市販の天ぷら粉は水を加えるだけでサクサクの衣ができる便利な食品ですが、天ぷら粉を使わなくても自宅で簡単に衣を作ることができます。今回は自宅で天ぷら粉を作る方法や、薄力粉以外で天ぷら粉を作る方法をご紹介します。あわせて天ぷらをサクサクに揚げるコツもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
天ぷら粉は、天ぷらを揚げる際に使われる粉です。
天ぷら粉は、天ぷら以外の揚げ物(から揚げ、かき揚げなど)やお好み焼き、お菓子などにも使用できます。また、天ぷら粉に唐辛子や青のりなどの調味料を加えて、風味豊かな天ぷら粉を作ることもできます。
市販されている天ぷら粉の主な原材料は小麦粉(薄力粉)、卵粉、でん粉です。添加物としてベーキングパウダーや着色料、乳化剤を使用します。卵粉とは、全卵、卵黄、もしくは卵白を粉末化したもので、卵の風味をプラスし口当たりを良くするために用いられます。でん粉を加え天ぷら粉全体のタンパク質量を減らしグルテンを作りにくくすることで、カリっと揚げることができます。また、ベーキングパウダーを加えることでサクっとした食感に揚がります。
元々天ぷらの衣には小麦粉と水のみが使われていましたが、サクサクの天ぷらが簡単に自宅で揚げられるように、製品開発の過程で上記のような材料が追加されました。
天ぷら粉はスーパーなどで購入することができます。小麦粉やたこ焼き粉、お好み焼粉などが陳列されている粉類のコーナーに置いてあります。
天ぷら粉を製造している代表的なメーカーには日清製粉や昭和産業、桜井食品、NIPPN(ニップン)などがあります。
昨今では有機の小麦粉を使用した天ぷら粉や、薄力粉の代わりに米粉を使用したグルテンフリーの天ぷら粉を販売しているメーカーも多いです。
天ぷらの語源には諸説があり、ポルトガル語で「調理」を意味する「tempero(テンペーロ)」やスペイン語で「寺院」を意味する「templo」から派生した言葉といわれています。
天ぷらは、16世紀後半に長崎に伝わったポルトガル料理の肉の唐揚げが変形したものだと考えられています。天ぷらが一般に知られるようになったのは江戸時代後期であり、天ぷらが普及すると「金麩羅(きんぷら、衣にそば粉を加え椿油で揚げたもの」や「銀麩羅(ぎんぷら、衣に卵白を用いたもの」なども登場しました。
市販されている天ぷら粉を使えば簡単に天ぷらを揚げることができますが、わざわざ天ぷら粉を購入しなくても、自宅で簡単に衣を作ることができます。
天ぷら粉は薄力粉と冷水、卵で作るのが定番です。2〜3人分の天ぷらを作る場合、小麦粉1カップ、全卵1/2〜1個、冷水200mlです。
まず、全卵をよく溶きます。卵の量はお好みでOKです。よく溶いたら冷水を加えて泡が出るまでしっかりと混ぜましょう。次にふるった小麦粉(薄力粉)を数回に分けて入れながら、泡立て器でさっくりと混ぜ合わせます。
天ぷらの衣は卵を使用せずに作ることもできます。材料は薄力粉と冷水のみです。ふるった薄力粉をボウルに入れ、冷水を加えて溶いていきます。薄力粉と水の分量ですが、薄力粉よりも水の分量がやや多い程度の割合で混ぜるといいです。
小麦粉とベーキングパウダー、塩を組み合わせて衣を作ることもできます。ベーキングパウダーが水に溶けると炭酸ガスが発生し、それによりサクッと揚げることが可能になります。
小麦粉(薄力粉)100gとベーキングパウダー5gをあわせてふるいにかけます。塩を小さじ1/2程度加え、水を少しずつ入れて溶いていきます。
また、片栗粉を加えて作ることもあります。片栗粉を加えることでグルテンの形成を少なくすることができるためです。片栗粉を加える場合は、薄力粉100gに対して大さじ3程度を入れて作るといいでしょう。
天ぷらの衣は、薄力粉以外の粉で作ることもできます。
小麦粉には薄力粉以外に中力粉や強力粉がありますが、これらは薄力粉の代用になるのでしょうか。薄力粉・中力粉・強力粉の主な違いは小麦たんぱく(グルテン)の含有量です。薄力粉のグルテン含有量は6.5~8%、中力粉は8~9%、強力粉は11.5~13.5%となります。グルテンの含有量が少ないほど粘りが出にくく、多いほど粘りと弾力が強くなります。
薄力粉・中力粉・強力粉はどれも小麦粉なので、お互いに代用できるといえばできます。ただし天ぷらの衣として中力粉や強力粉を使用すると、サクサクではなくベチャっと揚がってしまいます。中力粉や強力粉で薄力粉を代用する場合は、グルテンの量を減らせばいいので、片栗粉やコーンスターチなどを混ぜることで出来上がりの食感がよくなります。割合としては中力粉または強力粉と片栗粉やコーンスターチを1:1で混ぜ、水を加えて粘りを出します。
薄力粉・中力粉・強力粉の違いや使い分け方法についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
お米で作られる米粉を天ぷらの衣として使うこともできます。米粉は小麦粉のようにグルテンを生成しないため、サクッと揚げることができます。また、米粉は油の吸収率が低いので、時間が経ってもベチョっとなりにくいのも特徴です。
米粉で天ぷらの衣を作る際は、米粉100g、水180〜200ml、卵1個を用意します。全卵をボウルに溶き、米粉と水を加えて溶いていきます。必要な水分量は米粉の種類によって異なるので、様子を見ながら少しずつ加えるようにしてください。
天ぷらの衣は卵を使用せずに作ることもできるので、その場合は米粉と水のみをボウルに溶いて使用します。また、卵の代わりにマヨネーズを使用するのもおすすめです。その場合は米粉100gに対してマヨネーズ大さじ2、水150mlで作ります。
片栗粉を使って天ぷらの衣を作ることもできます。片栗粉も米粉と同じようにグルテンを生成せずまた油の吸収率が低いため、サクサクに揚がるだけでなく、冷めてもベチョベチョになりにくいです。
片栗粉で天ぷらの衣を作る場合は、片栗粉100gを水100mlで溶きます。片栗粉と水のみで作ると、竜田揚げに近いような軽めの食感に仕上がるので、卵1個またはマヨネーズを大さじ2程度入れて作るのも◎。
とうもろこしを原料とするコーンスターチを使って天ぷらを揚げることも可能です。コーンスターチも米粉や片栗粉と同様グルテンを含まないので、グルテンフリーの天ぷらを作りたい場合にもおすすめです。片栗粉よりも粒子が細かいため薄付きになり、油の切れもよいです。
コーンスターチを使って天ぷらの衣を作る際は、コーンスターチに冷水を少しずつ加えながら溶いていきます。コーンスターチと米粉を1:1の割合で混ぜて冷水で溶くのもおすすめです。
コーンスターチについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
天ぷらの衣には蕎麦粉を使うこともできます。原料である蕎麦の種自体にはグルテンを含まないため、サクサクの仕上がりになります。グルテンフリーの天ぷらを作りたい場合は、小麦粉を一切含まない蕎麦粉100%のものを使用しましょう。
そば粉で天ぷらの衣を作る際は、そば粉、冷水、卵(卵はなくてもOK)を使用します。他の粉で衣を作る時と同じように、そば粉に冷水を少しずつ加えて溶いて作ります。卵はお好みで入れても入れなくてもOKです。米粉よりもそば粉の方が若干カロリーが低いので、米粉とそば粉を混ぜて作るとヘルシーな天ぷらに仕上げることができます。また、そば粉と片栗粉を混ぜて作るのも◎。
お好み焼き用に市販されているお好み焼き粉を使って天ぷらを揚げることも可能です。
お好み焼き粉は、小麦粉をベースに作られていて、食塩や粉末だし、ベーキングパウダー、増粘剤などが加えられています。最初からだしの風味が加えられているので、天つゆなどをつけなくても美味しく食べることができます。
お好み焼き粉を天ぷらの衣の材料として使う場合は、お好み焼き粉に冷水を少しずつ加え溶いていきます。お好み焼き粉と水の量は同量、もしくは水が少し多いくらいでOKです。
お好み焼き粉を使って天ぷらが揚げられるように、たこ焼きの粉を使って天ぷらを作ることもできます。
市販のたこ焼き粉の原料はお好み焼き粉の原料と類似しており、小麦粉をベースにし、粉末だしや食塩、ベーキングパウダー、粉末醤油などです。たこ焼き粉もお好み焼き粉と同様に粉自体に味がついているので、風味豊かな天ぷらを作ることができます。
天ぷらの衣の材料にたこ焼き粉を使う場合は、お好み焼き粉を使う時と同様に、粉と水が同量になるように混ぜるか、水の量が少し多くなるように加え溶いて作ります。
ベサン粉とは、ひよこ豆が原料の粉です。インドではベサン粉を使って天ぷらが作られます。ベサン粉を使えば厚めの衣になるので食べ応えがあります。ベサン粉はグルテンを含まないため、グルテンを控えたい時にもおすすめです。ベサン粉自体が黄色っぽい色をしているので、揚げた天ぷらは黄色い見た目になります。
ベサン粉を使う場合は、ベサン粉と水のみで作ることもできますし、ベサン粉と米粉を1:1の割合で混ぜ、冷水を少しずつ加えて溶いて作ることもできます。
キャッサバ芋が原料であるキャッサバ粉(タピオカ粉)を使って天ぷらを作ることもできます。キャッサバ粉の主成分はでんぷんなので、しっかりと衣がついて美味しく仕上がります。
キャッサバ粉(タピオカ粉)を冷水に溶いて衣を作ります。米粉と1:1になるように混ぜて作ってもOKです。ちなみにキャッサバ粉(タピオカ粉)は製菓店や百貨店、スーパー、オンラインなどで購入することができます。
お菓子作りによく使用されるオートミール粉も天ぷらの衣の材料として使うことができます。オートミールはそのままの状態だと粒が大きいので、フードプロセッサーやミキサーにかけて粉末状にして使用するとよいでしょう。また、市販されているオートミールの中には甘さがプラスされているものもあるので、購入する際はプレーン味のものを購入するようにしてください。
オートミール粉に冷水を加え溶き、マヨネーズを大さじ1〜2程度加えることで仕上がりがよくなります。仕上がりは少し独特な香りがしますが、天つゆや薬味などで食べるとそこまで気にならないでしょう。
最後に、天ぷらをサクサクに揚げるコツをご紹介します。
衣は天ぷらを揚げる直前に作るのがおすすめです。早めに作ってしまうと、時間の経過とともにグルテンが発生し、サクサクに仕上がりにくくなるためです。
また、衣を作る際は全体を混ぜすぎないように注意しましょう。かき混ぜすぎると、小麦粉のグルテンが出て粘り、粘ると衣がはがれやすくなるためです。粉類と水類がサクッと混ざる程度でOKで粉のダマができて問題ありません。
天ぷらの衣を作る際は冷水を使うのがポイントです。冷水とは文字通り冷えた水で、冷蔵庫で冷やした水か、常温の水に氷を加えて温度を下げた水です。
衣の温度が上がるとグルテンが生成されやすくなる(=仕上がりがベチョベチョになる)ため、温度を上げないために冷水を使います。
天ぷらは水分が蒸発する前に衣がしっかり固まってしまうと水蒸気が衣の外へ抜け出しにくくなり、べちょっとした仕上がりになりやすいです。
そのため、水より沸点が低く蒸発しやすいアルコールを多く含む日本酒や焼酎などのお酒を加えることで、衣の水分の蒸発を促進し、サクサクに上がります。小麦粉を使っている場合でも、アルコールがグルテンを押し広げながら蒸発してくれるので、べちょっとしにくいです。
アルコールは蒸発してしまうので、お子様でも食べることができます。ただし、お酒の風味が残ってしまうことがあります。また、日本酒など糖質を多く含むお酒を使うと焦げやすいので注意しましょう。
衣に加える水の代わりに炭酸水を加えても良いです。炭酸水に含まれる気泡(炭酸)が油の熱によって衣から抜ける際に水蒸気も一緒に逃がすことができるため、サクサクに上がります。ただし、炭酸だと油に入れたときに跳ねることがあるので注意が必要です。
一般的に揚げ油として使われるサラダ油などは、空気に触れることで油が酸化してしまい劣化してしまいます。劣化してしまった油を揚げ油として使うと具材の風味が損なわれるだけではなく、べちょっとしてしまいやすいです。
オリーブオイルは「オレイン酸」と呼ばれる一価不飽和脂肪酸が主成分で、酸化しにくい性質があります。そのため、酸化しやすいサラダ油などを使って揚げるのと比較して、サクサクとした食感に揚がります。
また、油の量も重要です。油が少なすぎると焦げやすく、多すぎると温度が上がらず火が通るのに時間がかかってべちょっとしてしまうので注意しましょう。さらに一度にたくさんの具材を入れてしまうと、油の温度が下がり、ベチャッとした仕上がりになってしまうので、少量ずつ揚げるのもポイントです。
ちなみに揚げ油は使用後すぐにかすを取り除き、容器に戻しておくと油の傷みが少なくすみます。
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