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トマトが栄養ないと言われる理由|どんな効果効能がある?

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トマトが栄養ないと言われる理由|どんな効果効能がある?

トマトは栄養が豊富であるのにも関わらず、栄養がないと言われてしまうのはなぜなのでしょうか。実際にはあまり栄養がないのでしょうか?本記事ではトマトの栄養の有無について分かりやすく解説していきます。

トマトは栄養がないと言われる理由

水分量が多い

トマトは栄養価の大変高い野菜ですが、たまに「トマトは栄養がない」と言われてしまうことがあります。その最大の理由は水分量が多いためです。トマト100gあたり水分はなんと94gです。ほとんど水分で栄養ないのでは?!と思うかもしれませんが、多くの野菜が9割以上が水分です。例えば、きゅうりは95%、ゴーヤは94%、なすは93%、さやいんげんやキャベツ、にらは92%が水分です。

水分量が多い=栄養がない、と解釈してしまうと、ほとんどの野菜に栄養がないことになってしまいます。トマトは残りの6gに豊富な栄養が含まれており、様々な効能が期待できます。

トマチンやシュウ酸が含まれる

トマトは体によい栄養が豊富に含まれる一方、あまり摂取しない方がよい成分も含まれています。これもトマトは栄養がないと言われてしまう一因になっています。

トマトにはトマチンという人にとって毒性のある成分が含まれています。トマチンはトマトが虫に食べられないように作られている成分で、特に花や葉、茎、未熟の緑色のトマトに多く含まれます。大量に摂ると下痢や嘔吐などの症状が出ます。ただし、トマトが熟していくとトマチンの量も激減していくので熟したトマトを食べる分には特に心配はいらないと考えて大丈夫でしょう。

また、トマトは、胆石や尿路結石ができてしまうリスクのあるシュウ酸を微量ですが含んでいます。シュウ酸を多く含む食品にはほうれん草やたけのこ、コーヒーなどがあります。シュウ酸は水溶性のため、茹でると減らすことができます。また、カルシウムと一緒に摂ることで、吸収を減らすことができると言われています。

トマトジュースは栄養が少ないという説も

トマトジュース

トマトの加工食品は栄養が少なくなっている可能性があります。

トマトジュースはリコピンが多い赤色トマトを使用していることが多いため、リコピン量は日本で市販されている生のトマトよりも多く含まれています。ただし、ビタミンCなどのビタミンや食物繊維などは加工途中で失われてしまうため栄養価の面で生のトマトには劣る部分は多くあります。ジュースにすることで食物繊維が減るので吸収率が上がる利点はありますが、その分血糖値が上がりやすくなるので注意が必要です。

参考文献:津川友介(2018)『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』東洋経済新報社

トマトケチャップは、トマトをつぶし裏ごしして2.5〜3倍に濃縮したトマトピューレーに、食塩、砂糖、酢、香辛料、うま味調味料、玉ねぎ、にんにくなどを加えて濃縮して作られたものです。凝縮された分、食物繊維やカリウムなどの含有量は高くなりますが、塩分や糖質も高いので、摂り過ぎには注意が必要です。

トマトに不足する栄養素

「トマトは栄養ない」は完全に誤りで栄養面で優れた野菜ですが、万能なわけではありません。トマトに不足している、または全く含まれていない栄養素について解説します。

ビタミンB1

トマトにはビタミンB群が含まれますが、豊富なわけではありません。 例えば、日本人が特に不足しがちなビタミンB1。ビタミンB1は糖質をエネルギーにする(体を元気にする)ために欠かせないビタミンです。不足すると、体のだるさや倦怠感、足のむくみ、動悸の症状が出たり、太りやすくなったりします。また、糖質は脳や神経系のエネルギー源なので、ビタミンB1には精神を安定させる作用があると言われています。 ビタミンB1が豊富な食品には豚肉やごま、切り干し大根などがあります。

  • 豚肉...0.98mg

  • ごま(乾燥)...0.95mg

  • 切り干し大根...0.35mg

  • ブロッコリー(焼き)...0.27mg

  • にんにく...0.23mg

  • トマト...0.05mg

ビタミンD

トマトにはビタミンDが一切含まれていません。トマトに限らずほとんどの野菜にはビタミンDがありません。 ビタミンDの働きには正常な骨格と歯の発育促進があります。

また、小腸でのカルシウムとリンの腸管吸収を促進させ、血中カルシウム濃度を一定に調節することで、神経伝達や筋肉の収縮などを正常に行う働きもあります。

ビタミンDを多く含む食品は、きくらげ、干し椎茸、サケ、イワシ、サンマなどが挙げられます。

ビタミンK

トマトにはビタミンKもあまり含まれていません。

ビタミンKは血液を凝固させる成分を合成する働きがあり、出血を止める役割があります。月経過多の症状を軽減する効果も期待できます。また、出血を止めるだけでなく、血流が悪くならないよう凝固の抑制にも働きかけます。

さらにビタミンKは、骨から血液中にカルシウムが放出されるのを抑え、骨にカルシウムが沈着するのを助けてくれます。ビタミンDと並び、健康な歯や骨を作るのに欠かせないビタミンです。

ビタミンKが豊富な食品を比較すると、

  • モロヘイヤ…640μg

  • ほうれん草…270μg

  • ブロッコリー...210μg

  • トマト...4μg

です。

トマトに含まれる栄養素・成分

トマト

トマトに比較的豊富に含まれる栄養素・成分を紹介します。トマトの詳しい栄養素についてはこちらの記事をご覧ください。

リコピン

トマトの栄養素の中でも注目してもらいたいのは「リコピン」という栄養素。多くの人が耳にしたことであろうリコピンですが、実はトマトの赤色の成分なのです。トマトのほかにもスイカや金時人参、柿にも含まれています。

リコピンは抗酸化作用のある栄養素です。リコピンの抗酸化作用は同じ抗酸化作用を持つβ-カロテンの2倍以上、ビタミンEの100倍以上と言われています。肌や血管の老化を防いだり動脈硬化などを予防する効果が高いことがわかっています。

また熟すにつれてリコピン(と、カロテン)が増加し、緑色素のクロロフィルが消失するため赤色になります。

GABA(ギャバ)

GABA(ギャバ)もアミノ酸の一種です。野菜や果物に多く、その中でもトマトは含有量が高くなっています。ただし、明確な含有量は分かっていません。

GABAの代表的な働きはリラックス効果です。ストレスを感じたり運動をして興奮状態になると、脳内で活発にアドレナリンが分泌されますが、GABAはアドレナリンの分泌を抑制します。アドレナリン分泌が抑制されることで血圧が正常にし、酸素の供給を助けるとされています。

また、GABAはコレステロールと中性脂肪の増加の抑制する働きもあります。

グルタミン酸

トマトはグルタミン酸が豊富に含まれており、熟すにつれて量が増えます。ビタミンB2と合わせると吸収率が上がります。

グルタミン酸は体内で合成することが出来る非必須アミノ酸の一種で日本で最初に発見されたうま味物質です。

興奮系の神経伝達物質として働き脳機能を活性化させるので記憶力や学習能力、そして集中力を高める効果があります。また、脳の機能にダメージを与えるアンモニアを解毒・排出を促進する効果があります。さらに、血圧が下がります。

グルタチオン

グルタチオンは3つのアミノ酸が連なって出来たトリペプチドです。レバーや魚などに多く含まれる成分ですが、野菜の中だとトマトは比較的多く含まれています。

グルタチオンは肝臓の解毒作用に必要となるため、肝機能を強化する効果があります。また、抗酸化作用による生活習慣病予防の効果が期待できます。

さらに、今注目されているのがグルタチオンの美白効果です。シミの原因を予防し、美白のための治療薬としても使われています。

クエン酸

トマトの酸味はクエン酸によるものです。梅干しや柑橘系などに多く含まれている成分です。

クエン酸は食べた物を体内でエネルギーに変えるときに必要な栄養素です。そのため疲労回復に効果的と言われています。筋肉痛の予防にも役立ちます。さらに代謝アップにもつながるので、ダイエット効果も期待できます。

また、カルシウムや鉄、マグネシウムなどの吸収しにくいミネラルを吸収しやすくする働きもあるので、吸収されにくいと言われるミネラルと一緒に摂取するといいでしょう。この効果をキレート効果と呼びます。

β-カロテン

「トマトの赤色はカロテンではなくリコピンです」と言われることがあり、間違いではありませんが、トマトにはβ-カロテンも豊富に含まれています。

β-カロテンは体内で必要量がビタミンAに変換されます。皮膚や喉など全身の粘膜を健康に保ち、体外からのウィルスや細菌の侵入を防ぐことで免疫力をアップします。また、抗酸化作用もあるので、アンチエイジング効果や生活習慣病の予防効果が期待できます。

変換されたビタミンAは、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあります。視力を正常に保つ役目や視力低下の抑制効果、他にも皮膚の健康維持に関与していることから乾燥肌やニキビ肌の改善など美肌効果も期待できます。

参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス

トマトの効率的な食べ方・調理法

トマトの栄養を無駄なく摂取するコツを紹介します。

トマトは追熟するとリコピンが増加

実は、トマトは温かい地域が産地であり、寒いのが苦手です。冷蔵庫に入れっぱなしにすると、低温障害を起こしリコピンが大幅ダウン!これではもったいないですよね。

すぐにトマトを食べない場合は、まだヘタ周りなどにうっすらと青みが残ったトマトを選び、15〜25度くらいの直射日光が当たらない場所でヘタを下にして置いておくと、追熱して赤くなります。赤くなるということは、リコピンが増えている証拠です。最大60%もリコピンがアップします。

夏は避けた方がいいですが、暑くなりすぎない日は冷蔵庫の野菜室に入れる前に、やってみてください。

トマトを追熟させる方法については、下記の記事で詳しくご紹介してます。

トマトは油で加熱で吸収率アップ

トマトのリコピンは加熱することで細胞壁が壊れ吸収率がアップします。サラダで食べるよりも、炒めたりスープ、煮込み料理にして食べた方がリコピンは2〜3倍吸収することがわかっています。

また、加熱することでトマトに含まれるうま味成分であるグアニル酸が増加するので、うま味もアップします。

トマトに多く含まれるリコピンとβ-カロテンは油に溶けやすい性質を持ちます。油で調理すると吸収率がアップします。オリーブオイルなどの酸化しにくい油で炒めるのがおすすめです。
またサラダで食べる場合でもオリーブオイルやドレッシングをかけることでリコピンの吸収率が上がります。

リコピン摂取で考えると、イタリア料理はとても理にかなっています。カプレーゼなどはまさに!トマトにオリーブオイルを合わせていますよね。他にもパスタやピザなどもオイルを使い、加熱もしているのでリコピンを思う存分摂取することができます。

皮を剥かずに食べる

実は、トマトの皮には栄養が多く詰まっています。

トマトと言えばの栄養素であるリコピンやβ-カロテンが多く含まれています。正確に言うと、野菜や果物は皮のすぐ下の部分に栄養が詰まっていることが多く、剥いてしまうとその部分も一緒に取れてしまうことから皮ごと食べることが良いとされています。

またトマトの皮には不溶性食物繊維も多く含まれています。食物繊維を摂りたい人は皮ごとしっかり食べるといいでしょう。

ただ、皮には農薬や見た目を良くするワックスが付いていることが多いので、無農薬のものを買ったり食べる前にしっかり洗ったりと、皮ごと食べる際は対策が必要です。

トマトの残留農薬について、また洗い方については下記の記事をご覧ください。