求肥は、練り物菓子の一種です。もちもちとした食感を楽しむことができます。本記事では求肥の原料や餅との違い、求肥の作り方などを詳しく解説します。
求肥(ぎゅうひ)は、練り物菓子の一種で、もち粉に水飴や砂糖を加えて煮て練り上げたものです。お餅に似たモチモチとした食感とほんのり甘みがあり、時間が経っても固くならないという特徴があります。和菓子との相性がよく、大福や練り切りの材料として使われることも多いです。
ちなみに「すあま」は主に上新粉と砂糖、塩、食紅を使った餅菓子で、餡などを使わずそのままの味を楽しむ食べ物です。求肥とよく似ていますが、材料や食べ方が異なります。
求肥は、中国で祭祀に使われてた「牛脾糖(ぎゅうひとう)」が平安時代に日本に伝わり広まった食べ物です。当時の求肥は玄米に黒砂糖を加えて練って作られていたため、茶色または黒色をしており、牛の皮のように柔らかかったことから「牛皮」と表記されていました。しかし、仏教思想から牛や豚を忌み嫌う時代であったため「求肥」と表記するようになりました。
室町時代の頃には茶道で出される菓子として用いられるようになり、腹持ちが良く日持ちもするという点で求肥を戦中の軍糧にあてた戦国武将もいたとされています。寛永年間(1624年〜1645年)に旧松江組松平直政が、求肥飴を作らせたという記録が残っており、その後求肥の加工品が商品として生産されるようになり、多くの人が求肥を口にするようになりました。
求肥の製造方法には「水練り」「ゆで練り」「蒸し練り」の3種類あります。
蒸し上げ法は、白玉粉を水で少し柔らかめにこねた後、30分程蒸してから臼でよくつき、砂糖を4〜5回にわけて十分に練り上げる製法です。蒸しすぎると黄色くなってしまうという欠点がありますが、大量生産に向いています。また、水練りで作る求肥に比べると日持ちしやすいです。
主流となっているのは、水練り法です。水練り法は蒸し上げより多めの水で白玉粉をとき、半透明になるまでに返して十分に練り上げた後、砂糖を数回にわけて練り上げます。十分に捏ね上げることでなめらかで柔らかい食感にすることがきるため、最も求肥特有の柔らかさが際立せることができる製法です。
ゆで練り法は、蒸し上げ法より少なめの水で白玉粉をこねて平らに成形した後、お湯で茹でて取り出し、砂糖を数回にわけて練り上げます。求肥はできるだけ純白に仕上がるものが良いとされており、ゆで練り法が最も純白に仕上がります。しかし、求肥は茹でるのが難しいため最も難度が高い製法です。
求肥の原材料は、
白玉粉
砂糖
水あめ
の3つです。白玉粉100に対して砂糖200、水あめ50の割合で配合します。
白玉粉は、精白したもち米を水洗いした後に石臼で水ごとすり潰し、すり潰した際の沈殿物を乾燥させたものです。
水あめは、デンプンを酸や糖化酵素で糖化して作られた粘液状の甘味料です。
白玉粉ではなくもち粉で作られることも多いです。もち粉は、水洗いしたもち米を乾燥させて粉状にしたものです。白玉粉と原料は同じですが、製造方法が異なります。もち米はお米の風味が強く白玉粉よりもきめが細かいのが特徴で、白玉粉はもち米のでんぷんを取り出しているので、なめらかでつるりとした食感でのびがあるという特徴があります。
求肥は、白玉粉やもち粉を主原料としているため小麦粉アレルギーの方も安心して食べることができます。
また、白玉粉やもち粉にはグルテンが含まれていません。グルテンは小麦や大麦、ライ麦などに含まれるたんぱく質の一種です。グルテンは消化されにくく、肥満やむくみの原因となる他、疲れやすくなるなどの症状が身体に出ることもあります。近年、グルテンを含む食べ物を食べない生活を送っている人も多く、求肥はグルテンフリーのお菓子としても人気があります。
求肥は餅類のなかで最も日持ちする食べ物で、常温で保存しても固くなってしまうことがありません。冷蔵保存の場合は表面が乾燥してしまわないようにアルミホイルやラップに包み、冷蔵庫で2日程度保存することが可能です。
しかし、求肥の材料である白玉粉はでんぷんが主成分であるため、冷蔵すると固くなりやすいです。そのため、求肥を自宅で保存するのであれば、冷蔵保存よりも冷凍保存がおすすめです。いちご大福など求肥を使った和菓子も、冷凍保存をすることで求肥の食感や香りをそのままに2周間程度保存することができます。食べる際は、常温に置き解凍します。ただし解凍した後は劣化が早いため、解凍したら速やかに食べましょう。
求肥の加工品は様々な種類があります。
中でも古い歴史をもつのが上述した「求肥飴(求肥糖)」です。求肥飴は、もち粉と砂糖、水飴、水を加えて熱しあげた練り上げたもので、ほどよい甘さと弾力のある食感で江戸時代に流行していました。求肥飴の一種として熊本県産の「朝鮮飴」が最も有名で、全国各地で様々な味付けをした求肥飴が名物菓子として販売されています。
その他にも色をつけたり求肥の中に餡を入れて丸く形を整えた「求肥まんじゅう」や、食紅で赤く染めた練り羊羹を求肥で巻いて棒状にした「きぬた」、昆布の粉末を練り込んだ「求肥昆布」などがあります。
求肥のカロリーは100gあたり275kcal程で、白米お茶碗1杯食べるのと同じです。
ちなみに、求肥にあんこを包んだ大福は100gあたり235kcalです。実はあんこのカロリーは求肥よりも低く、100gあたり155kcal(あずきあん、いんげんあんの場合)なので、大福を食べる際は、あんこの比重が高いものを選んだほうが低カロリーです。さらに、いちご大福などであればあんの量が少なくなるため、よりカロリーは低くなります。
求肥100gあたりにに含まれる成分は、下記の通りです。
炭水化物...62.5g(うち食物繊維0.1g)
水分...36.0g
タンパク質...1.3g
脂質...0.2g
灰分...微量
主な成分は炭水化物と水分であり、ケーキなどの洋菓子に比べると脂質が少ない食べ物なので、求肥を使った和菓子を含め、求肥はダイエット中のデザートや疲れたときの糖分補給に適しているといえます。ただし、脂質が少ないといっても炭水化物は糖質なので食べすぎには注意が必要です。
餅と求肥は、見た目やモチモチとした食感が似ているため「求肥=餅」と認識している人も多いですが、求肥と餅には明確な違いがあります。
まず、求肥と餅は原料と製法が違います。求肥は上述したように白玉粉が主原料で、白玉粉を水でといて砂糖や水飴と練り合わせて作ります。餅はもち米が主原料で、蒸したもち米を熱いうちについて作ります。また、求肥は製造の過程で砂糖や水飴を加えるため甘みがあり、求肥をそのまま食べることも多いです。餅は製造過程で調味料を加えないため、出来上がった後は醤油をつけたりきな粉をまぶしたりして食べるのが一般的です。
さらに、冷めた後の食感にも違いがあります。求肥は冷めても固くなりませんが、餅は冷めると固くなってしまいます。これも求肥を製造する過程で砂糖や水飴を加えていることが大きく関係しています。餅などのデンプンが含まれる食べ物は、基本的に時間の経過とともにデンプンが老化し硬くなる性質があり、求肥もデンプンを含みます。しかし、糖分には水分を保持する働きがあるため、糖分を加えている求肥は冷めてもやわらかい状態を維持することができます。
羽二重餅は名称に「餅」が付いていますが、餅ではありません。羽二重餅(はぶたえもち)は、もち粉を蒸し上げ法で作られた求肥で、福井県の銘菓として知られています。
福井県の名産品である「羽二重織」と呼ばれる絹織物を広めるための土産品として、羽二重織のように光沢があり、柔らかく口の中でとろけるように仕上げてあるため、羽二重織にちなんで「羽二重餅」という名前がついています。
求肥と羽二重餅の違いを強いて上げるのであれば、羽二重餅のほうが一般的な求肥よりも使われるもち粉が上質であるということです。羽二重織を再現するために、上質なもち粉を使用しています。羽二重餅はそのまま食べたり、ぜんざいに浮かべて食べることが多いです。
わらび餅も名称に「餅」がついていますが、餅ではありません。ワラビの根からとれるデンプンを乾燥させて粉末にした「わらび粉」に水と砂糖を加えて作る和菓子です。
求肥とは異なり、もち米を原料とするものは使用していません。
また、わらび餅の見た目は半透明〜ねずみ色で、ぷるんとした弾力があり口溶けが良いのも求肥とは異なる点です。わらび餅は水や砂糖の量によって固さが変わるので、お店によってしっかりと噛みごたえがあるものや、口に入れるとすぐに溶けてしまうほど柔らかいものなど様々なタイプがあります。
わらび餅は、きな粉や黒蜜をかけて食べることが多いです。
求肥は自宅でも簡単に作ることができます。
もち粉...50g
上白糖...80g
水...100ml
片栗粉...適量
求肥の原材料には水あめが含まれていますが、水あめを使用しなくても作ることができます。
まず、耐熱容器にもち粉を入れたら、ダマにならないように水を砂糖を少しずつ加えて混ぜます。ダマがなくなるまで混ぜたら、ラップをかけずにレンジで2〜3分加熱します。加熱したら、木べらでよく混ぜて再び1分程度加熱します。再加熱後、半透明になるまで練ります。半透明になってツヤが出てきたら、粗熱をとります。粗熱が取れたら、片栗粉を敷いたバットの上に求肥をのせて、さらに上から片栗粉をまぶします。
レンジを使用することで蒸し上げ法と同じ製法で簡単に作ることができますが、蒸し器がある場合は、蒸し器で蒸してもOKです。蒸し器を使う場合は、蒸し器に布巾などを広げ、もち粉・上白糖・水を混ぜた生地を流し入れ、フタをして15分程蒸します。
出来上がった求肥はそのまま食べることもできますが、あんこやフルーツを包んで大福にしたり、クリームやフルーツを巻いて求肥クレープにすることもできます。保存する場合は、ラップに包んで冷凍保存しましょう。
白玉粉を使って求肥を作ることができます。
ただし、もち粉とは製造方法が異なるため食感などに違いがでます。白玉粉はもち米のでんぷんを乾燥させて粉状にしたものなのでもち粉で作る求肥と比較するともちもち感が劣ります。
白玉粉は、もち米を原材料として作られる米粉の一種です。
白玉粉は、もち米を水洗いして水に浸して吸水させ、原料に対して1〜2倍の水を加えながら石臼で水びきします。この時に出る乳液をふるいにかけて粗粒を分離して、再び粗粒を水びきしたら、沈殿したもの(でんぷん)を圧搾機で脱水し、脱水したものを賽の目切りにして乾燥させるという製造方法で作られます。
白玉粉の見た目は白く、細かいかたまりがいくつもあってザクザクしています。白玉粉の細かいかたまりは、触れるとすぐに崩れます。
白玉粉はもち米のでんぷんを乾燥させて作られているため、こめ粉というよりはでんぷん粉に近いです。白玉粉にはやわらかくなめらかな食感が出る他、冷めても固くならないという特徴があり、白玉団子や大福などの和菓子に使われることが多いです。
白玉粉のカロリーは100gあたり347kcalです。
片栗粉(かたくりこ)はもち粉の代用品として求肥を作ることができます。
ただし、食感などに違いがでます。片栗粉はでんぷん粉であるため、片栗粉で求肥を作るともちっとした食感にはなりません。
片栗粉は、じゃがいものでんぷんが原料の粉です。もともとはユリ科植物「カタクリ」の球根からとれるでんぷんを使用して作られていたので、「カタクリ粉」と呼ばれています。
片栗粉は、じゃが芋をすりつぶして液体状にした後、繊維質や不純物を取り除いて洗浄し、(2~3回繰り返す)しばらく置いて沈殿したデンプンを取り出して乾燥させるという製造方法で作られます。
片栗粉の見た目は白いです。しっとりしていて、握るとギュっとした感触があり指跡が残ります。
片栗粉は、水と熱を加えることで強いとろみがつく特徴があり、あんかけなど料理にとろみをつけるのに使用することが多いです。また、天ぷらなどの揚げ物の衣としても使われます。
片栗粉100gあたりのカロリーは338kcalで、糖質量は81.6gです。
上新粉をもち粉の代用品として求肥を作ることもできます。
ただし、食感などに違いがでます。上新粉はうるち米を原料に作られた米粉であるため、上新粉で求肥を作るとコシが出て歯ごたえのある食感に仕上がります。
上新粉(じょうしんこ)は、うるち米を原材料として作られる米粉の一種です。
上新粉は、2ロール製法という製造方法で作られています。まず、水洗いしたうるち米を乾燥させロール製粉機で製粉します。製粉したものをふるいにかけて粒子の粗いものと細かいものとでわけたもののうち、目の細かいほうが上新粉になります。
2ロール製法は、洗米した後にもち米を乾燥させてロール製粉機で製粉する製法です。胴搗き製法したものよりも強い粘性がありますが、水分量が少ないため硬化が早いです。
胴搗き製法は、精米後にお米の水分が多く保たれた状態で、杆搗き臼(きねつきうす)で徐々に細かくしていく製法です。ロール製法よりも時間はかかりますが、より良い粉が得られます。関西地方では古くよりこの製法が主流です。
上新粉の見た目は白く、さらさらとしています。
上新粉はお湯を加えてこねるとお餅のようになる特徴があるため団子やすあま、ういろうなどの和菓子を作るときに使うことが多いです。また、焼き菓子や洋菓子を作るときの小麦粉の代用品をして使われたり、料理のとろみ付けに使うこともできます。
上新粉のカロリーは、100gあたり約362kcalです。
米粉をもち粉の代用品として求肥を作ることもできます。
ただし、食感などに違いがでます。米粉は上新粉と同じくお米を原料に作られているためもちもちとした食感を出すことはできません。また、粒子が細かいためなめらかな口当たりになります。
米粉とは、米を製粉した白い粉の総称です。
米粉は大別してもち米から作られるものと、うるち米から作られるものがあります。
もち米からなる代表的な米粉は白玉粉です。
うるち米からなる代表的な米粉は上新粉です。
スーパーなどで「米粉」や「米の粉」として売られているものには「製菓用米粉」とグルテンを添加した「製パン用米粉」の二種類があり、原料はうるち米なので、上新粉と同じですが上新粉とは製法が異なります。
一般的には、うるち米からロール製法で作られた粉が「上新粉」、胴搗き製法で作られた粉がスーパーなどで売られている米粉や米の粉に分類されます。
米粉はクッキーやケーキなどの洋菓子や焼き菓子を作るときの小麦粉の代用品として使われます。
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