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薄力粉・中力粉・強力粉の違いと使い分け、代用はできる?

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薄力粉・中力粉・強力粉の違いと使い分け、代用はできる?

薄力粉・中力粉・強力粉の違いをご存知でしょうか?全て小麦を原料に作る小麦粉の一種ですが、明確な違いがあります。本記事では薄力粉・中力粉・強力粉の違いを詳しく解説します。

小麦粉の基礎知識

薄力粉(はくりきこ)・中力粉(ちゅうりきこ)・強力粉(きょうりきこ)は全て小麦を製粉した小麦粉の一種です。

小麦は15%が表皮、2%が胚芽、83%が胚乳で構成されています。表皮には繊維質やたんぱく質、カルシウムなど含まれており、胚乳には脂質、たんぱく質、ミネラル、ビタミンが含まれています。

小麦粉の原料は小麦の胚乳です。

生産地

小麦粉の原料である小麦の原産地は西アジアといわれており、現在では北米やオーストラリア、ヨーロッパ、中国などの比較的寒冷で乾燥した地帯で多く栽培されています。

日本で作られている小麦粉の9割が輸入した小麦を原料に作られています。日本が最も小麦を輸入している国はアメリカで、輸入量の約49%を占めます。2番目はカナダで輸入量の約34%、3番目がオーストラリアで約17%です。小麦の輸入数は2009年には470万トンにも登り、日本は世界上位5カ国に入る小麦輸入国です。

輸入した小麦に頼る主な原因は、日本の高温多湿の気候が小麦のもっとも苦手とする生育環境であるためです。現在では小麦の品種改良が進み北海道や鹿児島で作られた小麦を原料に作られた小麦粉も販売されていますが、スーパーなどで一般的に販売されている小麦粉の多くは輸入された小麦が原料に使われています。

価格

日本に輸入される小麦の大部分は国が輸入し、輸入した小麦は製粉会社に売り渡され小麦粉になります。

小麦の価格は天候などによる小麦の国際相場、為替相場、輸入にかかるコストなどを反映して政府が決定しており、年に2回価格の改定が行われます。それにより各製粉会社や、小麦粉を使った食品を生産する食品メーカーが値上げ、値下げなどを行っています。

栄養素

小麦粉100g当たりの成分は一般に、

  • 水分...14~15g

  • たんぱく質...6~17g

  • 脂質...2g

  • 炭水化物...65~78g

  • 灰分...1g以下

小麦粉のたんぱく質の量は、強力粉>中力粉>薄力粉の順で少なくなります。小麦粉に含まれるたんぱく質はグリアジンが約33%、グルテニンが約14%という割合で、その他の不溶性のたんぱく質とあわせて、約85%がグルテンを形成します。

グルテンとは、弾力に富むが伸びにくいグルテニンと、弾力は弱いが伸びやすいグリアジンの2種類のたんぱく質が、水分によって結びついたものです。グルテンの量に生地の硬さが決まります。パンなどの「ふわふわ、モチモチ」という食感はこのグルテンによってもたらされます。

炭水化物から食物繊維を引いたものが糖質です。小麦粉の食物繊維は灰分(かいぶん)の中に含まれるので、小麦粉は重さに対して6~7割は糖質ということになります。かつ、野菜などとは違い一度に量を多く摂るので、食べ過ぎるとカロリー過多になり、運動不足の方は肥満の原因になります。

小麦粉にはビタミンB群とEが少量含まれていますが、1%以下です。

灰分は外皮や胚芽部分に多く含まれるミネラルや食物繊維のことです。小麦粉は調理過程で加熱されると、たんぱく質や脂質は燃えてなくなってしまうのですが、一部のミネラルや食物繊維は灰として残るため、このように記載されています。

強力粉・中力粉・薄力粉の違い

小麦粉の分類には大別して2つあります。

品種

小麦粉の種類は原料小麦の品種によって決まります。

見た目はどれも白い粉で目視では判別できませんが、それぞれ粒子の大きさやグルテンの含有量が異なりそれぞれ特徴が異なるため、用途によって使い分けられます。

灰分量

薄力粉・中力粉・強力粉の製粉方法は全て同じです。

小麦粉は、多数のロール製粉機とふるいの組み合わせにより、小麦の胚乳組織を粗く砕いて分離し、これを粉砕するという方法で作られています。粉砕する際に数十種類の粉が得られますが、最終的には2〜4種類に仕分けされて、その性状により希望する等級になるようにそれぞれの粉を組み合わせます。

胚乳部分にある灰分の含有量によって特等粉、1等粉、2等粉、3等粉、末分にわけられ、これを等級といいます。灰分含有量が0.3~0.35%のものは特等粉、0.35~0.45%のものが1等粉、0.45~0.65%のものが2等粉、0.7~1.0%のものが3等粉、1.2~2.0%のものが末粉と分類されます。

灰分の含有量が少ない方が白くなり(その分栄養価は少ないですが…)上級粉となります。灰分の含有量が多いと茶褐色になり、下級粉となります。例えば、強力粉の1等粉は高級食パンに、強力粉の3等粉は通常の食パンなどと使い分けされます。

また、仕分けせずに全部を混合したものがあり、これを「ストレート粉」といいます。

薄力粉について

原料

薄力粉の原料は粒が柔らかい軟質小麦(なんしつこむぎ)です。米国産のウエスタンホワイトホイートという品種が使われることが多いです。

「薄力小麦粉」といわれる場合もありますが、全く同じものを指し、違いはありません。「薄力小麦粉」を略して生まれたのが「薄力粉」という言葉です。

グルテンの含有量

薄力粉はグルテンの含有量が6.5~8%(原料小麦によって違いがあります)と、最も少ない小麦粉です。

グルテンの含有量が少ないため水でこねたときに粘りが出にくく、ふんわりした生地になり歯切れがよくなります。ただし、混ぜすぎてしまうとグルテンの粘りが出てしまい薄力粉の良さが損なわれてしまうので注意が必要です。

ちなみに、グルテン含有量がさらに少ないものを「超薄力粉」ということがありますが、商品名としては使われていません。

粒子の大きさ

薄力粉の原料である軟質小麦は粒が柔らかいため、製粉すると小麦粉の中で最も粒子が細かくなり触ると手にまとわりつく感覚があります。

粒子が細かいので口当たり滑らかに仕上げることができますが、使用する際は水分を吸いにくくだまになりやすいという点に注意しましょう。

用途

焼き菓子

薄力粉は、グルテンの含有量が少ないためクッキーやスポンジケーキなどのお菓子作りに使われることが多いです。薄力粉を使うことで、サクサクとした歯切れの良い食感に仕上がります。

揚げ物の衣

天ぷらや唐揚げの揚げ物にも薄力粉がよく使われます。カリッとした歯切れのよい食感に仕上がります。

とろみ付け

薄力粉は、料理のとろみ付けに使用することもできます。ただし、片栗粉ほどしっかりとしたとろみをつけることはできません。また、薄力粉でつけるとろみは透明にはならずにごります。クリームシチューを作るときなどに薄力粉でとろみをつけることが多いです。

とろみ付けをするときは、片栗粉と同じように水で溶いてから使います。

中力粉について

原料

中力粉の原料は、粒の硬さが中くらいの中間質小麦(ちゅうかんしつこむぎ)です。オーストラリア産のスタンダード・ホワイト・ホイートという品種や、国内産の普通小麦で作られることが多いです。

グルテンの含有量

中力粉はグルテンの含有量は8~9%です。薄力粉と強力粉の中間に位置し、適度に生地をふんわりと膨らませほどよい弾力を与えるという特徴があります。

粒子の大きさ

中力粉の粒子は細かいですが、薄力粉と比較すると中力粉のほうが粗いです。

中力粉も粒子が細かいため、感触は薄力粉と似ています。

用途

麺(うどん・素麺)

中力粉はほどよく弾力が出るのが特徴で、主にうどんの麺を作るときに使われます。そのため、中力粉は「うどん粉」「うどん用粉」「うどん用小麦粉」という名称で売られている場合もあります。

うどんのモチモチ感は中力粉だけの働きではなく、タピオカ粉でんぷん粉が加えられている場合も多いです。そばにも繋ぎとして小麦粉が使われますが(十割そば以外)、グルテンの量が少ないと繋がらないので(薄力粉ではなく)中力粉(または強力粉)が使われます。

ちなみに、ラーメンを作るときは準強力粉(じゅんきょうりきこ)で作られることが多いです。準強力粉は粒がやや固い小麦を製粉したもので、グルテンの含有量は10.5%〜12.5%で、強力粉と中力粉の中間に位置します。ラーメンがうどんよりもプリプリしているのは準強力粉を使用しているためです。

また、スパゲッティやマカロニなどのパスタはデュラム小麦という、また別の小麦が原料に使われています。デュラム製品のグルテン量は準強力粉と同程度です。

お好み焼き・おやき・餃子の皮

中力粉を使ってお好み焼きやおやき、餃子の皮を作ることもできます。中力粉を使うことで、中力粉ならではのモチモチとした食感を楽しむことができます。

とろみ付け

薄力粉同様に、中力粉も料理のとろみ付けとしても使うことができます。中力粉は薄力粉よりも粘度が高いため、薄力粉よりもしっかりとしたとろみをつけることが可能です。

強力粉について

原料

強力粉の原料は、粒が硬い硬質小麦(こうしつこむぎ)です。硬質小麦は表皮が赤褐色であるため「赤小麦」ともいわれます。カナダ産のウエスタン・レッドプリングホイートや米国産のダーク・ノーザン・スプリングホイットという品種で作られることが多いです。

グルテンの含有量

強力粉のグルテン含有量は11.5~13.5%と小麦粉の中で最も多いです。

グルテンの含有量が多いため粘りと弾力が最も強く、こねると生地がよく伸び料理をふんわりもちもちとした食感に仕上げます。

粒子の大きさ

強力粉の原料である硬質小麦は粒が硬いため、製粉すると粒子が粗くなります。

触るとサラサラとしていて、手でギュッと握っても固まりません。

用途

パン

グルテンの量が多ければ多いほど生地が膨らむため、グルテンの含有量が多い強力粉はパンやピザを作るときに使う事が多いです。

強力粉を使った生地は表面が滑らかになるまでしっかりこねるのが大切です。

ちなみに、フランスパンなどの硬めのパン(あまり膨らませないパン)を作るときは準強力粉を使うことが多いです。準強力粉を使うことで、適度な弾力を出すことができます。

とろみ付け

強力粉を使って料理にとろみをつけることもできます。強力粉を使うとコシが強いとろみになります。そのため、クリームコロッケのホワイトソースを作るときのとろみ付けなどに適しています。

打ち粉

強力粉は粒子が粗くサラサラとしているため、打ち粉として使うこともできます。

打ち粉とは、お餅をこねたり、そばやうどん、パイなどの生地を作る際に、生地が手や調理器具、作業台につかないように振りかける粉のことです。

例えば、クッキーの生地を伸ばすときに麺棒にまぶして使うことで、麺棒に生地にひっつくことなく伸ばすことができます。

薄力粉・中力粉・強力粉はお互いに代用可能?

薄力粉・中力粉・強力粉はどれも小麦粉なので、お互いに代用できるといえばできます。ただし、食感が変わってしまうので、「美味しく」作れるかどうかは別問題です。

例えば、本来は薄力粉で作るケーキやクッキーを強力粉で作ると、かなり硬い食感になってしまいます。強力粉で作るクッキーはかなりカチコチです。強力粉で代用する場合は、コーンスターチなどを一緒に使うことでグルテンの量を抑えるなどの工夫をすると良いでしょう。

天ぷらも強力粉で作ると、グルテンの量が多いためサクサクにならず、ベチャッとした食感になります。強力粉で薄力粉を代用する場合もグルテンの量を減らせばいいので、片栗粉やコーンスターチなどを混ぜることで出来上がりの食感がよくなります。

麺を作るときに中力粉の代用品として薄力粉や強力粉を使う場合は、薄力粉だとグルテンの含有量がすくないためコシがでず、強力粉だとコシがですぎてしまいます。

パンを作るときに薄力粉を使うと、グルテンの含有量が少ないためあまり膨らまず軽い食感になります。中力粉を使うと、薄力粉よりはグルテンの含有量は多いですが強力粉よりも少ないため中はずっしりと重く噛みごたえのある食感に仕上がります。

ちなみに、中力粉は薄力粉と強力粉を混ぜることで中力粉に近くなります。