「白菜は栄養がない」としばしば見聞きしますよね。栄養がゼロということはありませんが、確かにそこまで栄養が豊富でないのも事実です。そこで、白菜に実際に含まれている栄養と、不足している栄養を明らかに、期待できる効能について解説していきたいと思います。
白菜は白色です。色が白いと、なんとなく栄養がないと感じる方が多いかと思います。一般的に色が濃い野菜の方が栄養価が高いといえますが、必ずしもそうではありません。すべての栄養素に色素があるわけではないからです。
白菜は淡色野菜です。
緑黄色野菜とは、原則として可食部100g中に600μg以上のβ-カロテンが含まれている野菜を指します。600μg未満の野菜は淡色野菜です。600μg未満でも、食べる量や回数が多いと緑黄色野菜に分類されます。
淡色野菜は白っぽい野菜であることが多いです。白菜は確かにβ-カロテンの量は少ないですが、だからといって栄養がないわけではなく、カリウムなどが含まれています。
野菜は品種改良が繰り返され、特有の香りやクセをなくし食べやすくした結果、栄養価が大幅に減少しているのは事実です。例えば、1950年と2005年で比較すると、人参はβ-カロテン(ビタミンA)は8割減、ほうれんの鉄分も8割減、アスパラガスのビタミンB2は半減、キャベツのビタミンCも半減しています。
しかし、味が薄い=栄養がない、とは一概にいえません。むしろ無味無臭な栄養素の方が多いです。ピーマンの香り成分であるピラジンや、ゴーヤの苦み成分であるモモルデシンのように強い風味がある栄養素はむしろ稀です。
白菜はカロリー(エネルギー量)が低い食品としてよくダイエットにおすすめされます。お鍋などで食べるととてもおいしく、たくさんの量が食べれるので低カロリーでお腹を満たすことができます。
しかし、カロリーが低いからといって栄養がないわけではありません。
そもそも、野菜はどれも9割程度が水分でカロリーが低い傾向にあり、白菜だけが特別カロリーが低いわけではありません。白菜のカロリーは13kcalですが、レタスは11kcal、ほうれん草は18kcal、ピーマンは22kcal、なすは22kcalです。
白菜に栄養がない、というのは誤りですが、実際に不足する、または全く含まれていない栄養素も存在します。
前述した通り、白菜は淡色野菜なので、β-カロテンがあまり含まれていません。
β-カロテンは体内で必要量だけビタミンAに変換され、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きをします。視力を正常に保つ役目もあり、夜盲症の予防や視力低下の抑制があります。また、皮膚の健康維持に関与していることから、美肌効果もあります。皮膚の新陳代謝が高まることで、乾燥肌やニキビ肌の改善が考えられます。
β-カロテンを特に豊富に含む野菜は人参です。他の野菜と比べると一目瞭然です。
人参…8600μg
ほうれん草…4200μg
赤色パプリカ…1100μg
かぼちゃ…730μg
トマト…540μg
ピーマン…400μg
白菜...99μg
白菜にビタミンB群は含まれてはいますが、豊富ではありません。
例えば、日本人が特に不足しがちなビタミンB1。ビタミンB1は糖質をエネルギーにする(体を元気にする)ために欠かせないビタミンです。不足すると、体のだるさや倦怠感、足のむくみ、動悸の症状が出たり、太りやすくなったりします。また、糖質は脳や神経系のエネルギー源なので、ビタミンB1には精神を安定させる作用があると言われています。
ビタミンB1が豊富な食品には豚肉やごま、切り干し大根などがあります。
豚肉...0.98mg
ごま(乾燥)...0.95mg
切り干し大根...0.35mg
ブロッコリー(焼き)...0.27mg
にんにく...0.23mg
白菜...0.03mg
白菜にはビタミンDが一切含まれていません。白菜に限らずほとんどの野菜にはビタミンDがありません。
ビタミンDの働きには正常な骨格と歯の発育促進があります。また、小腸でのカルシウムとリンの腸管吸収を促進させ、血中カルシウム濃度を一定に調節することで、神経伝達や筋肉の収縮などを正常に行う働きもあります。
ビタミンDを多く含む食品は、きくらげ、干し椎茸、サケ、イワシ、サンマなどが挙げられます。
白菜にはビタミンKもあまり含まれていません。
ビタミンKは血液を凝固させる成分を合成する働きがあり、出血を止める役割があります。月経による出血が多い場合も、症状を軽減する効果が期待できます。ただ、血液は出血している箇所以外(血管内など)は正常に流れていなければなりませんが、ビタミンKは血流が悪くならないよう凝固の抑制にも働きかけています。
さらにビタミンKは、骨から血液中にカルシウムが放出されるのを抑え、骨にカルシウムが沈着するのを助けてくれます。そしてカルシウムの合成に必要なたんぱく質を生み出し、腸内でカルシウムが吸収されるのを助けます。ビタミンDと並び、健康な歯や骨を作るのに欠かせないビタミンです。
ビタミンKが豊富な野菜と比較すると、
モロヘイヤ…640μg
ほうれん草…270μg
ブロッコリー...210μg
白菜...59μg
です。
アリルイソチオシアネートはイソチオシアネートの一種です。アリルイソチオシアネートはアブラナ科の野菜に含まれています。アブラナ科は、白菜のほかに、キャベツやブロッコリー、わさびや大根などの野菜が含まれます。アリルイソチオシアネートは辛味成分のひとつで、それが多く含まれるアブラナ科の野菜はツンとする野菜などが多いです。大根をすりおろすことで起きる化学反応でも生じるため、大根おろしは辛味が強くなります。
またアリルイソチオシアネートには、抗酸化作用があります。抗アレルギー効果もあると言われているので、花粉症予防の効果も期待できます。
イソチオシアネートは辛味だけでなく苦味の原因にもなります。これは虫を寄せ付けないためであり、有害なわけではありません。
カリウムは98%が細胞内液に存在し、心臓機能や筋肉機能の調節、細胞内の酵素反応の調節など、様々な効果があります。腎臓でナトリウムが再吸収されるのを抑制し排泄を促進する働きがあるため、血圧を正常に保ちます。そのため、高血圧の予防になるミネラルの一つです。また心臓や筋肉を動かし、熱中症やむくみの予防、また不要な老廃物を体外へ出す働きもあります。
またカリウムは水に溶けやすい性質がありますが、ごぼうなどの根菜類は比較的損失が少なくなっています。ただ葉菜類は茹でると50%以上が失われてしまうのでスープなどにして汁ごと食べることがおすすめです。ただしナトリウムを摂りすぎないよう薄味にしましょう。
体内の99%のカルシウムは貯蔵カルシウムとして骨や歯の材料となります。骨も新陳代謝を繰り返しており、古い骨を壊しては新しい骨を作り、なんと1年間で20〜30%が新しい骨に生まれ変わっています。この骨の代謝にカルシウムは深く関わり骨の健康を保っています。そのためカルシウムが不足すると、骨が弱くなり、やがて骨粗鬆症を招きます。ビタミンKがカルシウムの吸収を助けるので、一緒に摂取することで骨粗しょう症の予防も期待できます。
残りの1%は機能カルシウムとして、血液や筋肉などに広く存在し大切な情報の伝達を行っています。それによって血液中のカルシウム濃度が常に一定に保たれています。機能カルシウムはこの細胞内外の濃度の差を利用して、血液の凝固や酵素の活性化、ホルモンや神経伝達物質の放出をしています。さらには神経の興奮を抑え精神を安定させたり、筋肉を収縮させたりする働きもあり、筋肉のなめらかな動きをサポートしています。そのため、カルシウム不足でこむら返りを起こすことがあります。
ビタミンCはたんぱく質からコラーゲンを合成するのに必要不可欠な栄養素です。身体を作っているたんぱく質の30%がコラーゲンで、細胞と細胞を繋ぐ接着剤のような役割を果たしており、皮膚や血管、筋肉、骨などを丈夫にします。また、ビタミンCはシミのもとになるメラニン色素の生成を抑えたり、肌に弾力やハリをもたらすため、美肌づくりにも重要な栄養素です。
さらにビタミンCの抗酸化力はトップクラスですので、細胞を酸化から守り老化や生活習慣病の予防にもなります。白血球を活性化させて免疫力を高める作用もあります。
また抗ストレスビタミンと言われているように、ストレス時に副腎に働きかけてアドレナリンの分泌を促す作用もあり、ストレスを撃退します。
GABAはストレスを軽減させリラックスする効果や、血圧を下げる効果があると注目されている成分です。チョコレートの商品名にもなっていますよね。GABAは哺乳動物の脳から発見され、中枢神経で働く神経伝達物質であることが判明しています。
GABAの代表的な働きはリラックス効果です。ストレスを感じたり運動をして興奮状態になると、脳内で活発にアドレナリンが分泌されますが、GABAはアドレナリンの分泌を抑制します。また、アドレナリン分泌が抑制されることで血圧が正常にし、酸素の供給を助けます。
さらにGABAは睡眠にも関係します。興奮状態では入眠しづらくなりますが、GABAが興奮状態を抑えるので睡眠に入りやすくしてくれます。さらに、GABAは睡眠中に生成されるので、しっかりと寝ることでまた興奮状態を抑えやすくなります。
また、血圧を下げる効果ですが、GABAは腎臓の働きを高めるため、血圧上昇の原因である塩分(ナトリウム)の排出を促すと言われています。また、GABAは正常な血圧には影響がなく、高血圧の場合にのみ血圧降下作用が働きます。
そしてGABAはコレステロールと中性脂肪の増加の抑制もするため、動脈硬化や糖尿病予防も期待できます。
白菜に含まれるカリウムやビタミンCは水溶性の栄養素です。そのため茹でると溶け出してしまいます。加熱する場合はスープなど汁ごといただけるものがおすすめです。
また、加熱するなら蒸し調理がいいでしょう。リラックス効果や血圧を下げる効果のあるGABAですが、低温蒸しをすることで8倍に増えます。さらに糖をエネルギーに変えてくれるアラニンは2倍!
また、加熱に弱いビタミンCも低温蒸しだとほぼ100%残ったままです。疲れた日など、55〜60℃で5〜20分ほどの低温蒸しをしてみてください。
白菜を塩もみすると、細胞が壊れて酵素が働くので、1時間ほど放置するとコクや旨味の元であるアラニンやGABAが増えます。GABAには様々な効果があるので、増えるのは嬉しいですよね。新鮮な白菜の浅漬けはおすすめです。
ビタミンCはたんぱく質がコラーゲンになるのに必要不可欠な栄養素です。コラーゲンには肌に潤いをもたらす、丈夫な骨を形成する、丈夫な筋肉を形成する、関節の働きをよくするなど様々な効能があります。たんぱく質が豊富な食材には肉類や魚介類、卵、大豆などがあります。
ビタミンCは、鉄の吸収率をアップさせます。
鉄は、吸収率が低いと言われています。そのためビタミンCを含む白菜を食べるときは、鉄を含む食材を一緒に食べるようにするといいでしょう。鉄を多く含む食材にはレバーや赤身肉があります。他にもカツオや鶏卵、あさりや牡蠣、野菜では小松菜に多く含まれています。
鉄は赤血球のヘモグロビンの材料となり、酸素を運びます。このヘモグロビンですが、ヘムという赤い色素とグロビンというたんぱく質から成っており、赤血球が赤い色をしているのはこのヘモグロビンの色です。肺に取り込まれた酸素は、このヘモグロビンと結合して心臓に送られ、そこから全身へと運ばれていきます。そして、ヘモグロビンは酸素が届け終わると二酸化炭素と結びつき、また心臓を経て肺に戻っていきます。鉄を材料としたヘモグロビンは、体内でとても重要な役割をしているのです。
そのため、鉄が不足するといわゆる「貧血」になってしまうことがあります。また、鉄が不足するとヘモグロビンが作れなくなるため、体内が酸欠状態になってしまいます。そうすると様々な不調が出てきしまいます。特に脳は多くの酸素が必要で酸欠に弱いため自律神経のバランスが乱れたり、代謝が悪くなったりします。
ビタミンKがカルシウムの吸収を助けてくれるので、一緒に摂取することで骨粗しょう症の予防も期待できます。白菜にはカルシウムが豊富に含まれているので、ビタミンKが豊富な抹茶や玉露等の緑茶、ブロッコリーやモロヘイヤ、わかめや海苔などの海藻類、また納豆と組み合わせましょう。
コールスローと言えばキャベツですが、白菜でも美味しくいただけます。
生食はカサが大きくたくさん食べられないデメリットがありますが、栄養素を無駄にせず食べることができます。
白菜のコールスローのレシピはこちら
しょうがをたっぷりと使った、身体が温まるひと品です。
スープに溶け出した、ビタミンCやカリウムなどの水溶性の栄養素もそのままいただけます。白菜には含まれないビタミンDがきのこ類には豊富に含まれているのも◎。
まいたけと白菜のスープのレシピはこちら
見た目も味付けもシンプルですが、白菜の甘さが実感できる美味しいひと品です。
(少量ですが白菜に含まれる)ビタミンCはたんぱく質からコラーゲンを生成するのに必要不可欠な栄養素です。汁ごといただくのもビタミンCを無駄にしません。
チキンと白菜のしょうが蒸しのレシピはこちら
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