
かぼちゃはそのままでは硬いので、皮を剥いて食べやすい大きさに切って茹でてからのせます。かぼちゃ以外にはさつまいもやじゃがいもなどのイモ類を入れるのもおすすめです。
コリコリとした食感が特徴的なきくらげをきしめんに入れるのもおすすめです。つるつるとした麺との相性は◎。八宝菜ときしめんが合わさった八宝きしめんに使用することが多いようです。
乾燥きくらげを使う場合は水で戻してから使用します。大きいきくらげは食べやすい大きさにカットし、醤油などで味をつけておくのがおすすめです。
きしめんにきのこ類を加えても美味しく仕上がりますよ。しいたけやえのき、しめじなどきのこなら何でも合います。
きのこ類も予めつゆで煮るなどして味をつけておくのがおすすめです。しいたけの軸も食べられるので、捨てずに食べやすい薄さに切って一緒に煮込みましょう。えのきやしめじは石づきをカットしてほぐして使用します。
とろろうどんと同様に、きしめんにとろろを加えて食べるのもおすすめです。とろとろでふわっとした口当たりがきしめん全体をまろやかな味わいに仕上げてくれます。
とろろに使用するのは長芋または山芋どちらでもOKです。ひげ根を切り落としたあとに持ち手以外の部分の皮をピーラーで剥き、円を描くように動かしてすりおろします。そのままでもOKですが、だし汁を加えるとより本格的な味わいになります。
最後に、きしめんのアレンジレシピをご紹介します。うどんにも様々なレシピがあるように、きしめんも味を変えて楽しむことができます。
きしめんをほうとう風にアレンジする味噌きしめんはいかがでしょうか。冒頭でご紹介したように、きしめんとほうとうは麺の形状が似ているので、ほうとう麺の代用としてきしめんを使用することができます。
味噌きしめんにおすすめの具材はかぼちゃや大根、人参、ねぎ、しめじなどです。具材をめんつゆで煮たら最後に味噌を溶き入れます。
カレーうどんと同じように、きしめんをカレー味にして食べるのも美味しいですよ。うどんよりも麺が平らなので、濃厚なカレースープと麺がよく絡みます。
カレーきしめんにおすすめの具材は鶏もも肉、玉ねぎ、卵(ゆで卵)などです。食べやすい大きさにカットした鶏もも肉と玉ねぎを炒め、だしを加えて煮たらカレーのルウまたはカレー粉など溶かしてさらに煮込みます。器に盛り付けたら最後にゆで卵を添えます。カレー粉を使用する場合はとろみがつきにくいので、水溶き片栗粉を入れるといいです。
力(ちから)きしめんとは、きしめんの中に餅を入れたきしめんです。うどんにも力うどんがあるように、きしめんに餅を加えても美味しく食べることができます。
力きしめんを作る際は、具材をシンプルにするのがおすすめです。トースターなどで焼いた餅をつゆで煮て、ねぎやわかめ、ちくわ、かまぼこなどをトッピングして完成です。
きしめんを洋風レシピにアレンジするのはいかがでしょうか。きしめんと明太子の相性はバツグンですよ。
明太クリームは、豆乳、バター、めんつゆを鍋に入れ火にかけ、ほぐした明太子を加えて混ぜて作ります。別の鍋で茹でたきしめんと明太クリーム絡めお皿に盛り、トッピングとして刻んだ海苔やネギ、黒胡椒などを添えて完成です。
きしめんの洋風レシピの2つ目はカルボナーラ風のきしめんです。カルボナーラはパスタ麺を使用するのが基本ですが、きしめんで代用して作ることも可能です。パスタとは違う食感を楽しむことができます。
カルボナーラきしめんを作る際におすすめの具材はベーコンやしめじ、玉ねぎなどです。トッピングに生の卵黄を加えるとよりまろやかな味わいに仕上がります。
トマトを使ったきしめんレシピもおすすめです。さっぱりとした味わいを楽しむことができます。ミートソース風にしても美味しいですし、トマトスープベースのつゆにして食べるのも◎。
トマトきしめんにおすすめの具材には、鶏肉や玉ねぎ、なす、パプリカなどです。夏は冷製トマトスープでいただくのもいいかもしれません。
冷たいうどんのように、きしめんも冷製にして食べるのも美味しいですよ。名古屋では冷製のきしめんを「ころきしめん」や「きしめんころ」、「ころきし」、「きしころ」と呼びます。食欲が低下しやすい夏でも美味しく食べられるのでおすすめです。
冷製きしめんの具材は温かいきしめんと同じような具材をのせてもいいですし、ズッキーニやパプリカ、オクラ、なす、トマト、とうもろこしなどの夏野菜や、ツナ、生姜などもおすすめです。仕上げにごま油をかけるとごまの風味が加わってさらに美味しい味わいに仕上がります。
きしめんを焼きそば風にアレンジしても美味しくいただけます。
焼きそばを作る時と同じように、キャベツや人参、玉ねぎ、もやし、豚肉などがおすすめです。最後に紅生姜をトッピングするのも◎。
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