肉じゃがなどの煮物は冷ますと美味しくなると言われますが、どうしてでしょうか。この記事では、肉じゃがを冷ます理由やメリット、冷ますのに最適な時間などを解説します。
煮込んで味付けするだけでは煮物は完成していません。
煮物は煮込むことで具材が柔らかくなり、味が染み込んで美味しく仕上がりますが、ちょうどよい柔らかさになる時間と、しっかり味が染み込むまでの時間には差があり、具材が柔らかくなった段階ではまだ具材に味が染み込んでいません。しかし、肉じゃがは煮込みすぎるとお肉が固くなり、煮崩れも起きてしまい、美味しくなくなってしまいます。
そこで、程よく煮込んだ後に火を止めて放置しておくことで、余熱である程度の温度をキープすることができ、具材に味が染み込んでいくようになります。これが「煮物は冷めていく時に味が染みこむ」と言われる所以です。また、冷めていく間に味が落ち着くという効果もあります。
ちなみに、冷ます理由として、浸透圧によって味が染み込むという説もあります。食材を加熱することで食材の中の細胞が膨張し、水分が外へ出ていってしまいますが、冷ますことで具材の中と煮汁の濃度を同じにしようと煮汁が食材に入っていくことにより、味が染み込むという説です。
どちらの説が正しいかは決着がついていませんが、火を止めておくことが味の染み込みにつながることは間違いないようです。
さやえんどうやさやいんげんなどの、厚みが薄く火が通りやすい野菜ならば、冷ましている間の余熱で火を通すことができます。下茹でする工程を減らすことができ、時短になります。
ただし、煮汁に沈んでしまうと色が落ちてしまうほか、薄いアルミニウム製の鍋やフライパンではしっかり火も通せないこともあるので、見栄えや火の通りが気になる方は下茹ですることをおすすめします。
冷まし方にも様々なポイントがあります。
肉じゃがを冷ます際は、そのまま常温でコンロに放置しておきましょう。冷ましてからすぐに温め直すことができます。もちろん、コンロを使ってほかの料理を作る場合は別の場所に移しても構いません。
冷まして置く際は蓋をせずに放置してしまうと煮汁が蒸発しすぎてしまうほか、空気中の雑菌などが入ってしまい衛生的ではないので、必ず蓋をして放置しましょう。
蓋のないフライパンを使っている場合はサイズの合う鍋の蓋を使いましょう。よいサイズの蓋がなければアルミホイルをフライパンに合うようにかっとしてかぶせておきましょう。ラップは溶けてしまう可能性があるのでおすすめできません。
肉じゃがを冷ましておく際、タオルや新聞紙で包んでおくと熱が逃げにくく、保温効果がアップするので、味が染み込みやすくなります。
鉄やステンレスではなく、保温効果が高くないアルミニウムの鍋やフライパンを使っている場合は包んで放置しておくと仕上がりが良くなるでしょう。
味付けが終わったら火を止めて1~2時間放置しておくのがおすすめです。時間がない場合でも30分は放置しておくことをおすすめします。
2日目のカレーが美味しいように、肉じゃがも翌日に食べると美味しさがアップしています。作ったものを冷蔵庫に保存しておいて翌日に食べてみてください。味の違いに驚きます。
ただし、放置しすぎると具材が傷んでしまい、腐ってしまうので要注意です。特に高温多湿な夏場は、3~4時間程度で腐ってしまうこともあります。
一晩放置していた肉じゃがの表面にびっしり白いカビが生えていた、というようなこともあるので夏場の長時間放置はとても危険です。長時間放置する場合は2時間程度経って粗熱が取れたら保存容器に移して冷蔵庫に入れるとよいでしょう。
肉じゃがを冷ます場合はただ冷ませばよいというわけではありません。時間をかけてゆっくりと温度が下がることで具材に水分が染み込んでいくので、火を止めてすぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れるのはおすすめできません。
温かいままの肉じゃがを冷蔵庫や冷凍庫に入れてしまうと庫内の温度が上がってしまい、ほかの食品が傷んでしまいます。常温でゆっくり冷ましましょう。
お弁当に入れることも多い肉じゃがは冷たいまま食べることもできます。冷たい方が料理の味をしっかりと感じることができるという理由で冷たいまま食べることを好む方もいます。
ただし、冷たいまま食べるとお肉から出た脂がしつこく感じることがあります。お肉の白い脂が表面に浮いていた場合は温め直して食べることをおすすめします。お肉の脂はバラ肉などの脂身の多い部位を使うと出やすいです。
また、作った翌日なら問題ないことが多いですが、2日以上たったものは雑菌が繁殖している可能性があります。食中毒を避けるためにも、作ってから日が経ったものはしっかり温め直して食べることをおすすめします。
冷ました肉じゃがは温め直して食べましょう。鍋やフライパンに入れたまま冷ましている場合はそのままコンロで火をかけて温め直しましょう。軽く煮立たせる程度に温めれば野菜も中心まで温めることができます。
保存容器に移している場合は電子レンジを使ってもよいでしょう。電子レンジで温める際は低めのワット数(500~600W)で1~2分程度温めましょう。冷たければ30秒~1分の短い時間を追加して温めてみてください。
また、温め直す際はラップをかけましょう。ラップせずに温めると煮汁や具材の水分が飛んでしまい、パサついた食感になってしまいます。
肉じゃがを美味しく上手に作るコツを解説します。
肉じゃがは具材の切り方で火の通りや味の染み込む時間が変わります。じゃがいもの大きさがバラバラだと火の通りに差が生じ、場合によっては煮崩れてしてしまいます。
じゃがいもは大きさにもよりますが、6等分程度のサイズで乱切りにするのがおすすめです。にんじんはじゃがいもより味が染み込みにくいので、小さめに切りましょう。
玉ねぎはしゃきしゃきした食感を好む方は繊維に沿って大きめのくし切りに、柔らかくクタッと味のしみた玉ねぎが好みな方は繊維通りにまっすぐ包丁を入れて切りましょう。
一般的に煮物やカレーなどの煮込み料理には崩れにくい「メークイン」という品種が使われます。メークインは俵(たわら)のような楕円形が特徴的な見た目で、イギリスが原産の品種です。滑らかな口当たりが楽しめます。
一方、アメリカ原産で現在日本での生産量1位の「男爵イモ」は、調味料の味が染み込みやすく、火を通すことでほっくりとした食感になります。ほくほくとしたじゃがいもが好みという方は男爵イモがおすすめです。ただし、メークインよりも煮崩れしやすいので煮込む際は要注意です。
じゃがいもは角を削る「面取り」をすると煮込んでいる際に崩れにくくなります。崩れるのが気になる方は面取りをしっかり行いましょう。
じゃがいもを水にさらすことで、煮崩れを防ぐことができます。カットしたら5~10分程度水にさらしておきましょう。
じゃがいもの煮崩れは、煮込むことでジャガイモに含まれるデンプン(炭水化物の一種)とペクチン(食物繊維の一種)の2つの成分が変化してしまうことが主な理由です(たんぱく質も影響しているといわれています)。
じゃがいもを水にさらすと、ペクチンが水中の無機イオンと結合して不溶化し、細胞内のデンプンの吸水を防ぎ、煮崩れしにくくなります。カレーや煮物などにじゃがいもを使う場合は、この性質を利用することでも形をキープしたまま調理することが可能になります。
また、じゃがいもを水にさらすことで煮崩れの原因になるデンプンそのものを少しばかり取り除くこともできます。デンプン自体は水には溶けませんが、水にさらすことで水の中に沈みます。デンプンは水に沈殿することから「殿粉(デンプン)」という名称がつきました。デンプンを取り除くことでジャガイモ同士がくっつきにくくもなります。
材料の量にあった大きさの鍋やフライパンを使いましょう。大きすぎるとレシピ通りの煮汁の分量では具材がしっかり煮汁に漬からないために味がちゃんと染み込みません。また、煮汁の蒸発が早く、具材が煮えないうちに煮汁が無くなってしまい、味が濃くなってしまうほか、場合によっては焦げ付いてしまいます。
一方、小さすぎても煮汁が入りきらずに具材がしっかり煮汁に漬からないこともあるほか、火の通りや味の染み込み具合にムラが生じてしまいます。また、具材が重なってしまうので、重なった具材の重みで形が崩れてしまうこともあります。
肉じゃがは中深鍋がおすすめで、具材の量は鍋の深さの1/2程度を目安にしましょう。
肉じゃがの具材のうち、お肉やにんじん、じゃがいもを炒めることで旨味が引き出され、食欲をそそる香ばしい風味が広がります。また、焼き色をつけることで見た目も美しく仕上がり、表面が固くなり、油でコーティングされるので煮込んだ際に崩れにくくもなります。
ただし、牛肉は火が通りやすく、加熱しすぎで固くなってしまうので、煮込む際に入れるのも良いでしょう。
煮物の定番の落し蓋ですが、落し蓋は煮物において重要な役割を果たし、その中の1つに程よく煮汁を蒸発させ、水分の抜けすぎを防ぐ役割があります。また、煮汁の減少を防ぐ以外にも様々なメリットがあるので、肉じゃがを作る際は必ず落し蓋をしましょう。落し蓋を持っていない場合はアルミホイルやキッチンペーパーでも代用可能です。
落し蓋を使用することで煮汁が落し蓋に当たり、絶えず下へと循環するため、味が均一に広がります。また、鍋全体の温度が均一になるため、加熱ムラを防ぐ効果もあります。また、上から落し蓋で具材を軽く抑えることで、中で素材が大きく動かなくなり、煮崩れしにくくなります。
落し蓋は完全に密封するわけではないため、魚や肉などの生臭さがこもることなく、臭いが逃げやすくもなります。煮魚や角煮などでも落し蓋を使うのがおすすめです。
肉じゃがはじっくり煮込んで作るイメージがありますが、煮込みすぎるとお肉のたんぱく質が縮んで固くなってしまい、じゃがいもも煮崩れを起こし、玉ねぎも溶けてなくなってしまいます。
煮込む時間は弱火で20~30分程度が基本です。具材のサイズや量、調鍋やフライパンの素材などによって必要な煮込み時間は前後するので、肉じゃがを煮込んでいる際は時々鍋の状態を確認するようにしましょう。
強火で短い時間(5分程度)加熱する方法もあります。ただし、この方法は煮詰まりすぎや焦げ付く失敗を招く可能性があります。鍋やフライパンのコーティングの劣化を早めることにもなるので、あまりおすすめできません。
肉じゃがを美味しく仕上げることの出来る隠し味を紹介します。
料理にコクを加える目的でよく使われるバターですが、醤油との相性の良さからもわかるように、肉じゃがとの相性もぴったりです。肉じゃがに加えることでまろやかなコクが生まれ、奥深い味わいにすることができます。
また、バターには具材と一緒に煮込むことでジャガイモを崩れにくくする効果もあります。いつもじゃがいもが崩れてしまうという方はバターを入れて煮込んでみるのもおすすめです。使う量は4人前あたり5gです。
ただし、入れすぎるとこってりとしたしつこさを感じるような味わいになってしまい、脂質やカロリーも増えてしまいます。入れすぎには注意です。
牛骨や鶏ガラ、香味野菜、スパイス、ハーブなどから取っただしの素であるブイヨンやコンソメを入れることで肉じゃがの味を調えることができ、コクや旨味を追加することができます。ただし、洋風な味わいなので、入れすぎると肉じゃがの味のバランスが崩れ、味が濃くなってしまうので注意しましょう。
ちなみに、ブイヨンとコンソメは同じ調味料とみなされがちですが、違う調味料です。ブイヨンは純然たるだしの素といった調味料で、そのまま使ってもだしの味だけしかしませんが、コンソメはブイヨンをベースとしたスープの素で、コンソメだけで整った味のスープが作れます。
ブイヨンはいわゆる隠し味として使われることが多く、コンソメはスープなどの味の根幹、いわゆる「コンソメ味」にするために使われます。
醤油と同じ大豆などから造られる、代表的な和食の調味料である味噌も肉じゃがの隠し味としておすすめです。熟成されることで生まれる味噌ならではの旨味や深いコクが肉じゃがに加わります。
ただし、味噌は沸騰させてしまうと風味が飛んでしまうので、入れた後は加熱しすぎないようにしましょう。バターと組み合わせると相乗効果で深いコクが生まれます。
にんにくはうまみ成分であるグルタミン酸を含んでおり、すりおろしたにんにくを肉じゃがに入れることで、旨味をプラスできます。スライスしたにんにくをお肉と炒めてスパイシーな肉じゃがにすることもできます。
栄養も豊富で、にんにくの独特な臭いの元であるアリシンは疲労回復などの効果が期待できます。ただし、にんにくを入れることで辛味を感じるテイストになりやすいので、味見をしながら少しずつ足すようにしましょう。
料理によく使う生姜はチューブの製品もあり、手軽に使うこともできます。肉じゃがが少しすっきりとしたテイストになるほか、体が温まる効果もうれしいポイント。
入れすぎるとピリッとした辛みを感じるような風味となってしまうので、入れすぎに注意です。
肉じゃがの味付けの基本である「醤油、出汁、砂糖、みりん」などがブレンドされているすき焼きのたれを加えることで、味をぐっとまとめることができます。すき焼きのたれだけで味付けをしているレシピもあります。
すき焼きのたれは甘辛い和食の味付けに全般的に使うことができて便利なものの、なかなか使う機会がなく、冷蔵庫にずっとあるという方はたれの消費にもなって一石二鳥です。ただし、濃い目の味付けになっているので少しずつ加えるようにしましょう。
野菜やフルーツなどの様々な旨味が凝縮された焼き肉のたれを加えることで、肉じゃがに華やかなコクを加えることができます。
何となく味が決まらないときに少し入れるだけでぐっと味がまとまることもあります。ただし、味の主張が強く、入れすぎてしまうと味のバランスがおかしくなってしまったり、濃くなりすぎたりするので要注意です。
最後に、肉じゃがのレシピをご紹介します。
Filyのレシピはすべて小麦粉、乳製品、白砂糖不使用です。
和食の定番、肉じゃがのレシピをご紹介します。野菜の甘みが楽しめる一品です。
こちらのレシピでは牛肉を使用しています。
肉じゃが(牛肉)のレシピはこちら
豚肉を使った肉じゃがのレシピです。作り方はとてもシンプルですが、食べ応え満点です。
豚肉じゃがのレシピはこちら
めんつゆで簡単に作れる肉じゃがのレシピを紹介します。めんつゆ以外にはお酒を加えることで、お肉を柔らかく仕上げることができます。
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