ほうれん草はもともと苦味のある野菜です。本記事ではほうれん草が苦い原因や苦いほうれん草の見分け方などを詳しく解説します。
ほうれん草の苦味は、シュウ酸によるものです。シュウ酸は栄養素というよりも老廃物で、えぐみや苦味を感じさせ料理の味を損ねるいわゆるアク(灰汁)となる成分です。たけのこや里芋などにも含まれていることで知られています。
シュウ酸が多くなってしまう理由としては、育ちすぎがあげられます。育ちすぎてしまう原因の多くは肥料過多です。ほうれん草を栽培するときは、窒素やリン酸、カリが不足し生育不良になってしまわないように肥料が使われます。肥料を与えることで生育不良になることを防げますが、肥料を与えすぎてしまうとほうれん草が育ちすぎてシュウ酸の含有量も増えてしまいます。
上述したようにほうれん草を栽培するときは、窒素やリン酸、カリが不足し生育不良になってしまわないように肥料が使われます。
特に窒素は、ほうれん草にかぎらず野菜類などの作物の成長にとってかかせないもので、窒素を含む肥料は欠かせません。しかし、窒素肥料を多く与えすぎてしまった場合、吸収した肥料を消費しきれず硝酸態窒素となりほうれん草の中に残留します。この硝酸態窒素も苦味やエグみの原因となります。
窒素肥料が多すぎることによって苦味が強くなってしまう現象はトマトなどほうれん草以外の野菜にも起こります。
出典:硝酸態窒素のえぐみって?(日本植物生理学会)
ほうれん草の苦味の主な原因物質はシュウ酸といわれていますが、ほうれん草にはシュウ酸以外にも苦味を感じさせるポリフェノールが含まれています。
ポリフェノールは、ほとんどの植物に存在している成分です。抗酸化作用が強く、活性酸素など有害物質を無害な物質に変える作用がある一方で、苦味を感じさせます。例えばぶどうなどを皮ごと食べたときに苦味や渋みを感じるのは皮にポリフェノールが多く含まれているためです。
ほうれん草の苦味は上述したようにシュウ酸やポリフェノールによるものであり、腐敗しているわけではありません。
ただし、腐敗しているほうれん草も強い苦味を感じることがあります。万が一、舌がしびれるような強い苦味を感じる場合は腐敗している可能性が高いので飲み込まずに破棄しましょう。ほうれん草に含まれるシュウ酸による苦味はしびれを感じたり食べられないほど強いものではありません。
例えば大根は、品種によって辛味成分であるイソシアネートの含有量が異なるため、辛味が少ないものと弱いものがあります。ほうれん草の場合は、特段シュウ酸の含有量が多く苦味が強いことを特徴とする品種はありません。
ほうれん草には大別して東洋種と西洋種、交雑種の3種類あります。
東洋種の見た目は葉先がとんがって深い切れ込みがあり葉肉が薄いです。シュウ酸の含有量が少ないため苦味やエグみを感じにくいという特徴があります。アク抜きをせずにビタミンなどの栄養素もしっかりと摂取したいという方は東洋種を選ぶと良いでしょう。東洋種は日照時間が長いと花茎が伸びて(とう立ち)食用に適する時期をすぎてしまうのが早くなってしまうため、春撒きには適さず秋〜冬に栽培されます。
西洋種の見た目は葉が大きく丸みがあり葉肉が厚いです。シュウ酸の含有量が多いため苦味やエグミを感じやすく調理をするときはアク抜きが必要です。東洋種とは反対に、春播きして晩春〜初夏にかけて収穫されます。
交雑種は一代雑種と呼ばれ、東洋種と西洋種の間です。現在市場でよく出回っているほうれん草の多くは交雑種で、葉の形が東洋種に近いものと、西洋種に近いものがあります。基本的にはアクが強いのでアク抜きが必要になりますが、近年は品種改良によりアクがそれほど強くないものも増えてきています。
上述したように東洋種のほうれん草は、アクが弱く苦味やえぐみを感じにくいです。東洋種は根本が赤いという特徴があります。
現在スーパーなどで販売されているのは交雑種が多く、根本が赤くないものもありますが、根本が赤くなっているものは東洋種の性質を強く受け継いでいます。そのため、赤みが薄いものよりもしっかりと赤い色が出ているものを選んだほうが苦味やえぐみを感じにくい可能性が高いです。
葉が大きく青々したものは、一見可食部が多く新鮮なほうれん草に見えるので、ついつい手にとってしまいがちですが、肥料過多により育ち過ぎている可能性があります。
上述したように肥料過多によって育ちすぎているほうれん草はシュウ酸の含有量が多く苦味が強いことがあります。ほうれん草を購入する際は程よい大きさのものを選ぶと良いです。
苦味がそれほど感じられない個体であっても、ほうれん草は生食NGです。シュウ酸のデメリットは苦味やエグミを感じさせて料理の味を損ねるだけではありません。シュウ酸は大量に摂取することで結石を作る原因になるといわれています。そのためほうれん草の生食は避けたほうが良いです。
シュウ酸は水溶性であるため下茹でしたり水に浸けることで取り除くことができます。加熱をするだけではシュウ酸を取り除くことはできないので、炒めるだけではシュウ酸が残り苦味を感じやすいです。美味しく食べるためにも下茹でや水に浸けるなどの下処理をして食べるようにしましょう。
冷凍する前にアク抜きをしていればそのまま調理に使うことができますが、アク抜きせずに冷凍したほうれん草はシュウ酸がそのまま残っている状態ですのでアク抜きをしないと苦味やエグみを感じます。
アク抜きをしていないほうれん草は、アク抜きが必要となるだけではなく葉がボロボロと砕けやすくなるほか、黒く変色したり食感が悪くなってしまうためアク抜きをしてからの冷凍保存がおすすめです。
ちなみにシュウ酸とは関係なく冷凍することで特有の臭みを放つことがありますが、それは避けることはできません。臭みを避けたい方は冷蔵保存し鮮度が落ちないうちに素早く食べきるのが良いです。
まず、ほうれん草の汚れを落とします。汚れを落としたら鍋にたっぷりの湯を沸かして塩を加えます。塩の量の目安はお湯1リットルにつき小さじ1です。
塩を入れる理由は、変色を防ぐためです。ほうれん草の鮮やかな緑色は「クロロフィル」と呼ばれる色素によるものです。クロロフィルは熱に弱い成分であるため、茹でることで変色してしまうことがありますが、塩を加えることで色素が安定するため変色を防ぐことができます。
お湯が沸いたら、数株手にとり葉の部分をもって茎の部分を鍋にいれそのまま30秒ほど茹でます。いっぺんにたくさんの量を入れてしまうとお湯の温度が下がり、再沸騰するまでに時間がかかるのでムラができてしまうことがあります。あまりいっぺんにたくさんの量を茹ですぎないようにしましょう。
茎を30秒ほど茹でたら、全体をお湯に入れて葉にも火を通していきます。茹で時間の目安は20秒〜30秒ほどで、葉が鮮やかな緑色になったらOKです。上述したように、長く茹ですぎてしまうとビタミン類などの水溶性の栄養素も流出してしまうため注意しましょう。
ほうれん草を茹でたら、ザルなどにあげてお湯を捨て冷水にさらします。冷水にさらすことでさらにしっかりとシュウ酸を落とすことができますし、変色を防ぎきれいな色を保つことができます。
冷水にさらしたら、ほうれん草の根本を上にしても持ち、上から下へ握る位置をずらしながら水気を絞りましょう。食べやすい大きさ(4cm〜5cm)に切ってからさらに水気を絞ると、調味料が馴染みやすくなります。
下茹でせずに、簡単に水につけるだけの方法もあります。炒めものにするときなど食感を残したい場合は、こちらの方法がおすすめです。
上述したようにシュウ酸は水溶性なので水につけるだけでもある程度シュウ酸を取り除くことができます。近年販売されているほうれん草は、アクが弱いものも多いので水につけるだけでも苦味やエグみを感じにくくなります。
水につけてアク抜きする場合は、一本ずつバラバラにしてから下半分を約10分程度水につけておくと良いです。水につける時間が長いと水溶性の栄養素も流出してしまいやすいので長時間つけすぎないようにしましょう。
茹でこぼすのと比較してしっかりと取り除けるというわけではありません。そのためカットすることで水に触れる面積を広げ、シュウ酸が溶け出しやすくなるようにするという方法もあります。ただし、カットしてしまうと切り口からビタミンCなどの水溶性の栄養素も溶け出してしまうというデメリットがあります。バラバラにして水につけるのが良いでしょう。
近年販売されているほうれん草は、アクが弱いものが多いためレンジを使ってアク抜きをしても苦味やえぐみを感じにくくなります。茹でたり水にさらすよりも水溶性の栄養素を残すことができるため、栄養価を下げたくない方や食感を残したい方はレンジを使うと良いでしょう。
レンジを使う場合は、ほうれん草を綺麗に洗ったら、根本を揃えて丸ごとラップに包んでレンジに入れ加熱します。加熱時間はレンジのワット数にもよりますが600Wのレンジの場合、3分程です。
ラップに包む量は200gほどに抑えると良いです。あまり量が多いと加熱ムラができてしまうので注意しましょう。
ほうれん草を加熱したら菜箸やトングを使って取り出し、ラップに包んだままの状態で冷水にさらします。ある程度粗熱がとれたら、ラップを外してさらに冷水にさらします。冷水にさらすことで、ある程度シュウ酸を落とすことができます。長い時間水につけてしまうと水溶性の栄養素も流出してしまうので注意してください。
ほうれん草はもともと苦味のある野菜です。ほうれん草の苦味が苦手な方はほうれん草以外の野菜で代用するという手もあります。
サラダほうれん草とは、生食できるように品種改良されたほうれん草です。
一般的なほうれん草とは異なりシュウ酸の含有量が少ないため、アク抜きをしなくても苦味やえぐみを感じにくく食べやすく、その名の通りそのままサラダなどにして食べることが可能です。また、生食だけではなく炒めるなど加熱をして食べることもできます。
ただし、シュウ酸の含有量が少なくなるよう品種改良されているだけでシュウ酸が全く含まれていないというわけではありません。大量摂取しないようにしましょう。
ほうれん草を使う料理全般、小松菜を使って代用することができます。苦いほうれん草やほうれん草の苦味が苦手な方は小松菜で代用するのがおすすめです。
小松菜は見た目も味も比較的ほうれん草とよく似ていますが、シュウ酸の含有量が少ないため苦味が少なくアク抜きをしなくても食べることができます。栄養素の面でもほうれん草と同じようにカロテンやビタミンC、葉酸が含まれているためほうれん草の代用にもってこいの野菜です。
粒マスタードを使った洋風の和え物です。
このレシピでは砂糖の代わりにメープルシロップを使用しています。カロリーが白砂糖の2/3と低く、GI値(食後の血糖値の上がりやすさを示す数値)も73と白砂糖(GI値100)より低いのが特徴です。
ほうれん草は茹ですぎないようにしましょう。
ほうれん草のマスタードあえのレシピはこちら
さわやかな副菜としてぜひお楽しみください。
酢には疲労回復や血糖値の上昇を抑えるのに効果的なクエン酸や、血行を良くしたり免疫力向上の効果が期待できるアミノ酸などが含まれています。
ほうれん草は茹ですぎないようにしましょう。
ほうれん草の甘酢あえのレシピはこちら
ヴィーガンチーズがほうれん草にからまり美味。簡単に作れますのでぜひお試しください。
このレシピでは豆乳(無調整)を使用し、チーズは植物性のものを使用しています。
豆乳は焦げやすいので混ぜながら温めましょう。
ほうれん草とマッシュルームのチーズクリーム煮のレシピはこちら
カットトマトを使ったボリュームのある洋風副菜です。
トマトのリコピンは加熱することで細胞壁が壊れるため、吸収率が2〜3倍ほどアップするといわれています。また、加熱することで旨味成分「グアニル酸」が増加するので、旨みもアップします。
焦がさないように、時々混ぜながら煮込みましょう。
ほうれん草のトマト煮のレシピはこちら
パイ生地を使用しない簡単キッシュです。
このレシピでは、ニュートリショナルイーストを使用しています。ニュートリショナルイーストは、サトウキビなどの糖蜜で発酵させた酵母です。チーズやナッツのような風味がする食材で、乳製品などの代用品としてヴィーガン料理でよく使用されます。
このレシピで使用しているミートソースのレシピはこちらでご紹介しています。
ポパイミートソースの簡単キッシュのレシピはこちら
紹介してきたようにほうれん草の苦味はシュウ酸によるもので腐敗しているわけではありませんが、次に紹介する特徴をもつほうれん草は食べずに破棄するようにしましょう。
腐ったほうれん草の見た目の特徴は下記の通りです。
全体的に茶色く変色している
カビが生えている
葉が溶けている
汁が出ている
新鮮なほうれん草は緑色をしていますが、鮮度が落ちてくるとだんだん黄色く変色していき、最終的には茶色く変色していきます。一部が変色してしまっている場合は変色している部分を取り除けば食べることができますが、全体的に茶色い場合は腐敗がかなり進んでいる状態ですので残念ですが破棄しましょう。腐敗しているほうれん草は葉が溶け出していたり、茶色っぽい汁が出ていることもあります。
また、ほうれん草に白いふわふわとしたホコリのようなものがついているときは白カビが生えています。白カビなどのカビの菌はカビ毒を起こし吐き気や腹痛などの中毒症状を起こすことがあるので、葉にカビが生えてしまっている場合も残念ですが破棄しましょう、
腐ったほうれん草の匂いや味の特徴は下記の通りです。
酸っぱい匂い・味
カビ臭い
舌がしびれるほどの苦味
ほうれん草は野菜特有の青臭さはあるものの、そこまで匂いのきつい野菜ではありません。酸っぱい臭いやカビ臭さを感じる場合は注意しましょう。
ほうれん草に限らず食材は腐敗すると、多くのバクテリアが活動し酢酸発酵することが多いので酸っぱい臭いがしたり酸っぱい味がします。この現象は味噌や醤油といった発酵食品にも起きていますが、発酵とは異なり次第に味や臭い、形が崩れるなど食材が変化していく現象はあるときに「腐敗」とよばれます。腐敗が進むと生ゴミのような臭いがすることもあります。あきらかに異臭がすると感じる場合は破棄しましょう。
カビが生えていないのにも関わらずカビ臭い場合は、カビの胞子が入り込み生育している可能性が高いため心配な方は破棄するのが無難です。
腐ったほうれん草の特徴は下記の通りです。
ぬるぬるしている
粘りがある
ハリがない
腐ったほうれん草はぬるぬるしていたり、粘りが出てきます。これは、新鮮なほうれん草には見られない症状ですので、触ったときにぬめりや粘りがある場合は破棄しましょう。
また、新鮮なほうれん草はハリがあります。鮮度が落ちてくると次第に水分が抜けてしなしなになっていきます。水分が抜けているのに加えて変色していたりする場合は、腐敗が進んでしまっている状態なので食べることはできません。
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