トマトは収穫後も熟していく野菜です。特にまだ青い部分が残っている未完熟のトマトや固いトマトは追熟することで旨味が増す他柔らかくなり食べやすくなるなどのメリットがあります。本記事ではトマトの追熟について詳しく解説していきます。
一般的に食べられているトマトの色は赤色ですが、成熟する前のトマトは青色(緑)をしています。トマトは成熟して赤くなっている状態で食べる野菜で、青い状態のトマトは成熟する前の未熟果です。
近年では完全に完熟した状態で収穫しても日持ちする品種も増えてきましたが、基本的には日持ちさせるために完全に熟す前の一部が青い状態で収穫されて、スーパーなどの店頭に並びます。
完熟になる前のトマトには、ソラニンやチャコニン、トマチンといった天然毒素が多く含まれています。
ソラニンやチャコニンはじゃがいもの芽に多く含まれていることで知られていますが、実は未成熟のトマトにも多く含まれています。トマチンはソラニンと似た構造をもつアルカロイド配糖体です。トマトの表皮や花や葉、茎などに含まれていて、雑菌や害虫から実を守るために生成されるといわれています。
トマトに含まれている天然毒素は、熟していくにつれて減少していきます。一部青い部分が残っているぐらいでは中毒症状が出る可能性は低いといわれていますが、小さなお子様や高齢の方が食べる場合や心配な方は追熟して熟した状態で食べたほうが安心です。
出典:日本植物生理学会
トマトがもつ栄養素の一つには、多くの人が耳にしたことであろうリコピンがあります。リコピンはトマトの赤色の成分でもあり、完熟した状態のリコピンの含有量は、青い未成熟な状態の5.6倍以上であることがわかっています。また、旨みのもとになるアミノ酸の一種であるグルタミン酸の含有量も1.7倍になります。
そのため、トマトは追熟したほうが栄養価が高くなります。
バナナなど追熟することで糖度が増し甘味が増す果物や野菜もありますが、トマトの場合は追熟することで糖度が増すということはありません。トマトの糖度は収穫した瞬間に甘味が決まってしまいます。
「熟したトマトのほうが美味しい」と感じるのは熟すことで甘味が増すからではなく、旨味成分であるグルタミン酸の含有量が増えるためであると考えられます。
熟す前のトマトは青い(緑)ですが、熟すことで赤い色素になるリコピンの含有量が赤くなります。また、熟す前のトマトは水分量が少なくピンと皮が張っていて固いのですが、熟すにつれて水分量が多くなるため皮はほどよい弾力が出て柔らかくなっていきます。
完全に熟していないトマトでも家庭で簡単に追熟することができます。
トマトを追熟するときは、ザルなどにヘタを下にして置いて日光の当たる場所に置きます。ヘタを下にする理由は、接地面から腐敗していくのを防ぐためです。これはバナナを吊るして保存したほうが傷みにくくなるのと同じ原理です。
温度は15℃〜25℃が適温とされています。15℃〜25℃の常温においておくことで「エチレン」と呼ばれる熟成を促進する成分が生成されて熟していきます。
ただし、気温の高い季節は常温に置いておくと腐敗しやすいので注意が必要です。室温の温度上限が30℃程です。夏場に追熟させる場合も高くても30℃程度ということを頭にいれておきましょう。
トマトをより早く追熟させたい場合は、トマト以外の熟成を促すエチレンガスを出す食品と一緒に保存すると良いです。エチレンガスを含む食品としては、りんごやバナナなどがあります。
ちなみにトマトのように熟していくタイプの野菜であればりんごやバナナなどと一緒に保存することで、熟成を早めて美味しく食べることができますが、きゅうりやにんじん、キャベツなど熟していくタイプではない食品に関しては単に早く痛めてしまうため、別々で保存したほうが良いです。野菜や果物であれば必ずしもエチレンガスを出す食品と一緒に保存したほうが良いというわけではないので注意しましょう。
出典:エチレン処理が未成熟トマト果実のエチレン生成系におよぼす影響(日本食品低温保蔵学会誌)
上述したようにトマト自体もリンゴやバナナほどではないもののエチレンガスを放出します。トマトをポリ袋に入れて口を縛っておくと、エチレンガスの効果を高めることができます。
ただし、気温や湿度が高いとポリ袋が蒸れやすくなってしまいます。蒸れたままにしておくとカビが生えたり腐敗する原因となりますので、ポリ袋に入れる場合は時々口を開いて新鮮な空気と入れ替えると良いです。
黒い布や新聞をかぶせて追熟させる方法もあります。
トマトは新聞紙をかけて直射日光を遮断することで追熟するだけではなく甘味が増すといわれています。この方法に関しては科学的根拠は不明です。実際にやってみた方々の間でも賛否両論ありますが、実際にトマトを栽培している農家などでも実践されている方法ですので、試してみても良いでしょう。
新聞紙を使って追熟する場合は、新聞紙に包んだままビニール袋などにいれて常温保存します。新聞紙に包むことで乾燥を防ぐこともできます。
ミニトマトは、通常のトマトより収穫後の日持ちします。そのため通常のトマトとは異なり、一般的に熟成近い色周りで収穫されます。そのため販売されているミニトマトが未成熟で青いということがありませんが、家庭菜園でトマトを育てた場合に青い部分がある状態で収穫してしまったという場合は、トマトと同じ方法を使って追熟することができます。
例えばアボガドが固いとき柔らかくする方法として、電気毛布で包むなど温めると早く追熟することができますが、上述したようにトマトの場合は温度が高いと傷んでしまうため極端に温めることは避けたほうが良いでしょう。
上述したようにトマトが追熟するのに適した温度は15℃〜25℃です。冷蔵庫内の温度はメーカーによっても異なりますが、約2~6℃です。そのため冷蔵庫に入れてしまうと温度が低すぎてエチレンガスが生成されず熟さなくなってしまいますし、そのままずっと入れておくと熟す前に腐敗してしまいます。
追熟させるときは常温に置いておくことが大切です。夏場はクーラーが効いた部屋に置いておき熟したらすぐに冷蔵庫に移しましょう。
トマトをカットしてから追熟させるのはNGです。カットしたトマトは痛みやすく、常温で置いておくと腐敗してしまいます。トマトを追熟させるときはカットせずにまるまる常温において追熟させましょう。
未成熟の青いトマトは常温に置いて追熟した場合、半分以上青い場合は4日程、少し青みがかっている状態であれば、2日ほどで赤くなり完熟の状態になります。
上述したように完熟すると青い部分がなくなり赤くなります。また、ぴんとはっていた皮が柔らかくなります。完熟した後も熟していき、次第に実が崩れてしまうほど柔らかくなってしまうので、完熟を迎えたら冷蔵保存をして早めに食べきるようにしましょう。そのままにしておくと腐敗してしまいます。
上述の通り、トマトの追熟最適温度は15〜25℃です。熟したトマトを常温保存するとさらに熟して傷んでしまうため、熟したトマトは通年常温以外の保存がおすすめです。
ただし、冬場なら常温保存も可。その場合は8〜10℃以下になる場所で保存しましょう。暖房器具を使っている部屋などで10℃を超える場合は、冬場でも冷蔵庫で保存しましょう。
トマトの正しい保存方法の詳細はこちらの記事で解説しています。
冷蔵保存で保存した場合のトマトの賞味期限は2週間です。
トマトを丸ごとそのまま、もしくはトマトを切って保存する場合で、保存方法が異なりますのでそれぞれを詳しく解説します。
熟したトマトは通年冷蔵保存します。熟したトマトは、トマト同士がくっつくとその部分から痛みやすくなります。さらに、トマトに含まれるビタミンCが15%も失われてしまうことも!(常温で1週間保存した場合)
しかし、保存最適温度(8〜10℃)以下の冷蔵庫で保存すると低温障害を起こしてしまうので、冷蔵保存する場合は低温になりすぎない野菜室で保存します。
1つずつ丸ごとペーパーで包み、ヘタを下にしてポリ袋に入れて軽く口を閉じます。野菜室で約2週間保存できます。
切ったトマトはラップをして、そのままチャック付きビニール袋に入れて、野菜室で保管します。切ったトマトは傷みが早いので数日以内に使い切るようにしましょう。
冷凍でトマトを保存した場合の賞味期限は1ヶ月です。
トマトの細胞が壊れて旨味成分である「グルタミン酸」や「アスパラギン酸」などが外に出やすくなるため、甘みとうまみが増しより美味しく食べることができます。また、冷凍することによりトマトの酸味が和らぎます。ただし冷凍したトマトは食感が劣るので、生食ではなくソースやスープなどの加熱料理に使用しましょう。
トマトの皮むきが必要なレシピに使う時や、カットする時間がない時、用途が決まっていない時などはトマトを丸ごと冷凍するとよいです。
ヘタを取って、丸ごと冷凍用のチャック付きビニール袋に入れます。冷凍庫で約1ヶ月保存できます。
丸ごと冷凍したトマトを解凍する方法には自然解凍、水に入れて解凍、電子レンジで解凍などがあります。
自然解凍する場合は、凍ったトマトを5分ほど室温に戻します。しかし、水と一緒にトマトの汁も抜けてしまい味が劣ってしまうのでおすすめしません。
トマトの皮を剥く場合は、水にさらして解凍するのがおすすめです。トマトのお尻の方(ヘタの反対側)に十字に切れ目を入れ、水に30秒〜1分ほど浸けます。その後手で皮を剥きます。
電子レンジで解凍する場合は、耐熱皿にトマトをのせてそのまま解凍します。
皮を剥いたトマトはソースやスープなどに、皮つきのトマトはすりおろしてドレッシングなどにおすすめです。
ざく切りにして冷凍すると、料理をする時にすぐに使えて便利です。
トマトを水洗いし水けをしっかり取ります。好みの大きさにカットし、冷凍用のチャック付きビニール袋に入れて保存します。冷凍庫で1ヶ月保存できます。
トマトがなるべく重ならないように入れると、使いたい分だけ手で折れるので取り出しやすくなります。
上述の通り、冷凍トマトは解凍しても生食には適さないので、加熱して食べるのがおすすめです。解凍しすぎると旨味成分や甘み成分、栄養などが流れ出るため、冷凍のカットトマトは凍ったまま加熱料理に加えましょう。
なお、トマトソースを作って冷凍することも可能です。
トマトを乾燥させてから保存した場合の賞味期限も1ヶ月です。
野菜は干すことで保存期間が伸びるのはもちろんですが、栄養価が高まる、甘みが増す、噛みごたえが増す(いつもとは違う食感が楽しめる)、かさが減るのでたくさん食べられる(その分栄養が取れる)などのメリットがあります。
乾燥トマトはお味噌汁の具やサラダのトッピングとしてお使いいただけます。凝縮した旨みと、いつもと違う食感が楽しめます。
一番よい乾燥方法は天日干しです。
水洗いし水けをしっかり取ったトマトを輪切りにします。輪切りにしたトマトをザルに並べ、2日ほど天日干しします。干す前に塩を一振りしても◎。天日干ししたトマトは密閉容器に入れ常温で1ヶ月保存できます。
天日干しすることで、トマトに含まれるリコピンの量が4倍になるといわれています。リコピンは抗酸化作用のある栄養素です。リコピンの抗酸化作用は同じ抗酸化作用を持つベータカロテンの2倍以上、ビタミンEの100倍以上といわれています。肌や血管の老化を防いだりガンや動脈硬化などを予防する効果が高いことがわかっています。
天日干しができない方はオーブンでトマトの水分を抜くこともできます。鉄板の上にクッキングシートを敷き、その上にトマトを並べます。100〜110℃で20〜30分程度でゆっくり加熱します。
オーブンよりももっとお手軽なのがレンジで乾燥させる方法です。耐熱皿の上にキッチンペーパーを敷き、その上に輪切りにしたトマトを並べます。600Wで5〜8分ほど加熱します。
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