にんにくに含まれる栄養素・成分、そしてそれらの効果について解説します。加熱によってにんにくの栄養素がどのように変化するのか、にも注目しています。
にんにくにはネギの仲間特有のアリシンという成分が含まれます。アリシンはビタミンB1を結合すると疲労回復効果があります。にんにくにはビタミンB1も含まれているので、「スタミナ野菜」として人気が高いと言えます。
また、野菜としては珍しくたんぱく質が豊富です。
上図に記された含有量はにんにく100gあたりです。にんにくは一度にたくさん食べられない野菜なので、実際にはそこまで多くの栄養素を摂取することは叶いません。
ビタミンCはたんぱく質からコラーゲンを合成する働きがあります。コラーゲンは、細胞間の結合組織で、血管や皮膚、骨、筋肉などを丈夫にします。コラーゲンによって、肌にハリ・ツヤが生まれます。シミの元であるメラニン色素の合成も抑えるなど美肌づくりに大切な栄養素です。
その他、ビタミンCには白血球を活性化させて免疫力を高める作用もあります。抗ストレスホルモンの合成にも欠かせない栄養素です。
日本人が不足しがちなビタミンB1が含まれています。
糖質がエネルギーに変わるときには酵素が働きますが、その酵素の働きを促す補酵素の役割を果たすのがビタミンB1です。糖質の分解をサポートし、体を元気にします。
また、糖質は脳や神経系のエネルギー源ですから、イライラを抑える作用もあります。
ビタミンB2は動物性食品に多いビタミンですが、植物性食品にもわずかに含まれています。ビタミンB2は脂質とたんぱく質の分解に働き、脂質の代謝を助けます。細胞の再生を助けて成長を促し、健康な肌や髪を作り、目や口などの粘膜を守ります。
ビタミンB2が不足すると、脂質が体内に蓄積されやすくなるため、太りやすくなり、ニキビが増える原因の一つになります。
またビタミンB2は「甲状腺ホルモン」が分泌されることで、体内で働けるようになるため、甲状腺の機能が低下してしまうと、ビタミンB2を補充しても生かしきれないことがあります。
ビタミンB6は肉や魚に豊富で、特に生魚に豊富です。野菜の中ではにんにくに多く含まれます。
ビタミンB6はたんぱく質を分解する補酵素としての役割を担います。血液のもととなる赤血球や神経伝達物質セロトニンの合成にも働きます。
また、免疫機能を正常に保つ役割も担います。
カリウムはナトリウム(食塩)と協力し細胞の浸透圧を維持しています。体内に十分なカリウムがあると、余分な食塩を排出して血圧を正常に保ちます。しかし、カリウム不足や塩分の過剰摂取が続く、むくみなどの原因になります。
その他、腎臓の老廃物の排出を助けたり、筋肉の収縮をスムーズにする働きもあります。
リンの約80%はカルシウムやマグネシウムと結合して歯や骨の構成成分となっています。体内でビタミンB1やB2と結合して補酵素になり、糖質の代謝促進をします。さらに、エネルギー代謝にも関わり、エネルギー発生やエネルギーの貯蓄に関わっています。さらに筋肉や神経などの機能を正常に保つ効果もあります。
リンとカルシウムは血液中で一定のバランスを保っているため、この2つの成分のバランスがとても大切です。カルシウムとリンの割合は1:1で摂取するのが理想的な比率とされていますが、加工食品や清涼飲料水をよく飲食する人はリンを多く摂取しがちですので、カルシウムもバランスよく摂取するようにしましょう。
鉄分はミネラル成分の一つです。体に必要な栄養素で、成人のからだには約3〜5gの鉄が存在しています。
鉄は大きく分けて2種類あります。一つは機能鉄といって赤血球のヘモグロビンの材料となり、酸素を運びます。
もう一つは貯蔵鉄といって肝臓や骨髄、筋肉などに蓄えられており、機能鉄が不足すると体内に放出されます。また、酵素の構成成分で、エネルギー代謝を助ける働きがあります。
アリシンは匂いや辛味成分の一つで、硫化アリルの仲間です。玉ねぎやにんにくに多く含まれる成分です。
アリシンは糖の代謝を促し、エネルギーを生み出すビタミンB1と結びついてその効果を持続させる働きがあります。また、ビタミンB1と協力して血糖値とコレステロール値の上昇を抑えます。さらに、アリシンには抗酸化作用があるので体内の老化予防が期待できます。
また強い殺菌力による風邪予防や、アリシンの香りによる食欲増進と消化吸収上昇の効果も期待できます。その他にも血液が固まりやすくなるのを防ぐため、血栓ができにくくなります。
参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス
三大栄養素とは炭水化物・脂質・たんぱく質を指します。
にんにくの可食部100gあたり
エネルギー...129kcal
水分...63.9g
たんぱく質...6.4g
炭水化物...27.5g
脂質...0.9g
食物繊維...6.2g
です。糖質は21.3gです(炭水化物から食物繊維を引いた値)。
他の野菜と比べてみると、
ピーマン:糖質2.8g、20kcal
トマト:糖質3.7g、20kcal
にんじん:糖質6.5g、35kcal
じゃがいも:糖質8.4g、59kcal
西洋かぼちゃ:糖質17.1g、78kcal
です。にんにくは他の野菜と比べて、高カロリー高糖質であることが分かります。
ちなみにごはん(白米)の糖質は100gあたり35.6g、カロリーは156kcalとなっています。チョコレートの糖質は、ミルクチョコレートの場合100gあたり51.9gで550kcalにもなります。
出典:文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)
アリインは切ったり潰したりして空気に触れると、アナリーゼという酵素の働きで、アリシンに変わります。
すりおろしやみじん切りなどにんにくを細かく切ることで細胞が壊れ、アリシンが活性化します。アリシンは強烈なにおいの元でもありますが、殺菌効果や生活習慣病予防の効果もあります。細かく刻むほどにその効果は発揮されますので、にんにくを食べる際はすりおろしやみじん切りがおすすめです。
すりおろして10分後のにんにくの殺菌作用(と香り)はマックスに。10分以降は効果が激減してしまうので、すりおろしたら10分以内に調理するようにしましょう。
加熱するとアリシンは減少します。
しかし、アリシンが「アホエン」や「トリスルフィド」という成分に変化します。アホエンは、加熱した油(60〜80℃の低温加熱に限る)を混ぜることで生成されます。アリシンは臭いが強いですが、アホエンは無臭です。
高温で加熱すると、アホエンに変化する前にアリシンが失われてしまうので、油で低温で炒めるのが良いでしょう。アホエンには血行促進作用や酸化ストレス抑制作用、動脈硬化予防作用などの効果が期待できます。
日によって調理法を変えるのがベスト◎。生で食べてアリシンをたっぷり摂る日と低温加熱してアホエンを摂る日があると良いでしょう。
にんにくは切り方によって、においの強弱が変わります。
繊維を断つようにして横に切ると、香りが強く出ます。これは細胞を壊すことでアリシンが活性化するからです。そのため、さらに細かく刻むとより香りが強くなり、一番香りが強くなるのはすりおろしです。活性化に時間がかかるのでみじん切りしたあと10分ほど放置しましょう。しかし揮発性であるため、長い時間刻んだまま放置するのはNGです。
にんにくを冷凍したときの栄養素の明確な数値はわかりません。
ただ、冷凍をしてもそこまで栄養素は変わらないとされています。冷凍保存をすると芽が出にくくなるので、おすすめです。芽が出てしまうとそちらに栄養が取られてしまい、にんにくの栄養素が減少してしまいます。
普段剥いてしまうにんにくの薄皮には、実はフェルラ酸など抗酸化作用のある成分がたくさん入っています。食物繊維は約4倍、ポリフェノールは約7倍など、捨ててしまうのはもったいありません。
調理をするとき一緒に炒めたり出汁の素にしてしまうのもいいですし、皮を炒めて粉末にし、沸騰したお湯を注いでにんにくの皮茶にするのもおすすめです。
黒にんにくは、白にんにくを特別な方法で熟成させて作られています。最初から黒いにんにくができるわけではありません。そのため「黒にんにくの種(苗)」は存在しません。また黒にんにくはよく、発酵して黒くなると言われていますが、発酵してるわけではありません。にんにくが黒くなるのは「メイラード反応」によるものです。
S−アリルシステインという成分は白にんにくのなんと約16倍、ポリフェノールは5〜10倍、その他、アルギニン(下記参照)やアスパラギン酸、チロリン、フェニルアラニン、アラニンなどのアミノ酸も2〜7倍以上アップします。
一般的に言われる「旬」とは、野菜や果実が全国的に露地栽培でよく収穫され、味が美味しい時期を指します。露地栽培とは、ハウスなどの施設を使わず屋外の畑で栽培する方法のことです。露地栽培で育ったにんにくはハウス栽培で育ったにんにくよりも太陽をたくさん浴びることができ、甘みや栄養価などが高いです。
にんにくの旬は5月〜9月です。地域によって収穫時期は多少ずれますが、にんにくの生産量が日本一である青森県では、梅雨に入る6月中旬あたりから収穫が始まります。北海道ではそれよりも少し早い5月中旬あたりから収穫期に入ります。
美味しいにんにくについて紹介します。
【見た目】
全体的に白く色にムラがない
外皮にハリやツヤがある
頭の部分がよく締まっている
ふくらみが均一でキレイな丸に近い
お尻の部分がしっかりと乾いている
【その他】
ずっしりと重みがある
実が固い
かすかににんにくの臭いがする
旬は5月〜9月
などがあります。
おいしいにんにくについて詳しくはこちらをご覧ください。
まずはにんにくを生で食べ過ぎるのはやめましょう。上述したように、にんにくを食べ過ぎて胃炎や下痢を引き起こすのはアリシンが原因です。アリシンは熱に弱いので、加熱することで刺激が弱くなります。
そのため、炒めたり煮込み料理に使うなど、生ではなく加熱してから食べるようにしましょう。
もし、にんにくを生で食べる場合の摂取量は1日1片〜2片を目安にしましょう。これよりも多く食べてしまうと、上述したように消化器官に悪影響を及ぼす可能性があります。あくまで目安ですが、まずは少量からスタートしてみて、体調に問題が起きないかどうかを確認しながら適量を定めましょう。
にんにくに含まれるアリシンは、ビタミンB1の吸収率を高める特徴があります。ビタミンB1は糖質が効率よくエネルギーに変わるのをサポートするビタミンです。
アリシンはビタミンB1と協力して、血糖値を正常に保つインスリンを分泌し血糖値の上昇を抑え糖尿病を予防します。コレステロール値の上昇も抑えるので、高血圧をはじめとする生活習慣病予防の効果が期待されています。さらにアリシンには抗酸化作用あるので、その点でも生活習慣病予防に役立つと言われています。
例えば生姜焼き定食は、ごはん(炭水化物)と豚肉(ビタミンB1)と玉ねぎ(アリシン)が含まれるので、栄養面でも理にかなっていて、最高のスタミナ料理と言えます。
にんにくは生姜と合わせると香りは弱くなりますが、抗酸化作用がアップすると報告されています。どちらにも抗酸化作用のあるアリシンも含まれています。
中華料理でもにんにくと生姜の組み合わせは多用されています。
出典:ニンニク併用の効果(日本家政学会誌)
少量ではありますが、にんにくにもビタミンB1が含まれているので、ごはんなど炭水化物と一緒に食べると、炭水化物が脂肪として蓄積されづらくなります。これはビタミンB1が炭水化物がエネルギーになるのをサポートするためです。ガーリックライスなど、まさにですね◎。
上述したように、臭いのもとであるアリシンは細胞を壊すことで活性化され臭いが強くなります。そのため、臭いをなるべく抑えるなら切ったり刻んだりせず、丸ごと食べるのがおすすめ◎。
さらに加熱することでアリシンが減るので、丸ごとホイル焼きにするといいでしょう。
にんにくは胃などへの刺激の他にも、たくさん食べてしまうと匂いが気になりますよね。その場合は食前に牛乳やりんごジュースを飲むと良いとされています。
牛乳に含まれるたんぱく質はにんにくの匂い成分であるアリシンと結びつき、匂いを抑える効果があります。食後だと、先にアリシンが体内で化学反応を起こしてしまうので、食前に飲みましょう。ちなみに、このたんぱく質はヨーグルトなどにも含まれます。さらに、リンゴ酸がアリシンを分解する作用があるので、同じく口臭予防に役立ちます。
栄養面を考えると、にんにくは豚肉との相性が抜群です。この記事では、にんにくx豚肉のレシピを紹介します。
Filyのレシピはすべて小麦粉・乳製品・白砂糖不使用です。
中華料理の定番である麻婆豆腐のレシピをご紹介します。このレシピでは、煮崩れしにくい木綿豆腐を使用しています。主菜としてお楽しみください。
ニラにもアリシンが含まれているので、豚ひき肉と好相性で、おすすめスタミナ料理です。
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芽キャベツのゴロッとした食感がおいしいひと皿。
このレシピでは玉ねぎも使っています。玉ねぎにもアリシンが含まれています。
豚肉と芽キャベツのワイン煮のレシピはこちら
キャベツと豚肉のペペロンチーノのレシピです。
このレシピでは、にんにくをみじん切りにします。みじん切りにすると、アリシンが活発化します。
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