トマトの栄養価が加熱で変化するのか解説していきます。また、加熱するメリットや加熱したトマトにおすすめの食べ合わせ、さらにトマトの保存方法も紹介します。
トマトの栄養素の中でも注目してもらいたいのは「リコピン」という栄養素。多くの人が耳にしたことであろうリコピンですが、実はトマトの赤色の成分なのです。トマトのほかにもスイカや金時人参、柿にも含まれています。
リコピンは抗酸化作用のある栄養素です。リコピンの抗酸化作用は同じ抗酸化作用を持つβ-カロテンの2倍以上、ビタミンEの100倍以上といわれています。肌や血管の老化を防いだり動脈硬化などを予防する効果が高いことがわかっています。
また熟すにつれてリコピン(と、カロテン)が増加し、緑色素のクロロフィルが消失するため赤色になります。
GABA(ギャバ)はアミノ酸の一種です。野菜や果物に多く、その中でもトマトは含有量が高くなっています。ただし、明確な含有量は分かっていません。
GABAの代表的な働きはリラックス効果です。ストレスを感じたり運動をして興奮状態になると、脳内で活発にアドレナリンが分泌されますが、GABAはアドレナリンの分泌を抑制します。アドレナリン分泌が抑制されることで血圧が正常にし、酸素の供給を助けるとされています。
また、GABAはコレステロールと中性脂肪の増加の抑制する働きもあります。
トマトはグルタミン酸が豊富に含まれており、熟すにつれて量が増えます。ビタミンB2と合わせると吸収率が上がります。
グルタミン酸は体内で合成することが出来る非必須アミノ酸の一種で日本で最初に発見されたうま味物質です。
興奮系の神経伝達物質として働き脳機能を活性化させるので記憶力や学習能力、そして集中力を高める効果があります。また、脳の機能にダメージを与えるアンモニアを解毒・排出を促進する効果があります。さらに、血圧を下げます。
グルタチオンは3つのアミノ酸が連なって出来たトリペプチドです。レバーや魚などに多く含まれる成分ですが、野菜の中だとトマトは比較的多く含まれています。
グルタチオンは肝臓の解毒作用に必要となるため、肝機能を強化する効果があります。また、抗酸化作用による生活習慣病予防の効果が期待できます。
さらに、今注目されているのがグルタチオンの美白効果です。シミの原因を予防し、美白のための治療薬としても使われています。
トマトの酸味はクエン酸によるものです。梅干しや柑橘系などに多く含まれている成分です。
クエン酸は食べた物を体内でエネルギーに変えるときに必要な栄養素です。そのため疲労回復に効果的と言われています。筋肉痛の予防にも役立ちます。さらに代謝アップにもつながるので、ダイエット効果も期待できます。
また、カルシウムや鉄、マグネシウムなどの吸収しにくいミネラルを吸収しやすくする働きもあるので、吸収されにくいと言われるミネラルと一緒に摂取するといいでしょう。この効果をキレート効果と呼びます。
「トマトの赤色はカロテンではなくリコピンです」と言われることがあり、間違いではありませんが、トマトにはβ-カロテンも豊富に含まれています。
β-カロテンは体内で必要量がビタミンAに変換されます。皮膚や喉など全身の粘膜を健康に保ち、体外からのウィルスや細菌の侵入を防ぐことで免疫力をアップします。また、抗酸化作用もあるので、アンチエイジング効果や生活習慣病の予防効果が期待できます。
変換されたビタミンAは、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあります。視力を正常に保つ役目や視力低下の抑制効果、他にも皮膚の健康維持に関与していることから乾燥肌やニキビ肌の改善など美肌効果も期待できます。
参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス
トマトのリコピンは加熱することで細胞壁が壊れ吸収率がアップします。サラダで食べるよりも、炒めたりスープ、煮込み料理にして食べた方がリコピンは2〜3倍吸収することがわかっています。
また、加熱することでうま味成分であるグアニル酸が増加するので、うま味もアップします。
リコピンは油に溶けやすい性質を持ちます。油で調理すると吸収率がアップします。オリーブオイルなどの酸化しにくい油で炒めるのがおすすめです。
また、β-カロテン(ビタミンA)やビタミンEも脂溶性のビタミンです。サラダで食べる場合でもオリーブオイルやドレッシングをかけることで吸収率が上がります。
これらを考えるとイタリア料理はとても理にかなっています。カプレーゼなどはまさに!トマトにオリーブオイルを合わせていますよね。他にもパスタやピザなどもオイルを使い、加熱もしているのでリコピンを思う存分摂取することができます。
あまり注目されませんが、栄養学において、たくさん食べられるというのは大変大きなメリットです。栄養価がいくら高くても多く食べられなければ意味がありません。
加熱すると水分が飛ぶので、同じ100gを食べても摂取できる栄養素の量が多くなります。
トマトは加工に向いた野菜です。
例えば、トマトケチャップやトマトソースなどがあります。トマトケチャップは、トマトをつぶし裏ごしして2.5〜3倍に濃縮したトマトピューレーに、食塩、砂糖、酢、香辛料、うま味調味料、玉ねぎ、にんにくなどを加えて濃縮して作られたものです。
また、トマトの青臭さが苦手な方も加熱することで食べられます。様々な調理方法があるため、飽きがこずトマトを楽しめるので、その分栄養素を摂ることができます。
ビタミンCはよく加熱に弱いといわれますが、「ビタミンCが熱に弱いという説は嘘!」という意見も見受けられます。どちらが正しいのでしょうか?
ビタミンCの熱への耐性に関して意見が割れているのは、ビタミンCには2種類あるからです。実はビタミンCには「還元型ビタミンC」と「酸化型ビタミンC」というものがあり、2つを合わせてビタミンC(または「総ビタミンC」)と言われています。
熱に弱いのが酸化型ビタミンCです。還元型ビタミンCはほとんど分解されることはないのですが、酸化型ビタミンCは一度分解してしまうとビタミンCには戻ることができず、この分解反応が加熱することで早く進むので「ビタミンCは加熱に弱い」と言われます。厳密には酸化型ビタミンCは熱に弱い、ですね。
新鮮な野菜や果物に含まれるビタミンCは大部分が還元型なので、基本的にビタミンCが加熱によって壊れることはありません。
しかし、切ったりすりおろすことで還元型ビタミンCの一部が酸化型ビタミンCに変換されてしまう(つまり酸化するということ)ので、やや加熱に弱くなってしまいます。また、野菜に含まれる「アスコルビン酸(ビタミンC)酸化酵素」の作用でも、還元型ビタミンCの一部が酸化型ビタミンCに変換され、やや熱に弱くなってしまいます。
それでもビタミンCは水溶性なので、水にとけて流れてしまいます。カリウムなどのミネラルも水溶性です。トマトは、あまり煮たり茹でたりすることはない食材ですが、水を使って加熱をするときはスープにして汁ごと食べられるようにしましょう。
トマトを加熱したいとき、電子レンジを使うことで水溶性の栄養素を守ることができます。茹でたり煮たりしてしまうと、どうしても水溶性の栄養素が水に溶け出してしまいます。
また、電子レンジを使うと一気に加熱することができるので時短にもなります。また、火の様子を見たりする手間もないので、電子レンジで加熱している間に他の作業ができるのも◎。
リコピンは抗酸化力が強いビタミンEを一緒に摂ると抗酸化力がアップします。同じ効果を持つ別々の栄養素を一緒に摂取すると、その効果がアップするんですよね。それを相加効果と言います。
ビタミンEを豊富に含む食材にはアボカド、南瓜、アーモンドなどがあります。
トマトにはビタミンPの一種であるケルセチンが比較的多く含まれ、ビタミンCの働きを助ける効果があるといわれています。ビタミンCにはシミやシワを防ぎ免疫を高める効果がある栄養素です。
柑橘系の果物、いも類などのビタミンCが多く含まれている食材と組み合わせると効果的です。逆もまた然りでトマトもビタミンCを多く含むのでタマネギやブロッコリーなどケルセチンを多く含む食材と合わせるとより効果を発揮します。
トマトの食物繊維と、イカや牡蠣、あさりなどのタウリンには、コレステロールを下げる効能があるため、一緒に摂取することでより効果がアップします。
食物繊維は、コレステロールを吸着して体外に排出することで、血中のコレステロール値を低下させます。タウリンは、血中の悪玉(LDL)コレステロールを大きく低下させ、さらには善玉(HDL)コレステロールを増やします。全体の総コレステロールは低下します。またタウリンには血圧を下げる効果もあります。
最後にトマトの加熱レシピを紹介します。Filyのレシピはすべて小麦粉・乳製品・白砂糖不使用です。
トマトを切って焼き色をつけるだけの簡単トマトソテーです。味付けは塩こしょうだけでシンプルに仕上げました。あと一品欲しいときにさっと作れるおすすめレシピです。
パセリには、β-カロテンやビタミンC、ビタミンK、カリウム、鉄などが含まれています。
仕上げにオリーブオイルをかけても美味しくいただけます。
トマトソテーのレシピはこちら
たっぷりのトマトでさっぱり味に仕上げました。豚肉は揚げずに、フライパンで焦げ目が付くまで焼きました。ごはんとよく合います。
てんさい糖を使うことで、まろやかな甘さに仕上がり、コクも増します。
トマトの酢豚のレシピはこちら
様々な料理に使える万能トマトソースのレシピです。オリーブオイルとガーリックの風味が豊かなソースです。玉ねぎと同じくにんにくにも硫化アリルが含まれ、ビタミンB1の吸収率を高めます。
トマトソースのレシピはこちら
こちらのトマトソースを使ったレシピには下記があります。
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