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薄力粉(小麦粉)と片栗粉の違いと使い分け

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薄力粉(小麦粉)と片栗粉の違いと使い分け

薄力粉(小麦粉)と片栗粉の違いをご存知でしょうか?薄力粉は小麦を製粉した小麦粉の一種で、片栗粉はじゃが芋のでんぷんを乾燥させて粉状にしたでんぷん粉の一種です。本記事では、薄力粉と片栗粉の違いについて詳しく解説します。

薄力粉と片栗粉の違い①原料・製法

薄力粉は小麦粉の一種

薄力粉(はくりきこ)は小麦を製粉した小麦粉の一種です。

原料に使われる小麦の品種によって薄力粉・中力粉・強力粉に分類され、それぞれグルテンの含有量が異なります。グルテンとは、弾力に富むが伸びにくいグルテニンと、弾力は弱いが伸びやすいグリアジンの2種類のたんぱく質が、水分によって結びついたものです。グルテンの量によって生地の硬さが決まります。パンなどの「ふわふわ、モチモチ」という食感はこのグルテンによってもたらされます。

薄力粉の原料は、粒が柔らかい軟質小麦(なんしつこむぎ)です。

「粒が柔らかい」=「グルテン量が少ない」ことを意味し、薄力粉はグルテンの含有量が6.5~8%(原料小麦によって違いがあります)と最も少ない小麦粉です。グルテン含有量がさらに少ないものを「超薄力粉」ということがありますが、商品名としては使われていません。

小麦粉は、多数のロール製粉機とふるいの組み合わせにより、小麦の胚乳組織を粗く砕いて分離し、これを粉砕するという方法で作られています。粉砕する際に数十種類の粉が得られますが、最終的には2〜4種類に仕分けされて、その性状により希望する等級になるようにそれぞれの粉を組み合わせます。

胚乳部分にある灰分の含有量によって特等粉、1等粉、2等粉、3等粉、末分にわけられ、これを等級といいます。灰分含有量が0.3~0.35%のものは特等粉、0.35~0.45%のものが1等粉、0.45~0.65%のものが2等粉、0.7~1.0%のものが3等粉、1.2~2.0%のものが末粉となります。

灰分の含有量が少ない方が白くなり(その分栄養価は少ないですが…)上級粉となります。灰分の含有量が多いと茶褐色になり、下級粉となります。例えば、薄力粉の1等粉はクッキーや一般ケーキに、3等粉は駄菓子などと使い分けされます。

灰分は外皮や胚芽部分に多く含まれるミネラルや食物繊維のことです。小麦粉は調理過程で加熱されると、たんぱく質や脂質は燃えてなくなってしまうのですが、一部のミネラルや食物繊維は灰として残ります。

片栗粉は

片栗粉(かたくりこ)は、じゃが芋のでんぷんを乾燥させて粉状にしたでんぷん粉の一種です。

その昔、「カタクリ(片栗)」と呼ばれるユリ科植物の鱗茎(球根)からとれるデンプンを原料にして作られていたので「片栗粉」という名前がついています。「栗」がついていますが、栗を原材料としているわけではありません。カタクリが減少し、明治以降にジャガイモが大量栽培されるようになると、原材料はじゃが芋のでんぷんに切り替わっていきました。

片栗粉は、まず原料のじゃがいもを水でよく洗って汚れを落としたあと、洗ったじゃが芋をすりつぶして液体状にし、繊維質や不純物を取り除きます。その後洗浄し(~3回繰り返す)、しばらく寝かせて下に溜まった澱粉(でんぷん)を取り出し乾燥させるという方法で作られています。

薄力粉と片栗粉の違い②見た目・触感

薄力粉

薄力粉の見た目は黄みがかった白色で、ふわふわとしていてます。小麦粉の中で最も粒子が細かく、触ると手にまとわりつく感覚があります。

薄力粉以外の小麦粉(中力粉・強力粉)も見た目は黄みがかった白色で、目視では判別することができません。しかし、粒子の大きさが異なるため触れば判別することができます。

粒子が細かく触るとまとわりつく感覚がある薄力粉に対して、中力粉と強力粉は粒子が粗いため触るとサラサラとしています。

小麦粉にはグルテンが含まれているため、水を加えると粘りが出てまとまります。

片栗粉

片栗粉の見た目は真っ白です。しっとりしていて握るとギュっとした感触があり指跡が残ります。

薄力粉と片栗粉の違い③用途

薄力粉

薄力粉はグルテンの含有量が少ないため中力粉や強力粉と比較して粘りが出にくく、サクサクとした食感を出すのが特徴です。パンを作ることもできますが、パンを作るときはグルテンの含有量が多い中力粉や強力粉を使うことが多いです。

焼き菓子

薄力粉は、クッキーやケーキなどの焼き菓子を作るときに使うのに適しています。例えばクッキーを作るとグルテンの含有量が少ないため粘りが出にくく扱いやすい生地になり、焼くとサクサクとした食感になります。

ケーキを作る場合はふんわりとはしませんが、粒子が細かいためキメの細かいなめらかな口当たりに仕上がります。

揚げ物の衣

薄力粉は、唐揚げや天ぷらなどの揚げ物の衣として使うことも多いです。薄力粉を衣にして唐揚げを作ると、きつね色になります。カリッとした歯切れのよい食感に仕上がり、時間がたつとしっとり柔らかくなります。

とろみ付け

薄力粉は、料理のとろみ付けに使用することもできます。ただし、粘度が低いためしっかりとしたとろみをつけることはできず、サラっとしたとろみになります。ホワイトソースやクリームシチューにとろみをつけるのに適しています。

とろみ付けをするときは、水で溶いてから使います。薄力粉は粒が小さいので水分を吸いづらく、だまになりやすいので注意しましょう。

片栗粉

片栗粉などのでんぷん粉には、熱湯を加えるか水を加えて加熱すると、でんぷん粒がふくれて粘性の強い液体になるという特徴があります。

とろみ付け

片栗粉はでんぷん粉の糊化する性質を利用して、料理にとろみをつけるときに使われることが多いです。糊化温度(粘りが出る温度)は60度前後で、粘度が高くしっかりとしたとろみをつけることができます。そのため、あんかけ料理やスープに適しています。

片栗粉も薄力粉と同じようにダマになりやすいため、とろみを付ける際は必ず水で溶いてから使います。

揚げ物の衣

片栗粉も揚げ物の衣として使うことができます。水気が多く、表面が柔らかい鶏肉などの動物性食品を揚げる場合は表面に主成分がでんぷんである片栗粉をまぶすことで、水分を吸収すると共にうまみ成分の損失を防ぐという効果もあります。

片栗粉を衣に使った唐揚げは白っぽくなり、ザクザクとしたワイルドな食感になります。片栗粉は油の吸収率が高いため、時間が経つとべちょっとしてしまいます。

お肉を柔らかくする

生姜焼きなどを作るときにお肉に片栗粉をまぶしてから焼くと、お肉が柔らかくなります。でんぷんには高い水分保持力があるため、片栗粉を肉にまぶすことによって焼いたりする過程で肉から水分が蒸発してしまうのを防ぐことができ、しっとりと柔らかく仕上げることができます。また、片栗粉をまぶしておくことで調味料がお肉にうまく絡むようにもなります。

打ち粉

片栗粉は、打ち粉にも適しています。

打ち粉とは、お餅をこねたり、そばやうどん、パイなどの生地を作る際に、生地が手や調理器具、作業台につかないように振りかける粉のことです。

打ち粉にもさまざまな種類がありますが、片栗粉は和菓子や焼き菓子を作るときなどの打ち粉として使うのに適しています。

薄力粉と片栗粉は代用できる?

薄力粉と片栗粉はお互いに代用することができます。ただし、原料が異なるため風味や食感などに違いがでます。

例えば片栗粉を使ってクッキーなどの焼き菓子を作ることもできます。小麦の風味はしませんが、薄力粉を使うのと同じようにサクサクとした食感になります。

揚げ物の衣の場合は、薄力粉を衣にして唐揚げを作るとサクサクとした食感になり、片栗粉を衣にして唐揚げを作るとザクザクとしたワイルドな食感になるので、薄力粉の衣では食感に物足りなさを感じるという方は片栗粉を使うと良いでしょう。

とろみ付けの場合は、薄力粉は片栗粉ほどしっかりとしたとろみをつけることはできません。また、片栗粉のように透明にならず、濁ってしまいます。ホワイトソースなどには薄力粉を使い、あんかけなどしっかりとしたとろみをつけたい場合は片栗粉を使うのが良いです。

薄力粉を片栗粉と同じように打ち粉として使うことも可能です。しかし、粒子が細かく器具や手にひっついてしまいやすいため、小麦粉を打ち粉に使うのであれば粒子が粗くサラサラしている中力粉や強力粉を使うのが適しています。