じゃがいもを調理しようと思ったら中が変色していた、じゃがいもを切って放置していたら色が変わってしまっていた、などという経験をしたことがある方は多いのではないでしょうか。変色してもそのまま食べて問題ないか、心配になりますよね。今回はじゃがいもの変色の原因と、食べても問題ないかどうかを詳しく解説します。
一般的に調理に使われることが多い男爵やメークイーンといった品種のじゃがいもは、皮は茶色で中身はクリーム色をしていますが、様々なことが原因で色が変化することがあります。
じゃがいもの皮の色や中身の色が変化する原因としては、
天然毒素(緑・青)
病気(黒)
低温障害(ピンク・赤)
剥皮褐変(ピンク→赤→褐色→紫→黒)
水煮黒変(黒)
腐敗(濃い茶)
カビ(白・黒・青)
品種(赤・紫・黒)
などが挙げられます。変色すると腐ってしまったのではないかと驚く方も多いかと思いますが、腐敗のみが変色の原因というわけではありません。じゃがいもの色の変化の原因を知っておくと、食べることができるのかそうでないのか判断しやすくなります。
まず初めに、じゃがいもの皮の変色の原因を色別に解説していきます。
じゃがいもの皮の一部が緑色に変色している場合、その部分は有毒物質「ソラニン」や「チャコニン」が多く含まれています。ソラニンやチャコニンは、一定量摂取すると吐き気やおう吐、下痢、腹痛、頭痛、めまいなど症状が出る可能性があります。
ソラニンとチャコニンは、グルコースやガラクトースなどの「糖」と、植物由来の窒素を含んだアルカリ性(塩基性)物質である「アルカロイド」からできているグリコアルカロイド(糖アルカロイド)と呼ばれる成分の一種です。育っていく中で外敵に食べられないようにソラニンやチャコニンといった有害物質をもつようになったと言われます。
じゃがいもの皮が緑に変色してしまった場合は、皮を厚く剥いて取り除き料理に使用しましょう。
また、皮がほとんど緑色になっていなくても、皮を剥いたら実の表面が緑色になっているということもあります。じゃがいも全体が緑色に変色してしまっている場合は、有毒物質が大量に含まれている恐れがありますので、食べずに廃棄することをおすすめします。
じゃがいもの皮に黒や茶色っぽい斑点がある場合、それは「そうか病」により生じたものです。そうか病の原因は「ストレプトマイセス属菌」という放射菌と言われており、菌を含む土壌が何らかの理由で混入したり、種芋から持ち込まれたりして伝染します。
斑点の下の組織は少し腐敗しますが、斑点部分の皮を厚く剥いて食べれば問題ありません。
じゃがいもの皮を剥いたら、中に黒や茶の斑点や筋のようなものがあることがあります。
これらは、生育中にじゃがいもが病気になったことが原因です。例えば、じゃがいもの中が黒く空洞になっている場合は「中心空洞症」、輪状に茶色または黒くなっている場合は「輪腐病」、そして中心部に小円形または不整形に褐変している場合は「褐色心腐病(黒色心腐病)」に感染している可能性が非常に高いです。
変色している部分を除けば食べることは可能ですが、あまりにも変色が進んでしまっている場合は、廃棄することをおすすめします。
じゃがいもの表面に白い粉の塊のようなものが付いている場合は、白カビである可能性が高いです。表面だけではなく中身までカビが侵食していたり、変色しているなどの異常が見られる場合は残念ですが破棄しましょう。
中身に異常がなければ皮を厚く剥き、カビを除けば食べることが可能です。一度カビの生えた食品は、カビを除いてもカビの菌などが内部に入り込んでいる可能性があるため基本的には破棄する必要がありますが、じゃがいものように固い野菜は密度が高いため表面にカビが生えただけで中身に異常が見られなければ、食べることができます。ただし、心配な方は皮だけであっても破棄することをおすすめします。
じゃがいもに生えるカビには他にも青カビや黒カビがあります。青カビは、みかんやパンなど様々な食品に生えるカビで、じゃがいもの表面はもちろんのこと切った状態で保存をしていると切り口に生えてしまいやすいです。黒カビは多湿の場所を好んで増殖し、食べ物以外でもお風呂のサッシやエアコンの内部などに多く見られます。
また、収穫したばかりのじゃがいもの表面には、白い斑点があることがあります。これは「皮目肥大」と言われる生理現象であり、白カビではなく病気でもないので食べることができます。
皮目肥大は、水分を呼吸するための小さな皮目が膨れプツプツとした斑点ができるもので土壌水分が多すぎることが原因で起こります。白く見えるのは収穫直後のみで時間が経つと茶色くなります。
皮全体が濃い茶色に変化し、中身が柔らかくなりブヨブヨとしていたら腐敗している可能性が高いです。あまりにブヨブヨしていたり、中身がネバネバしているなどの異常が見られる場合は腐敗し始めているので食べずに処分しましょう。
じゃがいもが柔らかくなっている場合、じゃがいもの水分が抜けてしまっている状態です。じゃがいもは、芽が出始めると芋から芽に栄養を送るため柔らかくなってブヨブヨとしてきます。この場合は生理現象であり腐っているわけではないので、食感は悪くなりますがソラニンやチャコニンが含まれている芽を取り除くなど適切な処理をして調理すれば食べても大丈夫です。しかし、腐敗が始まっている可能性もあるので心配な方は処分することをおすすめします。
一口に「じゃがいも」といっても様々な種類があり、元々色がついているじゃがいもの品種もあります。
例えば、アンデスレッドやベニアカリなどの皮が元々赤い品種や、ノーザンルビーやドラゴンレッドなど中身が元々赤い品種や、インカパープルなど紫芋のような色をしている品種もあります。
デストロイヤーというマスクを被ったような面白いまだら模様の品種もあります。
次に、切ったじゃがいもの変色の原因を色別に解説していきます。
じゃがいもを切ったら、中身がピンクや赤色に変色してしまっていることがあります。これは、低温障害や酸素不足によるものです。
じゃがいもは収穫されると通常2〜4℃前後で貯蔵されますが、これよりも低い温度で保存すると低温障害を起こし、段々と赤褐色に変化していきます。また、雨が多く土壌が湿度過多となることで、じゃがいもが酸欠状態に陥ることでもじゃがいもの中身は変色します。
ピンクや赤に変色した部分も問題なく食べることができます。心配な方は、変色部分を切り落としてから使用しましょう。
色が気になる場合は、マッシュポテトにしたりカレーなどの煮込み料理の具材として使うと目立たなくて済みます。
じゃがいもを切ってそのまま放置しておくと、切り口が変色します。時間が経つにつれて、ピンク→赤→茶→紫→黒と色が変化していきます。
これは、じゃがいもを切ることによって細胞が破壊され、アミノ酸の一種であるチロシンが空気に触れ、チロシナーゼによって酸化され、褐色のメラニン色素が生成されるためです。
また、じゃがいもの中のポリフェノール物質が、ポリフェノラーゼなどの酵素によって酸化されるのも、褐色に変わる原因となります。例えば、千切りにしたじゃがいもを使ってガレットを作るときにピンク色になってしまうということがあります。これはカットした断面が空気中の酸素に触れたことによって酸化してしまったことが原因です。
この場合は腐敗しているわけではありませんので、食べることができます。ただし、茶色や黒まで色が変化してしまうと見た目の良いものではありませんので、じゃがいもを切った状態で保存するときは早めに食べきるようにしましょう。
冷凍したじゃがいもが黒っぽくなってしまう原因は、
低温障害
酸化
の可能性が高いです。上述したようにじゃがいもは2〜4℃よりも低い温度で保存すると低温障害が起こり変色してしまうことがあります。冷蔵庫よりも低い温度である冷凍庫は低温障害が起こりやすいと言えます。
また、しっかり密閉できていないなど空気中の酸素に触れて酸化し変色してしまうこともあります。
食材は冷凍すれば長持ちすることが多いですが、じゃがいもに関しては常温保存のほうが日持ちします。低温が苦手なじゃがいもは冷蔵・冷凍保存にはあまり向かないので、常温保存をおすすめします。
じゃがいもを日持ちさせる保存方法については後述しますので、そちらを参考にしてください。
最後に、調理したじゃがいもの変色の原因を色別に解説していきます。
離乳食でじゃがいもを使うときや、お好み焼きなどに入れたい場合などに、じゃがいもをすりおろしたら赤くなってしまったということがよくあります。
これもすりおろしたじゃがいもが空気中の酸素に触れて酸化したことが原因です。すりおろしてしまうと、どうしてもじゃがいもが全体的に空気中の酸素に触れることになるので、酸化しやすいです。
すりおろして時間が経つとどんどん酸化して悪くなってしまうので、じゃがいもをすりおろして使うときはすりおろしたらすぐに使うようにすると良いでしょう。
じゃがいもを茹でたら、じゃがいもの内部が黒くなってしまうことがあります。これは「水煮黒変」と呼ばれるもので、じゃがいもにジフェノールと鉄分の含有量が多いとき起こる現象です。加熱することによりジフェノールと鉄分の両者が結合することによってジフェノール化合物ができ、じゃがいもが黒くなったり茶色くなったりします。じゃがいもの品種や茹で具合などによって赤や紫っぽく見えることもあります。
見た目は悪いですが、腐敗しているわけではありませんし、毒性もないので問題なく食べることができます。
じゃがいものジフェノールと鉄分の含有量は、生の状態ではわからないため生産側にも判別することができません。
一度変色してしまったじゃがいもの色は残念ながら、元に戻すことはできません。
緑化してしまった場合やカビが生えてしまった場合は取り除く必要がありますが、その他の変色については特にそのまま食べても人体に害はありません。
そのため、そのまま煮物料理にするなど変色部分が気にならないように調理をして食べると良いでしょう。
問題なく食べられるとはいっても、料理の見た目が悪くなってしまうのは避けたいですよね。特にお客様に出すおもてなし料理では変色してしまったじゃがいもは使いたくないという方が多いでしょう。
気になる場合はそのまま食べられる変色の場合も包丁で変色部分をカットしてから調理をしてください。変色している部分を削り取るようにしてカットすると、大抵は変色部分を取り除くことができます。
しかし、可食部が減ってしまうので、勿体ない!という方は、緑化やカビ以外の変色の場合そのまま調理をして食べるのが良いでしょう。
じゃがいもを切る際は、水や薄い食塩水にさらすことで変色を防ぐことができます。
水や薄い食塩水にさらしておくことで、切り口が空気と遮断され、水溶性であるチロシナーゼが切り口から溶け出して褐変を防ぐことが可能です。
ただし、切ったじゃがいもは傷みが早いので長期保存には向いていません。なるべく早めに使い切りましょう。
酢を混ぜた水にじゃがいもをつけることでも、じゃがいもの変色を防ぐことができます。
また、酸性にすることで酵素の働きを抑えることができ、茹でた後に黒く変色してしまう「水煮黒変」も防ぐことができると言われています。
じゃがいもが浸かるくらい水を入れたボウルに酢小さじ1杯程度の割合で酢水を作ります。切ったじゃがいもを10分程度つけるだけでOKです。
そうか病によるじゃがいもの皮の黒い斑点や、中心空洞症や輪腐病などによって中が黒くなってしまうのは、生育中にかかる病気によるものなので、残念ながら変色を防ぐことはできません。
しかし、切った後に酸化によって赤くなってしまったり、水煮黒変によって黒くなってしまうといった変色は防ぐことができます。特に水煮黒変は上述したように、見た目ではじゃがいものジフェノールと鉄分の含有量がわからないため水煮黒変しないものを選ぶということはできません。そのため、心配な方はひと手間かかりますが、調理をする前に下ごしらえをすることをおすすめします。
ソラニンやチャコニンが生成されることによって緑化やカビによる変色、低温障害による変色はじゃがいもを正しく保存することで、防ぐことができます。
正しく保存することは、変色を防ぐだけではなく腐敗を防ぐことにも繋がります。
じゃがいもが日光に当たることで、有毒物質であるソラニンやチャコニンが増えてしまうと言われています。そのため、直射日光が当たる場所での保存は避けることも大切です。
冷暗所とは、温度が低く一定に保たれている場所を指します。直射日光が当たらず、ガスコンロや家電の放熱の影響を受けない涼しい場所で保存しましょう。
また、湿度が原因でじゃがいもが腐ってしまうことも多いです。日本は比較的湿度が高い気候で、特に梅雨の時期などは食べ物の保存には十分に注意が必要です。多湿な環境にじゃがいもを放置しておくと、腐敗が一気に進みやすくなります。
また、水分を含む土がじゃがいもについたままだと、それでもじゃがいもは腐りやすくなります。
じゃがいもの変色を防ぐためには、冷凍保存もおすすめです。そのまま冷凍するのではなく、マッシュポテトとして冷凍すると、食感や味がそこまで劣ることはありません。
皮を剥いて一口サイズに切って熱湯で15分ほど茹で、潰してマッシュポテトを作ります。しっかり粗熱をとってから、小分けにし平たくラップに包み、冷凍用ジッパー付きポリ袋に入れて、空気をしっかり抜いて冷凍します。ポリ袋に入れる前に金属トレイに乗せて急速冷凍すると、食感が損なわれにくくなります。ハムなど他の食材を入れると日持ちしなくなるので、混ぜないようにしましょう。
冷凍マッシュポテトは前日に冷蔵庫に移して自然解凍か、電子レンジで加熱して解凍します。電子レンジを使うとホクホクとした食感になります。ポテトサラダやポタージュ、コロッケなどに使えます。
お弁当に入れたじゃがいもが変色してしまう原因の多くは、空気中の酸素に触れることによる酸化もしくは腐敗です。
お弁当に入れるじゃがいもは、10分程度さらして色止めをしておきましょう。そのほうが、変色しにくくなります。ただし、上述したように水にさらしすぎると水溶性の栄養素が流出してしまうので注意が必要です。
水分は雑菌が増殖する原因となり、腐敗を進めてしまいます。そのため、水にさらしたらしっかりと加熱して水分を飛ばしましょう。細菌の多くは熱に弱いため、75℃以上で1分以上加熱しておくと安心です。
できれば食べる前にレンジで再加熱をするのが良いでしょう。
じゃがいもに限らず、お弁当に食材を入れたらしっかりと冷ましてから蓋をします。
温かいうちに蓋をしてしまうと、蒸気でお弁当の蓋に水滴がついてしまいます。この水滴に雑菌が増殖してしまうので注意しましょう。
温かい季節など食中毒が心配なときは、保冷剤や保冷バックを使いましょう。
お弁当の保冷剤は、食中毒の予防に役立ちます。保冷剤は低温を維持することで食材の冷却を促し、雑菌の増殖を抑制することができます。
ただし、保冷剤自体が清潔で衛生的であることも重要です。保冷剤を使用する際には、食材との直接接触を避けるために適切な包装や袋を使用し、保冷剤が漏れ出たり汚染されたりしないように注意が必要です。
また、定期的に保冷剤や保冷バックも洗浄・消毒をしておくと安心です。
じゃがいもは加熱すると傷みが早いという特徴があります。
じゃがいもはデンプン質が豊富で、その細胞壁が弱いため、加熱すると細胞壁が破壊されやすくなります。この細胞壁の破壊により、じゃがいも内部のデンプンが露出し、細菌が侵入しやすい環境が作られます。デンプンは細菌のエサとなり、細菌の増殖を促進します。
特に夏は気温が上昇し、湿度も高くなります。食材やお弁当箱の中で雑菌が増殖し食中毒のリスクが高まりますので、心配な方はじゃがいもを弁当に入れることを避けることをおすすめします。
冬などの気温が低い季節や冷蔵庫にお弁当を入れておける環境である場合は、じゃがいもを入れても良いでしょう。
出典:お弁当作りによる食中毒を予防するために(農林水産省)
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