氷砂糖と白砂糖の違いは見た目だけではありません。製造方法や使い方などが異なりますので、詳しく解説します。
砂糖とは、サトウキビ(甘庶)やビート(サトウダイコン、テンサイ)などを原料とし、植物に含まれる糖分を抽出して結晶化させた甘味料です。
砂糖の主成分はショ糖(スクロール)で、炭水化物の一種です。炭水化物は糖質と食物繊維から成りますが、ショ糖は糖質に該当します。人間が糖質を摂取すると、体内で分解されてブドウ糖になります。ブドウ糖はエネルギー源として必要な栄養素で、特に脳が機能するための主なエネルギー源となっています。
ショ糖は、単糖*であるブドウ糖(グルコース)と、果糖(フルクトース)が結合して形成される少類糖**に分類されます。少類糖にはショ糖の他に、麦芽糖(マルトース)や乳糖(ラクトース)があります。
砂糖はほとんどショ糖で構成されますが、ショ糖以外にもミネラルなどの栄養素や水分が含まれています。
ショ糖を含む糖質の摂りすぎは、肥満や糖尿病を招く恐れがあるため、過剰摂取は避けるべきといえます。反対に、糖質が不足した状態だとエネルギー不足になってしまい、疲労感や脱力感が起きやすくなります。
*炭素原子6個と水分子6個が輪状につながったもの(基本単位)が1個からなる糖
**単糖が2〜9個結合したもの(10個以上結合したものは「多糖類」という)
白砂糖も氷砂糖も、サトウキビもしくはテンサイを原料としてつくられます。氷砂糖は、グラニュー糖や白ザラ糖が原料となります。
氷砂糖は、グラニュー糖や白ザラ糖を原料としてつくられる砂糖です(製造方法は後ほどご紹介します)。グラニュー糖と白ザラ糖は、サトウキビもしくはテンサイを原料としてつくられます。
サトウキビは、イネ科の多年性植物です。茎だけで高さが3mにもなり、茎には竹のように節があります。高温多湿で年間の平均気温が20℃以上の土地でよく育つといわれており、日本では沖縄県と鹿児島県が主な生産地となっています。日本国内で、年間約18.6万トン*のサトウキビが生産されています。
テンサイは見た目は大根に似ていますが、植物学上ではホウレンソウと同じヒユ科に属します。紅白の2種類があり、砂糖の原料として使用されるのは白色のほうです。甜菜は温かい地域では病虫害に侵されやすいため、一般的に寒地で栽培されます。日本の主な生産地は北海道で、年間約62.1万トン*もの甜菜が生産されています。
*2009年の国内原料における砂糖生産量
白砂糖の原料もサトウキビもしくはテンサイです。
砂糖を製造方法から大別すると分蜜糖と含蜜糖があります。氷砂糖、白砂糖ともに、分蜜糖に該当しますが、工程が異なりますので、詳しく解説します。
分蜜糖
原料を絞った搾り汁(糖汁)から不純物を取り除き、濃縮して得られる白下糖(結晶と糖蜜の混合物)を分離させて、結晶だけを取り出して乾燥させた砂糖のことを指します。さらに分蜜糖はザラメ糖や車糖、加工糖などに細分化されます。グラニュー糖や上白糖、三温糖などは分蜜糖に分類されます。
含蜜糖
原料の絞り汁(糖汁)から、不要な成分や不純物を大まかに除去し、そのまま加熱・濃縮して固化させた砂糖のことを指します。黒砂糖、きび砂糖、てんさい糖、パームシュガーなどが含蜜糖に分類されます。
氷砂糖は、グラニュー糖や白ザラ糖を溶かした水溶液を原料とし、2週間ほどかけて結晶を成長させてつくられます。大きさや形が不定のような形の氷砂糖を「ロック」、形が整った氷砂糖を「クリスタル」と区別し、形状により製造方法が若干異なります。
まず始めに、グラニュー糖もしくは白ザラ糖を水に溶かして糖液をつくります。この時、糖液をブリックス(甘味度の単位)70〜72度程度まで濃縮させます。
ロック氷糖をつくる際は、糖液を浅い容器に入れ、種糖(たねとう)とよばれる5〜6mm程度の小さな純結晶を加え、45〜70℃に加温した結晶室に約2週間おき、結晶を大きく成長させます。最後に結晶と液を分け、乾燥し砕いて製品となります。
クリスタル氷糖の作り方は、小さな結晶を種糖として回転式ドラムに入れ、50℃に保温した糖液中で回転させ、3〜4日間かけて徐々に結晶を大きくします。
氷砂糖が出来た後に得られる液は氷糖蜜とよばれ、かき氷の蜜や、蜜豆として用いられます。
砂糖の製造過程で、まず始めに白ザラ糖やグラニュー糖などのザラメ糖が結晶として取り出されます。これらの砂糖をつくる際に回収される糖蜜からつくられるのが上白糖です。
糖の再結晶化を防ぐために、ビスコと呼ばれる糖液を添加してつくります。そのため、しっとりしたソフトな感触の砂糖に仕上がります。
ザラメ糖・・・結晶が大きく糖度が99%以上。グラニュー糖、白ザラ糖、中ザラ糖など。
車糖・・・ザラメ糖より結晶が小さく、糖度が94〜96%。上白糖や三温糖など。
加工糖・・・分蜜糖をさらに加工したもの。角砂糖、氷砂糖、粉砂糖など。
液糖・・・加工用として利用される液状の糖溶液。
氷砂糖と白砂糖のカロリーや成分に大差はありません。血糖値の上昇度合いを表すGI値もほぼ同じです。
GIとは、グライセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、食後の血糖値の上昇度を表す値です。食品の炭水化物を50g摂取した際の血糖値の上昇度合いを、ブドウ糖(グルコース)を100とした場合の相対値で表します。55以下を低GI、56〜69を中GI、70以上を高GIと分類し、GI値が高ければ高いほど血糖値が急上昇します。急激な血糖値の上昇は、体に負担をかけるため、緩やかな上昇が理想的です。
氷砂糖の100gあたりのカロリー(エネルギー)は394kcalです。白ごはん100gあたりが168kcalなので、氷砂糖はカロリーが高いということがわかります。
氷砂糖のGI値は110であり、高GI値食品に分類されます。他の砂糖のGI値は、グラニュー糖は110、黒砂糖は99、てんさい糖は65です。GI値で見ると、てんさい糖を使用した方が、血糖値の急激な上昇を抑えやすくなります。
ミネラル成分を含む糖蜜を除いてつくられる砂糖なので、ミネラルなどの栄養はほとんど含まれていません。
ショ糖の含有量を表す糖度は、氷砂糖では99.80%と純度が高いです。
<氷砂糖(可食部100gあたり)>
エネルギー・・・394kcal
水分・・・Tr
たんぱく質・・・0g
脂質・・・0g
炭水化物・・・100.0g
無機質(ミネラル)
ナトリウム・・・Tr
カリウム・・・Tr
カルシウム・・・Tr
マグネシウム・・・Tr
鉄・・・0.1mg
亜鉛・・・Tr
食物繊維総量・・・0mg
※100gあたり
※Trは微量という意味
白砂糖の100gあたりのカロリー(エネルギー)は391kcalで、氷砂糖とほぼ同じです。
白砂糖のGI値は109で、こちらも氷砂糖とほぼ同じで、高GI値食品に分類されます。
白砂糖も糖蜜を除いてつくられるため、ミネラル類はほとんど含まれません。
ショ糖の含有量を表す糖度は、白砂糖では97.41%と純度が高いです。
<上白糖(可食部100gあたり)>
エネルギー・・・391kcal
水分・・・0.7g
たんぱく質・・・0g
脂質・・・0g
炭水化物・・・99.3g
無機質
ナトリウム・・・1mg
カリウム・・・2mg
カルシウム・・・1mg
マグネシウム・・・Tr
リン・・・Tr
鉄・・・Tr
亜鉛・・・0mg
銅・・・0.01mg
マンガン・・・0mg
ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン・・・0μg
食物繊維総量・・・0g
※「Tr」とは、微量含まれるという意味
氷砂糖と白砂糖は、それぞれの特徴を生かした使い方があります。
砂糖全般には賞味期限が設けられていません。食品表示法に基づき、砂糖は長期保存をしても品質の変化が極めて少ないものとして、賞味期限や消費期限の表示が省略可能な品目に定められています。
氷砂糖は果実酒の製造に最もよく使われます。
氷砂糖は結晶が大きいため、ゆっくりと溶けるため、果実のエキスをたっぷりと溶かし出すことができます。また氷砂糖はクセがない甘みを持つため、果実の風味を引き立てることができます。
また、氷砂糖は他の砂糖よりも長期保存に優れ持ち運びやすいという点から、登山や災害時などの非常食としても用いられます。
結晶が大きいため、料理やお菓子作りには向いていません。
上白糖にはクセがなく淡白な甘さがあります。万能な砂糖でどんな食材とも合います。料理全般や菓子、パン、飲み物など幅広く使われます。
水分量が多く吸湿性をもつため、しっとりと仕上げたいお菓子(カステラ、ケーキなど)に適しています。
上白糖は、加熱すると茶色く変色する褐変反応が起こります。焦げやすいので注意が必要です。
上述の通り、氷砂糖は果実酒でよく使用されます。氷砂糖がない場合に、白砂糖でも代用すること自体は可能ですが、果実のエキスが出にくくなります。また、白砂糖は溶けきれずに瓶の底に溶け残りが生じることがあります。
反対に、白砂糖の代用として氷砂糖を用いることも可能です。しかし、氷砂糖はそのままの状態では結晶が大きいため、普段の料理やお菓子作りには向いていません。使用する場合は、フードプロセッサーなどで細かく砕いてから使用することをおすすめします。
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