ほうれん草を調理するときはアク抜きが必要です。なぜアク抜きが必要なのかご存知でしょうか。本記事ではほうれん草にアク抜きが必要な理由やアク抜きの方法を詳しく解説します。
ほうれん草にアクが必要な理由はシュウ酸が含まれているためです。シュウ酸は栄養素というよりも老廃物で、えぐみや苦味を感じさせ料理の味を損ねるいわゆるアク(灰汁)となる成分です。たけのこや里芋などにも含まれていることで知られています。
シュウ酸のデメリットは苦味やエグミを感じさせて料理の味を損ねるだけではありません。シュウ酸は大量に摂取することで結石を作る原因になると言われています。
シュウ酸は水溶性であるため、茹でたり水につけたりすることで取り除くことができます。
アク抜きをせずに食べると、シュウ酸が歯のカルシウムと結合し、歯が微妙にキシむような感触になって後味が悪くなってしまうというデメリットもあります。
ほうれん草をより美味しく食べるためには、アク抜きは必要な工程であると言えます。
ほうれん草に含まれるシュウ酸が人体に影響を及ぼす量はだいたい1kg(約5束)と言われています。そのため、アク抜きをせずに食べてしまったとしても少量であれば神経質になる必要はないと言えます。
しかし、上述したようにシュウ酸が含まれているのはほうれん草だけではありません。普段口にする機会が多い紅茶やコーヒー、緑茶などにも含まれています。知らず知らずのうちに多く摂取してしまっていることもあるので、ほうれん草を食べる際は料理の味を良くするという点においても尿路結石などの人体に及ぼす影響を少なくするという点においてもアク抜きはするようにしましょう。
アク抜きをすることでシュウ酸を減らせるというメリットがある一方で、ビタミンCやビタミンB1、B2といったその他の水溶性の栄養素も流出してしまうというデメリットがあります。
栄養素が流出してしまうのは残念ですが、茹で時間を短くすることでシュウ酸は落としつつも栄養素の流出を最小限に抑えることはできます。
ほうれん草には大別して東洋種と西洋種、交雑種の3種類あります。
東洋種の見た目は葉先がとんがって深い切れ込みがあり葉肉が薄いです。シュウ酸の含有量が少ないため苦味やエグみを感じにくいという特徴があります。アク抜きをせずにビタミンなどの栄養素もしっかりと摂取したいという方は東洋種を選ぶと良いでしょう。
東洋種は日照時間が長いと花茎が伸びて(とう立ち)食用に適する時期をすぎてしまうのが早くなってしまうため、春撒きには適さず秋〜冬に栽培されます。
西洋種の見た目は葉が大きく丸みがあり葉肉が厚いです。シュウ酸の含有量が多いため苦味やエグミを感じやすく調理をするときはアク抜きが必要です。東洋種とは反対に、春播きして晩春〜初夏にかけて収穫されます。
交雑種は一代雑種と呼ばれ、東洋種と西洋種の間です。現在市場でよく出回っているほうれん草の多くは交雑種で、アクが強いです。
「サラダほうれん草」とは、生食できるように品種改良されたほうれん草です。
一般的なほうれん草とは異なりシュウ酸の含有量が少ないため、アク抜きをしなくても苦味やえぐみを感じにくく食べやすく、その名の通りそのままサラダなどにして食べることが可能です。
ただし、シュウ酸の含有量が少なくなるよう品種改良されているだけでシュウ酸が全く含まれていないというわけではありませんので大量摂取は避けた方が良いです。
ほうれん草は上述したようにシュウ酸が含まれているため、炒めものであってもアク抜きをするのが理想的ではありますが、アク抜きをしてから炒めるとしんなりとした食感になってしまうためアク抜きをせずに炒める方も多くいます。
しかし、シュウ酸は加熱しただけでは分解されないためアク抜きをせずに炒めるとエグみや苦味を感じやすいです。そのため、小さなお子様などがたべるときはアク抜きをした方が食べやすいでしょう。
シュウ酸は減らしたいけれど食感が損なわれるのは防ぎたい場合は、水にさらしてアク抜きをすると良いでしょう。それでは詳しいアク抜きの方法を解説していきます。
まず、ほうれん草の根に十字の切り込みを入れます。
ほうれん草は根の部分に最も砂や土がついています。そのため、根に十字の切り込みを入れて洗うことで根についている汚れを綺麗に落とすことができます。また、根は葉と比べて火が通りにくいですが、切り込みを入れておくことで火の通りが早くなるメリットもあります。
ひげ根がついている場合は、切り落としておきましょう。
根に切り込みを入れたら、ボウルに水をためてほうれん草を洗っていきます。
根元の汚れは落としにくいため、水に浸けながら根元を開いて間に入り込んでいる土や砂を綺麗に落としましょう。根元の汚れが落とせたら、茎と葉を流水でふり洗いして汚れを落とします。
ほうれん草の汚れを落としたら、鍋にたっぷりの湯を沸かして塩を加えます。塩の量の目安はお湯1リットルにつき小さじ1です。
じゃがいもなどの固い野菜を下茹でするときは水から茹でますが、ほうれん草などの葉物野菜は火の通りが早いため沸騰したお湯から茹でて加熱時間を短くすることで、栄養素の流出を最小限に抑えることができる他、歯ごたえを残すことができます。
塩を入れる理由は、変色を防ぐためです。ほうれん草の鮮やかな緑色は「クロロフィル」と呼ばれる色素によるものです。クロロフィルは熱に弱い成分であるため、茹でることで変色してしまうことがありますが、塩を加えることで色素が安定するため変色を防ぐことができます。
お湯が沸いたら、数株手にとり葉の部分をもって茎の部分を鍋に入れそのまま30秒ほど茹でます。いっぺんにたくさんの量を入れてしまうとお湯の温度が下がり、再沸騰するまでに時間がかかるのでムラができてしまうことがあります。あまりいっぺんにたくさんの量を茹ですぎないようにしましょう。
ほうれん草は葉と茎で火の通りが異なるため、はじめに茎を茹でておくことで火の通りを均一にすることができます。
茎を30秒ほど茹でたら、全体をお湯に入れて葉にも火を通していきます。茹で時間の目安は20秒〜30秒ほどで、葉が鮮やかな緑色になったらOKです。上述したように、長く茹ですぎてしまうとビタミン類などの水溶性の栄養素も流出してしまうため注意しましょう。
ほうれん草は茹でているときに浮いてきてしまうので、菜箸やトングなどで抑えて湯に沈めながら茹でると加熱ムラを防ぐことができます。
ほうれん草を茹でたら、ザルなどにあげてお湯を捨てましょう。お湯を捨てたらボウルに入れた冷水にさらします。冷水にさらすことでさらにしっかりとシュウ酸を落とすことができますし、変色を防ぎきれいな色を保つことができます。
冷水にさらしたら、ほうれん草の根元を上にしても持ち、上から下へ握る位置をずらしながら水けを絞ります。水けを絞らないと料理が水っぽくなってしまいます。
食べやすい大きさ(4cm〜5cm)に切ってからさらに水けを絞ると、調味料が馴染みやすくなります。
下茹でせずに、簡単に水につけるだけの方法もあります。シュウ酸は上述したように水溶性なので水につけるだけでもある程度シュウ酸を取り除くことができます。近年販売されているほうれん草は、アクが弱いものも多いので水につけるだけでも苦味やエグみを感じにくくなります。
炒めものにするときなど食感を残したい場合は、こちらの方法がおすすめです。
水につけてアク抜きする場合は、一本ずつバラバラにして洗うと良いです。一本ずつバラバラにすることで根元についている汚れもしっかりと洗い流すことができます。
よりしっかりとシュウ酸を取り除きたい場合は、洗った後に4cm〜5cm幅にカットすると良いです。カットすることで、水に触れる面積が広がるためシュウ酸が溶け出しやすくなります。また、切り口から水分を吸収することによりシャキシャキとした食感になるというメリットもあります。しかし、切り口から水溶性の成分も流出しやすいというデメリットがあります。
ほうれん草をバラバラにして綺麗に洗ったら、水を入れたボウルに下半分をつけます。つける時間は10分ほどです。水につける時間が長いと水溶性の栄養素も流出してしまいやすいので長時間つけすぎないようにしましょう。
近年販売されているほうれん草は、アクが弱いものが多いためレンジを使ってアク抜きをしても苦味やえぐみを感じにくくなります。茹でたり水にさらすよりも水溶性の栄養素を残すことができるため、栄養価を下げたくない方や食感を残したい方はレンジを使うと良いでしょう。
レンジを使ってアク抜きをする場合も、しっかりとほうれん草を洗います。
ほうれん草を綺麗に洗ったら、根元を揃えて丸ごとラップに包んでレンジに入れ加熱します。加熱時間はレンジのワット数にもよりますが600Wのレンジの場合、3分程です。
ラップに包む量は200gほどに抑えると良いです。あまり量が多いと加熱ムラができてしまうので注意しましょう。
ほうれん草を加熱したら菜箸やトングを使って取り出し、ラップに包んだままの状態で冷水にさらします。ある程度粗熱がとれたら、ラップを外してさらに冷水にさらします。
冷水にさらすことで、ある程度シュウ酸を落とすことができます。長い時間水につけてしまうと水溶性の栄養素も流出してしまうので注意してください。
シュウ酸はカルシウムと一緒に摂取すると良いと言われています。
シュウ酸を摂取すると腎臓でカルシウムと結合し、結晶を作ります。これがシュウ酸を摂取すると結石を作る原因となると言われている理由です。そのため、以前はカルシウムと一緒に摂取することは避けるべきとされていましたが、最近ではカルシウムを摂取することで腸がシュウ酸を吸収する前にシュウ酸をカルシウムが結合するので、シュウ酸の吸収を抑えることができると言われています。
例えば、ほうれん草の煮浸しなどに鰹節をかけることが多いですよね。鰹節にはカルシウムが豊富に含まれているためシュウ酸の吸収を抑えるためにはとても理にかなった組み合わせであると言えます。
カルシウムを豊富に含む食品はたくさんありますが、ほうれん草と一緒に食べる組み合わせとしておすすめなのが、
牛乳
チーズ
にぼし
鰹節
などです。
例えばクリームシチューやキッシュなど乳製品を使う料理も組み合わせが良いと言えますし、煮干しや鰹節を使った和風の味付けとも相性が良いです。
食べる前だけではなく保存するときもほうれん草はアク抜きをして保存するのがおすすめです。茹でてアク抜きをしてから冷凍することで鮮やかな緑色をキープすることができますし、すでに火が通っているので調理時間を時短することができます。
しっかりと水洗いしたほうれん草を、かために塩ゆで(水1リットルに対して小さじ1が目安)します。茹ですぎると、解凍後の食感が柔らかくなりすぎてしまうので、さっと茹でる程度でOKです。
茹でたほうれん草を冷水につけ、水けを絞って食べやすい大きさにカットします。小分けにしラップで包み、冷凍用保存袋にまとめて入れ冷凍庫へ。
茹でてから冷凍したほうれん草は、料理に応じて凍ったまま使ったり、自然解凍して使用します。スープや味噌汁などの汁物、炒め物などには凍ったままの状態で入れてOKです。おひたしを作る場合は、前日に冷凍庫に移して自然解凍してから使用しましょう。急いで使用する際は流水解凍を行いましょう。
ほうれん草の正しい保存方法はこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
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