長ねぎが苦くて食べにくいと感じたことがある方は多いのではないでしょうか。本記事では長ねぎが苦い原因や対処法などを詳しく解説します。
長ねぎが苦みを感じる原因としては、まず「硫化アリル」と呼ばれる成分があげられます。硫化アリルはツンとした辛味を感じさせる辛味成分として知られていますが、辛みだけではなく苦味にもなります。
硫化アリルの含有量が特に多いのは青い部分です。そのため、長ねぎの青い部分を食べて「苦い」と感じたことがある方は多いでしょう。
ちなみに硫化アリルはユリ科の植物に含まれている成分で、玉ねぎやニラ、にんにく、らっきょうなどにも含まれています。
長ねぎに含まれている苦味を感じさせる成分は硫化アリルだけではありません。ポリフェノールも苦味を感じさせる原因の一つです。
ポリフェノールとは植物がもつ苦味や渋みの成分となる化合物の総称です。構造の違いによって様々な種類があり、長ねぎにはケルセチンやアントシアニンが含まれています。
ポリフェノールは植物が身を守るために生成される成分であるため、生育環境でうけたストレスなどが原因で含有量が増えたり、個体差が出ることがあります。
窒素肥料とは、その名の通り窒素が含まれた肥料のことです。野菜類などの農作物は窒素が不足すると生育不良を起こしてしまいます。そのため、窒素を含む肥料が欠かせません。
しかし、一度に大量の肥料をまいてしまうと、吸収した肥料を消費しきれず硝酸態窒素となり野菜の中に残留します。この硝酸態窒素が苦味やエグみの原因となります。
日本で栽培されている野菜の多くは栽培中の害虫の被害や病気などを防止したり、スムーズに成長するために薬剤が使われています。苦味を強く感じると「農薬の味なのでは?」と思う方も多いようですが、農薬による味への影響はないとされています。
日本で使われている農薬は、国に認められたもののみです。残留性が高く人体影響を及ぼすものや環境に影響を与えるほど毒性が強い農薬は、販売が禁止されていますし、使用が認められている農薬に関しても使用できる作物や時期、量などの使用基準が定められています。そのため、農薬が使われているからといって神経質になる必要はありませんが、心配な方はホタテ貝やホッキ貝を原料に作られたパウダーを使って残留農薬を落とすのがおすすめです。
上述したように長ねぎには苦味を感じさせる成分が含まれており、もともと苦味があります。しかし、腐敗によって苦味が強くなってしまうこともあります。
飲み込めないほどの苦味がある場合は、腐敗している可能性が高いです。味にも影響がでている場合は異臭がしたり溶け出しているなどの腐敗のサインが見られることも多いので、腐敗していないか確認しましょう。
腐敗した長ねぎの特徴については後述しますので、そちらを参考にしてください。
腐敗によって苦味が強くなってしまっている場合は残念ですが、食べることはできませんので破棄しましょう。長ねぎに限らず腐敗した食材には細菌が分布していることもあり、細菌の種類によっては腹痛や嘔吐などの症状が出てしまうこともあります。
特に消化機能が未熟な小さなお子様や免疫機能の弱っている高齢者などは注意が必要です。腐敗している可能性がある場合は破棄したほうが無難です。
硫化アリルやポリフェノールなど長ねぎにもともと含まれている成分による苦味は、食べても問題ありません。
硫化アリルの一種である「アリシン」には、血栓を予防する作用があり、食べると血がサラサラになるといわれています。また、血液中の悪玉コレステロールを減らして善玉コレステロールを増やす働きがある他、動脈硬化を遅くして心臓血管障害や脳血管障害を予防するといわれています。
また、ある種の硫化アリルは胃の中に住み着いているピロリ菌を殺す作用も期待できます。さらには、血糖値の上昇を抑えて糖尿病を予防したり血圧を下げて高血圧を防ぐ効果があるといわれています。
ポリフェノールも強い抗酸化作用があることで知られている成分です。
硫化アリルとポリフェノールはどちらも人体に害のある成分ではないので、食べても大丈夫です。
窒素肥料過多による硝酸態窒素が原因で苦味やエグみを感じる場合も、硝酸態窒素によって健康被害を起こすとはされていません。人間が摂取した硝酸態窒素は、大部分が肝臓を通じて尿となり排出されます。また、現在、農林水産省では栽培に使用する肥料の中の硝酸態窒素の含有量や与える量をガイドラインで規制されており、人体に対する影響を極力減らし安全に食べることができるものを生産するように指導しています。
しかし、硫化アリルやポリフェノールなどとは異なり人にとって硝酸態窒素は摂取する必要がある成分ではありませんので過剰摂取は避けるべきです。家庭菜園で長ねぎを栽培する際は硝酸態窒素の濃度が高くならないよう注意しましょう。
出典:野菜等の硝酸塩に関する情報(農林水産省)
硫化アリルやポリフェノールは体に良い成分だとはいっても、苦味や辛みが強いと食べにくいですよね。硫化アリルやポリフェノールによって苦味が強い長ねぎは調理をする前の下処理である程度軽減することができます。
長ねぎの辛みを抑えたい場合は、包丁を奥から手前に引きながらカットする「引き切り」にしましょう。反対に包丁を手前から奥へ押し出すようにカットする「押し切り」にすると、繊維が壊れるため硫化アリルやポリフェノールが出て苦味が強くなります。
また辛味成分の硫化アリルは揮発性の成分です。そのため小口切りやみじん切りなど空気に触れる部分が多くなると辛みや苦味が強くなる傾向があります。苦味や辛みを抑えたい場合は、太めに切って空気に触れる部分を少なくすると良いです。
揮発性が高い硫化アリルはカットした後にしばらくおいておくだけでも気化するため軽減されます。そのため、長ねぎの苦味や辛みが苦手な方は、カットした後にすぐに食べたり調理をするのではなく空気にさらしておくのがおすすめです。
ただし、カットした後に放置しておくと気化した硫化アリルやネギオールにより部屋中がねぎ臭くなってしまうことがあります。そのため、空気にさらすときは換気扇を必ずつけて臭い対策をしましょう。
苦味の原因となる硫化アリルとポリフェノールは共に水溶性の成分です。そのため水にさらすことで硫化アリルとポリフェノールは流出し、苦味を軽減させることができます。
しかし、水溶性の硫化アリルが流出するということは、その他の水溶性の栄養素も流出してしまうということです。例えば長ねぎに含まれている水溶性の栄養素にはビタミンCやカリウムなどがあります。苦味や辛みは抑えられてもその他の栄養素まで流出してしまうのはもったいないですよね。そのため、水にさらして苦味を軽減する場合は長時間水につけすぎないようにしましょう。
苦味軽減したい場合は一度冷凍してから使うのも手です。長ねぎを冷凍すると凍っていた水分が解凍されて溶け出すときに硫化アリルやポリフェノールなどの苦味となる成分も一緒に抜けるため辛みが軽減できると考えられます。
冷凍する前に空気にさらしたり水につけてから冷凍すると、より苦味が抜けます。ただし、水にさらす場合は水分をしっかり拭き取ってから冷凍しないと、さらしたときについた水分も一緒に凍ることになるため解凍したときにベチョっとしてしまいます。
また、苦味は抜けても冷凍焼けなどにより冷凍臭がきつくなり反対に食べにくくなってしまうこともあるので注意が必要です。長ねぎを冷凍するときは小分けにしてラップに包んでから密閉できる保存袋に入れて臭いがうつらないようにすることが大切です。さらに、冷蔵庫の急速冷凍機能を使っての冷凍や金属トレイの上にのせて冷凍で旨みを凝縮して短時間で冷凍することも大切なポイントです。
窒素肥料過多による苦味が気になる方は、有機栽培の長ねぎの購入がおすすめです。
有機野菜は、指定の化学肥料や農薬などの「無機質肥料」を使わず、魚粉や油粕などの植物性・動物性由来の「有機物肥料」を使って育てられた野菜のことをいいます。農林水産省が定めた「有機JAS規格」の条件を満たしたもののみが「有機野菜」として販売することができます。
有機野菜においても、JASが認定している31種類の農薬については使用が認められているため「無農薬」というわけではありませんが、肥料過多による味の変化は少ないと考えられます。肥料の種類によって野菜の味が変わってしまったり臭いがきつくなることはよくあるので、有機野菜を購入するのも一つの手です。
長ねぎの苦味が苦手な方には、生食よりも加熱調理がおすすめです。長ねぎの苦味の元になっている硫化アリルは、加熱することで揮発するため臭いが軽減され甘みも増すため美味しくなります。
加熱することで甘みが増すのは下記の4つの理由が考えられます。
辛味成分である硫化アリルの揮発によって、甘みを強く感じる
水分の蒸発によって、糖濃度が上昇する。
加熱による組織の破壊や軟化により甘味を強く感じる。
フルクタンの一部がフルクトース(果糖)に変わる。
加熱する前と加熱後の糖質量は変わりませんが、加熱をしたほうが圧倒的に甘くなるため、長ねぎが苦手な方や小さなお子様でも食べやすくなります。
また、青い部分の青臭さの原因である3-ヘキセノールも加熱することで揮発するため、青臭さも軽減させることができます。
長ねぎ特有の苦味や辛みがきつく食べにくいときは、濃い味付けにして食べるのも一つの手です。
例えば、長ねぎを太めにカットして照り焼きにすると、長ねぎを加熱することで甘みが増すのに加えて照り焼きのしっかりとした味付けで長ねぎ特有の臭いや味が気になりにくくなります。
薬味に使われることが多い長ねぎですが、実はグラタンなどの濃い味付けの料理にもピッタリの野菜です。様々な料理に幅広く使えるので、食べやすい味付けで食べてみてください。
長ねぎの苦味が気になりにくいおすすめのレシピをご紹介します。
Filyのレシピはすべて小麦粉・乳製品・白砂糖不使用です。
長ねぎを低脂肪・高タンパクのたこと合わせて。
たことねぎのガーリック炒めのレシピはこちら
みそとマヨネーズの焦げた風味が美味。ごはんとよく合います。
鮭のねぎみそマヨ焼きのレシピはこちら
長ねぎと玉ねぎを使った米粉の豆乳グラタンです。
ねぎとシーフードのグラタンのレシピはこちら
下記の特徴がある長ねぎは腐敗しています。苦味が強かったり、とても飲み込めないような味がすることも多いので、腐敗のサインが見られる場合は破棄しましょう。
腐敗した長ねぎの見た目の特徴は下記の通りです。
カビが生えている
溶け出している
全体的に変色している
茶色い汁が出ている
長ねぎの表面にフワフワとしたホコリのようなものがついている場合は白カビ、黒く変色している箇所がある場合は黒カビが生えています。じゃがいものような根菜は表面のみにカビが生えていて中まで侵食していなければ、変色している箇所を取り除けば食べることができるといわれていますが、長ねぎは柔らかい野菜ですので中まで侵食してしまいやすいです。カビはカビ毒を発生させ下痢や嘔吐などの中毒症状を起こすこともあります。カビの胞子は目に見えないほど小さいので、中まで侵食していないように見えても破棄するのが無難です。
長ねぎは変色しているからといって必ずしも腐敗しているとは限りませんが、全体的に茶色くなっていたり黒くなっている場合は腐敗している可能性が高いです。溶け出している箇所があったり、茶色い汁が出ているなどの異変が見られることもあるので、このような場合は破棄しましょう。
腐った長ねぎの臭いや味の特徴は下記の通りです。
鼻をつくような酸っぱい匂い・味
生ゴミのような臭い
カビ臭い
酸っぱい臭いや生ゴミの臭い、カビ臭いなどあきらかに普段感じないような臭いがするときは腐敗しています。
長ねぎに限らず食材は腐敗すると、多くのバクテリアが活動し酢酸発酵することが多いので鼻をつくような酸っぱい臭いがしたり酸っぱい味がします。この現象は味噌や醤油といった発酵食品にも起きていますが、発酵とは異なり次第に味や臭い、形が崩れるなど食材が変化していく現象はあるときに「腐敗」とよばれます。
また、カビが生えていないように見えてもカビ臭さを感じる場合は、見えない部分にカビの胞子が入り込んでいる可能性があります。カビには様々な種類があり、墨汁のような臭いを感じさせる「2-メチルイソボルネオール」や土臭さや泥臭さを感じさせる「ジェオスミン」といった代表的な悪臭を放つ種類がいます。また、カビ自体は臭いを感じさせる成分を出さない種類もいますが、カビ自体が臭いを出さなくてもカビの餌になる物質がカビの作用によって変化することで発生する臭いなどで、人に「カビ臭い」と感じさせます。心配な方は破棄するのが無難です。
長ねぎは腐敗すると臭いがきつくなることで知られています。明らかに普段は感じない異臭や飲み込めないほど変な味がする場合は破棄しましょう。
腐ったねぎの触感の特徴は下記の通りです。
ぐにょぐにょしている
糸を引いている
長ねぎが柔らかくなってぐにょぐにょしてしまっている場合は、腐敗が進み溶け出してしまっている状態です。表面に異変がなくても、中から腐っていくこともあるので明らかに普段とは違う柔らかさを感じる場合は破棄しましょう。
また、切り口から糸を引いたりネバネバしてしまっている場合は雑菌が繁殖している可能性が高いです。新鮮な長ねぎにもある程度のぬめりや粘りはありますが、腐敗が原因でねばりが出ることもあるので臭いや溶け出している箇所がないかなどしっかり確認することが大切です。
長ねぎに限らず食材は鮮度が落ちると味や食感が悪くなったり、臭いがきつくなったりします。新鮮な長ねぎを購入したほうが長く美味しく食べることができるので、できるだけ新鮮な長ねぎを選んで購入するようにしましょう。
新鮮な長ねぎには下記のような特徴があります。
緑と白がはっきりしていて、緑色が濃すぎない
葉先までピンとしていて枯れていない
境目がかたくしまっている
巻きがしっかりしていて、ツヤがある
長ねぎを長く美味しく食べるには、鮮度を保つよう正しく保存しておくことが大切です。ここからは長ねぎの正しい保存方法を紹介します。
長ねぎは、保存環境や野菜の状態にも寄りますが、常温で1週間ほど保存が可能です。長ねぎの最適温度は0〜2℃なので、夏場は常温保存するのは避けましょう。
ちなみに、泥が付いていると乾燥を防ぐことができるため比較的長持ちします。
泥付きのまま新聞紙で包み、紙袋や空き箱などに入れて立てて冷暗所で保存します。長ねぎだけに限らず野菜全般にいえることですが、野菜が育った環境で保存することが鮮度を保つポイントです。横にして保存すると、余計なストレスがかかって鮮度が落ちてしまうことがあります。
室温が高くなりやすい時期や、使いかけの長ねぎなどは冷蔵庫で保存します。
購入時のポリ袋のまま保存すると蒸れてしまうので、袋から出して保存するようにしましょう。
長ねぎの根元を切り落とし、緑色の部分と白い部分に切り分け、白い部分は2等分にカットします。全体を3等分するようなイメージです。乾燥を防ぐために緑色と白い部分をそれぞれ別に湿らせたキッチンペーパーで包み、その上からラップをします。冷蔵保存時もなるべく立てて保存することで、鮮度を保つことができます。
長ねぎの匂いが気になる場合は、冷蔵用保存袋に入れてから保存するのも◎。
この方法で冷蔵保存した長ねぎは2〜3週間ほど日持ちします。
料理に合わせてカットしてから冷蔵保存すれば、調理時間が短縮されます。
長ねぎの根元を切り落とし、緑と白の部分に分け、それぞれを料理に合わせてカット(斜め切り、小口切り、みじん切りなど)し、冷蔵用保存袋か保存容器に入れて保存します。保存容器に入れる場合は、容器の底にキッチンペーパーを敷いて傷むのを防ぎます。
カットした長ねぎは傷みが早いので、4〜5日を目安に食べ切るようにしましょう。
長ねぎを水につけてから保存する方法もあります。水を入れることで長ねぎの鮮度が保ちやすくなります。
長ねぎの根元を切り落とし、保存瓶に立てて入れられる長さにカットし保存瓶に入れます。保存瓶の底から2cmほどの高さまで水を注いで蓋をし冷蔵保存します。
この方法で冷蔵保存すれば約10日ほど日持ちします。3日に1度の頻度で水を取り替えるようにしましょう。水につけると長持ちしますが、切り口の断面からビタミンCや硫化アリルなどの栄養成分が溶出してしまうというデメリットも。栄養を効率よく摂取したい方は、別の方法で保存することをおすすめします。
冷蔵よりも長く保存したい場合は、冷凍保存がおすすめです。長ねぎの冷凍保存の期間は、約1ヶ月ほどが目安です。
冷凍する場合も、冷蔵保存と同様に緑と白の部分を切り分けて保存するのがポイント。緑色の部分は冷凍することで細胞が壊れるため、食感がよくなり食べやすくなります。
味噌汁の具材などに◎。凍ったまま調理に使用することができます。緑色の部分は汁物などの臭み取りにも使えます。
長ねぎの根元を切り落とし、緑と白い部分に切り分け、白い部分はさらに2等分にします。ラップで包み冷凍用保存袋に入れ冷凍室で保存します。
冷蔵庫の急速冷凍機能を使っての冷凍や金属トレイの上にのせて冷凍で旨みを凝縮して短時間で冷凍することが可能です。
料理に合わせてカットしておけば、すぐに調理に使えて便利です。
小口切り(厚さ1cmほどが◎)や斜め切りなど、料理に合わせてカットします。小分けにしてラップで包んで冷凍用保存袋に入れて冷凍庫で保存します。
細かくカットしすぎてしまうと、有効成分のアリシンが飛んでしまったり、筋が残って口当たりが悪くなってしまうので、厚めに切るのがポイントです。
長ねぎを調理しておけば、解凍後すぐに食べることができます。
例えばねぎみそは、おにぎりや油揚げなどに塗って食べることができるのでおすすめです。長ネギ1/2本をみじん切りし、しょうが(すりおろし)小さじ1、削り節1袋(3g)、みそ大さじ4と合わせてよく混ぜ、冷凍用保存袋になるべく平らになるように入れて冷凍します。
菜箸で折り目をつけて冷凍すれば、解凍時に折り目でポキっと折り、使いたい量だけを取り出すことができます。
その他にも天日干しやオーブンなどで水分を飛ばして乾燥保存したり、オリーブオイルや酢につけて漬け保存することもできます。長ねぎの詳しい保存方法についてはこちらの記事を参考にしてください。
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