トマトの栄養素・成分といえばリコピンが有名ですが、ビタミンCはどのくらい含まれているのでしょうか。本記事ではトマトに含まれるビタミンCの量を、他の野菜と比較してどのくらい豊富なのか解説していきます。
ビタミンCは、オレンジ果汁から発見された栄養素です。これは16〜18世紀の大航海時代に、船員たちが新鮮な野菜や果物の摂取量が極端に少ないことから流行した壊血病を予防するために発見されました。多くの哺乳類は体内でブドウ糖からビタミンCを合成することが出来るのですが、人など一部の哺乳類は合成に必要な酵素がないためビタミンCを合成できず、食事から摂取しなければなりません。
ビタミンCはたんぱく質からコラーゲンを合成する働きがあります。コラーゲンは、細胞間の結合組織で、血管や皮膚、骨、筋肉などを丈夫にします。コラーゲンによって、肌にハリ・ツヤが生まれます。シミのもとであるメラニン色素の合成も抑えるなど美肌づくりに大切な栄養素です。
そのほか、ビタミンCには白血球を活性化させて免疫力を高める作用もあります。抗ストレスホルモンの合成にも欠かせない栄養素です。
ビタミンCはよく加熱に弱いと言われますが、「ビタミンCが熱に弱いという説は嘘!」という意見も見受けられます。どちらが正しいのでしょうか?
ビタミンCの熱への耐性に関して意見が割れているのは、ビタミンCには2種類あるからです。実はビタミンCには「還元型ビタミンC」と「酸化型ビタミンC」というものがあり、2つを合わせてビタミンC(または「総ビタミンC」)と言われています。
熱に弱いのが酸化型ビタミンCです。還元型ビタミンCはほとんど分解されることはないのですが、酸化型ビタミンCは一度分解してしまうとビタミンCには戻ることができず、この分解反応が加熱することで早く進むので「ビタミンCは加熱に弱い」と言われます。厳密には酸化型ビタミンCは熱に弱い、です。
新鮮な野菜や果物に含まれるビタミンCは大部分が還元型なので、基本的にビタミンCが加熱によって壊れることはありません。
しかし、切ったりすりおろすことで還元型ビタミンCの一部が酸化型ビタミンCに変換されてしまうので(つまり酸化するということ)、やや加熱に弱くなってしまいます。また、野菜に含まれる「アスコルビン酸(ビタミンC)酸化酵素」の作用でも、還元型ビタミンCの一部が酸化型ビタミンCに変換され、やや熱に弱くなってしまいます。
野菜に含まれるビタミンC(還元型ビタミンC)は熱に弱い、というのは間違いであることがわかりましたが、そのように誤解される理由に、ビタミンCが水溶性であることが挙げられます。
ビタミンCは茹でたり、水にさらしたりすると、水に溶け出してしまいます。皮を剥いたり、切ることでビタミンCはより多く流失してしまいます。野菜のビタミンCを守りたいなら「丸ごと皮付き」がおすすめです。また、電子レンジで加熱する、スープにして汁ごといただくなども、ビタミンCを無駄にしないおすすめの方法です。
脂溶性のビタミンはA・D・E・Kで、それ以外は水溶性です。
ビタミンCは、成人1日あたりの推奨量が100mgに設定されています。通常の食事による過剰摂取の報告はないため、耐容上限量は定められていません。
1日100〜200mg程度摂取すると吸収率は80〜90%と高いですが、1g以上摂取すると50%以下に低下します。また喫煙者はビタミンCの消費が激しいので、一般成人の2倍は摂ることをおすすめします。
出典:厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020年版)
ビタミンCは多く摂取しても体内に蓄積されないため、食品からビタミンCを摂取する場合は摂りすぎの心配はほとんどありません。しかし、例えばサプリなどによるビタミンCの過剰摂取は注意が必要です。ビタミンCは過剰摂取すると下痢や便秘、腹痛などを引き起こすことがあります。これは消化器官に不調をきたすためです。もし肝臓機能に障害がある場合は尿路結石のリスクが高まるとも言われています。
ただし、ビタミンCは摂取後2〜3時間で排泄されるため、毎食補うようにすることをおすすめします。
参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス
トマト100gあたりのビタミンC含有量は15gです。
トマトはビタミンCを含みますが、豊富と言えるほどではありません。しかし、トマトは1度に多くの量を食べられる他、1年を通して食べられることから、ビタミンCの大切な補給源とされています。
100gあたり
パプリカ...170mg
ブロッコリー...140mg
かぼちゃ...43mg
トマト...15mg
きゅうり...14mg
野菜の中だと、パプリカが多く含まれています。
ビタミンCが豊富な果物は、
アセロラ(酸味種)…1700mg
レモン...100mg
りんご...6mg
です。
レモンも多く含まれていますが、じゃがいもはレモンよりも一度に多く食べることができるので、その分1度に多くのビタミンCを摂取することができます。
出典:文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)
ミニトマトのビタミンCの含有量は、32mgです。
ミニトマトには、トマトの約2倍のビタミンCが含まれています。ちなみに、ビタミンCだけでなくリコピンは約3倍、ビタミンB群・カリウム・食物繊維などは約1.5〜2倍ミニトマトにはトマトよりも多く含まれています。
ミニトマトの栄養素については下記の記事で詳しく解説しています。
トマトのビタミンCは加熱による消失は心配する必要はありませんが、茹でる際の水への流失は懸念されます。調理法を工夫することでトマトのビタミンCを守りましょう。
トマトジュースはリコピンが多い赤色トマトを使用していることが多いため、リコピンの量は日本で市販されている生のトマトよりも多いと一般的に考えられます。また、ジュースには胃腸で吸収しやすいというメリットもあります。
しかし、ビタミンCや食物繊維などは加工途中で失われると考えられるため、栄養面で生のトマトに劣る部分があります。食物繊維が少ないと血糖値が上がりやすいので注意が必要です。砂糖や塩分が足され味が調整されているジュースも存在します。
トマトのビタミンCを効率よく摂取するベストな方法は、生のままサラダで食べることです。ちなみに、トマトに含まれるβ-カロテン(ビタミンA)は、油と一緒に摂ると吸収率がアップします。そのため、油のドレッシングをかけてサラダでいただくのがベストです。
参考文献:津川友介(2018)『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』東洋経済新報社
トマトは加熱調理することもありますが、その場合はスープやカレー、トマトソースなど汁ごといただける料理がおすすめです。水に溶け出したビタミンCを無駄にすることなく摂取することができます。
トマトの栄養素の中でも注目してもらいたいのは「リコピン」という栄養素。多くの人が耳にしたことであろうリコピンですが、実はトマトの赤色の成分なのです。トマトのほかにもスイカや金時人参、柿にも含まれています。
リコピンは抗酸化作用のある栄養素です。リコピンの抗酸化作用は同じ抗酸化作用を持つβ-カロテンの2倍以上、ビタミンEの100倍以上と言われています。肌や血管の老化を防いだり動脈硬化などを予防する効果が高いことがわかっています。
また熟すにつれてリコピン(と、カロテン)が増加し、緑色素のクロロフィルが消失するため赤色になります。
GABA(ギャバ)もアミノ酸の一種です。野菜や果物に多く、その中でもトマトは含有量が高くなっています。ただし、明確な含有量は分かっていません。
GABAの代表的な働きはリラックス効果です。ストレスを感じたり運動をして興奮状態になると、脳内で活発にアドレナリンが分泌されますが、GABAはアドレナリンの分泌を抑制します。アドレナリン分泌が抑制されることで血圧が正常にし、酸素の供給を助けるとされています。
また、GABAはコレステロールと中性脂肪の増加の抑制する働きもあります。
トマトはグルタミン酸が豊富に含まれており、熟すにつれて量が増えます。ビタミンB2と合わせると吸収率が上がります。
グルタミン酸は体内で合成することが出来る非必須アミノ酸の一種で日本で最初に発見されたうま味物質です。
興奮系の神経伝達物質として働き脳機能を活性化させるので記憶力や学習能力、そして集中力を高める効果があります。また、脳の機能にダメージを与えるアンモニアを解毒・排出を促進する効果があります。さらに、血圧が下がります。
グルタチオンは3つのアミノ酸が連なって出来たトリペプチドです。レバーや魚などに多く含まれる成分ですが、野菜の中だとトマトは比較的多く含まれています。
グルタチオンは肝臓の解毒作用に必要となるため、肝機能を強化する効果があります。また、抗酸化作用による生活習慣病予防の効果が期待できます。
さらに、今注目されているのがグルタチオンの美白効果です。シミの原因を予防し、美白のための治療薬としても使われています。
トマトの酸味はクエン酸によるものです。梅干しや柑橘系などに多く含まれている成分です。
クエン酸は食べた物を体内でエネルギーに変えるときに必要な栄養素です。そのため疲労回復に効果的と言われています。筋肉痛の予防にも役立ちます。さらに代謝アップにもつながるので、ダイエット効果も期待できます。
また、カルシウムや鉄、マグネシウムなどの吸収しにくいミネラルを吸収しやすくする働きもあるので、吸収されにくいと言われるミネラルと一緒に摂取するといいでしょう。この効果をキレート効果と呼びます。
「トマトの赤色はカロテンではなくリコピンです」と言われることがあり、間違いではありませんが、トマトにはβ-カロテンも豊富に含まれています。
β-カロテンは体内で必要量がビタミンAに変換されます。皮膚や喉など全身の粘膜を健康に保ち、体外からのウィルスや細菌の侵入を防ぐことで免疫力をアップします。また、抗酸化作用もあるので、アンチエイジング効果や生活習慣病の予防効果が期待できます。
変換されたビタミンAは、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあります。視力を正常に保つ役目や視力低下の抑制効果、他にも皮膚の健康維持に関与していることから乾燥肌やニキビ肌の改善など美肌効果も期待できます。
参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス
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