じゃがいもにアク抜きは必要なのでしょうか?料理によって違うのでしょうか?そもそもじゃがいもにはアクがあるのか、どのようにアク抜きをすればよいのか徹底解説していきます。
アクとは、一般的に苦味やえぐみ、渋みなど味を損ねる成分の総称です。
アクには害のあるものと、そうでないものがあります。害のある代表的なアクには、たけのこのシュウ酸などがあります。体に害のあるアクは必ず下茹でや水にさらす工程を実施する必要があります。
一方、害のないアクの場合は、料理によってアク抜きを実施したり、しなかったりします。料理の味を良くするために行うこともありますが、食感が悪くなるのでやらない場合もあります。
また、アクの中には野菜を変色させるものもあります。しかし、変色させる成分が全てアクというわけではありません。変色を防ぐための下ごしらえは「色止め」であり、アク抜きではありません。
じゃがいもに苦味やえぐみを感じる場合は、天然毒素である可能性が大です。天然毒素とは具体的に有毒な配糖体であるα-ソラニンやα-チャコニンなどのグリコアルカロイドです。
ソラニンやチャコニンは日光を浴びることで生成され、じゃがいもが害虫などから身を守るために生成されると言われています。
グリコアルカロイドは人体に有害で、食べると下痢や嘔吐などの中毒症状が出る可能性があります。そのため、食べる前に取り除く必要があります。
たけのこやほうれん草などのアクとなる成分、シュウ酸やポリフェノールは水溶性であるため水にさらすことでアクを抜くことができます。
しかし、一般的な「アク抜き」である「水にさらす」では、じゃがいものアクとなる天然毒素グリコアルカロイドをすべて取り除くことができません。また、加熱をしても分解されにくい特徴があります。
したがって、じゃがいものアク抜き(水さらし)はマストではありません。なぜなら、天然毒素がある場合は水にさらしても取り除くことができないですし、天然毒素がない場合はほとんど苦味やえぐみはないためです。天然毒素の軽減方法は後述しますので、そちらを参考にしてください。
ただし、料理によっては他の理由で、じゃがいもは水にさらした方がよい場合がありますので、じゃがいもを水にさらす目的と方法を解説していきます。
出典:ジャガイモによる食中毒(神奈川県)
じゃがいもを水にさらす目的は下記の通りです。
じゃがいもには多くのでん粉が含まれており、でん粉はホクホクとしたじゃがいも特有の食感を出す一方で、煮崩れの原因となります。
特にじゃがいもは火が通るのに時間がかかるため、カレーなどの煮込み料理を作るときには長い時間加熱することで煮崩れしてしまいやすいです。
煮崩れしてしまうと見た目も悪くなってしまいますし、料理全体がザラっとした口当たりになってしまうため、煮崩れ防止として水にさらすことが多いです。
カットしたじゃがいもは、空気中の酸素に触れることで酸化し赤っぽく変色したり、茶色っぽく変色してしまいます。変色しても腐敗しているわけではないので食べることはできますが、見た目が悪くなってしまうのが難点です。
そこで、じゃがいもをカットしてから調理をするまでに時間が空く場合は、水にさらして空気中の酸素に触れないようにしておくことでじゃがいもの新鮮な色味をキープすることができます。
でん粉は加熱すると焦げ目がつきやすくなる性質があります。
上述したようにじゃがいもは中まで火が通るのに時間がかかるので、フライパンで炒めたり揚げたりする場合にはしっかりと火が通る前に表面だけ焦げてしまいます。
水にさらしてでん粉をある程度落としておくことは、じゃがいもが焦げてしまうのを防ぐことに繋がります。
揚げ物にする場合など、じゃがいもから出てくる粘りによってじゃがいも同士がくっついてしまい、上手く加熱できなくなってしまうことがあります。
特にでん粉に加えて水分量も多いメークインなどの粘質系のじゃがいもは粘りが強く出るので、フライドポテトにしたい場合など、くっついてしまうのを防ぎたいときには水にさらしてでん粉を落としておくことが重要です。
じゃがいものアク抜きは必須ではありませんが、料理によっては下ごしらえを実施することがあります。
方法はとても簡単で、皮と芽を取り除いたじゃがいもを料理に合わせてカットし、水を張ったボウルにじゃがいもを入れます。
酢水(水量に対して3%の酢)にさらす方法もあり、酢を加えることで酵素の働きを抑え変色を防いだり、ペクチンの分解が抑えられシャキシャキとした食感を保ちやすくなります。酢水にさらす場合も10分ほど浸け、酢の匂いが残りやすいのでさらした後は水洗いします。
じゃがいもを水にさらす時間は10分程度です。
じゃがいもを水にさらしすぎるのは避けましょう。長時間さらしてしまうことで、じゃがいもに含まれる栄養素が流れ出てしまうためです。水(酢水)にさらすのは10分程度にしましょう。
それ以上さらしても、食べられないことはありませんが、じゃがいもの栄養を効率よく摂取することが難しくなってしまいますので注意が必要です。
上述したように、じゃがいもを水にさらすことで、じゃがいもの煮崩れを防ぐことができますので、形をキープしたまま調理することが可能です。
じゃがいもの煮崩れには主にデンプンとペクチンの2つの成分が関与していると考えられています(たんぱく質も影響しているとの見解もあります)。
じゃがいもにはデンプンが豊富に含まれています。デンプンは加熱して水を加えることで糊化(「こか」と読みます。でん粉が水を吸ってのり状になること)して膨らむ性質があります。それにより細胞同士の結びつきが弱まり、煮崩れしてしまいます。
そこで、じゃがいもを水にさらすと、細胞膜のペクチン(食物繊維の一種)が水中の無機イオンと結合して不溶化し、細胞内のデンプンの吸水を防ぎ、煮崩れしにくくなります。
一般的に水にさらすじゃがいもの料理
・煮物
・カレー
・ポトフ
・味噌汁
じゃがいもは、料理によっては水にさらさない方がよい場合があります。
水にさらすことで、ペクチンに化学反応が起こり、デンプンの吸水が妨げられます。その結果、デンプンが膨らまずホクホクとした食感にならなくなったり、粘り気がでなくなったりします。
水にさらさない方がよいじゃがいも料理
◯ホクホクとした食感を楽しむ料理
・マッシュポテト
・粉吹きいも
・ポテトサラダ
・じゃがバター
◯粘り気を活かした料理
・ガレット
・ハッシュドポテト
水にさらした時に水が白く濁ったり、白い粉のようなものが沈んでいることがありますが、これはアクではなくデンプンです。デンプン(炭水化物の一種)は白い粉末状で、デンプン自体は水に溶けません。デンプンは水に沈澱するため、「澱粉(でんぷん)」という名称になりました。
ちなみに、デンプンの含有量はじゃがいもの品種によって異なります。一般的には男爵やキタアカリなどのホクホクとした食感の品種はデンプン量が多く、メークインやはるかなどのしっとりとしたじゃがいもはデンプンの含有量が少ないと言われています。
じゃがいもを水にさらす理由など関してはこちらの記事で詳しく解説しています。
じゃがいもには有害物質であるソラニンやチャコニンが含まれている場合があります。これらの成分を食べると中毒を起こし、腹痛やめまいなどを引き起こす可能性があります。
ソラニンやチャコニンは水にほとんど溶けないので、水にさらすだけで取り除くことは難儀です。また、ソラニンやチャコニンは加熱しても、ほとんど分解されません。
じゃがいもの有毒物質を取り除くには、ソラニンやチャコニンが多く含まれるといわれる芽や皮を厚く切り取る必要があります。
皮が緑色になっているじゃがいもは要注意です。じゃがいもが腐っているというわけではありませんが、日光や蛍光灯などの光に当たることでソラニンやチャコニンの量が増え緑色に変色してしまいます。普通のじゃがいもにはソラニンやチャコニンが100g中に2〜13mg程度含まれますが、緑色になったじゃがいもには30〜50mg、発芽部分には500mgも含まれることがあります。そのため、緑色のじゃがいもを調理に使用する際は、通常よりも少し厚めに皮を剥くようにしましょう。
じゃがいもの皮はピーラーを使えば簡単に剥くことができます。じゃがいもの芽の部分は、ピーラーに付属している耳(芽取り器)や包丁を使って切り落とします。
ソラニンやチャコニンは加熱しても分解はされませんが、調理することで煮汁に溶け出します。そのため、調理した後に煮汁を茹でこぼすことによって、ソラニンとチャコニンを取り除くこともできます。
ただし、すべてが溶け出すわけではないので、皮を厚めに切ることが、ソラニンやチャコニンの摂取を防ぐのには必須です。
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