じゃがいもを調理する前に水にさらすことがありますが、そもそもなぜ水にさらすのでしょうか?この記事では、じゃがいもを水にさらすメリットやデメリット、水にさらす方法を詳しく解説しています。
じゃがいもを水にさらすのはマストではありません。料理によっては水にさらした方がよい場合と、逆に水にさらさない方がよい場合があります。じゃがいもを水にさらすメリットとデメリットを解説しながら、どのように使い分ければよいか分かりやすく紹介していきます。
じゃがいもを水にさらすことで、煮崩れを防ぐことができます。じゃがいもの煮崩れには主にデンプンとペクチンの2つの成分が関与していると考えられます(たんぱく質も影響しているといわれています)。
じゃがいもにはデンプンが豊富に含まれています。デンプンは炭水化物の一種で、加熱して水を加えることで糊化(「こか」と読みます。デンプンが水を吸ってのり状になること)して膨らむ性質があります。それにより細胞同士の結びつきが弱まり、煮崩れしてしまいます。
そこで、じゃがいもを水にさらすと、細胞膜のペクチン(食物繊維の一種)が水中の無機イオンと結合して不溶化し、細胞内のデンプンの吸水を防ぎ、煮崩れしにくくなります。カレーや煮物などにじゃがいもを使う場合は、この性質を利用することで形をキープしたまま調理することが可能になります。
また、じゃがいもを水にさらすことで煮崩れの原因になるデンプンそのものを少しばかり取り除くこともできます。デンプン自体は水には溶けませんが、水にさらすことで水の中に沈みます。デンプンは水に沈殿することから「殿粉(デンプン)」という名称がつきました。
一般的に水にさらすじゃがいもの料理
・煮物
・カレー
・ポトフ
・味噌汁
じゃがいもを切ってしばらく放置していると、切り口が茶色っぽく変色することがあります。茶色く変色することを「褐変(かっぺん)」といいます。じゃがいもの褐変は、水にさらすことで防ぐことができます。
じゃがいもが褐変するのは、じゃがいもに含まれるポリフェノール物質が、ポリフェノラーゼなどの酵素によって酸化されるためです。また、チロシンという非必須アミノ酸成分がチロシナーゼという酵素によって色素成分であるメラニンに変わるのも褐変の原因の一つと考えられています。
このような変色は、空気を遮断することで防ぐことができるので、カットしたらすぐに水にさらします。ただし、水にさらしすぎると栄養成分が流れ出てしまうので要注意です。
デンプンは炭素を含んだ有機物ですので、加熱すると焦げます。したがって、デンプンを水にさらして取ることで、焦げ防止になります。
じゃがいもは中まで火が通るのに時間がかかるので、フライパンで炒めたり揚げたりする場合にはしっかりと火が通る前に表面だけ焦げてしまいます。
デンプンを落としておくことは、生焼けを防止することにも繋がります。
揚げ物にする場合など、じゃがいもから出てくる粘りによってじゃがいも同士がくっついてしまい、上手く加熱できなくなってしまうことがあります。
特にデンプンに加えて水分量も多いメークインなどの粘質系のじゃがいもは粘りが強く出るので、フライドポテトにしたい場合など、くっついてしまうのを防ぎたいときには水にさらしてでん粉を落としておくことが重要です。デンプンを落としておくことで、食感もよくなります。
上述したようにじゃがいもを水にさらすのはマストではありません。水にさらさずに調理をすることもできます。その理由を詳しく解説します。
ごぼうやなすなどの野菜を水にさらす目的のほとんどがアク抜きです。
アクとは、苦味やエグみを感じさせ料理の味を落としてしまう成分の総称です。ごぼうやなすなどのアクとなる成分の多くはポリフェノールなどの水溶性の成分なので、水にさらすことで落とすことができます。
一方、じゃがいものアクとなる成分は有害物質であるソラニンやチャコニンです。ソラニンやチャコニンは、害虫などの被害から身を守るために生成されると言われていて、特に日光に当たると多く生成されます。
ソラニンやチャコニンは苦味やエグみを感じさせるだけではなく、中毒を起こし、腹痛やめまいなどを引き起こす可能性があるので注意が必要です。
しかし、ソラニンやチャコニンは水にほとんど溶けないので、水にさらすだけで取り除くことは難儀です。また、ソラニンやチャコニンは加熱しても、ほとんど分解されません。じゃがいもの有毒物質を取り除くには、ソラニンやチャコニンが多く含まれるといわれる芽や皮を厚く切り取る必要があります。
水にさらしてもソラニンやチャコニンを完全に取り除くことは難しいのに加え、多く生成されていなければ、苦味はほとんどないので、じゃがいもを水にさらすのは必須ではありません。
じゃがいもを水にさらすことで煮崩れしにくくなるとメリットでご紹介しましたが、煮崩れを防ぐ必要のない料理では、水にさらすデメリットもあります。
例えば、マッシュポテトや粉ふきいもなどホクホクとした食感を活かす料理では、水にさらさない方がベターです。前述した通り、水にさらしてしまうとペクチン(食物繊維の一種)の作用により、茹でてもデンプンが膨張せず(つまり固くなり)ホクホクとした食感になりません。
また、ガレットやハッシュドポテト(ハッシュブラウンズ)などの粘質を活かしたじゃがいも料理では、水にさらしてデンプンを取り除いてしまうと、じゃがいも同士がくっつきにくくなってしまいます。
これらの場合でも褐変を防ぐために水にさらすことがありますが、短時間にするように注意しましょう。
水にさらさない方がよいじゃがいも料理
◯ホクホクとした食感を楽しむ料理
・マッシュポテト
・粉吹きいも
・ポテトサラダ
・じゃがバター
◯粘り気を活かした料理
・ガレット
・ハッシュドポテト
じゃがいもを水にさらすことで、じゃがいもに含まれる栄養素が流出してしまい、じゃがいもの栄養素を効率よく摂取することが難しくなります。
特筆すべきなのが、ビタミンCです。「畑のりんご」と呼ばれるほど、じゃがいもにはビタミンCが豊富に含まれています。可食部100gあたりに含まれるビタミンCの量は28mg!そんなビタミンは水溶性なので、水にさらすと断面からどんどん流れ出ていってしまいます。
また、水溶性成分はビタミンCだけではありません。体内の余分な塩分を排出し、バランスを調整してくれる「カリウム」も流出してしまいますので、長時間水にさらしてしまうと栄養素を無駄にしてしまいます。
参照:食品成分データベース(文部科学省)
じゃがいもには様々な品種がありますが、品種によってデンプンの含有量が違い、それにより食感に違いが生まれます。
一般的に、男爵いもやキタアカリなどのホクホクとした食感の品種は、デンプンの量が多いといわれています。メークインやはるかなどのしっとりとしたじゃがいもは、デンプンの含有量が少ないといわれています。
デンプンの量が多いと、茹でたときに膨張するため、細胞壁が壊れて細胞壁内の水分が流出し、弾力のない粉質(ほくほく)になり、食べたときに舌の上が乾いたような顆粒(かりゅう)状になった感覚があります。
品種の使い分けは好みによって決まります。この料理は男爵で作るべき、などといった決まりはありません。
水にさらすか否かですが、これは煮崩れや変色を防ぎたいか否かによって決まるので、品種の違いは関係ありません。一般的にメークインなどしっとり系品種は煮崩れしにくいといわれているので、煮崩れを防ぎたい料理=じゃがいもを水にさらす料理では、メークインの登場頻度が多くなる傾向にあり、結果的にメークインなどしっとり系じゃがいもを水にさらす機会が多くなるかもしれません。
最後に、じゃがいもの水にさらす方法を紹介します。
じゃがいものアクを抜く方法はとても簡単です。
じゃがいもの皮を剥いてお好みの大きさにカットし、水を張ったボウルに10分さらしておきます。
水に酢を加えることにより、酵素の働きを抑え変色を防いだり、ペクチンの分解が抑えられシャキシャキとした食感を保ちやすくなります。
水に対して3%の酢を加えます。水500mlに対して大さじ1が目安です。酢水につける時間は10分程度にします。しかし、酢水につけたじゃがいもに酢の匂いが移るので、酢水にさらした後はじゃがいもを水洗いします。
じゃがいもを水にさらす時間の目安は10分です。
10分さらしておけば、十分煮崩れを防止するなどの効果を得ることができます。
水にさらす時間が長いと、上述したようにビタミンCなどの水溶性の栄養素がどんどん流出してしまいます。また、じゃがいも特有の風味やホクホクとした食感が損なわれてしまうので、長くさらしすぎないようにしましょう。
上記でもご紹介しましたが、じゃがいもを水にさらしすぎるのは避けましょう。長時間さらしてしまうことで、じゃがいもに含まれる栄養素が流れ出てしまうためです。
前日の夜にカットしておけば時短にはなりますが、どうしても変色してしまうため水にさらしておくことが必要となります。水にさらしておけば変色は防げるもののデメリットが多いので、調理をする直前にカットするのがベストです。
水(酢水)にさらすのは10分程度にしましょう。それ以上さらしても、食べられないことはありませんが、じゃがいもの栄養を効率よく摂取することが難しくなってしまいますので注意が必要です。
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